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番外編
そんな日が来れば……
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「磯山先生、ものすごく可愛い息子さんができましたね」
「そうだろう? 君が独り身なら是非にと薦めたいくらいに可愛い息子だよ」
お義父さんの手が僕の肩をぽんと叩く。
「えっ、そ、そんなっ、お義父さんっ、僕は」
突然のお義父さんの言葉に動揺した僕の顔が一気に熱くなる。
そんな僕を見て史紀さんのお相手さんは声をあげて笑った。
「ははっ。そんなすぐに断られたら傷つくなぁ」
「えっ、あ、すみません」
笑みを浮かべながらもそんなことを言われて僕が謝ると、お義父さんと史紀さんのお相手さんは二人で顔を見合わせて笑っていた。
「磯山先生、本当に可愛い息子さんですね。変な虫に引っかからないように気をつけてあげてください」
「そうだな。しっかりと守るとするよ」
なんだか二人で話しているようだけれど、テンパっている僕の耳にはうまく入ってこない。
「あの……」
「保。冗談だから気にしないでいいよ。ほら、好きなお菓子を選んで」
さっと話題を変えられてどうしていいか反応に困ってしまったけれど、どうやら僕が冗談に過剰に反応しすぎたみたいだというのはよくわかった。
まさかお義父さんがあんな冗談言うと思わないから……なんだかドキドキしすぎてしまった。
でも僕……冗談でも男性を相手に薦められたのに、全く嫌な気がしなかったんだけど……。
これって、僕も男性が相手でも大丈夫ってことなんだろうか?
和菓子をいくつか選んでお店を後にして車に乗り込んでからもずっと自分の相手がもし男性だったら……ということをぐるぐると頭の中で考えてしまっていた。
「保、どうした?」
「えっ?」
突然手をポンポンと叩かれて驚いたけれど、僕はお義父さんの呼びかけをずっと無視してしまっていたみたいだ。
「あ、ごめんなさい。なんだかいろいろ考えてしまって……」
「さっき私が安城くんを相手にと冗談を言ってから様子がおかしくなったな。もしかして怒らせてしまったか? それなら申し訳ない」
「いえ、怒るなんてそんなことはないです。ただ……」
これを話してもいいんだろうか?
女性と結婚して、子どもまでもうけている僕が、男性との未来を想像していたなんて……。
「なんでも話してくれていいんだよ。私は保の父親なんだから」
「お義父さん……」
実の父親にもこうして優しく語りかけられた記憶すらあまりない。
だからつい話してしまった。
「僕……卓兄さんと絢斗さんに出会うまで同性のカップルって会ったことがなかったんです。でも、いつ会っても幸せそうで……異性のカップルと変わらないっていうか、性別って関係ないんだなって思うようになって……」
僕が話をしているのをお義父さんは笑顔のまま、時折優しく相槌を打ちながら聞いてくれた。
「今日、史紀さんのお相手が男性だと知った時も、びっくりしたんですけどその驚きは意外と身近に同性のカップルっているんだなっていう感情で、幸せそうで……結婚までできるってすごく素敵だなって思ったんです」
「そうだな、卓たちも史紀くんたちも心から愛し合ってるからな」
愛し合うのに本当に性別はいらないんだと心からそう思えた。
「それでお義父さんが僕をお相手さんにって、話をした時……あ、それは冗談だってわかってるんです。だけど、僕も性別に拘らない相手と出会うこともあるのかなってちょっと思ってしまって……」
「それはあるだろう。私は最も愛した人が女性だったが、たとえ沙都が男性だったとしても好きになって、今と同じように暮らしていただろう」
当然だと言わんばかりのお義父さんの返答に少し戸惑ってしまうけれど、それだけお義母さんを愛しているということなんだろう。
「でも、僕は……女性と結婚して、子どもまでできたのに……たとえこれから出会うことがあったとしても、本気にしてはもらえないですよね?」
もし、男性が相手になったら未来を考えた時、それが一番気になってしまった。
僕がいくら本気になったとしても信用してもらえないんじゃないかって。
「まだ出会ってもない相手の心のうちを知ることはできないが、本当に保を好きなら女性との婚姻歴があろうが、子どもがいようが、相手は気にしないと思うぞ」
「本当、ですか?」
「少なくとも私は気にしない。きっと卓もそういうだろう。たとえ、絢斗くんに女性との婚姻歴があって子どもがいようとも、目の前で好きだと言ってくれる絢斗くんを信じるはずだ。心から好きになるとはそういうことだ。だから、保が心から惹かれる人に出会ったら、素直な気持ちをぶつけなさい」
素直な気持ちをぶつける、か……。
以前の結婚生活ではずっと我慢ばかりで素直な気持ちをぶつけたことは一度もなかった。
いつか本当にそんな人に出会えたら、お義父さんのいうとおりにしてみよう。
そんな日が来ればだけど……。
「そうだろう? 君が独り身なら是非にと薦めたいくらいに可愛い息子だよ」
お義父さんの手が僕の肩をぽんと叩く。
「えっ、そ、そんなっ、お義父さんっ、僕は」
突然のお義父さんの言葉に動揺した僕の顔が一気に熱くなる。
そんな僕を見て史紀さんのお相手さんは声をあげて笑った。
「ははっ。そんなすぐに断られたら傷つくなぁ」
「えっ、あ、すみません」
笑みを浮かべながらもそんなことを言われて僕が謝ると、お義父さんと史紀さんのお相手さんは二人で顔を見合わせて笑っていた。
「磯山先生、本当に可愛い息子さんですね。変な虫に引っかからないように気をつけてあげてください」
「そうだな。しっかりと守るとするよ」
なんだか二人で話しているようだけれど、テンパっている僕の耳にはうまく入ってこない。
「あの……」
「保。冗談だから気にしないでいいよ。ほら、好きなお菓子を選んで」
さっと話題を変えられてどうしていいか反応に困ってしまったけれど、どうやら僕が冗談に過剰に反応しすぎたみたいだというのはよくわかった。
まさかお義父さんがあんな冗談言うと思わないから……なんだかドキドキしすぎてしまった。
でも僕……冗談でも男性を相手に薦められたのに、全く嫌な気がしなかったんだけど……。
これって、僕も男性が相手でも大丈夫ってことなんだろうか?
和菓子をいくつか選んでお店を後にして車に乗り込んでからもずっと自分の相手がもし男性だったら……ということをぐるぐると頭の中で考えてしまっていた。
「保、どうした?」
「えっ?」
突然手をポンポンと叩かれて驚いたけれど、僕はお義父さんの呼びかけをずっと無視してしまっていたみたいだ。
「あ、ごめんなさい。なんだかいろいろ考えてしまって……」
「さっき私が安城くんを相手にと冗談を言ってから様子がおかしくなったな。もしかして怒らせてしまったか? それなら申し訳ない」
「いえ、怒るなんてそんなことはないです。ただ……」
これを話してもいいんだろうか?
女性と結婚して、子どもまでもうけている僕が、男性との未来を想像していたなんて……。
「なんでも話してくれていいんだよ。私は保の父親なんだから」
「お義父さん……」
実の父親にもこうして優しく語りかけられた記憶すらあまりない。
だからつい話してしまった。
「僕……卓兄さんと絢斗さんに出会うまで同性のカップルって会ったことがなかったんです。でも、いつ会っても幸せそうで……異性のカップルと変わらないっていうか、性別って関係ないんだなって思うようになって……」
僕が話をしているのをお義父さんは笑顔のまま、時折優しく相槌を打ちながら聞いてくれた。
「今日、史紀さんのお相手が男性だと知った時も、びっくりしたんですけどその驚きは意外と身近に同性のカップルっているんだなっていう感情で、幸せそうで……結婚までできるってすごく素敵だなって思ったんです」
「そうだな、卓たちも史紀くんたちも心から愛し合ってるからな」
愛し合うのに本当に性別はいらないんだと心からそう思えた。
「それでお義父さんが僕をお相手さんにって、話をした時……あ、それは冗談だってわかってるんです。だけど、僕も性別に拘らない相手と出会うこともあるのかなってちょっと思ってしまって……」
「それはあるだろう。私は最も愛した人が女性だったが、たとえ沙都が男性だったとしても好きになって、今と同じように暮らしていただろう」
当然だと言わんばかりのお義父さんの返答に少し戸惑ってしまうけれど、それだけお義母さんを愛しているということなんだろう。
「でも、僕は……女性と結婚して、子どもまでできたのに……たとえこれから出会うことがあったとしても、本気にしてはもらえないですよね?」
もし、男性が相手になったら未来を考えた時、それが一番気になってしまった。
僕がいくら本気になったとしても信用してもらえないんじゃないかって。
「まだ出会ってもない相手の心のうちを知ることはできないが、本当に保を好きなら女性との婚姻歴があろうが、子どもがいようが、相手は気にしないと思うぞ」
「本当、ですか?」
「少なくとも私は気にしない。きっと卓もそういうだろう。たとえ、絢斗くんに女性との婚姻歴があって子どもがいようとも、目の前で好きだと言ってくれる絢斗くんを信じるはずだ。心から好きになるとはそういうことだ。だから、保が心から惹かれる人に出会ったら、素直な気持ちをぶつけなさい」
素直な気持ちをぶつける、か……。
以前の結婚生活ではずっと我慢ばかりで素直な気持ちをぶつけたことは一度もなかった。
いつか本当にそんな人に出会えたら、お義父さんのいうとおりにしてみよう。
そんな日が来ればだけど……。
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