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父の夢
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ずっと一花が私の元から離れて行かないようにそばに置いていたが、こんなにも一花に愛されているんだ。
私ももう少し寛大にならなければな。
そんな思いを抱き、翌日早速仕事の合間に電話をかけた。
相手は櫻葉会長。
ー征哉くん、一花に何かあったのか?
開口一番、一花の心配か。
やはり父親だな。
まぁ、私から突然連絡が来たら一花に何かあったかと思うだろうな。
ー突然ご連絡して、心配をおかけして申し訳ありません。実は、一花とそちらに宿泊したいというお話でご連絡差し上げました。
ーな――っ、本当か! 一花が我が家に泊まってくれるのか。ああ……こんなに早いとは思わなかったな。
ーただ、一花はまだ自由には動けませんので、私も一緒に泊まらせていただくことになりますが、よろしいですか?
ー私だけでは一花の世話は無理、ということか?
ー申し訳ありません。櫻葉会長を信用していないということではないのです。ただ、櫻葉会長に一花を風呂に入れていただくわけには……申し訳ありません。私が狭量なだけです。
ーははっ。正直だな、征哉くんは。まぁ、君の気持ちはわかるよ。まだ生まれたばかりの赤子ならまだしも、最愛の人の裸を誰にも見せたくないのは恋人として当然の想いだからな。私は父親だから、一花にそのような感情は抱くことはないが、見られるということ自体が嫌なのだということは理解できる。私が君の立場でもそうするだろう。
ーありがとうございます。そう仰っていただけて嬉しいです。
ーまぁ、それがなくともまだ一花は怪我を負っている身。風呂の入り方にもいろいろと気遣うところはあるだろう。それは慣れている者がしてあげたほうが一花の負担も軽くなるだろうからな。一花が疲れないことが大事だ。
ーはい。一花のことをそこまで理解してくださってありがとうございます。
ーならば、君たち二人で宿泊ということでこちらは用意しておこう。一つだけ、わがままを言ってもいいか?
ーなんでしょうか?
ー客間に布団を並べるから、寝るときだけは一花と君と三人で寝かせてもらえないか?
ー櫻葉会長が布団で寝られるのですか?
ーああ。元々、一花が生まれて家に戻ってきたら、家族で川の字になって寝ようと麻友子と話をしていたんだ。赤子には柔らかすぎる大人用のベッドはよくないと聞いていたのでな。
その言葉に櫻葉会長がどれほど家族で過ごす時間を待ち侘びていたかがわかる。
何もなければそれは叶う夢であったはずなのに。
その願いはなんとしてでも聞き届けてやるべきだろう。
ーそう、でしたか……。わかりました。そのようにさせていただきます。きっと一花も喜びますよ。
ーそうか……ありがとう、征哉くん。
ーそれで、そちらに伺う日ですが今週の土曜日でも構いませんか?
ーそんなに早くきてくれるのか? ああ、我が家はいつでも構わないよ。君たちが家に来てくれた日からもう布団も何もかも用意しているんだ。
ーでは一花にそのように伝えますね。
ーああ、そうだ。一花の好きな食べ物はなんだ? 夕食に用意しておこう。
ー一花はどのような食事も喜びますよ。ほとんどが初めて食べる料理なので。
ーそうか……わかった。そのように伝えておこう。
これだけでも一花の置かれた環境がしっかりと伝わっただろうな。
ーああ、できればプリンをお願いします。
ープリン?
ーはい。一花が好きなんです。柔らかいものも好きですが、一花は昔ながらの固いプリンが好みのようですよ。
ー――っ!!! そうなのか、それは麻友子も大好きだったんだ。やはり親子なのだな。
ーきっとそのことを聞いたら一花は喜びますよ。
一花の中に麻友子さんは受け継がれていたのだと、泣いて喜ぶかもしれないな。
ーじゃあ、土曜日楽しみにしているよ。
ーもうひとつ、お話があるんです。
ーどうした?
ー実は同じ土曜日に、谷垣くんが例の直純くんに会いに行ってくれることになりました。
ー谷垣くんが? どうして?
そこで私は志摩くんが提案してくれた話を櫻葉会長に伝えた。
ー彼ならば、直純くんの気持ちが理解できるのではないかと。谷垣くん自身も快諾してくれました。
ーそうか、確かに彼なら適任かもしれないな。
ーはい。ですから、土曜日はその報告も入るかもしれないので、その間は一花を櫻葉会長にお願いできたらと思いまして……。
ーなるほど。そういうことか。わかった。任せておいてくれ。
これで安心だ。
ーでは土曜日、一花と二人で伺わせていただきます。
ーああ、一花の実家なのだから君も気を遣わないでくれ。私たちはもう親戚なのだからな。
ーはい。ありがとうございます。
櫻葉会長の優しい言葉に嬉しくなりながら私は電話を切った。
私ももう少し寛大にならなければな。
そんな思いを抱き、翌日早速仕事の合間に電話をかけた。
相手は櫻葉会長。
ー征哉くん、一花に何かあったのか?
開口一番、一花の心配か。
やはり父親だな。
まぁ、私から突然連絡が来たら一花に何かあったかと思うだろうな。
ー突然ご連絡して、心配をおかけして申し訳ありません。実は、一花とそちらに宿泊したいというお話でご連絡差し上げました。
ーな――っ、本当か! 一花が我が家に泊まってくれるのか。ああ……こんなに早いとは思わなかったな。
ーただ、一花はまだ自由には動けませんので、私も一緒に泊まらせていただくことになりますが、よろしいですか?
ー私だけでは一花の世話は無理、ということか?
ー申し訳ありません。櫻葉会長を信用していないということではないのです。ただ、櫻葉会長に一花を風呂に入れていただくわけには……申し訳ありません。私が狭量なだけです。
ーははっ。正直だな、征哉くんは。まぁ、君の気持ちはわかるよ。まだ生まれたばかりの赤子ならまだしも、最愛の人の裸を誰にも見せたくないのは恋人として当然の想いだからな。私は父親だから、一花にそのような感情は抱くことはないが、見られるということ自体が嫌なのだということは理解できる。私が君の立場でもそうするだろう。
ーありがとうございます。そう仰っていただけて嬉しいです。
ーまぁ、それがなくともまだ一花は怪我を負っている身。風呂の入り方にもいろいろと気遣うところはあるだろう。それは慣れている者がしてあげたほうが一花の負担も軽くなるだろうからな。一花が疲れないことが大事だ。
ーはい。一花のことをそこまで理解してくださってありがとうございます。
ーならば、君たち二人で宿泊ということでこちらは用意しておこう。一つだけ、わがままを言ってもいいか?
ーなんでしょうか?
ー客間に布団を並べるから、寝るときだけは一花と君と三人で寝かせてもらえないか?
ー櫻葉会長が布団で寝られるのですか?
ーああ。元々、一花が生まれて家に戻ってきたら、家族で川の字になって寝ようと麻友子と話をしていたんだ。赤子には柔らかすぎる大人用のベッドはよくないと聞いていたのでな。
その言葉に櫻葉会長がどれほど家族で過ごす時間を待ち侘びていたかがわかる。
何もなければそれは叶う夢であったはずなのに。
その願いはなんとしてでも聞き届けてやるべきだろう。
ーそう、でしたか……。わかりました。そのようにさせていただきます。きっと一花も喜びますよ。
ーそうか……ありがとう、征哉くん。
ーそれで、そちらに伺う日ですが今週の土曜日でも構いませんか?
ーそんなに早くきてくれるのか? ああ、我が家はいつでも構わないよ。君たちが家に来てくれた日からもう布団も何もかも用意しているんだ。
ーでは一花にそのように伝えますね。
ーああ、そうだ。一花の好きな食べ物はなんだ? 夕食に用意しておこう。
ー一花はどのような食事も喜びますよ。ほとんどが初めて食べる料理なので。
ーそうか……わかった。そのように伝えておこう。
これだけでも一花の置かれた環境がしっかりと伝わっただろうな。
ーああ、できればプリンをお願いします。
ープリン?
ーはい。一花が好きなんです。柔らかいものも好きですが、一花は昔ながらの固いプリンが好みのようですよ。
ー――っ!!! そうなのか、それは麻友子も大好きだったんだ。やはり親子なのだな。
ーきっとそのことを聞いたら一花は喜びますよ。
一花の中に麻友子さんは受け継がれていたのだと、泣いて喜ぶかもしれないな。
ーじゃあ、土曜日楽しみにしているよ。
ーもうひとつ、お話があるんです。
ーどうした?
ー実は同じ土曜日に、谷垣くんが例の直純くんに会いに行ってくれることになりました。
ー谷垣くんが? どうして?
そこで私は志摩くんが提案してくれた話を櫻葉会長に伝えた。
ー彼ならば、直純くんの気持ちが理解できるのではないかと。谷垣くん自身も快諾してくれました。
ーそうか、確かに彼なら適任かもしれないな。
ーはい。ですから、土曜日はその報告も入るかもしれないので、その間は一花を櫻葉会長にお願いできたらと思いまして……。
ーなるほど。そういうことか。わかった。任せておいてくれ。
これで安心だ。
ーでは土曜日、一花と二人で伺わせていただきます。
ーああ、一花の実家なのだから君も気を遣わないでくれ。私たちはもう親戚なのだからな。
ーはい。ありがとうございます。
櫻葉会長の優しい言葉に嬉しくなりながら私は電話を切った。
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