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◇
シーオンさまが言っていたように、王都にある別邸はこじんまりとして住みやすい館だった。
シーオンさまは隠された非人の書類が教会で見つかり、その対処で忙しい。でも毎晩屋敷に戻って来て里奈に魔力回復してくれる。
安静期に入った途端に容赦なくなったのは気のせいだよね……。
レイーシャさまとは一度も会っていないが、噂ではメリーナさまとは完全に別れたらしい。メリーナさまは彼と別れて悲しみに耽って社交界に一度も顔を出していないらしい。
レイーシャさまのことを考えると胸がズキンとしたけれど、里奈にはシーオンさまがいると自分に言い聞かせた。シーオンさまはレイーシャさまが里奈の元に戻って来ると言っていたけど、どうなるか分からない。
里奈もシーオンさまに二人のことを聞くことをためらって何も聞いていないし、舘の使用人たちはきちんと教育されており噂話をする人は誰もいなかった。
だから里奈は絵を描いたり庭を散歩したりとのんびりと過ごしていた。ハンナお母さんは生まれてくる赤ちゃんの着ぐるみをせっせと縫っている。ハンナお母さんにとって生まれてくる赤ちゃんは王子じゃなくて、自分の孫だった。
いまだに赤ちゃんの性別が男の子とは信じられないけれど、王族の魔力を持っているから絶対に王子なんだって。
ハンナお母さんも里奈も非人の仲間には連絡をしていない。もし二人の存在がまた貴族たちに知られてなにかされるのは赤ちゃんのためにも避けないといけない。
「リーナ、明日、王宮に行くことになった。裁判ではないが、メリーナ嬢の実家ルデェル辺境伯について議論されることになり、兄上にリーナにもその場にいて欲しいと言われた。
そしてこの機会にリーナが俺の子どもを妊娠していると告げる」
「……うん、わかった」
メリーナさまといつか決着をつけないといけないと思っていた。
「なにがあっても俺はリーナを守るから心配するな」
と、シーオンさまの胸に抱かれて安心したのはつかの間で……そのままベットへ連れて行かれた。
◇
ゆったりとフレアのあるドレスを着ているからお腹の膨らみは見えない。足元もヒールのないスリッパ系の靴を履いているから、ますますシーオンさまの横にいると大人と子どもに見える。
謁見の間には玉座に座っているジョンリー陛下より一段下の席にシーオンさまと並んで座っている。
レイーシャさまはジョンリー陛下の横に立っている。前に見た時より痩せていて顔色が悪くて心配になった。レイーシャさまはシーオンさまに腰を支えられて部屋に入ってきた里奈をずっと見ていた。
里奈と目が合っても目を逸らさずに、じーっと里奈を見ている。感情を表さない顔だったが、彼のコバルトブルーの目は悲しそうだった。
形式な挨拶の後に、ジョンリー陛下の側近の一人が今回の召集についていくつか説明をはじめた。王家と非人の関係について説明された。
部屋にいるのは、中級貴族以上の者たちで、非人と魔力の大きい者との間では子どもが妊娠しやすく、もちろん子どもも魔力が大きい子どもが生まれると言う説明をした途端に騒ぎが大きくなった。
「一部の貴族の私利私欲のために非人の重要性が秘蔵され、王家、または多くの上級貴族が少子問題を抱えている」
数人の人たちが頭を大きく上下に動かして同意の意を示している。
「ルデェル辺境伯の聞きたいことがある」
メリーナさまの父親は、年をとっていたが彼女に似て端麗な容姿をしており若かりし頃も、今もかなりモテるだろう。
「はい、私が答えれる範囲でしたら」
ルデェル辺境伯は、ジョンリー陛下や王族の前なのに余裕な態度だ。第二の王族で、権力が強いからだろう。
「ルデェル辺境伯は、なんらかの汚名を受けて魔石鉱山に送られた非人たちを密かに匿っているそうだな」
「ええ、王家は非人を保護するようにと先祖代々言い伝えられておりますゆえ。だから、王城で本来ならきちんと保護されるはずの非人たちは、正当な扱いをされておりませんでした。
さらに罪人にされ魔石鉱山で娼婦の扱いをされる非人を私は助けたのです」
メリーナさまのお父様はとてもいい人だったんだ。
「ほお、助けた、保護したと言うわりには、ルデェル辺境領地には非人がほとんどいないのお、不思議なことだ」
ジョンリー陛下がニヤリと笑って言った。
「やはり非人には過酷な土地のようで、馴染まずに命を落とした者たちが多くいましたゆえ」
「そうか……ところで、ルディル辺境伯の男子たちの母親は非人だそうだな」
「さて、どういうことでしょう? 数人は我が妻の子どもですが、他は側室たちの子どもです」
「そうか、ルデェル辺境伯は子沢山だな。そちの親族も魔力の高い子どもばかりだ。羨ましいことだのう」
「恐れ入ります」
しばらくジョンリー陛下とルデェル辺境伯はニコニコしながら会話をしていた。
「ところでメリーナ嬢はどうだ?」
「ええ、おかげさまで少し回復しております。しかし、愛するレイーシャ殿下と別れ衰弱しており、領地で休養しております」
お可愛そうに、と言う言葉があちらこちらでした。そして数人の人たちは里奈の方を見てヒソヒソと話をしている。
「そうそう、みなの者の伝えることがある。このリーナ嬢がシーオンの子どもを妊娠しておる」
ほとんどの者たちはすでに知っているようで、喜んでいる者もいたが、ほとんどは忌々しい顔で里奈を睨んでいた。後者はきっと自分たちの娘を王子たちに差し出した者たちだろう。
「先日、リーナがメリーナ嬢に殺害されそうになり、そこでおもしろいことが聞けたのだが」
「陛下、先ほども言ったようにメリーナはレイーシャ殿下と離縁して療養中です。本当はこの場で言いたくなかったのですが、メリーナは精神的にも弱っており、突拍子もないことを言ったりします。
殺害は本人の意志ではなく、赤子を妊娠したリーナ嬢を羨ましく思ってしてしまったことです。
メリーナも長年レイーシャ殿下とのお子を望んでおりました。
だからどうぞ長年、ジョンリー陛下の側室として、さらにレイーシャ殿下の側室として仕えていた娘に寛大な慈悲をお与えください」
ルデェル辺境伯は娘を案じる父親のように涙声で言った途端に、彼に同情する人たちもジョンリー陛下に懇願した。
シーオンさまが言っていたように、王都にある別邸はこじんまりとして住みやすい館だった。
シーオンさまは隠された非人の書類が教会で見つかり、その対処で忙しい。でも毎晩屋敷に戻って来て里奈に魔力回復してくれる。
安静期に入った途端に容赦なくなったのは気のせいだよね……。
レイーシャさまとは一度も会っていないが、噂ではメリーナさまとは完全に別れたらしい。メリーナさまは彼と別れて悲しみに耽って社交界に一度も顔を出していないらしい。
レイーシャさまのことを考えると胸がズキンとしたけれど、里奈にはシーオンさまがいると自分に言い聞かせた。シーオンさまはレイーシャさまが里奈の元に戻って来ると言っていたけど、どうなるか分からない。
里奈もシーオンさまに二人のことを聞くことをためらって何も聞いていないし、舘の使用人たちはきちんと教育されており噂話をする人は誰もいなかった。
だから里奈は絵を描いたり庭を散歩したりとのんびりと過ごしていた。ハンナお母さんは生まれてくる赤ちゃんの着ぐるみをせっせと縫っている。ハンナお母さんにとって生まれてくる赤ちゃんは王子じゃなくて、自分の孫だった。
いまだに赤ちゃんの性別が男の子とは信じられないけれど、王族の魔力を持っているから絶対に王子なんだって。
ハンナお母さんも里奈も非人の仲間には連絡をしていない。もし二人の存在がまた貴族たちに知られてなにかされるのは赤ちゃんのためにも避けないといけない。
「リーナ、明日、王宮に行くことになった。裁判ではないが、メリーナ嬢の実家ルデェル辺境伯について議論されることになり、兄上にリーナにもその場にいて欲しいと言われた。
そしてこの機会にリーナが俺の子どもを妊娠していると告げる」
「……うん、わかった」
メリーナさまといつか決着をつけないといけないと思っていた。
「なにがあっても俺はリーナを守るから心配するな」
と、シーオンさまの胸に抱かれて安心したのはつかの間で……そのままベットへ連れて行かれた。
◇
ゆったりとフレアのあるドレスを着ているからお腹の膨らみは見えない。足元もヒールのないスリッパ系の靴を履いているから、ますますシーオンさまの横にいると大人と子どもに見える。
謁見の間には玉座に座っているジョンリー陛下より一段下の席にシーオンさまと並んで座っている。
レイーシャさまはジョンリー陛下の横に立っている。前に見た時より痩せていて顔色が悪くて心配になった。レイーシャさまはシーオンさまに腰を支えられて部屋に入ってきた里奈をずっと見ていた。
里奈と目が合っても目を逸らさずに、じーっと里奈を見ている。感情を表さない顔だったが、彼のコバルトブルーの目は悲しそうだった。
形式な挨拶の後に、ジョンリー陛下の側近の一人が今回の召集についていくつか説明をはじめた。王家と非人の関係について説明された。
部屋にいるのは、中級貴族以上の者たちで、非人と魔力の大きい者との間では子どもが妊娠しやすく、もちろん子どもも魔力が大きい子どもが生まれると言う説明をした途端に騒ぎが大きくなった。
「一部の貴族の私利私欲のために非人の重要性が秘蔵され、王家、または多くの上級貴族が少子問題を抱えている」
数人の人たちが頭を大きく上下に動かして同意の意を示している。
「ルデェル辺境伯の聞きたいことがある」
メリーナさまの父親は、年をとっていたが彼女に似て端麗な容姿をしており若かりし頃も、今もかなりモテるだろう。
「はい、私が答えれる範囲でしたら」
ルデェル辺境伯は、ジョンリー陛下や王族の前なのに余裕な態度だ。第二の王族で、権力が強いからだろう。
「ルデェル辺境伯は、なんらかの汚名を受けて魔石鉱山に送られた非人たちを密かに匿っているそうだな」
「ええ、王家は非人を保護するようにと先祖代々言い伝えられておりますゆえ。だから、王城で本来ならきちんと保護されるはずの非人たちは、正当な扱いをされておりませんでした。
さらに罪人にされ魔石鉱山で娼婦の扱いをされる非人を私は助けたのです」
メリーナさまのお父様はとてもいい人だったんだ。
「ほお、助けた、保護したと言うわりには、ルデェル辺境領地には非人がほとんどいないのお、不思議なことだ」
ジョンリー陛下がニヤリと笑って言った。
「やはり非人には過酷な土地のようで、馴染まずに命を落とした者たちが多くいましたゆえ」
「そうか……ところで、ルディル辺境伯の男子たちの母親は非人だそうだな」
「さて、どういうことでしょう? 数人は我が妻の子どもですが、他は側室たちの子どもです」
「そうか、ルデェル辺境伯は子沢山だな。そちの親族も魔力の高い子どもばかりだ。羨ましいことだのう」
「恐れ入ります」
しばらくジョンリー陛下とルデェル辺境伯はニコニコしながら会話をしていた。
「ところでメリーナ嬢はどうだ?」
「ええ、おかげさまで少し回復しております。しかし、愛するレイーシャ殿下と別れ衰弱しており、領地で休養しております」
お可愛そうに、と言う言葉があちらこちらでした。そして数人の人たちは里奈の方を見てヒソヒソと話をしている。
「そうそう、みなの者の伝えることがある。このリーナ嬢がシーオンの子どもを妊娠しておる」
ほとんどの者たちはすでに知っているようで、喜んでいる者もいたが、ほとんどは忌々しい顔で里奈を睨んでいた。後者はきっと自分たちの娘を王子たちに差し出した者たちだろう。
「先日、リーナがメリーナ嬢に殺害されそうになり、そこでおもしろいことが聞けたのだが」
「陛下、先ほども言ったようにメリーナはレイーシャ殿下と離縁して療養中です。本当はこの場で言いたくなかったのですが、メリーナは精神的にも弱っており、突拍子もないことを言ったりします。
殺害は本人の意志ではなく、赤子を妊娠したリーナ嬢を羨ましく思ってしてしまったことです。
メリーナも長年レイーシャ殿下とのお子を望んでおりました。
だからどうぞ長年、ジョンリー陛下の側室として、さらにレイーシャ殿下の側室として仕えていた娘に寛大な慈悲をお与えください」
ルデェル辺境伯は娘を案じる父親のように涙声で言った途端に、彼に同情する人たちもジョンリー陛下に懇願した。
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