春画を売ったら王子たちに食べられた

四季

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(フカフカと温かい毛布……って、ここどこ?)

 里奈がガバッと上半身を起こそうとしたが体が拘束されて動かない。

「おはよう、リーナ」『チュッ』

 朝から男性フェルモンたっぷりの挨拶を耳元で囁かれた。

「あっ、ふぁ、はぁ、お、おはようございます」
「私には朝の口付けはないのか?」

「えっ、えっ」

 レイーシャさまのキャラ、一体どうしたの?

「仕方ない、リーナが私に慣れるまで私からしよう」
『クチュ、くちゅ、くちゅ』

「…ふっ、ぁぁ……」
  
 里奈の回復して満タンになっているはずのエナジーが半分に減った。

「ああ、これ以上していたら、一日中ベットにいそうだ。
 リーナ、兄上たちから呼び出しがあり、私はすぐに出かけないといけない。リーナは私が戻って来るまでここでゆっくりしてておくれ。
 
 朝食は用意しててもらうよ」

 レイーシャさまがもう一度里奈にキスをして、続きの部屋に消えた。

 里奈も洋服を着ようと辺りを見渡した。里奈の服は窓際にあるソファーに無造作にあった。レイーシャさまや他の人が来ないうちに、さっさと着替える。

 行為の後にレイーシャさまが「クリーン」の魔法を使っていたから、お風呂に入らなくても大丈夫そうだった。

「まだ寝ていてよかったのに」

 隣の部屋から戻って着たレイーシャさまは、今朝もきっちりと騎士服を着ている。

「では、行ってくるよ」『チュッ』

 里奈を抱きしめて額にキスをした。

 レイーシャさまが部屋を出てすぐに、部屋の外で待機していた使用人たちとなにか話していた。

 レイーシャさまの部屋を出て行くと、部屋に数人の侍女たちが入って来た。そして部屋の片付けをはじめてベットのシーツを取り外した。

「あ、あの?」

 近くにいる侍女に話しかけたけれど、里奈の方を見ることなくスルーされた。

「あ、あの、洗面所はどこですか?」

 だから部屋にいる一番年配の女性に尋ねたら、無言のまま続き部屋の一つに案内してくれた。

「はあ~」

 洗面所に一人になると、今までの緊張感が一気にほぐれた。
 このまま本当にレイーシャさまの部屋にいていいのだろうか。
 里奈は水道の水で顔を洗おうとして、はっとする。里奈は魔力がゼロだから、水道の水を出せない。いつもハンナお母さんやミイシャ、その他の時は他の非人の仲間が出してくれる。一応彼女たちは魔力を少量だが保持していて、魔石に魔力を与えるくらいはできる。

「あ、あの! 水を出してもらえませんか?」

 寝室に戻って、近くにいた侍女に声をかけた。

「これだから非人は……。わたくしたちの仕事内容には、水出しと言う項目はありませんのよ」

 と一人の侍女が言うと、他の侍女たちも「ほっほっほ」と笑って仕事を始めた。

(どうしよう……)

 魔力がないから最低限の生活ができない。

「あっ! ハンナお母さん!」

 また朝帰りだ。ハンナお母さんが心配している。里奈は急いでレイーシャさまの部屋を出た。もちろん里奈を止める人は誰もいない。

 レイーシャさまの居館の廊下の端っこを急ぎ足で進む。すれ違う人たちは、下女の服を着ている里奈に目も止めない。

 入り口が見えたころ、辺りが騒がしかった。

 数人の使用人たちが廊下の両脇に寄って頭を下げた。
 
 偉い人が通るのかも。

 里奈も同じように人影に隠れるようにして頭を下げて、偉い人が通るのを待った。

「ミイシャ!」

「あっ!」

 懐かしい声がして頭を上げる。もう数日経ったから彼の声を覚えていると思わなかった。

 里奈が顔を上げると、彼女の元へ近づいて来るレオンの顔が歓喜に変わる。

「探した。やっと会えた」

 里奈がなにかを言おうとする前に、抱きつかれた。

「れ、レオン?」

(どうして? 私は一回だけの通りすがりの娼婦でしょ? どうして私を探しているの? ま、まさか……お金)

 きっと里奈にきちんと支払いをしていないことが、王族として心苦しかったのかもしれない。

「ミイシャ、なぜあの日消えたのだ?」

 拘束の腕が緩んだと思ったら、壁に背を当てた形で彼に捕獲される。里奈の顔を見下ろす形で、レオンは片手を壁に添えて里奈の言葉を待っている。

 いわゆる「壁ドン」一生お目にかからないと思っていた、エロ漫画でも必ず一回は登場する「壁ドン」。

 レオンの真剣な顔よりも、今は「壁ドン」を経験して気持ちが舞い上がっていた。

「私……」

「シーオン兄上! どうなされました?」

 サーっと里奈の顔から血の気が引いていく。
 レイーシャさまが「シーオン兄上」と呼んでいる人は目の前の、「レオン」だ。
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