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縁が繋がっていく
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「えっ? ああっ、榎木くんじゃないか」
一瞬気づくのが遅れたのは白衣姿の彼を見慣れているからだろう。
センスのいいジャケットを着こなしている姿は、医者というよりはモデルのように見える。
まるで学生時代の彼のようで、全然変わっていない。
「こんなところで会うなんて珍しいな。ああ、有原くんとデートか」
榎木くんのすぐ後ろに並んで歩いていた彼を見て、すぐにわかった。
忙しい二人がこんなふうに時間を合わせてデートするのはなかなか難しいだろうに、珍しいタイミングで出会ったな。
「――っ、デートってそんな……っ」
「佳史、照れることはないだろう。デートに間違い無いんだから」
「もう賢吾は……」
高校時代からの付き合いだと聞いているが、それでもまだ揶揄うと照れる有原くんの姿は、榎木くんには可愛くて仕方がないのだろうな。
医学部に在籍しながら司法試験の勉強のために法学部の講義にも参加していた私にとって、二学年下の二人はどちらも直属の後輩に当たる。
この二人の仲の良さはどちらの学部でも有名だったが、卒業して十年以上経ってもこのラブラブぶりは羨ましいものがあるな。
「ははっ。相変わらずだな」
「貴船さんは……あっ、ここでお仕事ですか? 突然声をかけてしまいまして失礼しました」
仕事中には見えないだろうが、隣に座る蓮見さんに気づいてそう言ったのだろう。
慌てて頭を下げる榎木くんに
「いや、プライベートだから気にしないでいい」
というと、
「プライベート、ですか?」
キョトンとした顔で私と蓮見さんの顔を見ていた。
まぁ、珍しい組み合わせだからプライベートだと聞いて驚くのも無理はない。
「ははっ。妙な勘ぐりはしないでくれ。彼は蓮見周平さん。君たちの大学の先輩でもあるから名前は存じ上げているだろう?」
「えっ、蓮見さん……っ!」
私の言葉に榎木くんも有原くんも驚きの表情を見せている。
「それはお邪魔しまして大変失礼いたしました。私は聖ラグエル病院で医師をしております、榎木と申します」
「私は弁護士の有原と申します。お目にかかれて光栄です」
二人の丁寧な挨拶に蓮見さんも優しげな笑顔を見せる。
「ああ、丁寧にありがとう。せっかくのデート中に緊張させて悪かったな」
「い、いいえ。そんなことは」
今や伝説となっている蓮見先輩からの優しい言葉に二人はかなり緊張しているようだ。
「プライベートだと言ったが、私たちは今日は護衛でここにいるんだよ」
「えっ? 護衛、ですか?」
「ああ。ほら、あそこを見てごらん」
私の言葉に彼らが振り向くと、そこには楽しげにスイーツを食べている一花と浅香さんの姿が見える。
「あっ、一花くん。それに隣にいるのは、ここのオーナーの浅香さん?」
「ああ、ふとした縁で仲良くしてもらっているんだが、今日は浅香さんから招待を受けてお茶をしているんだ。二人っきりだと変なのが寄ってくるから、ここで私と蓮見さんで見守っているというわけだよ」
「なるほど、そういうことでしたか」
変なのが寄ってくるときいて、榎木くんがすぐに納得したのは有原くんとのことで慣れているからだろう。
有原くんも綺麗な顔立ちをしているから変なのが寄ってくるに違いない。
まぁ有段者だから、襲われても手を出されることはないだろうが、恋人としては心配に変わりはない。
榎木くんもまた、有段者だから手を出さない方が身のためだな。
と言っても、榎木くんの話によると年に数回は有原くんに声をかけてくるものがいるらしい。
それが男女問わずだというのだから大変だろうな。
きっと浅香さんも声をかけられることは多いだろう。
だからこそ、当然のように蓮見さんが護衛をしているのだろうから。
私は一花のそばにずっとついて、一人では行動させないつもりだから変なのが寄ってきても私が全て追い払ってやるつもりだ。
この中で一花は一番守ってあげないと危ない存在だからな。
「あっ! 榎木先生だ!!」
私たちと話をしている榎木くんの姿に一花が気づいたようで、榎木くんを呼ぶ声が聞こえた。
「お邪魔でしょうが、挨拶をしてもよろしいですか?」
「ああ、一花も榎木くんに報告したいだろうから行ってあげてくれ」
そういうと、榎木くんは我々に頭を下げて、有原くんと共に一花と浅香さんのいる席に近づいていった。
「彼らは爽やかなカップルだな。見てみて気持ちがいい」
「ええ、そうですね。彼らのことは大学からずっと知っていますが、本当に仲のいいカップルですよ」
どうやら、榎木くんと有原くんは、蓮見さんのお眼鏡に適ったようだ。
こうやって縁が繋がっていくのもいいものだな。
* * *
これまで征哉は、榎木先生には(主治医としての敬意から)敬語、有原くんには後輩への口調で話が進んでいましたが、征哉にとってはどちらも後輩に当たるので、後輩への口調で統一することにしました。
前の部分も訂正していますが、見過ごしている部分があったら教えてください。
すぐに訂正します。
一瞬気づくのが遅れたのは白衣姿の彼を見慣れているからだろう。
センスのいいジャケットを着こなしている姿は、医者というよりはモデルのように見える。
まるで学生時代の彼のようで、全然変わっていない。
「こんなところで会うなんて珍しいな。ああ、有原くんとデートか」
榎木くんのすぐ後ろに並んで歩いていた彼を見て、すぐにわかった。
忙しい二人がこんなふうに時間を合わせてデートするのはなかなか難しいだろうに、珍しいタイミングで出会ったな。
「――っ、デートってそんな……っ」
「佳史、照れることはないだろう。デートに間違い無いんだから」
「もう賢吾は……」
高校時代からの付き合いだと聞いているが、それでもまだ揶揄うと照れる有原くんの姿は、榎木くんには可愛くて仕方がないのだろうな。
医学部に在籍しながら司法試験の勉強のために法学部の講義にも参加していた私にとって、二学年下の二人はどちらも直属の後輩に当たる。
この二人の仲の良さはどちらの学部でも有名だったが、卒業して十年以上経ってもこのラブラブぶりは羨ましいものがあるな。
「ははっ。相変わらずだな」
「貴船さんは……あっ、ここでお仕事ですか? 突然声をかけてしまいまして失礼しました」
仕事中には見えないだろうが、隣に座る蓮見さんに気づいてそう言ったのだろう。
慌てて頭を下げる榎木くんに
「いや、プライベートだから気にしないでいい」
というと、
「プライベート、ですか?」
キョトンとした顔で私と蓮見さんの顔を見ていた。
まぁ、珍しい組み合わせだからプライベートだと聞いて驚くのも無理はない。
「ははっ。妙な勘ぐりはしないでくれ。彼は蓮見周平さん。君たちの大学の先輩でもあるから名前は存じ上げているだろう?」
「えっ、蓮見さん……っ!」
私の言葉に榎木くんも有原くんも驚きの表情を見せている。
「それはお邪魔しまして大変失礼いたしました。私は聖ラグエル病院で医師をしております、榎木と申します」
「私は弁護士の有原と申します。お目にかかれて光栄です」
二人の丁寧な挨拶に蓮見さんも優しげな笑顔を見せる。
「ああ、丁寧にありがとう。せっかくのデート中に緊張させて悪かったな」
「い、いいえ。そんなことは」
今や伝説となっている蓮見先輩からの優しい言葉に二人はかなり緊張しているようだ。
「プライベートだと言ったが、私たちは今日は護衛でここにいるんだよ」
「えっ? 護衛、ですか?」
「ああ。ほら、あそこを見てごらん」
私の言葉に彼らが振り向くと、そこには楽しげにスイーツを食べている一花と浅香さんの姿が見える。
「あっ、一花くん。それに隣にいるのは、ここのオーナーの浅香さん?」
「ああ、ふとした縁で仲良くしてもらっているんだが、今日は浅香さんから招待を受けてお茶をしているんだ。二人っきりだと変なのが寄ってくるから、ここで私と蓮見さんで見守っているというわけだよ」
「なるほど、そういうことでしたか」
変なのが寄ってくるときいて、榎木くんがすぐに納得したのは有原くんとのことで慣れているからだろう。
有原くんも綺麗な顔立ちをしているから変なのが寄ってくるに違いない。
まぁ有段者だから、襲われても手を出されることはないだろうが、恋人としては心配に変わりはない。
榎木くんもまた、有段者だから手を出さない方が身のためだな。
と言っても、榎木くんの話によると年に数回は有原くんに声をかけてくるものがいるらしい。
それが男女問わずだというのだから大変だろうな。
きっと浅香さんも声をかけられることは多いだろう。
だからこそ、当然のように蓮見さんが護衛をしているのだろうから。
私は一花のそばにずっとついて、一人では行動させないつもりだから変なのが寄ってきても私が全て追い払ってやるつもりだ。
この中で一花は一番守ってあげないと危ない存在だからな。
「あっ! 榎木先生だ!!」
私たちと話をしている榎木くんの姿に一花が気づいたようで、榎木くんを呼ぶ声が聞こえた。
「お邪魔でしょうが、挨拶をしてもよろしいですか?」
「ああ、一花も榎木くんに報告したいだろうから行ってあげてくれ」
そういうと、榎木くんは我々に頭を下げて、有原くんと共に一花と浅香さんのいる席に近づいていった。
「彼らは爽やかなカップルだな。見てみて気持ちがいい」
「ええ、そうですね。彼らのことは大学からずっと知っていますが、本当に仲のいいカップルですよ」
どうやら、榎木くんと有原くんは、蓮見さんのお眼鏡に適ったようだ。
こうやって縁が繋がっていくのもいいものだな。
* * *
これまで征哉は、榎木先生には(主治医としての敬意から)敬語、有原くんには後輩への口調で話が進んでいましたが、征哉にとってはどちらも後輩に当たるので、後輩への口調で統一することにしました。
前の部分も訂正していますが、見過ごしている部分があったら教えてください。
すぐに訂正します。
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