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◇第二章◇
今日も洗濯物はカラッと乾いている。ここ最近お天気がポカポカで、里奈の心もポカポカで温かい。この幸せオーラのポカポカを周りにもおすそ分け中。
レイーシャさまはきちんと側室と別れる日までケジメをつけるまで、二人の関係は公にしないようにしよう、と言った。里奈もレイーシャさまと気持ちが通じただけで十分だった。
彼が王族とか里奈が非人とか、そんなことはどうでもいいくらいに気持ちが浮いていた。
「リーナ」
洗濯物を取り入れている時にミイシャが慌てて近づいて来た。
「ミイシャ?」
「ハアハア、リーナ、あなた、レイーシャさまとなにもないよね! たしかに前、リーナにレイーシャさまの妾になるようにすすめたけれど、あれは、そんなこと、絶対ありえないからと思ったから言っただけなの」
呼吸を整える暇もなく、ミイシャが言った。
「私も全然現実に目を向けていなかったの。非人が普通の人のように幸せになるなんてできないの。
この前、私が喧嘩した時に、騎士さまが言ったのよ。『保護された施設で問題を起こした非人たちは、魔石鉱山へ移される』って。
魔石鉱山はあの魔獣が住んでいる場所にあって、犯罪者や借金の返済が遅れている負債者が行く場所よ。非人の女性たちはそこでなんでも屋、つまり娼婦の仕事もさせられるらしいわ」
「えっ?」
「だから! 問題って、犯罪的なことだけじゃないの。貴族たちがこの非人が邪魔だと感じたら、指一本で施設から追い出されるの。
施設から追い出された非人にできる仕事なんて娼婦しかないわ。みんな帰る家なんてないから」
前に仕事を探した時に、どこも働き口がなかった。施設から追い出されたら、もっと仕事口なんてないんだ。
「ハンナさんが教えてくれたの。昔ハンナさんの親友は上級貴族に見初められて妾になったの。最初の数年はよかったんだけれど、旦那さまの興味がなくなってから地獄だったんだって。
旦那さまの奥さまや他の側室たちに使用人のようにこき使われて、使用人たちに奴隷のように扱われたの。
彼女はその貴族の家から出て、また施設に戻ろうとしたけれど、先に奥さまの手で仕事場に戻れなくなって。そして彼女を雇う娼婦館もなくなって。道で売春をしようとしたら捕まって、魔石鉱山へ行かされたそうよ。そこで一ヶ月もしないうちに死んだそうよ」
ミイシャが泣きそうな顔をしてリーナの顔を見て言った。
「最近リーナがレイーシャさまとよく会っているの知っているの。この間だって、抱き合っていた。お願い、私、リーナのことを妹だと思っているの。
だから、絶対のレイーシャさまと一時の過ちをしないで! レイーシャさまの子どもを生んで正式に妻になりたいと言う女性がたくさんいるの。
レイーシャさまの側室のメリーナさまは三年建っても妊娠しなかったのに、レイーシャさまの側室を辞めないと言っているそうよ。
メリーナさまの実家もレイーシャさまに彼女を正式な妻にするように圧力をかけているそうよ」
好きな人と付き合って、エッチをして、結婚して。普通のことが許されない世界なんだ……。
「だから、もうレイーシャさまと話すのも辞めて。お願い。きっと、いつか、どこかの平民の男の人が、子どもがいなくてもいいと言ってくれる男の人が、もしかしたら子持ちの男ヤモメが、私たちに告白してくれるわ。
だから、レイーシャさまのことは忘れてね。お願い……」
「ミイシャ……」
ミイシャが里奈にレイーシャさまとの関係を辞めるように涙を流しながら何度も里奈に訴えた。でも将来のことはなにがあるか分からない。だから彼女のように危機感を感じて、レイーシャさまと別れようとは思わなかった。
◇
それからレイーシャさまと両思いになって二週間が経った。彼のケジメだろう。彼氏彼女のようなスキンシップはいっさいない。でも前よりもっと優しくてお互い見つめ合うだけで心臓がドクドクして麻薬のようにボーッと幸せな気分になる。毎回別れ際に「リーナ、好きだよ。周りの整理でき次第、君のことを兄上たちに紹介し、私の妻に迎える。だから私のことを信じて待っていてくれ」と言ってくれる。
「妻」と言う言葉をはじめて聞いた時は、息継ぎを忘れて彼の顔を見てしまった。やっぱり世界が違うんだ……と、嬉しさよりカルチャーショックの方が強かった。
今、レイーシャさまは魔獣狩りでお城にいない。三日前に会った時、一週間留守にすると言った。
レイーシャさまはとても疲れた顔をしていた。ここ数日、お城はレイーシャさまとメリーナさまの結婚式の話題で盛り上がっている。
子どもができなくても愛する人の側にいたい、と言っているメリーナさまは、非人の仲間たちの間でも人気者だ。噂話を聞く度に、ミイシャがなにか言いたそうな顔をして里奈を見ている。
非人の仲間も誰もレイーシャさまと里奈と両思いなんて思っていない。よくレイーシャさまが里奈会いに来るのは、ただの子ども好きだから、と思っている。
ミイシャの騒動以来、レイーシャさまの他にも騎士たちが餌付けのように里奈に差し入れを持って来たり、様子を見にくる。騎士以外にも下級司書官たちや料理人たちの間でも、異国のちびっこがマスコットのように人気があるらしい。きっと非人で小さいうえに変わった容姿の異国人だから、みんなの悲劇の想像を膨らまして、可愛がってくれているんだろう。
今日も洗濯物はカラッと乾いている。ここ最近お天気がポカポカで、里奈の心もポカポカで温かい。この幸せオーラのポカポカを周りにもおすそ分け中。
レイーシャさまはきちんと側室と別れる日までケジメをつけるまで、二人の関係は公にしないようにしよう、と言った。里奈もレイーシャさまと気持ちが通じただけで十分だった。
彼が王族とか里奈が非人とか、そんなことはどうでもいいくらいに気持ちが浮いていた。
「リーナ」
洗濯物を取り入れている時にミイシャが慌てて近づいて来た。
「ミイシャ?」
「ハアハア、リーナ、あなた、レイーシャさまとなにもないよね! たしかに前、リーナにレイーシャさまの妾になるようにすすめたけれど、あれは、そんなこと、絶対ありえないからと思ったから言っただけなの」
呼吸を整える暇もなく、ミイシャが言った。
「私も全然現実に目を向けていなかったの。非人が普通の人のように幸せになるなんてできないの。
この前、私が喧嘩した時に、騎士さまが言ったのよ。『保護された施設で問題を起こした非人たちは、魔石鉱山へ移される』って。
魔石鉱山はあの魔獣が住んでいる場所にあって、犯罪者や借金の返済が遅れている負債者が行く場所よ。非人の女性たちはそこでなんでも屋、つまり娼婦の仕事もさせられるらしいわ」
「えっ?」
「だから! 問題って、犯罪的なことだけじゃないの。貴族たちがこの非人が邪魔だと感じたら、指一本で施設から追い出されるの。
施設から追い出された非人にできる仕事なんて娼婦しかないわ。みんな帰る家なんてないから」
前に仕事を探した時に、どこも働き口がなかった。施設から追い出されたら、もっと仕事口なんてないんだ。
「ハンナさんが教えてくれたの。昔ハンナさんの親友は上級貴族に見初められて妾になったの。最初の数年はよかったんだけれど、旦那さまの興味がなくなってから地獄だったんだって。
旦那さまの奥さまや他の側室たちに使用人のようにこき使われて、使用人たちに奴隷のように扱われたの。
彼女はその貴族の家から出て、また施設に戻ろうとしたけれど、先に奥さまの手で仕事場に戻れなくなって。そして彼女を雇う娼婦館もなくなって。道で売春をしようとしたら捕まって、魔石鉱山へ行かされたそうよ。そこで一ヶ月もしないうちに死んだそうよ」
ミイシャが泣きそうな顔をしてリーナの顔を見て言った。
「最近リーナがレイーシャさまとよく会っているの知っているの。この間だって、抱き合っていた。お願い、私、リーナのことを妹だと思っているの。
だから、絶対のレイーシャさまと一時の過ちをしないで! レイーシャさまの子どもを生んで正式に妻になりたいと言う女性がたくさんいるの。
レイーシャさまの側室のメリーナさまは三年建っても妊娠しなかったのに、レイーシャさまの側室を辞めないと言っているそうよ。
メリーナさまの実家もレイーシャさまに彼女を正式な妻にするように圧力をかけているそうよ」
好きな人と付き合って、エッチをして、結婚して。普通のことが許されない世界なんだ……。
「だから、もうレイーシャさまと話すのも辞めて。お願い。きっと、いつか、どこかの平民の男の人が、子どもがいなくてもいいと言ってくれる男の人が、もしかしたら子持ちの男ヤモメが、私たちに告白してくれるわ。
だから、レイーシャさまのことは忘れてね。お願い……」
「ミイシャ……」
ミイシャが里奈にレイーシャさまとの関係を辞めるように涙を流しながら何度も里奈に訴えた。でも将来のことはなにがあるか分からない。だから彼女のように危機感を感じて、レイーシャさまと別れようとは思わなかった。
◇
それからレイーシャさまと両思いになって二週間が経った。彼のケジメだろう。彼氏彼女のようなスキンシップはいっさいない。でも前よりもっと優しくてお互い見つめ合うだけで心臓がドクドクして麻薬のようにボーッと幸せな気分になる。毎回別れ際に「リーナ、好きだよ。周りの整理でき次第、君のことを兄上たちに紹介し、私の妻に迎える。だから私のことを信じて待っていてくれ」と言ってくれる。
「妻」と言う言葉をはじめて聞いた時は、息継ぎを忘れて彼の顔を見てしまった。やっぱり世界が違うんだ……と、嬉しさよりカルチャーショックの方が強かった。
今、レイーシャさまは魔獣狩りでお城にいない。三日前に会った時、一週間留守にすると言った。
レイーシャさまはとても疲れた顔をしていた。ここ数日、お城はレイーシャさまとメリーナさまの結婚式の話題で盛り上がっている。
子どもができなくても愛する人の側にいたい、と言っているメリーナさまは、非人の仲間たちの間でも人気者だ。噂話を聞く度に、ミイシャがなにか言いたそうな顔をして里奈を見ている。
非人の仲間も誰もレイーシャさまと里奈と両思いなんて思っていない。よくレイーシャさまが里奈会いに来るのは、ただの子ども好きだから、と思っている。
ミイシャの騒動以来、レイーシャさまの他にも騎士たちが餌付けのように里奈に差し入れを持って来たり、様子を見にくる。騎士以外にも下級司書官たちや料理人たちの間でも、異国のちびっこがマスコットのように人気があるらしい。きっと非人で小さいうえに変わった容姿の異国人だから、みんなの悲劇の想像を膨らまして、可愛がってくれているんだろう。
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