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日本旅行編
お礼の品を求めて 3
ちょっと長くなったのでタイトル表記を変更しました。
次回で終わるかな。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
『この桜味のフィナンシェを試食して見ませんか? これ、すごく美味しいのでおすすめですよ』
悩んでいた私にイクミ殿が声をかけてくれる。
フィナンシェはフランス発祥の焼き菓子。
生まれてからこれまで幾度となく口にしているが、サクラの味というものは食べたことがない。
フランスではフィナンシェの味のバリエーションは少ない。
ほとんどの店でシンプルかショコラのみだ。
だから日本のようにマッチャやシトロン味など珍しいものを見るとなんとなく味の想像がつかない。
その中でもこのサクラ味なるものが一番想像がつかないものだろう。
だがせっかくここにきたのだ。
試食ならば口に合わなくても体験するだけで御の字というところだろう。
『おすすめいただきありがとうございます。それではそちらをいただきましょう』
そう告げると、イクミ殿はコウスケ殿と何やら日本語でいくつか言葉を交わした後、私を見た。
『あちらの席に座って待っていましょう。すぐに持ってきてくれますから』
コウスケ殿をその場に残し、私はイクミ殿に案内されて窓際の席に座った。
彼は私の向かいに座り、笑顔で私を見る。
『あの、僕は名嘉村郁未といいます。あなたのお名前を伺ってもよろしいですか?』
そう尋ねられて、私は自己紹介もしていないことに気づいた。
私としたことがなんたる失態……
旦那さまに知られたら呆れられそうだ。
『失礼いたしました。私、フランスのロレーヌ家で執事をしておりますジュール・エヴルーと申します』
『えっ? フランスのロレーヌ家って……あの、有名なロレーヌ一族の……?』
目を丸くして驚くその反応を見るのはいつぶりだろう。
フランスではロレーヌ一族同様に、ロレーヌ家に代々使えるエヴルー家も有名なため、自己紹介などするまでもなかった。
逆を言えば、イクミ殿もコウスケ殿も私が何者か知らずに心からの善意で助けてくれたということだ。
本当にありがたい。
『何も知らずにすみません』
『いいえ。困っていたこの爺を助けていただいて本当に感謝しているのですよ。それにここは日本。フランスでのことは何も関係ありませんから』
そう告げると、彼は少しホッとしたように笑顔を見せてくれた。
そこにコウスケ殿がスタッフと一緒に戻ってきた。
スタッフの彼が持っているトレイにはおおよそ試食とは思えないほどのお菓子がいくつも載っているのがわかる。
『あの、これは……?』
『どれも試食ですよ。せっかくですので、フィナンシェだけではなくおすすめのものを全て揃えていただいたんです』
コウスケ殿がさらりとそのようなことを教えてくれるが、これが全て試食とは思えない。
だが、どれも美味しそうだ。
もしかしたら私に気を遣わせないための言葉かもしれない。
それならここはありがたく甘えておこうか。
この礼をする機会は必ず訪れるだろう。
そう思ってありがたくいただくことにした。
美しいお皿に盛られた可愛らしいお菓子がテーブルに並べられる。
その置き方は実に美しく見ていて気持ちがいい。
その後、もう一人のスタッフがやってきて、私たちの前にカップを置いてくれた。
この香りはアッサムか。
『ごゆっくりお過ごしください』
英語でそう告げて、スタッフは下がっていく。
『ジュールさん。どうぞ召し上がってください』
イクミ殿に声をかけられて私はまず紅茶のカップを手にした。
香りは悪くない。
けれど、一口飲んで少し残念に思ってしまった。
少し抽出時間が長すぎる。
思わず眉を顰めてしまったのを向かいに座っていた二人に見られてしまったようだ。
『何か、ありましたか?』
そう尋ねるイクミ殿の隣で、コウスケ殿は私の気持ちを察したようだ。
彼は同じように紅茶を口にして小さく頷いた。
『紅茶でしょう? これは少し抽出時間が長すぎましたね』
その的確な言葉に驚きを隠せない。
『え、ええ。その通りです。コウスケ殿はよく分かりましたね』
『これでもホテル勤めですから支配人になる前に全ての業務をまわり、厳しく指導されました。紅茶の淹れ方はイギリス式もフランス式もしっかり学びましたよ』
にこりと笑顔を見せるが、なるほど。ホテル勤めか。
それならここまで語学が堪能なのもわかる。
『もし、よろしければここで本場フランスの紅茶を淹れていただけませんか?』
『それは構いませんが、お店の中でよろしいのですか?』
初めてきた店でそのようなことをするなんて、フランスでは考えらない。
『ええ。ここの責任者は大学の同期なんです。なので、彼に許可を貰えば問題ありません。少しお待ちください』
そういうと彼はスッと立ち上がり、スタッフのもとに向かった。
『すみません。プライベートでお越しの時に……』
『いいえ。紅茶を淹れるのは私の生活の一部ですから構いませんよ』
日本にもこうしてフランスの紅茶を楽しんでくれる人がいるのなら嬉しい限りだ。
* * *
ジュールのファーストネーム、出したかどうか忘れて今回つけて見たので、既出だったらこっそり教えてください(笑)
次回で終わるかな。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
『この桜味のフィナンシェを試食して見ませんか? これ、すごく美味しいのでおすすめですよ』
悩んでいた私にイクミ殿が声をかけてくれる。
フィナンシェはフランス発祥の焼き菓子。
生まれてからこれまで幾度となく口にしているが、サクラの味というものは食べたことがない。
フランスではフィナンシェの味のバリエーションは少ない。
ほとんどの店でシンプルかショコラのみだ。
だから日本のようにマッチャやシトロン味など珍しいものを見るとなんとなく味の想像がつかない。
その中でもこのサクラ味なるものが一番想像がつかないものだろう。
だがせっかくここにきたのだ。
試食ならば口に合わなくても体験するだけで御の字というところだろう。
『おすすめいただきありがとうございます。それではそちらをいただきましょう』
そう告げると、イクミ殿はコウスケ殿と何やら日本語でいくつか言葉を交わした後、私を見た。
『あちらの席に座って待っていましょう。すぐに持ってきてくれますから』
コウスケ殿をその場に残し、私はイクミ殿に案内されて窓際の席に座った。
彼は私の向かいに座り、笑顔で私を見る。
『あの、僕は名嘉村郁未といいます。あなたのお名前を伺ってもよろしいですか?』
そう尋ねられて、私は自己紹介もしていないことに気づいた。
私としたことがなんたる失態……
旦那さまに知られたら呆れられそうだ。
『失礼いたしました。私、フランスのロレーヌ家で執事をしておりますジュール・エヴルーと申します』
『えっ? フランスのロレーヌ家って……あの、有名なロレーヌ一族の……?』
目を丸くして驚くその反応を見るのはいつぶりだろう。
フランスではロレーヌ一族同様に、ロレーヌ家に代々使えるエヴルー家も有名なため、自己紹介などするまでもなかった。
逆を言えば、イクミ殿もコウスケ殿も私が何者か知らずに心からの善意で助けてくれたということだ。
本当にありがたい。
『何も知らずにすみません』
『いいえ。困っていたこの爺を助けていただいて本当に感謝しているのですよ。それにここは日本。フランスでのことは何も関係ありませんから』
そう告げると、彼は少しホッとしたように笑顔を見せてくれた。
そこにコウスケ殿がスタッフと一緒に戻ってきた。
スタッフの彼が持っているトレイにはおおよそ試食とは思えないほどのお菓子がいくつも載っているのがわかる。
『あの、これは……?』
『どれも試食ですよ。せっかくですので、フィナンシェだけではなくおすすめのものを全て揃えていただいたんです』
コウスケ殿がさらりとそのようなことを教えてくれるが、これが全て試食とは思えない。
だが、どれも美味しそうだ。
もしかしたら私に気を遣わせないための言葉かもしれない。
それならここはありがたく甘えておこうか。
この礼をする機会は必ず訪れるだろう。
そう思ってありがたくいただくことにした。
美しいお皿に盛られた可愛らしいお菓子がテーブルに並べられる。
その置き方は実に美しく見ていて気持ちがいい。
その後、もう一人のスタッフがやってきて、私たちの前にカップを置いてくれた。
この香りはアッサムか。
『ごゆっくりお過ごしください』
英語でそう告げて、スタッフは下がっていく。
『ジュールさん。どうぞ召し上がってください』
イクミ殿に声をかけられて私はまず紅茶のカップを手にした。
香りは悪くない。
けれど、一口飲んで少し残念に思ってしまった。
少し抽出時間が長すぎる。
思わず眉を顰めてしまったのを向かいに座っていた二人に見られてしまったようだ。
『何か、ありましたか?』
そう尋ねるイクミ殿の隣で、コウスケ殿は私の気持ちを察したようだ。
彼は同じように紅茶を口にして小さく頷いた。
『紅茶でしょう? これは少し抽出時間が長すぎましたね』
その的確な言葉に驚きを隠せない。
『え、ええ。その通りです。コウスケ殿はよく分かりましたね』
『これでもホテル勤めですから支配人になる前に全ての業務をまわり、厳しく指導されました。紅茶の淹れ方はイギリス式もフランス式もしっかり学びましたよ』
にこりと笑顔を見せるが、なるほど。ホテル勤めか。
それならここまで語学が堪能なのもわかる。
『もし、よろしければここで本場フランスの紅茶を淹れていただけませんか?』
『それは構いませんが、お店の中でよろしいのですか?』
初めてきた店でそのようなことをするなんて、フランスでは考えらない。
『ええ。ここの責任者は大学の同期なんです。なので、彼に許可を貰えば問題ありません。少しお待ちください』
そういうと彼はスッと立ち上がり、スタッフのもとに向かった。
『すみません。プライベートでお越しの時に……』
『いいえ。紅茶を淹れるのは私の生活の一部ですから構いませんよ』
日本にもこうしてフランスの紅茶を楽しんでくれる人がいるのなら嬉しい限りだ。
* * *
ジュールのファーストネーム、出したかどうか忘れて今回つけて見たので、既出だったらこっそり教えてください(笑)
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