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◇
レイーシャさまが洗濯場の中まで篭を運んでくれようとしたが断った。非人の中には人見知りの人たちが多い。非人と確定されて辛い思いをたくさんしたから仕方ないんだけれど。
だからレイーシャさまのような騎士さまがいきなり来たら、みんなに悪い。
「リーナ! 見たわよ! あれレイーシャさまよね! ど、どうして? なにがあったの?」
篭を置いて洗濯物をたたんでいたら、ミイシャが叫びながら部屋に入って来た。騎士たちを物色しに来たピラニアな侍女たちに突き飛ばされたところを、レイーシャさまに助けられたことたどたどしながら説明した。
「まあ! 素敵だわー。レイーシャさまはすべての女性が夫にしたい男性よ。レイーシャさまは第一騎士団長だけれど、第三王子なのよ! リーナ、妾にしてもらうチャンスよ!」
レイーシャさまが王子さま……。ミイシャは興奮していろいろ里奈にアドバイスをしているが、リーナの耳にはなにも入って来なかった。
「でもね、レイーシャさまの第一側室がすごくレイーシャさまのことを独占しようとして。
次々に他の側室たちを追い出して、新しい側室候補たちを排除しているらしいわ、と周りの女性たちは噂しているけれど、実際はメリーナさまの完璧な美貌の前で誰もレイーシャさまの側室になろうとしないらしいわ。
お姫様の中のお姫様で。この国の騎士たちは全員メリーナさまに剣の誓いを建てると言うくらいすごい美女なんだって」
王族男子は魔力の高い王族を増やすため、相性のよい女性を見つけるために次々と側室や妾を持つと聞いていた。でもレイーシャさまのような真面目で堅物そうな騎士でも、所詮多くの女の人を侍らせているのかと思うと胸がキリッと痛くなった。ポッと芽生えた小さい恋心を消すことができそうだ。
「確かレイーシャさまの第一側室のメリーナさまが、いま唯一のレイーシャさまの側室よ。リーナ、これはチャンスよ! あっ、でも辞めた方がいいかもしれないわ。
たしかにメリーナさまの横に並ぶのは同じ女として惨めだし、なにより容姿もだけれどすべてにおいて太刀打ちできない方なのよ。
メリーナさまはルデェル辺境伯の令嬢で、魔力が女性の中で一番あると言われているの。だからメリーナさまは最初は陛下、つまりレイーシャさまの一番上の兄のジョンリー陛下の側室になったのよ。でもメリーナさまはレイーシャさまのことが好きでほとんど陛下との伽を断っていたの。
陛下の側室をして三年経って妊娠しなかったからお役目から外されて、次は第二王子のシーオン殿下の側室になるはずだったけれど、第二王子が拒否したらしいわ」
ミイシャは楽しい話をしていると言わんばかりに目をキラキラしている。話の内容が内容だから、可愛い顔をしているけれど、近所の噂話をしているおばちゃんたちとほとんど変わらない。まあ、それがミイシャのいいところなんだけれどね。
「まあメリーナさまは第三王子のレイーシャさまの側室になりたかったから嬉しいはずなのに、自分が拒否されたのが悔しかったみたいなのよ。と言うのは周りの女性たちが勝手に言っていること。完璧なお姫様のメリーナさまがそんな風にならないわ。
それよりメリーナさまはレイーシャさまの側室になってもう三年経つのにまだ子どもができないのよ。
まあ、レイーシャさまの住まいの第三王子の住まう館の洗濯仲間たちによるとお二人は一度もエッチをしたことがないんだって。
レイーシャさまって不能じゃないのって言う噂もあるわ」
ミイシャは里奈のためにゆっくりと会話をしてくれるけれど、いまは興奮してどんどん話し方が早くなっていく。
「でもお人形のように完璧なメリーナさまの前で、男性は不埒な気持ちを抱くことなんてできない、と男の人たちが言っていたわ。
気後れするらしいの。だからリーナ、ここはチャンスよ!
それに一節によるとメリーナさまのご実家は王や王弟たちに妊娠して欲しくないらしいわ。
ルデェル辺境伯は第二の王族で、もし陛下や王弟たちに子どもができない場合はメリーナさまの弟が時期国王になるらしいの」
ミイシャは「はあ」と息継ぎをしてまた話始めた。彼女のおしゃべりのおかげでかなり言葉も国事情を分かってきた。
「それより冷酷なキャラの第二王子のシーオンさまよ。私はシーオン殿下とエッチがしたいわ。
もうシーオンさまは兄弟の中で一番綺麗な顔をしているのに、口が悪いらしいわ。でもね、みんなだからそれが一番いいって言うの。
酷いことを言われながら愛されたいって」
「……」
つまりミイシャの友だちはM女なのか? まあとりあえず第二王子シーオンさまは冷酷S男、近寄るべからず! と脳内のメモ帳に書いた。ついでに今夜は荒紙を綴づったお絵描き帳に、サーラン王族の人物像を描こう。ついでに今度描くエロ画は4Pにしよう! 王族男子が一人の女と絡ませた高度な図案。あの守銭奴、ちょっと多めにお金を払ってくれたらいいのにな。
レイーシャさまが洗濯場の中まで篭を運んでくれようとしたが断った。非人の中には人見知りの人たちが多い。非人と確定されて辛い思いをたくさんしたから仕方ないんだけれど。
だからレイーシャさまのような騎士さまがいきなり来たら、みんなに悪い。
「リーナ! 見たわよ! あれレイーシャさまよね! ど、どうして? なにがあったの?」
篭を置いて洗濯物をたたんでいたら、ミイシャが叫びながら部屋に入って来た。騎士たちを物色しに来たピラニアな侍女たちに突き飛ばされたところを、レイーシャさまに助けられたことたどたどしながら説明した。
「まあ! 素敵だわー。レイーシャさまはすべての女性が夫にしたい男性よ。レイーシャさまは第一騎士団長だけれど、第三王子なのよ! リーナ、妾にしてもらうチャンスよ!」
レイーシャさまが王子さま……。ミイシャは興奮していろいろ里奈にアドバイスをしているが、リーナの耳にはなにも入って来なかった。
「でもね、レイーシャさまの第一側室がすごくレイーシャさまのことを独占しようとして。
次々に他の側室たちを追い出して、新しい側室候補たちを排除しているらしいわ、と周りの女性たちは噂しているけれど、実際はメリーナさまの完璧な美貌の前で誰もレイーシャさまの側室になろうとしないらしいわ。
お姫様の中のお姫様で。この国の騎士たちは全員メリーナさまに剣の誓いを建てると言うくらいすごい美女なんだって」
王族男子は魔力の高い王族を増やすため、相性のよい女性を見つけるために次々と側室や妾を持つと聞いていた。でもレイーシャさまのような真面目で堅物そうな騎士でも、所詮多くの女の人を侍らせているのかと思うと胸がキリッと痛くなった。ポッと芽生えた小さい恋心を消すことができそうだ。
「確かレイーシャさまの第一側室のメリーナさまが、いま唯一のレイーシャさまの側室よ。リーナ、これはチャンスよ! あっ、でも辞めた方がいいかもしれないわ。
たしかにメリーナさまの横に並ぶのは同じ女として惨めだし、なにより容姿もだけれどすべてにおいて太刀打ちできない方なのよ。
メリーナさまはルデェル辺境伯の令嬢で、魔力が女性の中で一番あると言われているの。だからメリーナさまは最初は陛下、つまりレイーシャさまの一番上の兄のジョンリー陛下の側室になったのよ。でもメリーナさまはレイーシャさまのことが好きでほとんど陛下との伽を断っていたの。
陛下の側室をして三年経って妊娠しなかったからお役目から外されて、次は第二王子のシーオン殿下の側室になるはずだったけれど、第二王子が拒否したらしいわ」
ミイシャは楽しい話をしていると言わんばかりに目をキラキラしている。話の内容が内容だから、可愛い顔をしているけれど、近所の噂話をしているおばちゃんたちとほとんど変わらない。まあ、それがミイシャのいいところなんだけれどね。
「まあメリーナさまは第三王子のレイーシャさまの側室になりたかったから嬉しいはずなのに、自分が拒否されたのが悔しかったみたいなのよ。と言うのは周りの女性たちが勝手に言っていること。完璧なお姫様のメリーナさまがそんな風にならないわ。
それよりメリーナさまはレイーシャさまの側室になってもう三年経つのにまだ子どもができないのよ。
まあ、レイーシャさまの住まいの第三王子の住まう館の洗濯仲間たちによるとお二人は一度もエッチをしたことがないんだって。
レイーシャさまって不能じゃないのって言う噂もあるわ」
ミイシャは里奈のためにゆっくりと会話をしてくれるけれど、いまは興奮してどんどん話し方が早くなっていく。
「でもお人形のように完璧なメリーナさまの前で、男性は不埒な気持ちを抱くことなんてできない、と男の人たちが言っていたわ。
気後れするらしいの。だからリーナ、ここはチャンスよ!
それに一節によるとメリーナさまのご実家は王や王弟たちに妊娠して欲しくないらしいわ。
ルデェル辺境伯は第二の王族で、もし陛下や王弟たちに子どもができない場合はメリーナさまの弟が時期国王になるらしいの」
ミイシャは「はあ」と息継ぎをしてまた話始めた。彼女のおしゃべりのおかげでかなり言葉も国事情を分かってきた。
「それより冷酷なキャラの第二王子のシーオンさまよ。私はシーオン殿下とエッチがしたいわ。
もうシーオンさまは兄弟の中で一番綺麗な顔をしているのに、口が悪いらしいわ。でもね、みんなだからそれが一番いいって言うの。
酷いことを言われながら愛されたいって」
「……」
つまりミイシャの友だちはM女なのか? まあとりあえず第二王子シーオンさまは冷酷S男、近寄るべからず! と脳内のメモ帳に書いた。ついでに今夜は荒紙を綴づったお絵描き帳に、サーラン王族の人物像を描こう。ついでに今度描くエロ画は4Pにしよう! 王族男子が一人の女と絡ませた高度な図案。あの守銭奴、ちょっと多めにお金を払ってくれたらいいのにな。
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