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夫夫の証

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<sideジョバンニ>

私が王族だと知ってタツオミの顔が険しくなったのを見逃さなかった。

王族と言っても私の場合は本当に大したことではないのだが、気にしてしまったのかもしれない。

現国王の甥である団長とは全く身分も違うと話したけれど、少し考えているような表情が気になる。

部屋に戻るとすぐに話がしたいと言われてしまった。

王族というものが煩わしく思えて、嫌になってしまったのか……。
もしタツオミが気にするのなら、私はいつでも王族から抜けてもいい。
そもそも王族というよりは、今は騎士団の副団長として任務を果たしている方が多いのだ。
いつでも王族の地位など捨てられる。

真剣な表情のタツオミに緊張しながら、ソファーに腰を下ろすとタツオミの口から

「私は陛下にどれだけ反対されようとも、ジョバンニと別れるつもりはありません」

という言葉が出てきた

えっ? 陛下に、反対……?

タツオミは一体なんの話をしているのだろう?

戸惑っている間にもタツオミはどんどん話をしていく。

なぜそんな話をし出したのかはわからなかったけれど、タツオミが私を決して離さないと言ってくれたことだけはよくわかった。

「ジョバンニ……わかってくれますか?」

もちろん、わかりました。
タツオミの思いは全て私の心に届きましたよ。

その思いを込めてタツオミに返事を返すと、タツオミは嬉しそうに私を抱きしめてくれた。

「あの……タツオミ。タツオミが私に強い思いを伝えてくださったのは嬉しいのですが……どうしてそのようなことを突然お話しくださったのですか?」

「……王族であるジョバンニに無体なことを働いたと陛下に断罪されて、ジョバンニと離れ離れにされるのではと心配になりまして……」

「えっ? 陛下が……断罪? タツオミを?」

「ええ。それでも、ジョバンニと離れる気は一切ないと伝えておきたかったのです」

「ふふっ……あははっ……」

「ジョバンニ? どうしたんですか?」

「タツオミは陛下が私たちの結婚を認めないと仰ると思ったのですね?」

「ええ。私は王族でもなんでもないただの一般人ですから……」

そうか。
だからそんな勘違いを……。

「いいですか? よく聞いてくださいね。異世界から来たタツオミは私よりも、そしてある意味陛下よりも立場は上ですよ」

「えっ? 陛下よりも、上……? それは……どういう、ことですか?」

そう尋ねられて、私はこのビスカリア王国に伝わる話をタツオミに話した。

「――というわけで、異世界から来られた方は救世主として王家で大切に保護するというのが決まりになっているのですよ。ですから、トモキさまもタツオミもこの国にとって大切な人物なのです。その方が私を見初めてくださったのですから、陛下といえども反対など起こりうるはずがありません。というよりむしろ私を娶ってくださって御喜びになると思いますよ。私は生涯誰とも結婚する気などありませんでしたから……。タツオミだけです。そんな私のことを愛してくださったのは……」

「ジョバンニ……」

「納得していただけましたか?」

「私が救世主としての働きができるかはわかりませんが、ジョバンニを生涯愛し続けることは誓えます。陛下にもそれをお伝えしても構いませんか?」

「ええ。でも……恥ずかしいですね。結婚になど興味ないと散々話しておりましたので……」

「ふふっ。ジョバンニがそんなことを? でも、よかったです。私と出会う前に愛する者に出会わなくて……」

「私もです。タツオミが私に会いにここまで来てくださってよかったです」

「ジョバンニ……」

タツオミの瞳に欲情の色が見える。
私を欲してくれているのがありありとわかって嬉しい。

「私の中にタツオミの愛を注いでください……」

「くっ――!! そんなに煽らないでください。本当に抑えられなくなりますから……」

「いいです。いっぱい愛してください……」

タツオミは私の言葉に反応するように、さっと私を抱き上げそのまま寝室へ連れて行った。

普段の紳士的なタツオミから野生的なタツオミに変わるこの瞬間がゾクゾクする。

噛み付くような口付けをされたのを合図に、私たちはそのまま何度も何度も蜜を飛ばし愛し合った。


<sideクリス>

「トモキ、そろそろ出かける準備をしようか」

「はーい。なんだかドキドキします」

「ふふっ。心配しないでいい。私がずっと隣にいるし、陛下も父上も決してトモキを怖がらせたりしないからな」

「はい。クリスさんが一緒だと安心します」

そう言って可愛らしい笑顔を見せるトモキを見て、私の心は複雑だ。

ああ、陛下も父上もきっとトモキを一瞬で気に入るだろう。
決して私に無断で連れ回すことはしないように約束させないとな。

今日の拝謁のために用意していた正装に着替えさせる。

「ああ、トモキ。よく似合っている」

トモキが私の伴侶だと見てすぐにわかるように、バーンスタイン公爵家の紋章入りのジャケットは私の色であるロイヤルブルーに仕立てている。

「クリスさんのジャケットとお揃いなんですね」

「そうだ。我々は夫夫だからな。夫夫は揃いの服を身につけるのがマナーなのだよ」

「じゃあ、僕とクリスさんが夫夫だって服を見ただけですぐにわかるってことですか?」

「ああ、そうだ」

自信たっぷりに答えると、トモキが突然俯いた。

もしや嫌だというのではないだろうな?

不安に思って、

「トモキ?」

と声をかけると、トモキが真っ赤な顔をあげた。

「なんか急に実感しちゃって……嬉しさが込み上げてきちゃいました」

「くっ――!!」

なんて可愛いことをっ!!
このままベッドに押し倒したくなる。

必死に愚息を抑えつけながら、

「私も嬉しいよ」

とトモキを抱き上げ、急いで寝室を出た。
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