ベビーシッター先でラブラブな家族生活はじまりました

波木真帆

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二人の子育て

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「んっ……」

なんだかすごく良い夢を見た気がする。
内容は覚えていないけれど、すごく幸せだったような……。

毎日必ず同じ時間に起きるようにセットしているアラームの音もまだ聞こえていない。
目覚ましより先に起きたのにこんなに目覚めのいい朝は初めてだ。

琳を起こさないようにアラームを消しておこう。
寝る時のスマホの定位置、僕の右側の枕元に手を伸ばす。けれどスマホに届かない。

あれ? スマホ、どこだ? 
あちらこちらと手を動かしてみるけれど、全くスマホに辿り着かない。
あれ? 間違えて左側においたんだろうか?
今度は左手を伸ばしてあちらこちらと手を伸ばすと、スマホとは違うものに触れた。

これ、リモコン?

そう気づいた瞬間、指が触れたのかピッと音がして、部屋が一気に明るくなった。
薄明かりにようやく慣れていた目に明るい部屋が飛び込んできてあまりの眩しさに一瞬目を閉じてしまった。
ゆっくりと目を開くと見たことのない部屋の様子が入ってきた。

「えっ? ここ、どこ……?」

びっくりして起き上がると、見覚えのある部屋。

「ここ……西条さんの部屋だ……」

なんで僕がここに寝ているんだろう?
ちょっと待って。昨日……お風呂に入って、出てきたら碧斗くんと琳がマッサージしてくれて……そうしたら何故か、西条さんまでマッサージをし始めて……それから……

そこから何度も思い出そうとしたけれど、その後の記憶が全くない。

もしかして、僕……あのまま寝ちゃった?
碧斗くんと琳の寝かしつけもしてないのに、何もせずに寝ちゃった?
しかも、リビングにいたはずなのにここで寝てるって……碧斗くんや琳に運べるわけない。
ってことは……西条さんがここまで運んできてくれたってことだ。
何にも知らずに子ども世話を任せて一人で悠々と寝ちゃったよ……。

ああ、どうしよう……申し訳ないことしちゃった。

とりあえず、みんなが起きる前に自分の仕事をしなくっちゃ!
慌ててベッドから下りようとしたら思ったより高さがあったようで、そのまま床にドシーンと大きな音を立てて落ちてしまった。

「あいたたっ」

お尻をさすっていると、突然部屋の扉が開いた。

「遥くん、どうしたんだ?」

「えっ、西条、さん……っ」

さっと駆け寄ってきた西条さんが僕の目の前にしゃがみ込む。

「あの、どうして……」

「遥くんのアラームが鳴ったから起きる時間なんだろうと思って起こしにきたんだ。そうしたら部屋の前で大きな音がしたものだから何かあったのかと思って扉を開けたんだよ。もしかしてベッドから落ちたのか?」

西条さんは状況を確認しながら僕を軽々と抱きかかえてベッドに座らせた。
その感触を身体が覚えているようでビクッと身体が震えてしまう。

「遥くん、大丈夫か? どこか痛いところでも?」

「あ、いえ。大丈夫です。本当に、大丈夫です。すみません、朝からお騒がせしてしまって……」

「いや、怪我がないならいい」

心からホッとしたような西条さんの笑顔に何故かドキドキする。

「あ、あの……すみません、僕……お世話も何もかもほったらかしで眠っちゃったみたいで……」

「それは気にしないでいい。碧斗も琳くんも遥くんを寝かせることができたって喜んでいたくらいだ。遥くんを起こさないようにしようって言ったおかげで二人ともおとなしく寝てくれたからかえって手がかからなくて助かったよ」

おかげで夜も仕事が捗ってよかったよと笑う西条さんを見て、ほんの少しホッとした。

「これから夜の寝かしつけは私に任せてくれたらいい」

「えっ、それは僕の仕事……」

西条さんは僕が最後まで言う前に、首を横に振りながら笑顔を見せた。

「遥くんとの契約は私が仕事に出かけた朝八時から夜六時までの十時間だ。すなわち、それ以外の時間は二人で協力して家事と子育てをする時間なんだよ。遥くんが一人で二人の子どもの世話を抱え込む理由はない」

「西条さん……っ」

仕事で疲れているだろうに、仕事に行く前と帰宅後にも一緒に家事と子育てをしてくれるなんて……。

「さっきから思っていたが……遥くん、私への呼び名が間違っているぞ」

「えっ?」

「私のことは名前で呼ぶことに決まったはずだ」

「あっ!」

そういえばそう決まったんだっけ。でも、あれって碧斗くんと琳の前だけなんじゃなかったの?
そう思ってしまったのが表情に出たのか西条さんは言葉を続けた。

「普段から呼びかけておかないと、咄嗟に出ないぞ。子どもたちにおかしいと思われてもいいのか?」

「は、はい。気をつけます……は、悠臣さん……っ」

西条さんが言っていることがもっともだと思って、意を決して西条さんを見上げて目を見ながら名前を呼ぶと、何故か西条さんが口を押さえて僕をじっと見つめていた。
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