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愛しい人を前にして
美しい色打掛を着た一花さんと変わるがわる写真を撮る尚孝さんたちを見守り、落ち着いたところで会長が一花さんに食事をさせると席に連れていった。
「櫻葉会長も一花くんと一緒に写真が撮れて嬉しそうでしたね」
「ええ。尚孝さんもでしょう? とても嬉しそうでしたよ」
私の言葉に尚孝さんはうっすらと涙を浮かべて一花さんに視線を送った。
「数ヶ月前の一花くんの状態を思ったら、この日を迎えられたことが本当に奇跡で……。一花くんの頑張りをずっとみていたから余計に思いが込み上げてきて……」
「この奇跡を起こしたのは、尚孝さんの頑張りもあってこそですよ」
一花さん自身のやる気ももちろん必要だったが、尚孝さんが一花さんのために時間をかけて綿密なリハビリを組んだからこその結果だ。
「今夜は二人でお祝いをしましょう。そして明日からは私だけの尚孝さんになってください」
私の言葉に、尚孝さんは嬉しそうに笑った。
その後、絢斗さんたちに声をかけられ尚孝さんは美しい花たちが集う場所に向かった。
私は尚孝さんがいつでも見える位置に移動しながら、安城たちとの会話に加わった。
一花さんも尚孝さんたちのところに移動してからは、昇くんの相談に耳を傾けていた。
結婚式が無事に終わり、彼の悩みは今日の宿泊について。
最近恋人に昇格した直純くんとの二人っきりで風呂に入ることについて悩みを告げられた。
父となった磯山先生からは手を出してはいけないと言われている。
まだ十四歳という年齢を考えたら、それは適正な指示だと言えるだろう。
たとえ昇くんが十八で成人していたとしても相手が未成年なら欲望のままに触れるのは許されることではない。
しかも直純くんは性的なことに関しての知識が小学生レベルだというのならそれは絶対に手を出してはいけない。
だが、会長をはじめ、医師免許をもつ人たちからは、一緒に風呂に入り、正確な知識を身につけさせることについてはおおむね賛成の声が出た。
なんせ、何も知らないのだ。
興奮して反応することも、射精することも何も知らない。
それがもし、一人の時になってしまったら、彼は不安でいっぱいになるだろう。
その不安を取り除くためにも正確な知識を恋人である昇くんから教えることはかなり重要だろう。
そのために多少なりとも触れる必要があるが、それは致し方ないことだ。
磯山先生も正確な知識を身につけさせることなら……ということで納得してくださったようだ。
欲望でいっぱいの男子高校生である昇くんにとっては何も触れられない以上に辛い事態にもなるかもしれないが、そこは我慢してもらうとしよう。あと四年の辛抱だ。
その間は彼の身体に触れるだけで己の欲は自分で発散するか、もしくは直純くんにうまく話をしてお互いに蜜を出す方向に向けられたらいい。
実際のところ、みんな昇くんには同情しているだろう。
愛しい人と出逢いながらも愛し合うまでに数年も我慢しなければいけないなんて。
私なら耐えられるかどうか……。
それでも実際そうなれば耐えるしかないのだが。
尚孝さんの全てを知った今となっては、絶対に耐えられる気がしない。
こう考えれば会長もこの数ヶ月よく耐えられたものだ。
まぁ、一花さんの場合は怪我の状態もあったから我慢もできたのだろうが、多分今夜は今までの分を取り戻すように濃密な夜になるだろう。
明日、朝には会長と一花さんを送って会長宅から尚孝さんと空港に向かうことになっているが、予定通りにいかないことも頭に入れておかないといけないな。いや、多分その可能性は十二分にありそうだ。
それでも決して尚孝さんとの予定は遅らせたりしない。
会長秘書としてやっていた実力をいかんなく発揮するとしよう。
ここが私の腕の見せ所だ。
そんなことを考えている間に、新たな花が尚孝さんたちのもとに加わった。
ブリーダーである甲斐さんの恋人、伊月さんだ。
美しい着物で現れた伊月さんの元に駆けていく甲斐さんはとても幸せそうな表情をなさっている。
じっくりと堪能したそうにしていたけれど、絢斗さんに伊月くんを取られてすぐに私たちの席に戻ってきた。
チラチラとあちらの様子が気になっている甲斐さんを見ていると、彼も私たちと同じなのだと思わされる。
さっきまでかなり冷静に昇くんの話にも答えていたのに、伊月さんが絡むとただの男だ。
愛しい人を前にすると、どうしようもなくなるのはみんなおなじなのだろうな。
思わず笑みをこぼしていると、突然尚孝さんたちの方から、
「賢吾!」
と呼ぶ声が聞こえた。
「櫻葉会長も一花くんと一緒に写真が撮れて嬉しそうでしたね」
「ええ。尚孝さんもでしょう? とても嬉しそうでしたよ」
私の言葉に尚孝さんはうっすらと涙を浮かべて一花さんに視線を送った。
「数ヶ月前の一花くんの状態を思ったら、この日を迎えられたことが本当に奇跡で……。一花くんの頑張りをずっとみていたから余計に思いが込み上げてきて……」
「この奇跡を起こしたのは、尚孝さんの頑張りもあってこそですよ」
一花さん自身のやる気ももちろん必要だったが、尚孝さんが一花さんのために時間をかけて綿密なリハビリを組んだからこその結果だ。
「今夜は二人でお祝いをしましょう。そして明日からは私だけの尚孝さんになってください」
私の言葉に、尚孝さんは嬉しそうに笑った。
その後、絢斗さんたちに声をかけられ尚孝さんは美しい花たちが集う場所に向かった。
私は尚孝さんがいつでも見える位置に移動しながら、安城たちとの会話に加わった。
一花さんも尚孝さんたちのところに移動してからは、昇くんの相談に耳を傾けていた。
結婚式が無事に終わり、彼の悩みは今日の宿泊について。
最近恋人に昇格した直純くんとの二人っきりで風呂に入ることについて悩みを告げられた。
父となった磯山先生からは手を出してはいけないと言われている。
まだ十四歳という年齢を考えたら、それは適正な指示だと言えるだろう。
たとえ昇くんが十八で成人していたとしても相手が未成年なら欲望のままに触れるのは許されることではない。
しかも直純くんは性的なことに関しての知識が小学生レベルだというのならそれは絶対に手を出してはいけない。
だが、会長をはじめ、医師免許をもつ人たちからは、一緒に風呂に入り、正確な知識を身につけさせることについてはおおむね賛成の声が出た。
なんせ、何も知らないのだ。
興奮して反応することも、射精することも何も知らない。
それがもし、一人の時になってしまったら、彼は不安でいっぱいになるだろう。
その不安を取り除くためにも正確な知識を恋人である昇くんから教えることはかなり重要だろう。
そのために多少なりとも触れる必要があるが、それは致し方ないことだ。
磯山先生も正確な知識を身につけさせることなら……ということで納得してくださったようだ。
欲望でいっぱいの男子高校生である昇くんにとっては何も触れられない以上に辛い事態にもなるかもしれないが、そこは我慢してもらうとしよう。あと四年の辛抱だ。
その間は彼の身体に触れるだけで己の欲は自分で発散するか、もしくは直純くんにうまく話をしてお互いに蜜を出す方向に向けられたらいい。
実際のところ、みんな昇くんには同情しているだろう。
愛しい人と出逢いながらも愛し合うまでに数年も我慢しなければいけないなんて。
私なら耐えられるかどうか……。
それでも実際そうなれば耐えるしかないのだが。
尚孝さんの全てを知った今となっては、絶対に耐えられる気がしない。
こう考えれば会長もこの数ヶ月よく耐えられたものだ。
まぁ、一花さんの場合は怪我の状態もあったから我慢もできたのだろうが、多分今夜は今までの分を取り戻すように濃密な夜になるだろう。
明日、朝には会長と一花さんを送って会長宅から尚孝さんと空港に向かうことになっているが、予定通りにいかないことも頭に入れておかないといけないな。いや、多分その可能性は十二分にありそうだ。
それでも決して尚孝さんとの予定は遅らせたりしない。
会長秘書としてやっていた実力をいかんなく発揮するとしよう。
ここが私の腕の見せ所だ。
そんなことを考えている間に、新たな花が尚孝さんたちのもとに加わった。
ブリーダーである甲斐さんの恋人、伊月さんだ。
美しい着物で現れた伊月さんの元に駆けていく甲斐さんはとても幸せそうな表情をなさっている。
じっくりと堪能したそうにしていたけれど、絢斗さんに伊月くんを取られてすぐに私たちの席に戻ってきた。
チラチラとあちらの様子が気になっている甲斐さんを見ていると、彼も私たちと同じなのだと思わされる。
さっきまでかなり冷静に昇くんの話にも答えていたのに、伊月さんが絡むとただの男だ。
愛しい人を前にすると、どうしようもなくなるのはみんなおなじなのだろうな。
思わず笑みをこぼしていると、突然尚孝さんたちの方から、
「賢吾!」
と呼ぶ声が聞こえた。
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