パパ活相手は婚約者? 〜セレブなイケメン社長に抗えません

波木真帆

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僕の気持ち

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バーンと扉が開いて眩い光が差し込んで来る。

「わーっ!」

「ふふっ。行くよ」

まだ光に慣れていない目で征輝さんに引っ張られるように中へと進んでいく。
耳に入ってくる声でたくさんの人がいることだけはわかった。

ようやく光に慣れてきた僕の目に飛び込んできたのは綺麗なドレスや高級そうなスーツに身を包んだ人たち。
おそらく100人以上はいるだろう。
その人たちがみんな僕たちを見ている。

『見て! 海堂さんよ!』
『ああ、やっぱり素敵~!』
『ねぇ、隣にいるのってまさか?』
『ええーっ、嘘でしょ? 男じゃない!』
『でも、ものすごく可愛い子だわ!』
『確かに! あの子なら俺もいけるな』
『ちょっと! やめてよ!』
『しかもあれ見て! ほら、あの子がつけてるカフスと時計!』
『ああっ! 世界に一つしかないっていう特大ダイヤのカフス』
『時計も5000万はするって海堂さんが一番気に入っている時計でしょ?』
『あれつけてるってことは本当に彼が?』
『うそーっ!! 海堂さんのこと狙ってたのに!!』
『いや、あんたじゃ無理でしょ!』
『何よ! 失礼ね!!』

笑顔の人たちもいれば、なぜか僕を睨みつけているような人もいる。
その鋭い視線に僕の身体がびくりと震えると征輝さんはすぐに気づいて、

「大丈夫。怖くないよ。私がついているから」

と耳元で囁いてくれた。

その声に少し安心しながら、征輝さんに抱き寄せられ連れられるまま先へ進むとそこに一人の男性がいた。

「征輝。遅かったじゃないか。今日の海堂商事創立50周年の祝賀パーティーで後継者のお前が恋人を連れてくると言うからみんな待っていたのだぞ。それでお前の恋人とやらはどこだ? 紹介してくれ」

「父さん。彼が私の大切な恋人で、結婚の約束をしている安曇史希くんです」

「お前、冗談を言っている場合か? 彼は男じゃないか」

「冗談なんかじゃありませんよ。元々、私は男性しか愛せません。それは父さんもご存じだったのではないですか? だから無理やり私に縁談を進めていたのでしょう?」

「それは…‥この海堂商事のためだろう! お前だってこの会社がなくなるのは困るだろう? お前がどうしても男しか愛せないならその恋人とやらは認めてやる。愛人にでも側室にでも何でも好きにすればいい。だから、結婚して子どもだけは……跡継ぎだけは作ってくれないか」

「あなたは私に愛のない結婚をして子どもまで作れというのですか? それこそ無理な話ですね。私は彼じゃないと勃たないので、女性とそんな行為などできません」

「な――っ!!」

征輝さんの明け透けな言葉に征輝さんのお父さんは顔を真っ赤にして、今度は僕の方に目を向けた。

「お前、その可愛い顔で征輝をたぶらかしたのか? はっ。男同士で気持ちわるい! お前も頭がおかしいんじゃないか!」

な――っ! 
酷い! 酷すぎる!!
大体男同士の何がいけないんだ!

「父さ――」
「お、お言葉ですがっ、征輝さんは素敵な方です!! 父親のあなたが理解していないのですか? 僕は好きになるのに同性だとか異性だとか関係ないと思います! ぼ、僕は人間として征輝さんのことが好きなんです!! あなたにとやかく言われる覚えはありません!!!」

ついムカついて大声を張り上げてしまった。

「な――っ!!」

「史希……」

頭から湯気でも出しそうなくらいの真っ赤な顔で征輝さんのお父さんが僕を睨みつけている。
けれど、隣にいる征輝さんは驚きの表情を浮かべたものの、すぐに笑顔になって僕をギュッと抱きしめた。
こんなに大勢の人がいる前で抱きしめられてドキドキしてしまう。

「あ、あの……征輝さん……」

「史希……ありがとう。愛してるよ」

ちゅっと僕の頬にキスをして、目の前にいるお父さんに睨みつけた。

「いい機会ですからはっきりと言っておきます。私は海堂商事を継ぐ気などありません。後継者なら他の方にどうぞ」

「何? お前、海堂商事を捨ててどうする気だ?」

「あなたはご存じなかったでしょうが、私はすでに自分の会社を持っています。海堂商事の名など私には必要ありません」

「本当にいいのか? お前の会社などすぐに潰してやるぞ!」

「できるものならお好きにどうぞ。まぁ、あなたにそれだけの力はないと思いますが……。それに、私には彼がいてくれればそれでいい。失礼します」

「ちょっと待ちなさいっ!!」

お父さんに声をかけられても征輝さんは振り向くことなく足早にその場を立ち去った。
そして、ホテルの玄関に待たせておいたさっきの車に乗り込み、どこかへと向かった。

「史希くん、驚かせて悪かったね」

「いいえ、でも本当によかったんですか? 僕なんかが恋人だと思われたままで」

「僕なんかなんて言わないでくれ。君がいいんだ。それに……嬉しかったよ、君の言葉」

「えっ……」

「私をああやって庇ってくれて嬉しかったんだ。あの気持ちは本心?」

あの時は無我夢中で、自分で何を言っているのかもよくわかっていなかったけれど、あのお父さんの言葉は絶対に許せなかったんだ。

「え? いや、あの……本心です。別に口から出まかせで言ったわけじゃ……。男とか女とか関係なく、人を好きになるのって素敵なことだと思うから……」

そう。
僕は正直なところを言うとまだ誰も好きになったことはない。
だからこそ、たくさんの人と付き合いを繰り返す司がすごいなと思ってる。

征輝さんが男の人しか好きになれないって聞いたのはもちろんびっくりしたけど、好きになれる人がいるっていうことだけでも幸せなことだと思うし、羨ましいなとも思う。
それに僕も……男の人とか関係なく征輝さんに惹かれてる。

「私を素敵な人だって、好きだって言ってくれたのも本心?」

「えっ? あ、はい。今日初めて出会いましたけど、最初カフェで声をかけて店員さんから守ってくれて優しいなって思いましたし、征輝さん、すごくかっこいいからドキドキしちゃったし……本当に素敵な人だなって思ってますよ」

「そうか……」

征輝さんが嬉しそうに笑ったその心からの笑顔に僕はまたドキッとしてしまった。

「まぁ、君と会うのは初めてではないんだけどな……」

「えっ? やっぱりどこかで会ったことがあるんですか? 実は僕もカフェで会った時、どこかであったような覚えが……」

「そうか。少しは君の記憶に残ってたのかな。まぁ、その話はおいおいするとしようか」

そんな話をしている間に車が止まったのは、高層マンションの前。

「さぁ、降りよう」

「えっ? ここ……」

「さぁ、どうぞ」

にっこりと笑顔で手を差し出されて、条件反射のように彼の手をとってしまった。
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