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日本旅行編
楽しい編み物
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「空良くんはどれにする?」
「うーん、どれも素敵で悩んじゃうな。でも、あの綺麗な水色はちょっと気になってる」
「どれどれ?」
棚に置かれた毛糸を上の段から下の段まで何度も見ていた空良くんが、少し身を乗り出して上の段から取ったのは、水色よりももっと青っぽい色。とても爽やかで綺麗な色だ。
「あ、これ空色って書いてあるよ!」
「あー、本当だ! 空良くんの色だよ。これならきっと悠木さんも喜ぶね」
「でも、寛人さんには可愛すぎない?」
「大丈夫、絶対似合うと思うよ! ねぇ、理央くん」
「うん! とってもいい色だよ」
僕たちの言葉に空良くんは安心したみたい。
「じゃあ僕これにする!」
「よし、毛糸は決まったから最初の部分だけやってみようか」
自分で選んだ毛糸を大切に持ったまま、さっきのふわふわのラグのとこに戻った。
「マフラーだから、これでやってみよう」
理央くんに二本の棒を渡される。
これにどうやって毛糸を巻きつける? のか全くわからない。
「まず、毛糸の先を取り出して……これくらい残して、二本の棒にくくりつけるんだよ」
理央くんが目の前でやってくれるのを真似しながら、同じように毛糸をくくりつけた。
「うん、上手。上手。そうしたら、編み目を作っていくね」
理央くんはサッサっと軽やかに棒を動かして編み目というのを作っていく。理央くんがするととてつもなく簡単に見えるから不思議だな。
「わー、すでに難しそう」
「でもね、意外と慣れたら簡単なんだよ。同じ動きの連続だし」
「そうなんだ。ちょっとやってみる!」
「うん、僕も!!」
空良くんと一緒に棒を動かして毛糸を掬って編み目を作っていく。
「こ、これで合ってる?」
「大丈夫! ちゃんとできてるよ!! すごい、すごい!」
「僕のもできてる?」
「空良くんも上手! できてるよ! 二人ともすごーい!!」
理央くんが手放しで褒めてくれるから嬉しくてたまらない。
理央くんって人をやる気にさせるのが上手いなぁ。
そうしてなんとか24個の編み目を作った。
「二人ともすごいよ。ここまでが準備段階で、これから編んでいくね。二種類あるから二人に選んでもらうから」
「二種類?」
驚く僕たちを前に、理央くんは驚くほどのスピードであっという間に10cmほど編み上げた。
そして、今度はもう一組の編み棒を出して、同じように編み目を作りそれもまた10cmほど編み上げた。
僕たちはあまりの凄さに言葉もなかった。
「り、りおくん……」
「ごめん、ごめん。ちょっと二人に早く教えたくて急いじゃった」
笑いながら、編みかけの二つのマフラーを見せてくれる。
「これ、ちょっと編んだだけだからわかりにくいかもしれないけど、形が違うのがわかる?」
「あー、本当だ!」
「うん! 違う!」
「こっちは表編みと、裏編みを一列全部やっていく編み方なんだ。ほら、綺麗に一面揃ってるでしょう?」
理央くんが見せてくれた通り、表と裏で柄というのかな? それが違う。
「こっちは、その表編みと裏編みを一列の中で交互に編んでいくものなんだけど、こうするとマフラーに伸縮性ができるんだ」
「わぁー、本当だ」
「すごーい! 全然違う!」
「ちょっと手間はかかるけれど、完成した時の綺麗さはこっちかな。でも初めてで難しい場合はこっちの一面のほうもいいよ。慣れてきたら交互編みに挑戦してもいいし」
理央くんが手本に見せてくれたものを何度も見比べたけれど、やっぱりエヴァンさんに似合うのはこっちの難しいほうだよね。
僕にはかなり難しそうだけど、せっかく作るなら喜んで欲しい。
「理央くん……僕、こっちで頑張ってみたい。難しいだろうけど、教えてくれる?」
「もちろんだよ!」
「理央くん……僕もこっち頑張りたい! いい?」
「うん、空良くんも頑張ろう! 二人なら絶対にできるよ!!」
理央くんの嬉しい応援と、空良くんと一緒に頑張るぞという連帯感で僕の心にはやる気が漲っていた。
まずは一列目。
最初に三つ、こっちの編み方で編んで……次はこっちの編み方で……それを交互に繰り返していく。
動き自体はそこまで難しくはないかなと思ったけど、数を間違えそうでそれが慎重になる。
でも三段目を編む頃にはだいぶ指が慣れてきた気がする。
「わぁー、やっぱり弓弦くんはヴァイオリンをやっているからかな。指の動きが滑らかでとっても上手だよ」
「ありがとう、理央くんに褒めてもらえると嬉しい」
本当に理央くんは人をやる気にさせる天才なのかも!
「空良くんもすっごく上手だよ。あ、そこ裏編みだよ」
「あ、そっか。理央くんが教えてくれるから助かる」
「いつも空良くんに勉強教えてもらってるから今日は反対だね」
そっか、いつも二人で勉強してるんだ。それはちょっと羨ましいかも。
僕にもリュカがいるけど、リュカは先生だし。僕がリュカに教えることはないもんなー。
それからしばらく編み続けて二人揃って十五段目を編み終えた頃、トントントンと扉を叩く音が聞こえた。
「「「わっ!」」」
集中していたからびっくりして三人揃って声が出た。
「そろそろ夕食だから声をかけにきたんだが、どうした? 大丈夫か?」
夕食? 観月さんのその言葉にびっくりして部屋の中にある時計を見たらこの部屋にきてから二時間以上経ってる。
「すごい、編み物してたら全然気づかなかったね」
「うん。びっくり! あ、これ隠さなきゃ!」
「凌也さん、開けないで! ちょっと待っててください」
理央くんが観月さんに声をかけている間に、棒からマフラーが外れないように棒の先端にキャップをはめた。
「ここに入れておいて」
「ありがとう」
理央くんに差し出された紙袋に作っていたものを入れてから、僕たちは扉に向かった。
「うーん、どれも素敵で悩んじゃうな。でも、あの綺麗な水色はちょっと気になってる」
「どれどれ?」
棚に置かれた毛糸を上の段から下の段まで何度も見ていた空良くんが、少し身を乗り出して上の段から取ったのは、水色よりももっと青っぽい色。とても爽やかで綺麗な色だ。
「あ、これ空色って書いてあるよ!」
「あー、本当だ! 空良くんの色だよ。これならきっと悠木さんも喜ぶね」
「でも、寛人さんには可愛すぎない?」
「大丈夫、絶対似合うと思うよ! ねぇ、理央くん」
「うん! とってもいい色だよ」
僕たちの言葉に空良くんは安心したみたい。
「じゃあ僕これにする!」
「よし、毛糸は決まったから最初の部分だけやってみようか」
自分で選んだ毛糸を大切に持ったまま、さっきのふわふわのラグのとこに戻った。
「マフラーだから、これでやってみよう」
理央くんに二本の棒を渡される。
これにどうやって毛糸を巻きつける? のか全くわからない。
「まず、毛糸の先を取り出して……これくらい残して、二本の棒にくくりつけるんだよ」
理央くんが目の前でやってくれるのを真似しながら、同じように毛糸をくくりつけた。
「うん、上手。上手。そうしたら、編み目を作っていくね」
理央くんはサッサっと軽やかに棒を動かして編み目というのを作っていく。理央くんがするととてつもなく簡単に見えるから不思議だな。
「わー、すでに難しそう」
「でもね、意外と慣れたら簡単なんだよ。同じ動きの連続だし」
「そうなんだ。ちょっとやってみる!」
「うん、僕も!!」
空良くんと一緒に棒を動かして毛糸を掬って編み目を作っていく。
「こ、これで合ってる?」
「大丈夫! ちゃんとできてるよ!! すごい、すごい!」
「僕のもできてる?」
「空良くんも上手! できてるよ! 二人ともすごーい!!」
理央くんが手放しで褒めてくれるから嬉しくてたまらない。
理央くんって人をやる気にさせるのが上手いなぁ。
そうしてなんとか24個の編み目を作った。
「二人ともすごいよ。ここまでが準備段階で、これから編んでいくね。二種類あるから二人に選んでもらうから」
「二種類?」
驚く僕たちを前に、理央くんは驚くほどのスピードであっという間に10cmほど編み上げた。
そして、今度はもう一組の編み棒を出して、同じように編み目を作りそれもまた10cmほど編み上げた。
僕たちはあまりの凄さに言葉もなかった。
「り、りおくん……」
「ごめん、ごめん。ちょっと二人に早く教えたくて急いじゃった」
笑いながら、編みかけの二つのマフラーを見せてくれる。
「これ、ちょっと編んだだけだからわかりにくいかもしれないけど、形が違うのがわかる?」
「あー、本当だ!」
「うん! 違う!」
「こっちは表編みと、裏編みを一列全部やっていく編み方なんだ。ほら、綺麗に一面揃ってるでしょう?」
理央くんが見せてくれた通り、表と裏で柄というのかな? それが違う。
「こっちは、その表編みと裏編みを一列の中で交互に編んでいくものなんだけど、こうするとマフラーに伸縮性ができるんだ」
「わぁー、本当だ」
「すごーい! 全然違う!」
「ちょっと手間はかかるけれど、完成した時の綺麗さはこっちかな。でも初めてで難しい場合はこっちの一面のほうもいいよ。慣れてきたら交互編みに挑戦してもいいし」
理央くんが手本に見せてくれたものを何度も見比べたけれど、やっぱりエヴァンさんに似合うのはこっちの難しいほうだよね。
僕にはかなり難しそうだけど、せっかく作るなら喜んで欲しい。
「理央くん……僕、こっちで頑張ってみたい。難しいだろうけど、教えてくれる?」
「もちろんだよ!」
「理央くん……僕もこっち頑張りたい! いい?」
「うん、空良くんも頑張ろう! 二人なら絶対にできるよ!!」
理央くんの嬉しい応援と、空良くんと一緒に頑張るぞという連帯感で僕の心にはやる気が漲っていた。
まずは一列目。
最初に三つ、こっちの編み方で編んで……次はこっちの編み方で……それを交互に繰り返していく。
動き自体はそこまで難しくはないかなと思ったけど、数を間違えそうでそれが慎重になる。
でも三段目を編む頃にはだいぶ指が慣れてきた気がする。
「わぁー、やっぱり弓弦くんはヴァイオリンをやっているからかな。指の動きが滑らかでとっても上手だよ」
「ありがとう、理央くんに褒めてもらえると嬉しい」
本当に理央くんは人をやる気にさせる天才なのかも!
「空良くんもすっごく上手だよ。あ、そこ裏編みだよ」
「あ、そっか。理央くんが教えてくれるから助かる」
「いつも空良くんに勉強教えてもらってるから今日は反対だね」
そっか、いつも二人で勉強してるんだ。それはちょっと羨ましいかも。
僕にもリュカがいるけど、リュカは先生だし。僕がリュカに教えることはないもんなー。
それからしばらく編み続けて二人揃って十五段目を編み終えた頃、トントントンと扉を叩く音が聞こえた。
「「「わっ!」」」
集中していたからびっくりして三人揃って声が出た。
「そろそろ夕食だから声をかけにきたんだが、どうした? 大丈夫か?」
夕食? 観月さんのその言葉にびっくりして部屋の中にある時計を見たらこの部屋にきてから二時間以上経ってる。
「すごい、編み物してたら全然気づかなかったね」
「うん。びっくり! あ、これ隠さなきゃ!」
「凌也さん、開けないで! ちょっと待っててください」
理央くんが観月さんに声をかけている間に、棒からマフラーが外れないように棒の先端にキャップをはめた。
「ここに入れておいて」
「ありがとう」
理央くんに差し出された紙袋に作っていたものを入れてから、僕たちは扉に向かった。
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