13 / 39
ドキドキが止まらない
しおりを挟む
ピンポンと玄関チャイムが鳴り、急いで出てみると昨日のスーツ姿とは違う、カジュアルなジャケットを羽織った長瀬さんが目の前に現れた。
「あっ……あの、こんにちは」
「ふふっ。こんにちは、千鶴さん。少し早く着きすぎましたか?」
「あ、いえ。大丈夫です。もう準備は、できてます……」
「それならよかった」
優しい微笑みを浮かべる長瀬さんが格好良すぎて直視できない。
普段着なのに格好いいって、どういうこと?
「あの、私……おばあちゃんに声かけてきます」
ドキドキが止まらなくて、慌てて踵を返してリビングにいるおばあちゃんを呼びに行こうとすると、
「長瀬さん、お迎えありがとう」
とおばあちゃんの方からこちらにやってきてしまった。
「あなたが来てくださるから安心して千鶴を送り出せるわ」
「いえ、私が少しでも早く千鶴さんにお会いしたくてしていることですから」
「えっ……」
「まぁ、ふふっ。千鶴、よかったわね」
「――っ!」
なんだかもうすでにおばあちゃんには私の気持ちがバレてるような気がする。
お兄ちゃんといい、おばあちゃんといい、もしかして私ってわかりやすい?
うわ、なんだかすごく恥ずかしい。
「千鶴?」
「あ、はい。あの、行ってきます」
「ふふっ。行ってらっしゃい。ああ、そうだわ。夕食はどうする?」
「えっ? えっと……」
そこまで全然考えてなかったんだけど、どうするんだろう……。
そっと長瀬さんに視線を送ると、にっこりと笑いながら
「今日は夕食まで千鶴さんとご一緒させていただきたいと思っていますが、よろしいでしょうか?」
とおばあちゃんに答えていた。
「あら、それならちょうどよかったわ。実は、お友達の佳奈恵さんに夕食に誘われていたのよ。千鶴には帰ってから自分で作ってもらおうと思っていたんだけど、食べて帰ってくるなら安心ね」
「それでは夜の九時までにはこちらにお送りしますのでご安心ください」
「ええ、私もその頃には帰ってきているから大丈夫よ。千鶴、行ってらっしゃい」
「は、はい。行ってきます」
なんだか私を抜きに話がまとまってしまった気がする。
戸惑いつつも、そのまま長瀬さんに案内されて玄関を出ると、丸が四つ並んだエンブレムが素敵なブルーグレーの高級車がそこにあった。
「これ……長瀬さんの、お車ですか?」
「ええ。二人で乗るにはちょうどいいかと思って今日はこれにしました。さぁ、どうぞ」
「は、はい……」
さっと助手席の扉を開けられ、中が見える。
中も凄そう……。
汚したりしないように気をつけないとな。
恐る恐る席に座らせて貰うとあまりの座り心地の良さに驚いてしまう。
すごい!
昨日のも座り心地いいなと思っていたけど、今日のはもっと好きかも。
私が座り心地に感動している間に、長瀬さんはさっとシートベルトをつけてくれてそのまま颯爽と運転席に乗り込んだ。
「行きましょうか」
「はい」
ああ、もう格好良くて長瀬さんの方を見ていられない。
ドキドキして少し挙動不審になってしまっているのは自分でも良くわかっているけれど、どうしようもない。
もう自分で感情が抑えられなくなってる。
こんなの初めてだ。
「千鶴さん」
「は、はい」
「ふふっ。緊張なさってますか?」
「え、はい。だって、こんなすごい車……それに、長瀬さんも」
「私、ですか? 何か緊張させていますか?」
「あ、いえ。そうじゃなくて……その、長瀬さんが……格好良すぎて、緊張してしまって……」
「えっ……それは……」
急にこんなことを言われて長瀬さんが驚くのも無理はない。
でも、今言わないといえない気がする。
「あ、すみません。でも、本当なんです」
「千鶴さん……それは、私のことを少しは意識してくださっているということでよろしいですか?」
「違います」
「えっ?」
「少しじゃないです、ものすごく意識してます」
「――っ!!!」
「わっ!!」
思いを伝えた途端、長瀬さんが路肩に急に車を止めてしまったので、思わず声が出てしまった。
「あ、すみません。おどろかせてしまって……でも、千鶴さんからそんなことを言われてそのまま平常運転できるほど、人間ができていないんです」
「長瀬さん……」
「本当に、意識してくださってるんですか?」
「はい、多分……好き、なんだと思います」
「多分?」
「あ、ごめんなさい。私……今まで、こんな気持ちになったことがなくて……」
「――っ、それは初恋、ということですか?」
「えっ――あっ、そう、なのかな……うわ、この年で初恋なんて恥ずかしいですね」
もう30も過ぎているのに、初恋なんて……。
長瀬さんにも呆れられているかも……。
そう思ったけれど、
「恥ずかしがることなんてないですよ。私は、千鶴さんの初恋で嬉しいとしか感じないです」
と心の底から嬉しそうな表情を見せてくれた。
「あっ……あの、こんにちは」
「ふふっ。こんにちは、千鶴さん。少し早く着きすぎましたか?」
「あ、いえ。大丈夫です。もう準備は、できてます……」
「それならよかった」
優しい微笑みを浮かべる長瀬さんが格好良すぎて直視できない。
普段着なのに格好いいって、どういうこと?
「あの、私……おばあちゃんに声かけてきます」
ドキドキが止まらなくて、慌てて踵を返してリビングにいるおばあちゃんを呼びに行こうとすると、
「長瀬さん、お迎えありがとう」
とおばあちゃんの方からこちらにやってきてしまった。
「あなたが来てくださるから安心して千鶴を送り出せるわ」
「いえ、私が少しでも早く千鶴さんにお会いしたくてしていることですから」
「えっ……」
「まぁ、ふふっ。千鶴、よかったわね」
「――っ!」
なんだかもうすでにおばあちゃんには私の気持ちがバレてるような気がする。
お兄ちゃんといい、おばあちゃんといい、もしかして私ってわかりやすい?
うわ、なんだかすごく恥ずかしい。
「千鶴?」
「あ、はい。あの、行ってきます」
「ふふっ。行ってらっしゃい。ああ、そうだわ。夕食はどうする?」
「えっ? えっと……」
そこまで全然考えてなかったんだけど、どうするんだろう……。
そっと長瀬さんに視線を送ると、にっこりと笑いながら
「今日は夕食まで千鶴さんとご一緒させていただきたいと思っていますが、よろしいでしょうか?」
とおばあちゃんに答えていた。
「あら、それならちょうどよかったわ。実は、お友達の佳奈恵さんに夕食に誘われていたのよ。千鶴には帰ってから自分で作ってもらおうと思っていたんだけど、食べて帰ってくるなら安心ね」
「それでは夜の九時までにはこちらにお送りしますのでご安心ください」
「ええ、私もその頃には帰ってきているから大丈夫よ。千鶴、行ってらっしゃい」
「は、はい。行ってきます」
なんだか私を抜きに話がまとまってしまった気がする。
戸惑いつつも、そのまま長瀬さんに案内されて玄関を出ると、丸が四つ並んだエンブレムが素敵なブルーグレーの高級車がそこにあった。
「これ……長瀬さんの、お車ですか?」
「ええ。二人で乗るにはちょうどいいかと思って今日はこれにしました。さぁ、どうぞ」
「は、はい……」
さっと助手席の扉を開けられ、中が見える。
中も凄そう……。
汚したりしないように気をつけないとな。
恐る恐る席に座らせて貰うとあまりの座り心地の良さに驚いてしまう。
すごい!
昨日のも座り心地いいなと思っていたけど、今日のはもっと好きかも。
私が座り心地に感動している間に、長瀬さんはさっとシートベルトをつけてくれてそのまま颯爽と運転席に乗り込んだ。
「行きましょうか」
「はい」
ああ、もう格好良くて長瀬さんの方を見ていられない。
ドキドキして少し挙動不審になってしまっているのは自分でも良くわかっているけれど、どうしようもない。
もう自分で感情が抑えられなくなってる。
こんなの初めてだ。
「千鶴さん」
「は、はい」
「ふふっ。緊張なさってますか?」
「え、はい。だって、こんなすごい車……それに、長瀬さんも」
「私、ですか? 何か緊張させていますか?」
「あ、いえ。そうじゃなくて……その、長瀬さんが……格好良すぎて、緊張してしまって……」
「えっ……それは……」
急にこんなことを言われて長瀬さんが驚くのも無理はない。
でも、今言わないといえない気がする。
「あ、すみません。でも、本当なんです」
「千鶴さん……それは、私のことを少しは意識してくださっているということでよろしいですか?」
「違います」
「えっ?」
「少しじゃないです、ものすごく意識してます」
「――っ!!!」
「わっ!!」
思いを伝えた途端、長瀬さんが路肩に急に車を止めてしまったので、思わず声が出てしまった。
「あ、すみません。おどろかせてしまって……でも、千鶴さんからそんなことを言われてそのまま平常運転できるほど、人間ができていないんです」
「長瀬さん……」
「本当に、意識してくださってるんですか?」
「はい、多分……好き、なんだと思います」
「多分?」
「あ、ごめんなさい。私……今まで、こんな気持ちになったことがなくて……」
「――っ、それは初恋、ということですか?」
「えっ――あっ、そう、なのかな……うわ、この年で初恋なんて恥ずかしいですね」
もう30も過ぎているのに、初恋なんて……。
長瀬さんにも呆れられているかも……。
そう思ったけれど、
「恥ずかしがることなんてないですよ。私は、千鶴さんの初恋で嬉しいとしか感じないです」
と心の底から嬉しそうな表情を見せてくれた。
578
あなたにおすすめの小説
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる