ベビーシッター先でラブラブな家族生活はじまりました

波木真帆

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仕事を始めよう!

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「今日は五時には戻られますか?」

ここでの業務は午前は八時から午後六時までの契約になっているけれど、今日は初日だったから始まりが一時間早かった分、帰宅は前倒しになる。

「その予定だ。その……今夜の夕食を私の分も頼んでも構わないか?」

きっとまだ不安はあるだろう。それでもこうして頼んでくれるのだから精一杯美味しいご飯を用意したい。

「はい。お作りしておきますね。碧斗くんの好き嫌いやアレルギーの有無もお知らせいただけますか?」

「ああ、それはこちらの資料に書いている。私は特にアレルギーも好き嫌いもない」

「承知いたしました。あとはお部屋を案内していただけますか? 開けてはいけない場所や触れてはいけないものなどもお教えください」

留守を預かる家の中はしっかりと家主と確認をしておかないとな。

「それでは案内しよう」

「はい。碧斗くんも一緒に行こう。一緒にパパの説明を聞いて、覚えておこうね」

こういう時は子どもも一緒に意識を持たせると保護者がいない時も責任感を持ってくれるものだ。

「はーい!」

すっかり慣れてくれた碧斗くんを抱き上げてサークルから出し、手を繋いだ。

「ぱぱも」

碧斗くんが西条さんに手を差し出すと、西条さんは驚いた様子を見せつつも碧斗くんの手を握った。
碧斗くんのちっちゃな手が大きな西条さんの手に包み込まれて嬉しそうだ。

それから三人揃って次々と部屋の中を見ていって最後に脱衣所とお風呂場を案内された。
脱衣所に、数個の籠にそれぞれ分けて洗濯物が置かれていた。
これを全部クリーニングに出すつもりだったなんて、どれだけお金がかかるか考えるだけで僕のような庶民は肝が縮む思いがする。

「洗濯物を干す道具はありますか?」

「この隣のランドリールームに必要なものは用意されている。足りないものがあればコンシェルジュに頼んでくれ。洗濯物を干すのはランドリールームでもテラスでも構わない」

あの広々としたテラスで干せるのは嬉しい。
きっとここの構造上、洗濯物が外から見えないから許可されているんだろうな。

「私の部屋は入らないでくれ。掃除も何もいらない。案内はこれで大丈夫か?」

「はい。問題ありません」

「それでは私は仕事に向かう。報告することがあればこのメッセージアプリに送ってくれ。緊急の場合は電話をしてくれて構わない」

「承知しました」

西条さんから名刺を受け取りしっかりと頭にインプットしてからカバンの中にしまった。

「碧斗くん、パパにいってらっしゃいしようか」

「うん。ぱぱ、いってらっしゃい」

二人で手を振って見送ると、西条さんはなんとも言えない表情をしながら、

「行ってくるよ」

と声をかけ家を出ていった。

よし、これから五時まで頑張るぞ!!
まずは洗濯だ。

「碧斗くん、今からお洗濯するからお手伝いしてくれる?」

「うん! あおと、おてつだいするー!」

やっぱり琳と一緒だ。この時期の子どもはお手伝いを頼むと喜んでしてくれるんだよね。

「じゃあ、こっちの籠のものを洗濯機に入れてくれるかな?」

「はーい。うんしょ。うんしょ」

小さな身体で籠の中の洗濯物を何度も入れてくれる。
僕はその間にもう一つの籠に入っていた下着と靴下を、脱衣所の物置き場で見つけておいた洗濯板付きのウォッシュボードでサッと予洗いをしておいた。これをしておくだけで汚れの落ち方も全然違う。

「はるかちゃん、ぜんぶいれれたー。みてー!」

空っぽになった籠を見せながら僕に得意げに伝える碧斗くんは、大きな達成感に満ち溢れた表情をしていた。

「おおー。すごーい! ありがとう」

洗濯機を回すと、グーングーンと動くのを見て

「あおとがいれたやつ」

と嬉しそうに洗濯機を覗き込んでいる姿がとても微笑ましい。

予洗いしたものをつけ置きしている間に、碧斗くんに手伝ってもらいながら掃除を終えた。
トイレとお風呂はボタンひとつで天井から床まで丸洗いしてくれるシステムを搭載しているから掃除も楽だ。
これなら西条さんがロボット掃除機だけで構わないと言っていたのも頷ける。

次はテラスに物干場を設置する。
ここは途中で天候が変わっても濡れない構造になっているのが最高だ。

設置まで終わった頃にはあっという間に時計は十時を回っていた。
そろそろ昼食と夕食のことも考えておかないといけない。
なんせこの家には食材はおろか、調理家電までないと言われているのだから。

材料の確認のために冷蔵庫を開けると、ここが子どものいる家とは思えないほど中身の少なさに驚かされる。
子ども用の紙パックのジュースと西条さん用のビール。そしてチーズだけ。

お仕事が忙しいから仕方のないことなんだろうけど、毎日外食やデリバリーは大人でも飽きてしまう。子どもの碧斗くんはものすごく辛いだろう。もうすっかり慣れっこになっているのならそれはそれで辛いことだ。

「碧斗くん、お昼ご飯に何か食べたいものあるかな?」

「なんでもいいの?」

「うん。なんでもいいよ」

料理は得意だし、ある程度のものは作れる自信がある。

「あのね、おむらいすたべたいの」

リクエストが琳と同じで思わず笑みが溢れる。

「いいよ。じゃあオムライスにしよう!」

「わぁーい! やったー!」

嬉しそうにその場でぴょんぴょんと跳ねる碧斗くんを見ながら、僕はメモに必要な食材と調理家電を書き出した。
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