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フレンチジョーク

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『わぁーっ! すごい旅館ですね! ここに泊まるんですか?』

『ああ。気に入った?』

『はい。こんな見るからに高級旅館に入れるなんて感激です!』

『ふふっ。ならよかった。さぁ、行こうか。あっ、ナツキ。悪いが、通訳を頼むよ』

『あ、はい。任せてください』

そうか、その仕事があったな。
英語を話せる人はいても、フランス語まで話せる人はなかなかいないからな。

「いらっしゃいませ。シュバリエさま。吉沢さま。お待ち申し上げておりました。当旅館の女将でございます。本日は当旅館にお越しいただき誠にありがとうございます」

「――っ!!」

旅館の女将さんを中心に、従業員の方達全員揃っているんじゃないかと思うくらい、大勢の人たちが壁に並んで正座で出迎えてくれて、あまりにもすごい迫力に声をあげてしまいそうになった。
ヴィルだけじゃなく、僕の名前まで言ってくれるだなんて思わなかった。

「あの、お出迎えありがとうございます」

頭を下げてお礼を言うと、なぜか従業員の人たちが一斉に顔を赤らめた。

えっ? 何? なんで?

と思ったけど、すぐにわかった。

僕の隣にいるヴィルを見たんだ。
びっくりするほどのイケメンだもんね。
顔を赤くしても仕方がない。

でも……なんとなくモヤモヤするんだよね。
どうしてだろう……。

『ナツキ、早く部屋で休みたい』

『あ、わかりました』

「あの、部屋に案内してもらえますか? 少し疲れているみたいで」

僕がそういうと、女将さんが急いで離れの部屋に案内してくれた。
先ほどの玄関のあった母屋とは本当に別棟のようで、一つ一つの部屋が単独になっていて、隣の部屋ともかなり離れている。

「お部屋の中に内湯と露天風呂の二種類がございます。そのほか、離れ専用の露天風呂も三種類ございます。本日離れの客室はお二組の貸切となってございますので、どうぞごゆっくりお過ごしください」

そう言うと、女将さんは部屋を出て行った。

と同時に、ヴィルに後ろから抱きしめられる。

『あ、あの……ヴィル。疲れてるなら、座った方が……』

『どうして? せっかく二人きりになれたのに……』

『えっ? あ、でも……温泉に……』

『ああ、そうか。そうだったな。ナツキと一緒に入るんだったな』

急に抱きしめられて驚いちゃったから、つい温泉の話をしちゃったけど……そういえば、一緒に入るって言ったんだっけ。
でも考えてみたら、温泉って……裸で入るんじゃない?

ちょっと恥ずかしいなぁ……なんて思っていたんだけど……。


『ナツキ! 早く入ろう!』

『わぁっ! すごいっ!!』

手を引かれ、広々とした庭に囲まれた露天風呂を目にした途端。恥ずかしさなんて吹き飛んで早くここに入りたいっていう欲求でいっぱいになってしまった。

ああ、やっぱり僕は日本人なんだと思ってしまう。

『ナツキ、服を脱がせよう』

『えっ? 服?』

『ああ、そうか。知らないのか、フランスではお互いに服を脱がせ合うんだよ』

ええ……そうだったんだ。
知らなかった……。

ここは日本だけど……なんて言葉は通じないだろうな。
どこでも自分の国が常識だと思うんだろうし。

教授からもヴィルをよろしくと言われちゃったしな。

言われた通りにした方がいいか。

『あの、じゃあ……お願いします』

おずおずとヴィルの前に立つと、ヴィルは嬉しそうに鼻歌まじりに僕のシャツのボタンを外し始めた。
きっと温泉が楽しみでたまらないんだろうな。

ふふっ。なんか遠足を待ちきれない子どもみたいで可愛いかも。

そんなことを思っているうちにあっという間にパンツ一枚になってしまっていた。

『あ、僕もヴィルの服脱がせますね』

なんとなく自分だけが全裸になるのが心許なくて、パンツだけでも履いているうちにヴィルの服に手をかけた。
ボタンを外す僕と視線が合うのが恥ずかしいのか、ヴィルの視線が下を向いているけど、そっちは僕のパンツがある。
3枚千円の安物のパンツだからちょっと恥ずかしいけど、肌触りはいいんだぞ。

そういえば、お金持ちっていくらのパンツ履いてるんだろうな……。
ちょっと興味湧いてきた。

シャツを脱がし、ベルトに手をかけズボンを脱がすと真っ黒でシンプルなパンツが出てきた。

ああ、なんだ。
僕と似たようなものだ。

なんとなくホッとしつつ、目に留まったのはずっしりと重量感のある膨らみ。

「うわっ、おっきぃ」

あまりの大きさにびっくりして声が漏れてしまった。

『どうした、ナツキ?』

そう尋ねられても、おっきくてびっくりしたとは言い難いな……。
それにしてもこれで通常サイズなんだよね?

やっぱフランス人……っていうか外国人が大きいって本当なんだな。
僕のと比べるのが恥ずかしくなってしまう。

『いやぁ……ヴィルのおっきいなってびっくりしちゃって……』

『――っ!!』

なんとなくフランス語なら言えるかと思って正直に言ってみたんだけど、ヴィルが驚いているように見える。
もしかして、こんな話するのってマナー違反だったかな?

ごめんなさいと謝ろうとしたと同時に

『私はナツキのサイズの方が可愛らしくていいと思うぞ』

と言われてしまった。

きっと僕が大きいと言ったのを羨ましがってると思ったんだろう。
まぁ羨ましくないとは言わないけど……。

せっかく慰めてくれたんだからお礼は言うべきだよね。

『そうでしょう、ヴィル。僕も自分のは気に入ってるんです。僕の身長には可愛いのが似合ってますから。ほら』

そう言って僕は一枚残っていたパンツを一気に取り去った。

僕の渾身のフレンチジョーク!
笑ってくれるかと思ったけど、ヴィルは目を丸くしてじっと僕の股間を見続けていた。

もしかして、僕……スベっちゃった?
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