ベビーシッター先でラブラブな家族生活はじまりました

波木真帆

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なかなか浮上できない

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「はるかちゃーん!」

綺麗にベッドメイキングされたベッドを見つめていると、琳が僕を呼んでいる声が聞こえる。

「あ、はーい」

何もすることがなくなった西条さんの部屋から出て二人の元に向かう。

「みて、みてー!!」

二人が嬉しそうに見せてくれたのは、スケッチブック。
男の子が二人、楽しそうに手を繋いでいる絵だ。

「これ……」

「りんくんのえ、あおとがかいたのー!」

「あおとくんは、りんがかいたよー!」

「「ねーっ!!」」

琳が描いた碧斗くんは、慣れない左手で描いたからか線は弱かったけれど、碧斗くんのかっこいい目もストレートの髪もしっかり特徴を掴んでいて、よく描けていた。
碧斗くんが描いた琳はふわっとした柔らかい髪を持つ琳の特徴がしっかりと描けた、ものすごく可愛い男の子。
碧斗くんには琳がこういうふうに見えているんだろうか。

「すごいね! とっても上手!!」

本当に額縁に入れて飾りたいくらい、よく描けている。

「ねぇねぇ、りんくん。つぎは……」

碧斗くんはそこまで言うと、琳の耳元に口を当てて囁いている。でも小さくて何をいっているかまではわからない。

「ねっ!!」

「わぁー! いいね!! かこう、かこう」

碧斗くんの提案がよほど気に入ったのか、二人はまた絵を描き始めた。
今度は一体どんな絵を見せてくれるんだろう。
今から完成が楽しみでたまらない。

本当に二人でいてくれると、家事が捗るから助かる。

二人の楽しそうな姿を微笑ましく思っていると、コンシェルジュさんからの連絡フォンがなった。

<デリバリーボックスにご注文のお品物をお届けします。常温、冷蔵、冷凍に分けて入れておりますので、ご確認ください>

そこまで配慮してくれることに感心しながらお礼をいって玄関に向かった。

ウイーンと機械があがってくる音がして、荷物が到着したことを伝えるアナウンスが流れる。
ここのデリバリーボックスは本当に有能だ。

操作をして中身を取り出す。
まずは冷凍から。それを全て冷凍庫に運び入れ、冷蔵物と常温物を取りに行った。
頼んだ買い物の中に、碧斗くんと琳が飲むジュースを頼んでおいた。
すぐに飲めるように冷えたものとストック用の常温で分けようと思っていたのに、買い物リストを頼むときに忘れてしまっていた。
常温の箱にジュースを見つけて、あっ! 忘れてたと気づいたけれど、冷蔵の箱にも同じジュースが入れられていたことに驚いた。

<お子さま方がすぐにお召し上がりになるかもしれないと思い、数本だけ冷蔵にしておきました>

そんなメッセージがつけられていて、感動してしまう。
本当にここのコンシェルジュさんは素晴らしい。

「碧斗くん、琳。ちょっと休憩にしようか。ジュース飲もう!」

ずっと真剣に絵を描いていた二人に声をかけてサークルに近づくと、二人はパッと絵を隠した。

「はるかちゃん、できるまでみちゃだめー!!」

二人の小さな身体が絵を綺麗に隠していて全く見えない。その連携の良さに驚く。

「わかった、わかった。じゃあ後ろ向いてるから絵を隠してて。いい?」

「まだダメー」

ガサゴソ音がしてようやくいいよと声が聞こえた。
二人をサークルから出して、ソファーに座らせてジュースを渡す。
まずは碧斗くんから。パックのジュースにストローを刺して渡す。

「はい。碧斗くん、どうぞ」

「ありがとう、はるかちゃん。はい、りんくん。どーぞー」

「えっ?」

碧斗くんは僕から笑顔で受け取ったジュースをそのまま琳の口の前に持っていく。
それを琳は当然のようにチューチューと吸っていた。

「ん、おいしー! あおとくんものんでー」

「うん」

僕がもう一つのジュースを渡す前に、碧斗くんは嬉しそうに琳の飲みかけのジュースに口をつけた。

「おいしー!!」

笑顔で嬉しそうに見つめ合う二人が恋人のいちゃつきにしか見えない。
僕は行き場の失ったもう一つのジュースをそっと口に入れた。

甘い果物の味にホッと癒されながらも、さっきの落ち込みが少し甦ってきてなんだか寂しくなってくる。

「はるかちゃん、おべんとー。たべれる?」

ジュースを飲んで落ち着いたらしい碧斗くんが僕に声をかけてくれる。

「あ、うん。大丈夫。何が食べたいとかある?」

「うーんとね、からあげー!!」

「りんはたまごやきー!!」

二人の可愛いリクエストに少しだけ気分が浮上する。

西条さんもお昼、食べてくれるだろうか……。
あれが実は社交辞令だったら……そんなことはないと思いつつも、そんなことをついつい思ってしまった。
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