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◇
この世界に来たのは、特別に選ばれたわけでも誰かのオマケの巻き込まれでもなく、ただの迷い込みだった。神隠しだったのかな。もちろん誰の説明を受けていない。一体誰を恨んだらいいの?
目が覚めた場所は汚い寂れた小屋の辛うじて板の上だった。
里奈を拾ってくれたのは、窶れたガリガリのおばさんで決してキラキラ白馬の王子様や氷の美貌魔法使いじゃない。年齢は五十歳くらい。お城で洗濯下女として働いていて、ちょうど里帰りしていた時に里奈を見つけた。
と、理解したのは異世界トリップして半年後だった。
言葉が通じなかったからだ。言語理解力のスキルなどなかった。今までこんなに勉強したことがないくらい必死に勉強してかろうじて状況判断できるくらいないなった。
聞き取りはかなりできるようになったけれど、話すのは上手にできなくて、ますます幼い子どもに思われる。
◇
里奈を拾ってくれたおばさんはハンナさんと言う。里奈が魔力が少なかったから捨てられた子だと思って引き取ってくれた。
魔力のある人は他人の魔力の強さが分かるらしい。
ハンナお母さんの弟が里奈が魔力が少ないとハンナさんに教えた。
ハンナさんも魔力がほとんどない非人だ。魔力がほとんどない人は「非人」と呼ばれる。奴隷でもない。非人って人間否定されている感じがして胸クソだ。はっきり言って美味しさゼロの最悪異世界トリップ版を体験中。奴隷じゃなくてよかったじゃん、って言われるかもしれないけれど……風呂にも満足に入れない世界は里奈にとっては最悪だった。
魔石に魔力を通さないと水も火も使えない。電流が魔力だって。
非人は魔力で生活魔法を使えない人間のことだ。なぜか非人は女性しかいない。非人に確定された女性たちは国に保護される。国民の1パーセントもいない貴重な存在なのに蔑まれている。
保護と言っても下女としての仕事場を与えられる代わりに、生活に必要な魔石を優先的に格安でもらえる。非人は子どもを産む確率が少ないから独身が多い。
魔力が釣り合わないと妊娠しにくいらしい。
下女の下仕事をしたくない非人たちは、最終的に娼婦になったり妾になったりしている。
ハンナお母さん、彼女は結婚できなくて子どもがいなかったから、里奈のことを自分の娘と受け入れてくれた。
最初に彼女に教わった言葉が「ハンナお母さん」だった。彼女はお城の洗濯場で働いている。お城で下女として働いている非人たちの寮で生活している。
ハンナお母さんは里奈が行き倒れた近くの村で普通の農民として生まれた。でも十五歳になっても魔力が全然増えなかった。成人するまで魔力は増えるらしい。
成人式の魔力検査は非人の保護のためにされたしきたりだが、いつの間にか差別になっていた。
ハンナお母さんの両親は彼女を一生養えないし、村人の男性は誰も彼女を嫁に欲しがらなかった。農民の多い村では子どもの産みにくい非人をもらおうと思う者はいない。
童顔の里奈は、この国でも子どもと思われた。拾われてハンナお母さんの世話になってからしばらくして魔力検査のために役所に行った。魔力が少ないのは分かっていたけれど、非人の手続きのために調べないといけない。
そして魔力検査の時の年齢も分かるみたいだった。もちろん言葉の通じない里奈は、ハンナお母さんが一生懸命ジェスチャーで教えてくれた。
例えば子どもや大人を指して年齢のことを伝えてくれた。魔力のことはさっぱり分からなかったけれど、なんとなく周りでみんなが魔法を使っていて分かった。
魔石から水や火が出たのも驚いたけれど、人が魔法を使っていて今でも驚いて慣れることがない。
魔力検査をした係の人とハンナお母さんが驚いた顔をしてしばらく里奈を見ていた。その後、検査をした係のおじさんが他の役人を呼んで他の魔力検査器で調べ直した。魔力検査器は水晶に手をのせるだけだ。
ちなみにこの魔力検査器に年齢と魔力数値が同時に表れるらしい。
後で分かったけれどみんなが驚いていたのは、年齢もだけれど魔力がゼロだったからだ。非人たちに魔力ゼロの人はいない。彼女たちには少なくても魔力があるから魔石に少量でも魔力を流せる。
だから魔力ゼロの里奈は水も火も魔石から出せない。
(終わった……)
この世界は魔力に頼ってい生活しているから、井戸で水を汲んだり火石を使ったりなんてない。他の人に頼って生活するか、小川の近くで自活するしかなかった。火も頑張って木でおこしたり……。考えただけ無理だ。
結局、ハンナお母さんに助けてもらって生活するしかなかった。
まあ、こんな事情は言葉を覚えた半年後に教えてもらったんだけれど。
二十三歳で魔力ゼロで言葉の話せない里奈のことをハンナお母さんや非人の同僚たちは可愛がってくれた。言葉も何度も繰り替えして教えてくれる。
どこか遠い国から連れ去られた、とみんな勘違いしている。
この世界に来たのは、特別に選ばれたわけでも誰かのオマケの巻き込まれでもなく、ただの迷い込みだった。神隠しだったのかな。もちろん誰の説明を受けていない。一体誰を恨んだらいいの?
目が覚めた場所は汚い寂れた小屋の辛うじて板の上だった。
里奈を拾ってくれたのは、窶れたガリガリのおばさんで決してキラキラ白馬の王子様や氷の美貌魔法使いじゃない。年齢は五十歳くらい。お城で洗濯下女として働いていて、ちょうど里帰りしていた時に里奈を見つけた。
と、理解したのは異世界トリップして半年後だった。
言葉が通じなかったからだ。言語理解力のスキルなどなかった。今までこんなに勉強したことがないくらい必死に勉強してかろうじて状況判断できるくらいないなった。
聞き取りはかなりできるようになったけれど、話すのは上手にできなくて、ますます幼い子どもに思われる。
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里奈を拾ってくれたおばさんはハンナさんと言う。里奈が魔力が少なかったから捨てられた子だと思って引き取ってくれた。
魔力のある人は他人の魔力の強さが分かるらしい。
ハンナお母さんの弟が里奈が魔力が少ないとハンナさんに教えた。
ハンナさんも魔力がほとんどない非人だ。魔力がほとんどない人は「非人」と呼ばれる。奴隷でもない。非人って人間否定されている感じがして胸クソだ。はっきり言って美味しさゼロの最悪異世界トリップ版を体験中。奴隷じゃなくてよかったじゃん、って言われるかもしれないけれど……風呂にも満足に入れない世界は里奈にとっては最悪だった。
魔石に魔力を通さないと水も火も使えない。電流が魔力だって。
非人は魔力で生活魔法を使えない人間のことだ。なぜか非人は女性しかいない。非人に確定された女性たちは国に保護される。国民の1パーセントもいない貴重な存在なのに蔑まれている。
保護と言っても下女としての仕事場を与えられる代わりに、生活に必要な魔石を優先的に格安でもらえる。非人は子どもを産む確率が少ないから独身が多い。
魔力が釣り合わないと妊娠しにくいらしい。
下女の下仕事をしたくない非人たちは、最終的に娼婦になったり妾になったりしている。
ハンナお母さん、彼女は結婚できなくて子どもがいなかったから、里奈のことを自分の娘と受け入れてくれた。
最初に彼女に教わった言葉が「ハンナお母さん」だった。彼女はお城の洗濯場で働いている。お城で下女として働いている非人たちの寮で生活している。
ハンナお母さんは里奈が行き倒れた近くの村で普通の農民として生まれた。でも十五歳になっても魔力が全然増えなかった。成人するまで魔力は増えるらしい。
成人式の魔力検査は非人の保護のためにされたしきたりだが、いつの間にか差別になっていた。
ハンナお母さんの両親は彼女を一生養えないし、村人の男性は誰も彼女を嫁に欲しがらなかった。農民の多い村では子どもの産みにくい非人をもらおうと思う者はいない。
童顔の里奈は、この国でも子どもと思われた。拾われてハンナお母さんの世話になってからしばらくして魔力検査のために役所に行った。魔力が少ないのは分かっていたけれど、非人の手続きのために調べないといけない。
そして魔力検査の時の年齢も分かるみたいだった。もちろん言葉の通じない里奈は、ハンナお母さんが一生懸命ジェスチャーで教えてくれた。
例えば子どもや大人を指して年齢のことを伝えてくれた。魔力のことはさっぱり分からなかったけれど、なんとなく周りでみんなが魔法を使っていて分かった。
魔石から水や火が出たのも驚いたけれど、人が魔法を使っていて今でも驚いて慣れることがない。
魔力検査をした係の人とハンナお母さんが驚いた顔をしてしばらく里奈を見ていた。その後、検査をした係のおじさんが他の役人を呼んで他の魔力検査器で調べ直した。魔力検査器は水晶に手をのせるだけだ。
ちなみにこの魔力検査器に年齢と魔力数値が同時に表れるらしい。
後で分かったけれどみんなが驚いていたのは、年齢もだけれど魔力がゼロだったからだ。非人たちに魔力ゼロの人はいない。彼女たちには少なくても魔力があるから魔石に少量でも魔力を流せる。
だから魔力ゼロの里奈は水も火も魔石から出せない。
(終わった……)
この世界は魔力に頼ってい生活しているから、井戸で水を汲んだり火石を使ったりなんてない。他の人に頼って生活するか、小川の近くで自活するしかなかった。火も頑張って木でおこしたり……。考えただけ無理だ。
結局、ハンナお母さんに助けてもらって生活するしかなかった。
まあ、こんな事情は言葉を覚えた半年後に教えてもらったんだけれど。
二十三歳で魔力ゼロで言葉の話せない里奈のことをハンナお母さんや非人の同僚たちは可愛がってくれた。言葉も何度も繰り替えして教えてくれる。
どこか遠い国から連れ去られた、とみんな勘違いしている。
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