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◇
洗濯物を畳んだ後部屋に戻ろうと立ち上がる。騎士が入り口に立っていた。
「君がリーナと言う名前の非人だな。とある方がおまえにお会いと言っている。私に付いて来い」
たしか彼は、前マーシャさんを連行した騎士だ。前に見た時は柔和な顔だったのに、怖くててビクッと体が固まって動けなくなった。
「早くついて来てください」
有無も言わずさっさと歩き始めた。彼はたしかに騎士だ。だから大丈夫だろう。早くついていかないとまたなにか言われる。彼の後を急いで追った。彼は里奈の歩幅も気にせずにどんどん歩いて行くから、里奈は小走りで彼を追いかけた。
彼の後を追いかけて、十分も経たないうちに目的地に着いた。
「ここは教会だ」
やっと止まってくれた、と、立ち止まりハアハアと息を大きく吸う。休憩がもっと必要だったのに、彼はまた建物の中に入って行く。
城内の教会は、貴族しか入れない。入り口の扉に向かう階段を登り、入り口立ち止まる。非人の里奈は教会の中に入っていいか分からない。
「早く来い」
入り口の扉に向かう階段を登りながら、彼は里奈に向き言った。今まで里奈にお菓子をくれた騎士たちは特別だったんだ。てっきり騎士とはみんなに優しい正義感の強いヒーローと思っていたのに。
教会の中に一歩踏み入れると、内部空間は高い天井とステンドグラスからの鮮やかな光で幻想的な空間だった。天井の中央部を一段高くして空間に広がっている。あっちこっちに花紋様の美しい装飾を施している。柱頭一つ一つにさえ匠の彫刻が施されている。里奈が住んでいる場所やかねての生活する範囲は殺風景な石作りだから、この世界の建築が中世ヨーロッパと同じくらい発達していると知らなかった。
ステンドグラスの間には金色の額縁にはめられた繊細な絵が飾られている。近くでじっくり見たいけれど、前を行く騎士はキョロキョロよそ見をしている里奈に「早くついて来い」とイライラ声で言った。
礼拝堂を通り抜けて廊下に出た。廊下にも絵画飾られており、ところどころに人物の石像があった。マーブルのゆな石で作られた神々しい石像の頭には花冠があり足元にも生花で飾られていた。
迷路のように複雑に別れた廊下を何度も左右に曲がり目的の部屋に着いた。
『コンコン』
騎士が木製の厚い扉の叩いてすぐに、お城の侍女の服を着た女性が扉を少し開けた。騎士と女性が二言会話をした後に、騎士が部屋に入って行く。
里奈も慌てて彼の後ろについて部屋の中に入る。
「非人のリーナをお連れしました」
騎士は窓際のソファーに座っている女性の前に立ち頭を下げてから言った。
「ごくろうさまです。コーディー」
澄んだ心地よい声で女性が言った。
「はっ」
コーディーと言う名前の騎士はもう一度頭を下げた。そしてそのまま女性の座っているソファーの斜め後ろに立った。
コーディーさまの他にも数人の騎士たちと数人の侍女たちがいた。
「メリーナさまの御前だ。頭が高いぞ」
いきなり呼び出して、知らない場所に連れてこられて、挙句の果てに『非人』のリーナって紹介されて『ずがいがたかい』って! 目元が熱くなった。涙を流したくないから唇を強く噛んで頭を下げた。
コーディーさまの理不尽な態度にも頭にきたけれど、それより目の前にいる女性の存在を知って悔しかった。
ベルベットのソファーの真ん中に行儀よく座る女性が声を発しなかったら、人間の頭身のビスク・ドールと勘違いしただろう。
陶磁器で造られたような顔は色白でうっすらと染まる頬の赤みとぷっくらとサクランボのようにみずみずしい唇の紅色が栄えている。
形のよい卵型の顔を鮮やかなウエーブがかった金髪が柔らかく縁取っている。若葉のようなエメラルドグリーンの瞳は大きく、鼻も眉毛も口もすべて完璧な位置にあった。
エメラルドグリーンの瞳と同じドレスから彼女の血管が浮くような細い腕が出ている。全身がきゅっと細く完璧だった。彼女は神さまが端正に造った人形のように美しい。
この人がレイーシャさまの側室のメリーナさまなんだ。
「コーディーやめなさい。リーナさんはわたくしのお客さまよ。
リーナさんもそこに立っていないで、そこに座ってお話をしましょう」
里奈はハッと頭をあげたら、メリーナさまがにっこり笑って彼女の前の席をすすめてくれた。
里奈は敗北感と罪悪感でいっぱいになった。
「不躾に呼び出してごめんなさい。そしてコーディーのことも許してくださいな。コーディーはわたくしの父方の従兄弟で幼いころからともに育って、わたくしのことになると非常に厳しくなるのです。
失礼、まだ自己紹介をしていませんでしたね。
わたくしはルデェル辺境伯の長女のメリーナ・ルデェルですわ」
メリーナさんがニコニコしながら紹介した。里奈は「リーナです」と頭をペコリと下げた。
洗濯物を畳んだ後部屋に戻ろうと立ち上がる。騎士が入り口に立っていた。
「君がリーナと言う名前の非人だな。とある方がおまえにお会いと言っている。私に付いて来い」
たしか彼は、前マーシャさんを連行した騎士だ。前に見た時は柔和な顔だったのに、怖くててビクッと体が固まって動けなくなった。
「早くついて来てください」
有無も言わずさっさと歩き始めた。彼はたしかに騎士だ。だから大丈夫だろう。早くついていかないとまたなにか言われる。彼の後を急いで追った。彼は里奈の歩幅も気にせずにどんどん歩いて行くから、里奈は小走りで彼を追いかけた。
彼の後を追いかけて、十分も経たないうちに目的地に着いた。
「ここは教会だ」
やっと止まってくれた、と、立ち止まりハアハアと息を大きく吸う。休憩がもっと必要だったのに、彼はまた建物の中に入って行く。
城内の教会は、貴族しか入れない。入り口の扉に向かう階段を登り、入り口立ち止まる。非人の里奈は教会の中に入っていいか分からない。
「早く来い」
入り口の扉に向かう階段を登りながら、彼は里奈に向き言った。今まで里奈にお菓子をくれた騎士たちは特別だったんだ。てっきり騎士とはみんなに優しい正義感の強いヒーローと思っていたのに。
教会の中に一歩踏み入れると、内部空間は高い天井とステンドグラスからの鮮やかな光で幻想的な空間だった。天井の中央部を一段高くして空間に広がっている。あっちこっちに花紋様の美しい装飾を施している。柱頭一つ一つにさえ匠の彫刻が施されている。里奈が住んでいる場所やかねての生活する範囲は殺風景な石作りだから、この世界の建築が中世ヨーロッパと同じくらい発達していると知らなかった。
ステンドグラスの間には金色の額縁にはめられた繊細な絵が飾られている。近くでじっくり見たいけれど、前を行く騎士はキョロキョロよそ見をしている里奈に「早くついて来い」とイライラ声で言った。
礼拝堂を通り抜けて廊下に出た。廊下にも絵画飾られており、ところどころに人物の石像があった。マーブルのゆな石で作られた神々しい石像の頭には花冠があり足元にも生花で飾られていた。
迷路のように複雑に別れた廊下を何度も左右に曲がり目的の部屋に着いた。
『コンコン』
騎士が木製の厚い扉の叩いてすぐに、お城の侍女の服を着た女性が扉を少し開けた。騎士と女性が二言会話をした後に、騎士が部屋に入って行く。
里奈も慌てて彼の後ろについて部屋の中に入る。
「非人のリーナをお連れしました」
騎士は窓際のソファーに座っている女性の前に立ち頭を下げてから言った。
「ごくろうさまです。コーディー」
澄んだ心地よい声で女性が言った。
「はっ」
コーディーと言う名前の騎士はもう一度頭を下げた。そしてそのまま女性の座っているソファーの斜め後ろに立った。
コーディーさまの他にも数人の騎士たちと数人の侍女たちがいた。
「メリーナさまの御前だ。頭が高いぞ」
いきなり呼び出して、知らない場所に連れてこられて、挙句の果てに『非人』のリーナって紹介されて『ずがいがたかい』って! 目元が熱くなった。涙を流したくないから唇を強く噛んで頭を下げた。
コーディーさまの理不尽な態度にも頭にきたけれど、それより目の前にいる女性の存在を知って悔しかった。
ベルベットのソファーの真ん中に行儀よく座る女性が声を発しなかったら、人間の頭身のビスク・ドールと勘違いしただろう。
陶磁器で造られたような顔は色白でうっすらと染まる頬の赤みとぷっくらとサクランボのようにみずみずしい唇の紅色が栄えている。
形のよい卵型の顔を鮮やかなウエーブがかった金髪が柔らかく縁取っている。若葉のようなエメラルドグリーンの瞳は大きく、鼻も眉毛も口もすべて完璧な位置にあった。
エメラルドグリーンの瞳と同じドレスから彼女の血管が浮くような細い腕が出ている。全身がきゅっと細く完璧だった。彼女は神さまが端正に造った人形のように美しい。
この人がレイーシャさまの側室のメリーナさまなんだ。
「コーディーやめなさい。リーナさんはわたくしのお客さまよ。
リーナさんもそこに立っていないで、そこに座ってお話をしましょう」
里奈はハッと頭をあげたら、メリーナさまがにっこり笑って彼女の前の席をすすめてくれた。
里奈は敗北感と罪悪感でいっぱいになった。
「不躾に呼び出してごめんなさい。そしてコーディーのことも許してくださいな。コーディーはわたくしの父方の従兄弟で幼いころからともに育って、わたくしのことになると非常に厳しくなるのです。
失礼、まだ自己紹介をしていませんでしたね。
わたくしはルデェル辺境伯の長女のメリーナ・ルデェルですわ」
メリーナさんがニコニコしながら紹介した。里奈は「リーナです」と頭をペコリと下げた。
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