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俺の居場所
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「すみません……俺、一人で騒いじゃって……」
「いや、気にしないでいいよ。いつもアレックスと二人だからこうして楽しく食事ができるのが嬉しいんだよ」
「そう、なんですか?」
こんな広い家だし、先生は人を家に呼ぶのも好きそうだからしょっちゅうパーティーでもしているのかななんて思っていた。それこそ、恋人とかも家に呼んでるのかな、なんて……
最初に同居人と聞いた時も恋人さんを紹介されるのかなって思ったくらいだ。
アレックスだったけど……
「なんだか意外そうな顔をしているね」
「あ、あの……恋人さんとか、一緒に食事しているのかなって思ってたのでびっくりしちゃって……」
ここで隠すのもなんだかおかしい気がして、正直に伝えると、球磨先生はなんだか楽しそうに笑った。
「医師という仕事は結構不規則だから、あまり恋人はできにくい職業かもしれないね。それに私はアレックスがいるから」
「アレックス、ですか?」
「ああ、昔からよくいうだろう? ペットを飼うと結婚が縁遠くなるって」
「そうなんですか? お医者さんだからモテるのかと……」
そんな俺の言葉に先生は「ははっ」と大きな声で笑った。
「そんなことはないよ。もしかしてそれをめあてに医学部に?」
「いえ、俺はそんな……っ」
俺は医師になるつもりはない。このまま勉強を続けて研究者になりたいと思っている。
だから、先生の論文に感銘を受けたんだ。
「冗談だよ。君が真剣に私の講演を聞いてくれていたのをわかっているから。君は素晴らしい研究者になるだろう」
「先生……」
医学部に入りながら医者にならないなんて勿体無い。
この言葉をどれだけ言われたか。
それを言わないでいてくれたのが比呂だった。
むしろ、隼人の研究が患者さんの命を救うなんてすごいことだよと褒めてくれたんだ。
その話も何もしていないのに、先生は俺のことを理解してくれた。
それがなんだかすごく嬉しい。
「私は協力を惜しまないから、いつでも声をかけてくれて構わないよ」
「先生……ありがとうございます」
優しい言葉が心に沁みる。
「さぁたっぷり食べて」
「はい。いただきます」
俺は目の前の麻婆豆腐をレンゲで掬い取った。
「からっ、でもうまっ!」
辛さと旨さが絶妙で、ものすごく俺好み。
近所の早くて安い中華料理屋は辛みが少し足りなくて、大学近くのは辛すぎる。
ちょうどいい塩梅の店に出会えずにいたけれど、先生のは抜群だ。
麻婆豆腐とチャーハンを一緒に食べると、信じられないくらい美味い。
これもなんだかんだ言ってもで麻婆豆腐には白飯が最強だって思っていたけれど、先生のチャーハンと麻婆豆腐はこれこそ最強だ。
気づけば無我夢中で食べ尽くし、あっという間に目の前の皿は全て空になっていた。
「いい食べっぷりだったね」
「あっ、すみません……俺、がっついちゃって……こんな美味しい中華料理をまさか家で食べられるなんて思わなくて……」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。実は大学時代に中華料理店でアルバイトをしていてね。そこで中国人のコックから教えてもらったんだ。それに自分で美味しいと思うアレンジをしていって今の形になったんだよ。だから、この料理は全て私好みの味付けだから、隼人くんが気に入ってくれてよかったよ」
先生の好みの味付け……
そうなんだ。それを俺が好きってことは、味の好みが似ているってことか?
「これからも食べにきてくれると嬉しいよ」
「いいんですか?」
「もちろん。美味しいものを作っても一人で作って食べるのは味気ないからね。隼人くん、豚の角煮なんてどう? 箸で切れるくらいとろとろに煮込んだ肉とタレをご飯と一緒に食べたら最高だよ」
「豚の、角煮……美味しそう!」
想像するだけで涎が出そうになる。
「ははっ。じゃあ決まりだな。アレックス、また隼人くんが来てくれるぞ」
先生がアレックスに声をかけると「わふっ!」と大きな声をあげて、尻尾をぶんぶんと振ってくれる。
球磨先生とアレックス、二人に気に入られて俺は、なんだか自分のいる場所を見つけた気がした。
「いや、気にしないでいいよ。いつもアレックスと二人だからこうして楽しく食事ができるのが嬉しいんだよ」
「そう、なんですか?」
こんな広い家だし、先生は人を家に呼ぶのも好きそうだからしょっちゅうパーティーでもしているのかななんて思っていた。それこそ、恋人とかも家に呼んでるのかな、なんて……
最初に同居人と聞いた時も恋人さんを紹介されるのかなって思ったくらいだ。
アレックスだったけど……
「なんだか意外そうな顔をしているね」
「あ、あの……恋人さんとか、一緒に食事しているのかなって思ってたのでびっくりしちゃって……」
ここで隠すのもなんだかおかしい気がして、正直に伝えると、球磨先生はなんだか楽しそうに笑った。
「医師という仕事は結構不規則だから、あまり恋人はできにくい職業かもしれないね。それに私はアレックスがいるから」
「アレックス、ですか?」
「ああ、昔からよくいうだろう? ペットを飼うと結婚が縁遠くなるって」
「そうなんですか? お医者さんだからモテるのかと……」
そんな俺の言葉に先生は「ははっ」と大きな声で笑った。
「そんなことはないよ。もしかしてそれをめあてに医学部に?」
「いえ、俺はそんな……っ」
俺は医師になるつもりはない。このまま勉強を続けて研究者になりたいと思っている。
だから、先生の論文に感銘を受けたんだ。
「冗談だよ。君が真剣に私の講演を聞いてくれていたのをわかっているから。君は素晴らしい研究者になるだろう」
「先生……」
医学部に入りながら医者にならないなんて勿体無い。
この言葉をどれだけ言われたか。
それを言わないでいてくれたのが比呂だった。
むしろ、隼人の研究が患者さんの命を救うなんてすごいことだよと褒めてくれたんだ。
その話も何もしていないのに、先生は俺のことを理解してくれた。
それがなんだかすごく嬉しい。
「私は協力を惜しまないから、いつでも声をかけてくれて構わないよ」
「先生……ありがとうございます」
優しい言葉が心に沁みる。
「さぁたっぷり食べて」
「はい。いただきます」
俺は目の前の麻婆豆腐をレンゲで掬い取った。
「からっ、でもうまっ!」
辛さと旨さが絶妙で、ものすごく俺好み。
近所の早くて安い中華料理屋は辛みが少し足りなくて、大学近くのは辛すぎる。
ちょうどいい塩梅の店に出会えずにいたけれど、先生のは抜群だ。
麻婆豆腐とチャーハンを一緒に食べると、信じられないくらい美味い。
これもなんだかんだ言ってもで麻婆豆腐には白飯が最強だって思っていたけれど、先生のチャーハンと麻婆豆腐はこれこそ最強だ。
気づけば無我夢中で食べ尽くし、あっという間に目の前の皿は全て空になっていた。
「いい食べっぷりだったね」
「あっ、すみません……俺、がっついちゃって……こんな美味しい中華料理をまさか家で食べられるなんて思わなくて……」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。実は大学時代に中華料理店でアルバイトをしていてね。そこで中国人のコックから教えてもらったんだ。それに自分で美味しいと思うアレンジをしていって今の形になったんだよ。だから、この料理は全て私好みの味付けだから、隼人くんが気に入ってくれてよかったよ」
先生の好みの味付け……
そうなんだ。それを俺が好きってことは、味の好みが似ているってことか?
「これからも食べにきてくれると嬉しいよ」
「いいんですか?」
「もちろん。美味しいものを作っても一人で作って食べるのは味気ないからね。隼人くん、豚の角煮なんてどう? 箸で切れるくらいとろとろに煮込んだ肉とタレをご飯と一緒に食べたら最高だよ」
「豚の、角煮……美味しそう!」
想像するだけで涎が出そうになる。
「ははっ。じゃあ決まりだな。アレックス、また隼人くんが来てくれるぞ」
先生がアレックスに声をかけると「わふっ!」と大きな声をあげて、尻尾をぶんぶんと振ってくれる。
球磨先生とアレックス、二人に気に入られて俺は、なんだか自分のいる場所を見つけた気がした。
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