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二人で車で
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「じゃあ、行こうか」
大学に行く準備を済ませてアレックスと遊んでいると、出勤の用意を済ませた先生が声をかけてくれた。
「は、はい」
これから車で大学まで送ってもらうんだ。
比呂もコレットさんに毎日送迎してもらっているけれど、まさか俺が同じように送迎してもらうようになるとは想像してなかったな。
「アレックス。ちゃんと留守番してるんだぞ」
「わふっ、わふっ!」
アレックスは玄関に座って尻尾を床に擦らせている。すごく機嫌が良さそうだ。
「てっきり行かないでって縋ってくるかと思ってました」
「ははっ。聞き分けがいいのは、隼人くんが帰ってきて遊んでくれるのを期待しているんだよ。なぁ、アレックス」
「ばうっ!!」
目を輝かせて嬉しそうに声を上げてくれたら、この子を寂しがらせたくないと思ってしまう。
「わかった。帰ったらゆっくり遊ぼうな。そういえば、今日は帰りは……」
「ああ、今日は午後は休診日だから、学校が終わる頃迎えに行くよ」
先生が迎えに来れないときはタクシーを呼ぶからと言われていたけれど、今日は先生が迎えにきてくれるんだ……
行きも帰りも先生にって……なんだか緊張するな。
「じゃあ、行ってくるよ」
アレックスに見送られて、俺たちは車に向かった。
もちろん座るのは助手席。
俺が扉を開ける前に先生が開けてくれて、俺を座らせてくれる。
シートベルトを閉めるまでささっとやってくれるけど、顔が近いからどこを見ておけばいいのか悩んでしまう。
俺のシートベルトを締め終えた先生は運転席に回り込み、颯爽と乗り込んだ。
「医学部といっても最初の一年は高校の延長のような講義が続くだろう?」
「えっ、あ、はい。そうですね。数学、英語、化学、生物、物理は本当に高校の延長みたいで大変です。でも苦手な科目じゃなかったので、追究できるのは楽しいですよ」
「そうか。医学部はとにかく必修の単位が多いからそれを着実にとって来年に進めばいい。知識も実力も自ずと付いてくるよ。発表も多くて大変だろうがな」
「はい。ありがとうございます。今日は比呂……あ、小日向くんと解剖学の発表の打ち合わせをするんで昼休み、学食に行く暇がなさそうだったんで、朝食でお腹いっぱい食べさせてもらって良かったです」
食パンだけ齧って学校に行った日は、昼休みにご飯が食べられないと地獄だったけど、今日は夕方まで持ちそうだ。
「あぁ、桜城大学は一年から解剖学が始まるからな。咲山教授だろう?」
「はい。そうです。先生も教授の講義を?」
「ああ。私がいたときはまだ准教授だったけどね。かなり厳しい先生だが、頑張っただけ認めてくれるよ」
先生も今の俺たちと同じように頑張っていたんだ。
そう思えるだけでなんだか頑張れそうな気になってくる。
そんな話をしている間に、あっという間に大学に着いた。
こっちは裏門。
人通りが少ない場所を選んでくれたんだろうか。
このかっこいい車で正門から入ったら目立ちそうだからな。
だから、いつもコレットさんもこっちに車を止めているんだろう。
「帰りの時間がわかったら連絡して。この場所で待ってるから」
「はい。ありがとうございます」
シートベルトを外し、車から降りようとすると
「あ、ちょっと待って」
と声をかけられた。
振り返ると、先生は後部座席から小さなバッグを取った。
「これ、昼ごはんに食べて」
「えっ?」
「朝食に食べたおにぎりとおかずがいくつか入ってるから、多かったら小日向くんと一緒に食べて」
まさかお弁当まで持たせてもらえるなんて思ってなかった。
「いいんですか?」
「ああ、そのために作ったんだから。頑張っておいで」
お弁当を渡され、笑顔で見送られる。
こんな生活、初めてすぎてなんだかドキドキする。
「じゃあ、また夕方に」
颯爽と去っていく先生の車を、俺は見えなくなるまでずっと見つめていた。
しばらく動けずその場に立ち尽くしていると、一台の高級車が入ってきた。
俺の近くで止まった車の助手席から比呂が降りてきた。
その後を追いかけるように運転席からコレットさんが降りてきた。
「隼人。おはよう。こっちから来るなんて珍しいね」
「えっ、ああ。うん。その……先生に送ってもらったから」
言おうかどうしようか悩んだけれど、帰りはまた迎えにきてもらうんだし、ここで隠すのもおかしいだろう。
そう思って正直に答えた。
「えっ、先生って……球磨、先生?」
「そう。昨日、先生と話をするっていってただろう? その後先生の家に泊まらせてもらったんだ」
「……へぇ、そうなんだ。楽しかった?」
そう尋ねられて、なぜか一緒に寝ていたことを思い出してしまって顔が熱くなる。
「あ、あの、先生の家に、おっきな犬がいてさ」
「おっきな犬? へぇ、どんな?」
慌てて話題を変えると、比呂が乗ってきてくれて助かった。
そのことにホッとしつつ俺は昨日撮っておいたアレックスの写真を比呂に見せた。
大学に行く準備を済ませてアレックスと遊んでいると、出勤の用意を済ませた先生が声をかけてくれた。
「は、はい」
これから車で大学まで送ってもらうんだ。
比呂もコレットさんに毎日送迎してもらっているけれど、まさか俺が同じように送迎してもらうようになるとは想像してなかったな。
「アレックス。ちゃんと留守番してるんだぞ」
「わふっ、わふっ!」
アレックスは玄関に座って尻尾を床に擦らせている。すごく機嫌が良さそうだ。
「てっきり行かないでって縋ってくるかと思ってました」
「ははっ。聞き分けがいいのは、隼人くんが帰ってきて遊んでくれるのを期待しているんだよ。なぁ、アレックス」
「ばうっ!!」
目を輝かせて嬉しそうに声を上げてくれたら、この子を寂しがらせたくないと思ってしまう。
「わかった。帰ったらゆっくり遊ぼうな。そういえば、今日は帰りは……」
「ああ、今日は午後は休診日だから、学校が終わる頃迎えに行くよ」
先生が迎えに来れないときはタクシーを呼ぶからと言われていたけれど、今日は先生が迎えにきてくれるんだ……
行きも帰りも先生にって……なんだか緊張するな。
「じゃあ、行ってくるよ」
アレックスに見送られて、俺たちは車に向かった。
もちろん座るのは助手席。
俺が扉を開ける前に先生が開けてくれて、俺を座らせてくれる。
シートベルトを閉めるまでささっとやってくれるけど、顔が近いからどこを見ておけばいいのか悩んでしまう。
俺のシートベルトを締め終えた先生は運転席に回り込み、颯爽と乗り込んだ。
「医学部といっても最初の一年は高校の延長のような講義が続くだろう?」
「えっ、あ、はい。そうですね。数学、英語、化学、生物、物理は本当に高校の延長みたいで大変です。でも苦手な科目じゃなかったので、追究できるのは楽しいですよ」
「そうか。医学部はとにかく必修の単位が多いからそれを着実にとって来年に進めばいい。知識も実力も自ずと付いてくるよ。発表も多くて大変だろうがな」
「はい。ありがとうございます。今日は比呂……あ、小日向くんと解剖学の発表の打ち合わせをするんで昼休み、学食に行く暇がなさそうだったんで、朝食でお腹いっぱい食べさせてもらって良かったです」
食パンだけ齧って学校に行った日は、昼休みにご飯が食べられないと地獄だったけど、今日は夕方まで持ちそうだ。
「あぁ、桜城大学は一年から解剖学が始まるからな。咲山教授だろう?」
「はい。そうです。先生も教授の講義を?」
「ああ。私がいたときはまだ准教授だったけどね。かなり厳しい先生だが、頑張っただけ認めてくれるよ」
先生も今の俺たちと同じように頑張っていたんだ。
そう思えるだけでなんだか頑張れそうな気になってくる。
そんな話をしている間に、あっという間に大学に着いた。
こっちは裏門。
人通りが少ない場所を選んでくれたんだろうか。
このかっこいい車で正門から入ったら目立ちそうだからな。
だから、いつもコレットさんもこっちに車を止めているんだろう。
「帰りの時間がわかったら連絡して。この場所で待ってるから」
「はい。ありがとうございます」
シートベルトを外し、車から降りようとすると
「あ、ちょっと待って」
と声をかけられた。
振り返ると、先生は後部座席から小さなバッグを取った。
「これ、昼ごはんに食べて」
「えっ?」
「朝食に食べたおにぎりとおかずがいくつか入ってるから、多かったら小日向くんと一緒に食べて」
まさかお弁当まで持たせてもらえるなんて思ってなかった。
「いいんですか?」
「ああ、そのために作ったんだから。頑張っておいで」
お弁当を渡され、笑顔で見送られる。
こんな生活、初めてすぎてなんだかドキドキする。
「じゃあ、また夕方に」
颯爽と去っていく先生の車を、俺は見えなくなるまでずっと見つめていた。
しばらく動けずその場に立ち尽くしていると、一台の高級車が入ってきた。
俺の近くで止まった車の助手席から比呂が降りてきた。
その後を追いかけるように運転席からコレットさんが降りてきた。
「隼人。おはよう。こっちから来るなんて珍しいね」
「えっ、ああ。うん。その……先生に送ってもらったから」
言おうかどうしようか悩んだけれど、帰りはまた迎えにきてもらうんだし、ここで隠すのもおかしいだろう。
そう思って正直に答えた。
「えっ、先生って……球磨、先生?」
「そう。昨日、先生と話をするっていってただろう? その後先生の家に泊まらせてもらったんだ」
「……へぇ、そうなんだ。楽しかった?」
そう尋ねられて、なぜか一緒に寝ていたことを思い出してしまって顔が熱くなる。
「あ、あの、先生の家に、おっきな犬がいてさ」
「おっきな犬? へぇ、どんな?」
慌てて話題を変えると、比呂が乗ってきてくれて助かった。
そのことにホッとしつつ俺は昨日撮っておいたアレックスの写真を比呂に見せた。
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四葩さま。コメントありがとうございます!
ふふ🤭ですね。胃袋掴んでなんでもお世話してあげたらニャンコはすぐに落ちちゃいます。
そうそう、ここには旦那の従順なパートナーのアレックスがいるんで、ニャンコは勝てるわけないです。
そんなアレックス。お着替えの最中もちゃんと見張り。
中に勝手に入らないのは先生の躾の賜物でしょうね。
そして番犬として先生が入らないようにも見張っちゃう(笑)
いい番犬ですね。
自分のサイズにぴったりな服は、着心地良すぎてこれ以外着れなくなっちゃいそうですね。
ああ、もうどんどん先生の術中にハマってます。
いぬぞ〜さま。コメントありがとうございます!
ふふ🤭帰すなんてさらさら無いですよね(笑)
もう一緒に寝るのもOKになったし、胃袋は掴んでるし、あとは言質とるだけですね。
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いぬぞ〜さま。コメントありがとうございます!
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これの全部見られてるんですよね。
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