春画を売ったら王子たちに食べられた

四季

文字の大きさ
47 / 49

5ー5

しおりを挟む


 シーオンさまが言っていたように、王都にある別邸はこじんまりとして住みやすい館だった。
 シーオンさまは隠された非人の書類が教会で見つかり、その対処で忙しい。でも毎晩屋敷に戻って来て里奈に魔力回復してくれる。
 安静期に入った途端に容赦なくなったのは気のせいだよね……。
 レイーシャさまとは一度も会っていないが、噂ではメリーナさまとは完全に別れたらしい。メリーナさまは彼と別れて悲しみに耽って社交界に一度も顔を出していないらしい。
 
 レイーシャさまのことを考えると胸がズキンとしたけれど、里奈にはシーオンさまがいると自分に言い聞かせた。シーオンさまはレイーシャさまが里奈の元に戻って来ると言っていたけど、どうなるか分からない。

 里奈もシーオンさまに二人のことを聞くことをためらって何も聞いていないし、舘の使用人たちはきちんと教育されており噂話をする人は誰もいなかった。

 だから里奈は絵を描いたり庭を散歩したりとのんびりと過ごしていた。ハンナお母さんは生まれてくる赤ちゃんの着ぐるみをせっせと縫っている。ハンナお母さんにとって生まれてくる赤ちゃんは王子じゃなくて、自分の孫だった。

 いまだに赤ちゃんの性別が男の子とは信じられないけれど、王族の魔力を持っているから絶対に王子なんだって。
 ハンナお母さんも里奈も非人の仲間には連絡をしていない。もし二人の存在がまた貴族たちに知られてなにかされるのは赤ちゃんのためにも避けないといけない。
 
「リーナ、明日、王宮に行くことになった。裁判ではないが、メリーナ嬢の実家ルデェル辺境伯について議論されることになり、兄上にリーナにもその場にいて欲しいと言われた。
 そしてこの機会にリーナが俺の子どもを妊娠していると告げる」

「……うん、わかった」

 メリーナさまといつか決着をつけないといけないと思っていた。

「なにがあっても俺はリーナを守るから心配するな」

 と、シーオンさまの胸に抱かれて安心したのはつかの間で……そのままベットへ連れて行かれた。



 ゆったりとフレアのあるドレスを着ているからお腹の膨らみは見えない。足元もヒールのないスリッパ系の靴を履いているから、ますますシーオンさまの横にいると大人と子どもに見える。

 謁見の間には玉座に座っているジョンリー陛下より一段下の席にシーオンさまと並んで座っている。
 レイーシャさまはジョンリー陛下の横に立っている。前に見た時より痩せていて顔色が悪くて心配になった。レイーシャさまはシーオンさまに腰を支えられて部屋に入ってきた里奈をずっと見ていた。
 里奈と目が合っても目を逸らさずに、じーっと里奈を見ている。感情を表さない顔だったが、彼のコバルトブルーの目は悲しそうだった。

 形式な挨拶の後に、ジョンリー陛下の側近の一人が今回の召集についていくつか説明をはじめた。王家と非人の関係について説明された。
 部屋にいるのは、中級貴族以上の者たちで、非人と魔力の大きい者との間では子どもが妊娠しやすく、もちろん子どもも魔力が大きい子どもが生まれると言う説明をした途端に騒ぎが大きくなった。

「一部の貴族の私利私欲のために非人の重要性が秘蔵され、王家、または多くの上級貴族が少子問題を抱えている」

 数人の人たちが頭を大きく上下に動かして同意の意を示している。
 

「ルデェル辺境伯の聞きたいことがある」

 メリーナさまの父親は、年をとっていたが彼女に似て端麗な容姿をしており若かりし頃も、今もかなりモテるだろう。

「はい、私が答えれる範囲でしたら」

 ルデェル辺境伯は、ジョンリー陛下や王族の前なのに余裕な態度だ。第二の王族で、権力が強いからだろう。

「ルデェル辺境伯は、なんらかの汚名を受けて魔石鉱山に送られた非人たちを密かに匿っているそうだな」

「ええ、王家は非人を保護するようにと先祖代々言い伝えられておりますゆえ。だから、王城で本来ならきちんと保護されるはずの非人たちは、正当な扱いをされておりませんでした。
 さらに罪人にされ魔石鉱山で娼婦の扱いをされる非人を私は助けたのです」

 メリーナさまのお父様はとてもいい人だったんだ。

「ほお、助けた、保護したと言うわりには、ルデェル辺境領地には非人がほとんどいないのお、不思議なことだ」

 ジョンリー陛下がニヤリと笑って言った。

「やはり非人には過酷な土地のようで、馴染まずに命を落とした者たちが多くいましたゆえ」

「そうか……ところで、ルディル辺境伯の男子たちの母親は非人だそうだな」

「さて、どういうことでしょう? 数人は我が妻の子どもですが、他は側室たちの子どもです」

「そうか、ルデェル辺境伯は子沢山だな。そちの親族も魔力の高い子どもばかりだ。羨ましいことだのう」

「恐れ入ります」

 しばらくジョンリー陛下とルデェル辺境伯はニコニコしながら会話をしていた。

「ところでメリーナ嬢はどうだ?」

「ええ、おかげさまで少し回復しております。しかし、愛するレイーシャ殿下と別れ衰弱しており、領地で休養しております」

 お可愛そうに、と言う言葉があちらこちらでした。そして数人の人たちは里奈の方を見てヒソヒソと話をしている。

「そうそう、みなの者の伝えることがある。このリーナ嬢がシーオンの子どもを妊娠しておる」

 ほとんどの者たちはすでに知っているようで、喜んでいる者もいたが、ほとんどは忌々しい顔で里奈を睨んでいた。後者はきっと自分たちの娘を王子たちに差し出した者たちだろう。

「先日、リーナがメリーナ嬢に殺害されそうになり、そこでおもしろいことが聞けたのだが」

「陛下、先ほども言ったようにメリーナはレイーシャ殿下と離縁して療養中です。本当はこの場で言いたくなかったのですが、メリーナは精神的にも弱っており、突拍子もないことを言ったりします。
 殺害は本人の意志ではなく、赤子を妊娠したリーナ嬢を羨ましく思ってしてしまったことです。
 メリーナも長年レイーシャ殿下とのお子を望んでおりました。
 だからどうぞ長年、ジョンリー陛下の側室として、さらにレイーシャ殿下の側室として仕えていた娘に寛大な慈悲をお与えください」

 ルデェル辺境伯は娘を案じる父親のように涙声で言った途端に、彼に同情する人たちもジョンリー陛下に懇願した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜

文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。 花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。 堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。 帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは? 異世界婚活ファンタジー、開幕。

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

処理中です...