ベビーシッター先でラブラブな家族生活はじまりました

波木真帆

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どんどん変わっていく

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「パソコンを一台、至急用意してくれ。ああ、頼むよ」

それだけ告げるとすぐに電話を切っていた。

「あの、今のって……」

「さっき話をしていただろう? これから毎日使うなら専用のものを用意した方がいい」

僕としては報告書を送るときだけ借りれたらよかったんだけど、わざわざ新しいものを手配してくれるなんて……。
でも考えてみたらパソコンなんてプライベートなものを借りようと思ったのがいけなかったのかもしれない。

「ありがとうございます。後でかかった費用をお支払いします」

「それは必要ない。君がここで仕事を全うしてもらうのに必要なものだから私が準備する。雇い主として当然だよ」

そこまではっきり言われるとこれ以上いうのも悪い気がしてしまい、僕はお礼を言った。
余計な費用を払わせてしまった分も仕事でお返ししよう。それが僕にできる恩返しだ。

西条さんが碧斗くんたちのいるサークルに向かうのを見送りながら、僕は食事の支度を進めた。

唐揚げを揚げて、碧斗くんと琳のプレートにさっき作ったおにぎりと小さめの唐揚げと生野菜。そしてプラスチックのマグカップに入れた卵スープを乗せた。

これで子ども用は完成。

大人用のお皿にも生野菜と唐揚げを盛り付けて、煮付け皿にカレイものせて完成。
カレイは二尾あるから一つは西条さんに。
もう一つは碧斗くんと琳で食べてもらおう。残ったら僕も頂こうかな。

全ての準備を整えてサークルにいるみんなに聞こえるように声をかけると、碧斗くんも琳も嬉しそうに出てきた。
その後ろから西条さんもやってきて、二人を椅子に座らせてくれる。

碧斗くんは専用の椅子。
琳は大人用の椅子にクッションで高さを出して座らせてくれた。

「琳くんの分の椅子も用意した方がいいな。明日には碧斗と同じものを用意するから今日はこれで我慢してくれ」

「おじちゃん、ありがとー」

西条さんの優しい言葉掛けに琳はすっかり慣れて、おじちゃんと呼んでしまっている。

「すみません。西条さんのことおじちゃんだなんて」

「気にしないでいい。幼い子から見れば私もおじちゃんに変わりはない」

なんだか最初の印象からどんどん変わっていく。
子どもの扱いに慣れていないと思っていたけれど向き合うとこんなにも子煩悩な人だったんだな。

「「いただきまーす!!」」

碧斗くんと琳の声が揃って挨拶をするのを聞きながら、僕はご飯とスープをよそって西条さんの目の前に置いた。

「炊き込みご飯か、美味しそうだな」

その笑顔が心から言ってくれているのがわかってホッとする。
よかった、今日のメニューは気に入ってくれたみたいだ。

僕のご飯もよそって、琳の隣に座る。

おにぎりを美味しそうに食べている横で、僕もご飯を食べ始めた。
合間に煮付けをほぐして、碧斗くんと琳のお皿にのせる。
碧斗くんは最初は不思議そうに煮付けに箸をつけていたけれど美味しかったのか、のせるたびに笑顔で食べてくれた。

「遥くん、碧斗には私の分を分けるからそれは琳くんと二人で食べたらいい」

「でもそれだと西条さんの分が足りなくなりませんか?」

「大丈夫。家族は分け合って食べるものだからな」

西条さんの口から家族という言葉が出てきて驚きつつも、なんだか嬉しかった。

「りんくん、あーん」

「あーん。おいしーね。あおとくんも、あーん」

「いいの? あーん。うん! おいしーね!」

お互いに唐揚げを食べさせ合い、満足そうな二人を見て、思わず西条さんと顔を見合わせて笑ってしまった。

あっという間に食事を終えて、片付け。それをしている間にコンシェルジュさんから連絡が来た。
えっ? もしかしてもうパソコンが来た? 早くない?

僕が驚いている間に、西条さんはデリバリーボックスからパソコンを受け取って戻ってきた。
テーブルにそれを置くとものの数分で手を止めた。

「遥くん、これを使えるようにセットしておいたから、あとは好きに使ってくれ」

「は、はい。ありがとうございます」

パソコンってこんなに簡単に使えるようになるんだ……しらなかったな。
でもこれで報告書が送れる。ありがたい。

碧斗くんと琳を見ると、サークルの中で楽しそうに遊んでいる。
今のうちに報告書を終わらせておこう。

濡れた手を拭いて、パソコンの前に座り、急いで報告書を作成した。

「遥くんと琳くんが住み込みになっていることは言わなくていい。これまで通り、朝八時から午後六時までの業務をしていたことにしていいから」

「はい。ありがとうございます」

これが会社に知られたら面倒になるからな。
西条さんがそう言ってくれて助かった。

ささっと業務報告を仕上げてメールに添付して送る。
これで大丈夫だ。

「子どもたちはまだ寝るには早いだろう。その間に遥くんも風呂に入ってくるといい」

「いいんですか?」

「構わないよ。あ、そういえば遥くんの着替えは……」

「あっ!」

琳の着替えのことばかりで自分のことを忘れていた。
コンシェルジュさんに着替えを用意してもらうのも申し訳ないし今日はこのままでいいか。

「大丈夫です。お風呂だけいただければ、今日はこれをそのまま着ます」

「いや、そうはいかないだろう。ちょっと待っていてくれ」

そういうが早いか、西条さんは自室に入って行った。
そして、戻ってきた西条さんは、僕に手に持っていたものを渡した。

「私の服で悪いが、これを使ってくれ。下着は新品だから気にしないでいい」

渡された服からはふわりと西条さんの匂いが漂ってくる。
申し訳ないと思いつつもここまでしてもらって断ることもできず、僕はそれを持って脱衣所に向かった。



  *   *   *

次回は悠臣視点に入ります。
少し戻りますがどうぞお楽しみに♡
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