ベビーシッター先でラブラブな家族生活はじまりました

波木真帆

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寂しくなっちゃうかな

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「ぱぱー! とってもいいよー!!

「うん! すっごくいいー!!」

琳と碧斗くんのはしゃぐ声が耳に入って僕は目を覚ました。

「ん? ここは……?」

目を開けて周りを見るとそこは朝見た光景が広がっていた。
あれ? ここって、西条さんの部屋?

びっくりして起き上がると、やっぱりそこは西条さんの部屋だった。
なんで?

一瞬頭が働かなかったけれど、手のひらにサラサラのシーツが触れて思い出した。

あっ! そうだ! 
僕がシーツのことを聞いたからここに連れてきてくれて教えてくれたんだ。
僕がベッドに寝てしまったせいで、その時のシーツを捨てたんじゃないかって勝手に落ち込んで……。

それが違ったってわかってホッとして……そこからの記憶がないけどもしかしてそれで寝ちゃった?
西条さんが僕をまたベッドに寝かせてくれたってこと?

うそっ! 碧斗くんと琳をほったらかしにして昼寝なんてっ!

一気に血の気が引いて慌ててベッドから下りて扉に向かうと、ほんの少し開いていた扉から碧斗くんと琳の楽しそうな声が聞こえた。

「ぱぱー、これもはやくー!」

「わかった、わかった」

あれって、西条さんの声?

そっと扉を開いて外を覗き見すると、壁に額縁を飾っているのが見える。
邪魔にならないようにゆっくり近づくと、琳が僕に気づいた。

「あー! はるかちゃん、おきたー!!」

嬉しそうに駆け寄ってきた琳が僕の足にしがみつく。

「もうだいじょーぶ?」

「えっ?」

大丈夫ってどういうことだろう?

「はるかちゃんがつかれておねんねしてるってぱぱがいってた。もうつかれてない?」

西条さんがそんなことを……。勝手に寝ちゃってただけなのに、本当に優しいな。

僕はしゃがんで琳と目を合わせて笑顔を見せた。

「うん。ぐっすり寝たから大丈夫。碧斗くんたちのところに行こうか」

琳を抱っこして立ち上がり、西条さんと碧斗くんのところに近づくと西条さんに笑顔で迎えられる。

「はるかちゃん、みてみてー! ぱぱがかざってくれたのー!!」

嬉しそうな碧斗くんの声に壁に視線を向けると、二人が描いていたあの絵が飾られていた。
もちろん僕が西条さんにお姫さま抱っこされているあの絵も一緒に。

「本当に良く描けてる。遥くんもそう思うだろう?」

「え、はい。そうですね」

とっても上手なのは間違い無いけど、ちょっと恥ずかしい。
でもせっかく飾ってくれたんだし、子どもたちも喜んでいるからいいのかな。

「ねぇ、はるかちゃん。おなかすいたー!」

そんな琳の声に時計を見たらもう六時前。
結構寝たと思ったけど、ここまで時間が経っているとは思わなかった。

「あ、あのさぃ……悠臣さん、お仕事はよかったんですか?」

僕が寝ている間、仕事に行ったとは思えない。
だからあれからずっと碧斗くんと琳のそばにいてくれたはず。

「問題ないよ。さっきまでそこで仕事をしていたからね」

見ればダイニングテーブルの西条さんがいつも座っている場所にパソコンが置いてある。

「ついさっき、頼んだ額縁が届いたから飾っていたところだったんだ。今から食事を作るなら手伝おうか? それとも先に風呂に入ってきたほうがいいかな?」

「あ、えっと……」

今日のメニューは割と簡単に出来るけど、ご飯が炊けるまで少し時間がかかるかな。

「あの、できればお風呂に入ってもらってたほうが……」

「わかった。今日は着替えまで私がするから遥くんは料理に専念していて良いよ」

そういうが早いか、西条さんは僕の腕から琳を受け取り、碧斗くんを連れて着替えを用意しに行った。

なんだか西条さんの育児スキルが上がっている気がする。

「ぱぱー、りん。これがいいー!」

「碧斗もそれでいいか?」

「うん、りんくんとおなじがいいー!」

あっという間に着替えを選び終えて、

「はるかちゃん。おふろいってくるねー!!」

と嬉しそうな声をあげて三人で脱衣所に入って行った。

なんだか本当の家族みたいだな。
ご飯だけ炊いて、こっそり脱衣所を覗きに行くと三人の楽しそうなお風呂の様子が聞こえてくる。

「りんくん、みてー! あわあわー!」

「あおとくん、まっしろー!」

きゃっきゃと楽しそうに笑う琳の声が聞こえて嬉しくなる反面、また琳と二人暮らしに戻った時のことを考えるとちょっと不安になってくる。
今の生活があまりにも楽しすぎて、琳を寂しがらせてしまいそう。
何より、僕自身西条さんと碧斗くんと過ごすこの生活が楽しくて仕方がないんだ。

ここを出たら僕も……寂しくなっちゃうかもな。

でもいつまでもここでお世話になるわけにいかないし……。
あの元義弟の件が落ち着いたら、ここから出ないとな。
そしてまたここに通う生活に戻るんだ。

琳は保育園に通うのを渋りそう……。
もし、叶うなら碧斗くんと同じ幼稚園に行けるようにしてあげたいけど……働きながらじゃ無理かな。

現実的な問題が頭をよぎり、僕はため息を吐きながらキッチンに戻った。
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