イケメンスパダリ弁護士に助け出されて運命が変わりました

波木真帆

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こんな優しい大人いるんだな

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「あの、俺……木坂理央って言います。今日18になったばかりで……」

「今日? 誕生日なのか?」

「はい。一応今日が誕生日です」

「一応?」

観月先生に聞き返されて、こうなったら包み隠さず全部話してしまおうと思ったのは、あの篁さんがあの子たちに何かしていないか心配になってきたからだ。

「実は俺……生まれた時から両親がいなくて<日華園>っていう施設で育てて貰ってたんです。その施設の前に置いて行かれたのが今日らしくて、今日が誕生日ってことになってるんです」

「そうなのか……だが、18ということは今は高校生だろう? 住み込みの仕事を探しているっていうのはどういうことなんだ?」

「俺、義務教育までしか通わせてもらえなくて、中学を卒業してからは施設で小さい子たちのお世話をして過ごしてたんです。だけど、今日……うちの施設にお金を出してくれている市会議員の篁さんが18を迎えたお祝いをしてくれるって、外に連れて行かれて……それで……」

話しながらあの時のことを思い出して声が震える。
あんなことを話したりして、観月先生に嫌われたりしないかな。
それよりも、俺、篁さんに物投げつけちゃったけど、もしかして俺……捕まったりしないかな?
怪我させちゃってたら、傷害とか……?
まさか、死んじゃったりしてないよね?
どうしよう……手もブルブル震えてきて、必死に強く握りながら押さえつけようとしていると、

「言いたくないことは無理しなくていい。誰にでも黙秘権はあるし、もし理央くんが教えてくれたとしても私には守秘義務がある。決して誰にも漏らしたりしないから心配しないでいいよ」

と優しい声をかけてくれた。

これまでの俺の人生でこんなに優しい言葉をかけてくれた大人は誰ひとりいなかった。
観月先生なら信用できる。
そう思えた。

俺はゴクリと唾を呑み込んで、

「お、襲われそうになって……それで、必死に抵抗しようとしてその辺にあったのをいろいろ投げつけてたら何かが当たって、篁さんが倒れたんです。それでその隙に逃げてきたんですけど……多分怪我させたかも……。あの、先生……俺、捕まったりしますか?」

と震える声で尋ねた。

すると、突然大きなものが俺をぎゅっと包み込んできた。
それが観月先生だったことに一瞬遅れて気づいて

「――っ! あ、あの……」

と声をかけると、

「怖かっただろう。でも逃げられて本当によかった。偉かったな、よく頑張った」

ぎゅっと抱きしめながら頭を優しく撫でられて、

「う゛っ、うっ……」

気づけば俺は泣いてしまっていた。
涙を流すなんてもうすっかり忘れてしまっていたのに。

背中をぽんぽんと優しく叩かれて気持ちがどんどん落ち着いてくる。

「言いたくなければ言わなくていいが、もしかしてその頬の腫れは……?」

「――っ」

頬と言われて思い出した。
そういえば、俺……殴られたんだっけ。
いろんなことがありすぎて殴られたことすら忘れてた。

急に痛みを感じた俺は殴られたと言葉にするのも嫌で、ただ『うん』と頷いた。
すると、先生はそっと俺の頬に優しく触れながら、

「そうか、わかった。篁という男のことは私が対処するから理央くんは気にしないでいい。もちろん、理央くんが捕まることは絶対にないから安心してくれ」

と言ってくれた。

「ありがとうございます。あの、でも俺……施設に残っている子たちが心配で……」

「大丈夫、そっちも任せておいてくれ」

先生の言葉が心強くてホッとする。

「理央くん、お腹空いてないか? 今の話聞く限り、君……今日はまだ何も食べてないんじゃないか?」

そう言われれば、朝は篁さんが食事に連れていってくれるのに満腹で行かすわけには行かないと用意してもらえなかったんだっけ。

何も食べてないと思った瞬間、

「キュルルっ」

と俺のお腹からまるで返事でもするように音が鳴ってしまった。

「すぐに用意するから、待っててくれ。それまでこれを摘んでてくれていいよ」

そういうと先生はテーブルに置かれていた綺麗な箱を持って俺の目の前に置いてくれた。

「これ……」

「貰い物なんだけど、私は甘いものは苦手だからよかったらどうぞ」

「あ、ありがとうございます」

先生はニコッと笑顔を浮かべると、そのままキッチンへと向かった。

俺は恐る恐るその綺麗な箱に手を伸ばした。
リボンで飾られた綺麗な箱。
そのリボンを解くなんてことを俺ができるなんて……。

まるで誕生日プレゼントみたいだ。
ドキドキしながら赤いリボンを解き、黒い箱を開けるとそこにはいろんな形のクッキーが綺麗に並べられていた。

「わぁっ! 綺麗っ!」

食べるのが勿体無いと思えるほど綺麗に並べられたクッキーからは香ばしくて甘い匂いが漂ってくる。
勿体無い、でも食べたい、でも食べたら無くなっちゃうし……と頭の中で何度か葛藤を繰り広げて、俺は一番小さなクッキーを一つ摘んで口の中に放り込んだ。

「わ――っ!」

何、これっ。
口に入れた瞬間しゅわっと消えてった。
甘~い。
美味し~い!

あっ、でももう無くなっちゃった。
ゔぅっ、もう一個食べちゃおうかな……。
でも、勿体無いか……。

今度は違うのにしようかな。
うわーっ、悩む。

っていうか、クッキーってこんなに美味しいものだったんだ!!
すごい発見だ!!

一気に食べちゃうとすぐに無くなっちゃうから、次で終わりにしないと!
うーん、どれにしようか……。

これ、いや、こっち……。

ひたすら悩んで、ようやく決めた一枚は真ん中に赤いのが入ったお花の形のクッキー。

これも一瞬で溶けちゃったりしないかな?
ドキドキしつつ、口に入れると今度はサクっとした食感があった。

わぁ、真ん中に入ってた赤いの、苺ジャムだ。
美味し~い!!

もうほっぺたが溶けてしまいそう。

あまりの美味しさにもう一枚食べたくなっちゃったけど、無くなっちゃったら勿体無い。
俺は名残惜しく思いながらも、必死に箱を閉じた。

口の中にはまださっきの苺ジャムの味が残っていてなんともいえない幸せを感じる。
ああ~、美味しかったな。

「あれ? そのクッキーあんまり口に合わなかったか?」

「――わっ!」

クッキーの余韻に浸っていると突然上から声が聞こえてきて驚いてしまった。

「ああ、ごめん。急に話しかけて驚かせたかな?」

「あ、あまりにも美味しくて食べたの思い出しながらゆっくり味わってただけで、あの、すごく美味しいです! あんな美味しいもの生まれて初めて食べました!!」

一瞬で溶けたあの甘いクッキーもサクサクのクッキーもどっちも美味しくて、口に合わないなんて絶対にあり得ない!
先生に必死に美味しさを伝えようとしたけれど、先生は一瞬、なぜか驚いた表情をした。
でもすぐににっこりと笑顔を見せてくれたから、きっと俺の見間違いだったかもしれない。

「……そうか、気に入ってくれたならよかった。あのクッキー以外にも甘いものはたくさんあるんだ。君が貰ってくれたら助かるよ」

「えっ、本当に? いいんですかっ!!」

「ああ、もちろんだよ。あとであげるよ。さぁ、食事ができたよ。こっちにおいで」

そう言って連れて行かれた先にはテレビでしか見たことのないような美味しそうな料理が並んでいた。
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