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執着のはじまり 1
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すみません、予約時間間違えてました(汗)
* * *
<side悠臣>
しばらく自室で過ごして部屋を出ると、キッチンから旨そうな匂いが漂っていた。
この匂いは、ミートソースか。
りんくんの好物をと言ったが、好物まで碧斗に似ているとはよほど気が合うのか。
キッチンに遥くんの姿が見えず、辺りを見回すと碧斗たちを寝かせたサークル近くで遥くんが立っているのが見えた。
声をかけてみれば、こちらにきてと呼ばれてしまう。
何事かと思って近づけば、布団に寝かせていた碧斗とりんくんが抱き合って眠っているのが見えた。
まるで愛しい人を守るような碧斗の様子に私は驚きを隠せなかった。
碧斗は人見知りというわけではないが、これまで会社主催のパーティーに何度か連れて行ったことがある。
家族同伴OKだったため、子どもを連れてきている社員もたくさんいたが、碧斗は決して交わろうとはしなかった。
これも個性だと思い、私から積極的に碧斗と子どもたちを遊ばせるように仕向けなかったが、りんくんに対してだけは様子が違った。
相手が怪我をしているから守らなければという意識が働いているのはあるだろう。
だがそれを抜きにしても碧斗のりんくんへの執着は今までの碧斗から見ても明らかに異なっている。
遥くんは、幼い子ども同士が仲良く眠っている姿に感動しているようだが、私からみれば誰にも渡さないという碧斗の独占欲が見えるようで驚きしかない。
碧斗は深い意味でりんくんを好きなのかもしれないな。
そんな感想を抱いていた私の耳にさらなる驚きの言葉が飛び込んできた。
「碧斗くんの方が年下なのに、なんだかお兄ちゃんみたいですよね」
えっ? 今、なんて言った?
碧斗の方が、年下?
まさかっ!
聞き間違いかと思って聞き返せばどうやら正しいらしい。
りんくんは先日四歳の誕生日を迎えたのだそうだ。
碧斗も来週四歳を迎えるからほぼ変わらないと言ってしまえばそうなのだが、体格を見る限り年下だと思い込んでいた。
このあたりの子は体型と年齢が必ずしも比例するわけではないということを改めて知った。
碧斗の誕生日が来週だと漏らしたから、遥くんが気を遣って誕生日会をしようと声をかけてくれた。
碧斗を引き取って二度誕生日を迎えたが、何をすればいいのかわからず、碧斗の分だけケーキを用意するのもなんとなく憚られて結局何もしないまま誕生日を終えてしまった。
あれはどうするべきだったのかとずっと思いつつ解決策を見出せないまま、今年も碧斗の誕生日を迎えようとしていた。
「今年は僕が準備しますよ。琳の誕生日のように飾り付けをして、ケーキとご馳走作ってみんなでお祝いしましょう」
遥くんの言葉に、目の前がパッと開けたような気がした。
「楽しい日にしましょうね」
その笑顔に魅せられたまま、私は頷き返した。
遥くんは二人が眠るサークルに入り、優しく声をかけて起こす。
私は未だかつてこんな声掛けで目を覚ましたことがない。
なんと羨ましい……。
自分の中にそんな感情が芽生えたことに驚きを隠せなかった。
寝起きのいい碧斗は遥くんの呼びかけにすぐに目を覚ました。
そして、自分の腕の中に抱きしめている存在に気づき笑顔を浮かべる。
やはり碧斗にとってりんくんは特別な存在なのかもしれないなと思わずにいられなかった。
りんくんに何度か声をかけるが、りんくんはなかなか目覚めない。
同じ子どもでもこうも違うものなのだな。
すると碧斗が自分に任せて! と言い出した。
何をする気なのだと静かに見守っていると、碧斗はそっとりんくんの耳元に顔を近づけ、この上なく甘い声で囁いた。
「ぼくのかわいいひめ」
そして、りんくんの柔らかそうな頬に自分の唇を当てる。
その流れるような仕草に私はもちろん遥くんも見入ってしまっていた。
碧斗のキスを受けるようにりんくんが目を覚まし、碧斗は大喜びの声をあげていた。
それでハッと我にかえり、遥くんに謝罪の言葉を告げた。
いくら子どもとはいえ、勝手に頬にキスをするなんて遥くんも怒るはずだ。
私は慌てて碧斗に先ほどの行為の意図を聞いたが、碧斗はあの絵本の真似をしただけだと言ってくる。
そういえば確かにあの絵本にはそういうシーンがあった。
碧斗の記憶力のよさに驚くしかなかったが、心配なのは遥くんだ。
不快感を感じていないだろうかと不安になったが、
「気になさらないでください。ほっぺたにチューなんて外国では挨拶ですから。でも碧斗くんのファーストキスが琳にならなくてよかったですね」
と笑顔を見せてくれる。
そう思ってくれてありがたいが……おそらく、碧斗は頬も唇もりんくんの全てのファーストキスを奪うつもりだろう。
碧斗の執着を考えれば間違いない。だがさすがにそれを遥くんに告げることはできなかった。
* * *
<side悠臣>
しばらく自室で過ごして部屋を出ると、キッチンから旨そうな匂いが漂っていた。
この匂いは、ミートソースか。
りんくんの好物をと言ったが、好物まで碧斗に似ているとはよほど気が合うのか。
キッチンに遥くんの姿が見えず、辺りを見回すと碧斗たちを寝かせたサークル近くで遥くんが立っているのが見えた。
声をかけてみれば、こちらにきてと呼ばれてしまう。
何事かと思って近づけば、布団に寝かせていた碧斗とりんくんが抱き合って眠っているのが見えた。
まるで愛しい人を守るような碧斗の様子に私は驚きを隠せなかった。
碧斗は人見知りというわけではないが、これまで会社主催のパーティーに何度か連れて行ったことがある。
家族同伴OKだったため、子どもを連れてきている社員もたくさんいたが、碧斗は決して交わろうとはしなかった。
これも個性だと思い、私から積極的に碧斗と子どもたちを遊ばせるように仕向けなかったが、りんくんに対してだけは様子が違った。
相手が怪我をしているから守らなければという意識が働いているのはあるだろう。
だがそれを抜きにしても碧斗のりんくんへの執着は今までの碧斗から見ても明らかに異なっている。
遥くんは、幼い子ども同士が仲良く眠っている姿に感動しているようだが、私からみれば誰にも渡さないという碧斗の独占欲が見えるようで驚きしかない。
碧斗は深い意味でりんくんを好きなのかもしれないな。
そんな感想を抱いていた私の耳にさらなる驚きの言葉が飛び込んできた。
「碧斗くんの方が年下なのに、なんだかお兄ちゃんみたいですよね」
えっ? 今、なんて言った?
碧斗の方が、年下?
まさかっ!
聞き間違いかと思って聞き返せばどうやら正しいらしい。
りんくんは先日四歳の誕生日を迎えたのだそうだ。
碧斗も来週四歳を迎えるからほぼ変わらないと言ってしまえばそうなのだが、体格を見る限り年下だと思い込んでいた。
このあたりの子は体型と年齢が必ずしも比例するわけではないということを改めて知った。
碧斗の誕生日が来週だと漏らしたから、遥くんが気を遣って誕生日会をしようと声をかけてくれた。
碧斗を引き取って二度誕生日を迎えたが、何をすればいいのかわからず、碧斗の分だけケーキを用意するのもなんとなく憚られて結局何もしないまま誕生日を終えてしまった。
あれはどうするべきだったのかとずっと思いつつ解決策を見出せないまま、今年も碧斗の誕生日を迎えようとしていた。
「今年は僕が準備しますよ。琳の誕生日のように飾り付けをして、ケーキとご馳走作ってみんなでお祝いしましょう」
遥くんの言葉に、目の前がパッと開けたような気がした。
「楽しい日にしましょうね」
その笑顔に魅せられたまま、私は頷き返した。
遥くんは二人が眠るサークルに入り、優しく声をかけて起こす。
私は未だかつてこんな声掛けで目を覚ましたことがない。
なんと羨ましい……。
自分の中にそんな感情が芽生えたことに驚きを隠せなかった。
寝起きのいい碧斗は遥くんの呼びかけにすぐに目を覚ました。
そして、自分の腕の中に抱きしめている存在に気づき笑顔を浮かべる。
やはり碧斗にとってりんくんは特別な存在なのかもしれないなと思わずにいられなかった。
りんくんに何度か声をかけるが、りんくんはなかなか目覚めない。
同じ子どもでもこうも違うものなのだな。
すると碧斗が自分に任せて! と言い出した。
何をする気なのだと静かに見守っていると、碧斗はそっとりんくんの耳元に顔を近づけ、この上なく甘い声で囁いた。
「ぼくのかわいいひめ」
そして、りんくんの柔らかそうな頬に自分の唇を当てる。
その流れるような仕草に私はもちろん遥くんも見入ってしまっていた。
碧斗のキスを受けるようにりんくんが目を覚まし、碧斗は大喜びの声をあげていた。
それでハッと我にかえり、遥くんに謝罪の言葉を告げた。
いくら子どもとはいえ、勝手に頬にキスをするなんて遥くんも怒るはずだ。
私は慌てて碧斗に先ほどの行為の意図を聞いたが、碧斗はあの絵本の真似をしただけだと言ってくる。
そういえば確かにあの絵本にはそういうシーンがあった。
碧斗の記憶力のよさに驚くしかなかったが、心配なのは遥くんだ。
不快感を感じていないだろうかと不安になったが、
「気になさらないでください。ほっぺたにチューなんて外国では挨拶ですから。でも碧斗くんのファーストキスが琳にならなくてよかったですね」
と笑顔を見せてくれる。
そう思ってくれてありがたいが……おそらく、碧斗は頬も唇もりんくんの全てのファーストキスを奪うつもりだろう。
碧斗の執着を考えれば間違いない。だがさすがにそれを遥くんに告げることはできなかった。
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