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夢見ることもできない
しおりを挟む観月&理央のお話を読みたいとリクエストいただけたので、調子に乗って始めてみました。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
「おーっ、木坂、今回のテストも良く出来てたな。この調子なら、星宿高校も余裕だぞ。先生方もみんなお前には期待してるからな」
「あっ、でも……」
「勉強頑張れよっ!」
出席簿でポンと俺の肩を叩いて去っていた数学の八嶋先生を見送りながら、
はぁーっ。
そんなこと言われてもどうしようもないのに……。
と心の中で思いながら、俺はトボトボと靴箱へと向かった。
――何? 高校に行きたいだと? ふざけるな! お前なんか義務教育だけで十分だろうが! これまでずっと育ててきてやったんだから、中学卒業したらうちでしっかり働いてもらうからな。今までタダ飯食ってたんだ。嫌とは言わせないぞ!
中学入ってからこれまでもずっとそう言われてて、昨日も施設長に呼び出されて念を押されたばかりだし。
だから、どんなに勉強を頑張ってもきっと許してもらえない。
高校や大学に行きたいなんて夢、俺には贅沢なんだ……。
俺の名前は木坂理央。
もうすぐ受験を控えた中学3年生。
本当なら、今頃は高校受験に向けて必死に勉強を進めているところなんだろうけど、俺は高校受験を許されてない。
なぜかというと俺には両親がいないからだ。
自分にどうして両親がいないのかは詳しくは聞いていない。
物心がついたときには俺は施設にいたんだ。
小さなうちに里親となってくれる人に引き取られていく子も多い中で、俺は15歳になった今でも施設にいる。
小さな子たちよりも衣食住にお金がかかるし、学校だって義務教育とはいえお金がかかる。
そんな俺が施設長には邪魔で仕方がないんだろう。
中学生になったときに、施設にいる子どもたちの中で一番年上になってしまった俺は、その時から大部屋で10人くらいの小さな子どもたちの面倒を見ながら勉強を続けていた。
せめて、いい学校に行っていい職業に就いて今まで育ててくれた施設に少しでも恩返しをしようと思ったんだ。
でも、高校は許してもらえなかった。
俺が中学を卒業したら職員さん2人辞めさせてその分、俺に働かせるんだと施設長は言っていた。
もちろん、今まで育ててもらった分、無償で……と。
俺には嫌だなんて言えるわけもなかった。
だって、そんなことを言えばすぐにここから追い出されてしまう。
黙って言う事を聞いて働くしかないんだ。
学校の先生たちは施設に何度も来てくれて施設長に俺を高校に行かせるように話をしてくれたけれど、結局願いは叶う事なく俺は中学校を卒業した。
それから俺は子どもたちの面倒を見ながら、ゴミ捨て場で拾ってきた高校の教科書で夜中にこっそり勉強を続けた。
いつか高校認定試験を受けられるようにそれこそ必死で……。
でも、もうすぐ18になるという時、事件は起こった……。
「理央! 明日はお前に休みをやろう」
「えっ? 本当ですかっ!!」
中学を卒業して働き始めてから3年近く、休日なんてもらったことはなかったのになんで急に……と思いつつも、初めての自由時間に心躍った。
しかも、明日は俺の誕生日。
正確には本当の誕生日ではなく、ここにもらわれた日が誕生日になっているそうだ。
「ああ。いつも頑張っているお前に美味しい食事をご馳走したいって言っている人がいてな。
お前も知ってるだろう? うちの施設のために尽力してくださってる市会議員の篁さん。
お前が成人を迎えるからって直々にお祝いしてくださるそうだ」
「え……っ、市会、議員の篁さん……」
篁さんはここ数年、うちの施設にちょくちょく足を運んでは、子どもたちに目一杯お菓子を持ってきてくれる議員さんだ。
だから子どもたちはお菓子のおじちゃんと呼んで仲良くしているけれど、俺は正直好きにはなれない。
だって……。
――理央くん、可愛いな。
――うちにつれて帰りたいよ。
――私の子どもにならないか。
そう言いながら、手や太もも、それにお尻なんかもいやらしい手つきで触ってくる。
大体あの目つきが嫌なんだ。
じっとりとどこを見ているのかわからないあの気持ち悪い目が……。
思い出すだけで気持ち悪くなってくる。
それなのに、そんな人と一緒に食事……。
それなら子どもたちの面倒見ている方がどれだけ幸せか……。
「あの、俺……食事はいらない、です……お休みもいらないので、だから……」
「なんだとっ? お前は篁さんのご厚意を無にするつもりなのか?!
お前がそんな事をして施設が潰されたら、お前が可愛がってる子どもたちはみんな路頭に迷うんだぞ。それでもいいのか?」
「くっ――! わ、かりました……」
「じゃあ、明日朝9時に篁さんがきてくださるから、今日はしっかり風呂に入って綺麗にしておけ」
施設長室を出て、ふらふらと子どもたちのいる大部屋へと戻ると、子どもたちはすでに眠っていた。
俺が明日行かなければこの子たちが路頭に迷う……。
はぁーーーっ。
俺は大きなため息を吐きながら言われた通り風呂に入った。
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