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◇
村を出発する時に、ほとんどの村人たちが見送りに来ていた。
村人たちはハンナお母さんや里奈に対して友好的だったから、村の生活は心地よかった。まあ、マーシャさんとマレーナの取り巻きたちは違ったけれど。
「ハンナ、綺麗だよ」
ハンナお母さんのお兄さんがハンナお母さんに抱きつこうとしたけれど、せっかくの服が汚れたらいけないね、と言った。
「お兄ちゃん、また会いに来るわ」
ハンナお母さんはお兄さんに抱きついて言った。本当にどうしてあんないい人の嫁がマーシャさんなんだろう。そして、娘はよいお父さんの性格を何一つ遺伝していないのだろう。
「ハンナ、あなたの姪も一緒に連れて行きなさい!」
ずかずかとハンナさんとお兄さんの間にマーシャさんが割り込んで命令した。里奈の腕の中にいたピコピコが殺気を持ったので「大丈夫」とモフモフしながらなだめる。
じゃないと、ピコピコの殺気を感じた騎士たちが一斉に構えてヤバかった。
「マレーナ嬢はすぐに結婚式をあげると聞いが、なぜ一緒に行くのだ?」
騎士や側近たちと打ち合わせをしていたシーオンさまが、返事に困っているハンナお母さんに近づき尋ねた。
「そ、それは、娘はいままでこの村の外に一度も出たことがないから、ちょうどいい機会だと思ったのです。
こうして叔母と従姉妹がいることですし、シーオン殿下の保護も受けれるので、母親としてぜひ娘にはいろいろよい経験をしてもらいと思うのですわ」
どこからそんな理由を考えられるのか不思議だ。はっきり言って、シーオン殿下にお手付きされたいだけじゃん。
「もうすぐ嫁がれるので、やはり娘さんは実家にいて母親に甘えるべきだ」
「いえ、私はぜひシーオン殿下の元でいろいろ学びたいと思っています」
すごく気合の入った恰好をしているマレーナが、両手を胸に組んでキラキラとシーオンさまを見上げて言った。
「婚約おめでとう。私の妃が身重なので結婚式には出席でないが、そうだな祝い金は、そうだ、ハンナお母さんに借りたと言う支度金を私の方から彼女に返しておこう」
「えっ?」
マレーナじゃなくても、その場にいた里奈もシーオンさまが急にそんなことを言ってびっくりしいた。
「そうそう、私の妃リーナとハンナお母さんの小屋を定期的に管理する者を雇うために王宮から私の部下を数人派遣する予定だ。
村長、そのつもりでおいてくれ」
近くにいる村長が額の汗びっしょりとしながら、シーオン殿下に尋ねた。
「あの、リーナさまの小屋は私どもできちんと管理しますので、わざわざ殿下のお手をわずらわせるわけにはいきません」
「そうか……しかし、私にはいくつも納得できないことばかりなのだ。ハンナお母さんの義姉はよくお金がないと言って、彼女にお金を借りに来る。
村人たちはそんなに生活に困っていると知らなかったゆえ、今後のためにも部下たちにいろいろと調べてもらい税についてもきちんとした方がいいと思う」
シーオンさまの言葉を聞いて、村長さんの顔色が真っ青になった。村長さんはマーシャさんを一瞬睨んだ。
「一度きちんと部下たちに調べてもらえば、いかにあなたの村長として働きが素晴らしいかきちんと評価されてよろしいではないか。しっかりと村長の仕事をしておれば、その分報酬が上がるだろう。
まあ、そうではなければ、他の者を村長にしないといけないがな」
村長がどんな人か分からないけれど、マレーナの婚約者は嫌な奴だ。
「そうそう、いままで村長は世襲制だったが、ろくでもない村長が各地で出ているから、今度、能力のある者が村長になるように法が変更されることになった。
みなの者ももし村長になりたい者は、勉学に励むように」
とシーオンさまが爆弾発言を落とした。
「ちょ、ちょっと、それはどう言うことですか? 私の婚約者は次期村長ではないのですか?」
「彼が優秀だったら村長の試験に通るだろう。ではそれそろ行くか」
マレーナもマーシャさまも真っ青な顔をしている。もちろんこの場には村長の息子はいない。彼は怠け者だからまだ寝ているのだろう。
「ま、待って、ハンナおばさん、わ、私も連れて行って。やっぱりリーナも家族が近くにいた方が安心して出産できるわ」
マレーナが馬車に乗ろうとしたハンナお母さんの腕を掴んだ。
「ここまで言うつもりはなかったが、リーナが私の妻になったら、ハンナお母さんは私の義母として大切にするが、その他の者は身内だと思わない。
私は王族だ。王族の身内として好き勝手なことをすることがないように。もし私のことを身内だと言って、なにか己れの利益を得ようとすれば罰する。
リーナやハンナお母さんの面会は本人が望んだ時だけだ」
「あ、あの、シーオンさま。ハンナお母さんはお兄さんに会いたいと思っています」
なんか不機嫌モードになっているシーオンさまに声をかけた。
「ああ。ハンナお母さんの兄だけ、ハンナお母さんにいつでも会う許可を出そう」
「あ、ありがとうございます。シーオン殿下、どうかハンナを幸せにしてください」
ハンナお母さんのお兄さんがシーオン殿下に深く頭を下げた。
「おまえは、持った妻と娘が悪かったな。もし、妻と娘の望みではなく、おまえ自身困ったことがあれば私のところへ来い」
ハンナお母さんは涙を流していた。里奈はシーオン殿下に支えられて、馬車に乗った。
村を出発する時に、ほとんどの村人たちが見送りに来ていた。
村人たちはハンナお母さんや里奈に対して友好的だったから、村の生活は心地よかった。まあ、マーシャさんとマレーナの取り巻きたちは違ったけれど。
「ハンナ、綺麗だよ」
ハンナお母さんのお兄さんがハンナお母さんに抱きつこうとしたけれど、せっかくの服が汚れたらいけないね、と言った。
「お兄ちゃん、また会いに来るわ」
ハンナお母さんはお兄さんに抱きついて言った。本当にどうしてあんないい人の嫁がマーシャさんなんだろう。そして、娘はよいお父さんの性格を何一つ遺伝していないのだろう。
「ハンナ、あなたの姪も一緒に連れて行きなさい!」
ずかずかとハンナさんとお兄さんの間にマーシャさんが割り込んで命令した。里奈の腕の中にいたピコピコが殺気を持ったので「大丈夫」とモフモフしながらなだめる。
じゃないと、ピコピコの殺気を感じた騎士たちが一斉に構えてヤバかった。
「マレーナ嬢はすぐに結婚式をあげると聞いが、なぜ一緒に行くのだ?」
騎士や側近たちと打ち合わせをしていたシーオンさまが、返事に困っているハンナお母さんに近づき尋ねた。
「そ、それは、娘はいままでこの村の外に一度も出たことがないから、ちょうどいい機会だと思ったのです。
こうして叔母と従姉妹がいることですし、シーオン殿下の保護も受けれるので、母親としてぜひ娘にはいろいろよい経験をしてもらいと思うのですわ」
どこからそんな理由を考えられるのか不思議だ。はっきり言って、シーオン殿下にお手付きされたいだけじゃん。
「もうすぐ嫁がれるので、やはり娘さんは実家にいて母親に甘えるべきだ」
「いえ、私はぜひシーオン殿下の元でいろいろ学びたいと思っています」
すごく気合の入った恰好をしているマレーナが、両手を胸に組んでキラキラとシーオンさまを見上げて言った。
「婚約おめでとう。私の妃が身重なので結婚式には出席でないが、そうだな祝い金は、そうだ、ハンナお母さんに借りたと言う支度金を私の方から彼女に返しておこう」
「えっ?」
マレーナじゃなくても、その場にいた里奈もシーオンさまが急にそんなことを言ってびっくりしいた。
「そうそう、私の妃リーナとハンナお母さんの小屋を定期的に管理する者を雇うために王宮から私の部下を数人派遣する予定だ。
村長、そのつもりでおいてくれ」
近くにいる村長が額の汗びっしょりとしながら、シーオン殿下に尋ねた。
「あの、リーナさまの小屋は私どもできちんと管理しますので、わざわざ殿下のお手をわずらわせるわけにはいきません」
「そうか……しかし、私にはいくつも納得できないことばかりなのだ。ハンナお母さんの義姉はよくお金がないと言って、彼女にお金を借りに来る。
村人たちはそんなに生活に困っていると知らなかったゆえ、今後のためにも部下たちにいろいろと調べてもらい税についてもきちんとした方がいいと思う」
シーオンさまの言葉を聞いて、村長さんの顔色が真っ青になった。村長さんはマーシャさんを一瞬睨んだ。
「一度きちんと部下たちに調べてもらえば、いかにあなたの村長として働きが素晴らしいかきちんと評価されてよろしいではないか。しっかりと村長の仕事をしておれば、その分報酬が上がるだろう。
まあ、そうではなければ、他の者を村長にしないといけないがな」
村長がどんな人か分からないけれど、マレーナの婚約者は嫌な奴だ。
「そうそう、いままで村長は世襲制だったが、ろくでもない村長が各地で出ているから、今度、能力のある者が村長になるように法が変更されることになった。
みなの者ももし村長になりたい者は、勉学に励むように」
とシーオンさまが爆弾発言を落とした。
「ちょ、ちょっと、それはどう言うことですか? 私の婚約者は次期村長ではないのですか?」
「彼が優秀だったら村長の試験に通るだろう。ではそれそろ行くか」
マレーナもマーシャさまも真っ青な顔をしている。もちろんこの場には村長の息子はいない。彼は怠け者だからまだ寝ているのだろう。
「ま、待って、ハンナおばさん、わ、私も連れて行って。やっぱりリーナも家族が近くにいた方が安心して出産できるわ」
マレーナが馬車に乗ろうとしたハンナお母さんの腕を掴んだ。
「ここまで言うつもりはなかったが、リーナが私の妻になったら、ハンナお母さんは私の義母として大切にするが、その他の者は身内だと思わない。
私は王族だ。王族の身内として好き勝手なことをすることがないように。もし私のことを身内だと言って、なにか己れの利益を得ようとすれば罰する。
リーナやハンナお母さんの面会は本人が望んだ時だけだ」
「あ、あの、シーオンさま。ハンナお母さんはお兄さんに会いたいと思っています」
なんか不機嫌モードになっているシーオンさまに声をかけた。
「ああ。ハンナお母さんの兄だけ、ハンナお母さんにいつでも会う許可を出そう」
「あ、ありがとうございます。シーオン殿下、どうかハンナを幸せにしてください」
ハンナお母さんのお兄さんがシーオン殿下に深く頭を下げた。
「おまえは、持った妻と娘が悪かったな。もし、妻と娘の望みではなく、おまえ自身困ったことがあれば私のところへ来い」
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