イケメン店主に秘密の片想いのはずが何故か溺愛されちゃってます

波木真帆

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楽しい昼食タイム

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「平松くん、こちらにどうぞ」

「あ、はい。ありがとうございます」

名嘉村なかむらさんが部屋を出て行って、残された俺はテーブルに案内された。向かい合わせに座っている砂川さんの姿にちょっと緊張しながら、もらったばかりのお弁当箱をテーブルに置いた。

「お弁当楽しみですね」

「は、はい。まさかお昼までお弁当をいただけるなんて思ってなかったので、びっくりしました」

「お昼まで、ってことは……もしかして朝も?」

「はい。来たばかりで朝食がないんじゃないかって心配してくださったみたいでお弁当を持って家まで届けてくださったんです。すごく優しい人ですね」

パンイチで出てしまって醜態を晒してしまったことを思い出すと顔から火が出そうなくらい恥ずかしいけれど、八尋さんは本当に優しかったな。

「ええ、そうですね。でも、八尋さんがお弁当を作って届けたなんて話を聞いたのは初めてですよ」

「えっ、そうなんですか……。じゃあ、もしかして……俺が料理苦手だって気づかれてしまったかもしれないですね。やっぱり料理人さんってすごいですね」

見た目で料理ができるとかわかるのかもな。
俺はずっと自炊なんてしてこなかったし、そんな雰囲気が透けて見えるのかも。きっとそうに違いない。

俺がうんうんと納得しているのを砂川さんはなぜかにっこりと笑って見ていた。

「あ、あの……砂川さんのお弁当は、恋人さんが作ったって……」

「ええ、そうなんです。石垣に住んでいるので、泊まりに行った日は食事を作ってもらうんですが、今日は出勤だったので、お弁当にして持たせてくれたんですよ。たまのことなので、私も楽しみです」

心から幸せそうな表情を見るだけで、砂川さんがどれだけその恋人さんを愛しているかが伝わってくる。
こんなふうに人を好きになれるっていいなぁ。

俺もいつかそんな人と出会えたら……。

そう思った時に、ふと頭に浮かんだのは八尋さんの姿。

あれ?
どうして八尋さんの姿が浮かんだんだろう?

不思議に思っている間に名嘉村さんが戻ってきた。

「すみません。待たせてしまいましたね」

「いいえ、大丈夫ですよ。さぁ、平松くんの横に座ってください」

俺がぼーっとしている間に、砂川さんが温かいお茶を淹れて渡してくれた。

「すみません。上司の方にお茶を淹れていただくなんて……」

「そんなこと気にしなくていいですよ。手が空いている人が淹れた方が効率もいいですし。さぁいただきましょう」

そんな優しい言葉をかけられて、胸が熱くなってしまう。
ここは本当に玻名崎はなさき商会とは違うんだ。
あの辛い日々が浄化されそうだ。

隣の名嘉村さんがパカっとお弁当箱を開ける。

「えっ、すごいっ! これが手作りですか?」

「料理は得意なんです。といっても夕飯の残り物とか常備菜を詰めただけですけど。朝作ったのは、この卵焼きくらいですよ」

色とりどりのおかずが詰め込まれて、そのどれもが美味しそう。
別容器に入っているおにぎりも全て味の違う俵形で、中央には海苔も巻いてあって、売り物みたい。自炊のできない俺から見れば、ただただ尊敬しかない。

ポーッと見惚れていると

「そんな褒められると照れますよ。平松くんのお弁当も見せてください」

と声をかけられる。

「あっ、はい」

慌ててお弁当箱を開けつつも、俺もすごく緊張してる。
どんなお弁当なんだろう。

三段重ねになっているお弁当箱はおかずとご飯と汁物に分かれているみたいだ。それだけでもうすごい。

ドキドキしながらおかず箱を開ける。

「わぁっ! すごいっ!!」

あまりにも手の込んだ料理に驚いてしまった。

昨日食べて美味しかったものや、初めて見るものも入っているけどどれもが食欲をそそる。

「わぁー、美味しそう! さすが八尋さんですね」

「ええ、本当に。彩りも栄養バランスもバッチリですね。こちらの汁物は何が入っているんでしょうね?」

そんな砂川さんの声に押されるように汁物の容器を開けると、みたことのないスープに驚いてしまう。

「これは、なんですか?」

「これはもずくですよ。海藻なんですが、天ぷらにしたりスープに入れたり美味しいですよ」

「へぇー、知らなかった……」

ご飯を開けると炊き込みご飯が入っていて、それがジューシーと呼ぶことも教えてもらった。でもどれも美味しそうで涎が出てきそう。

「砂川さんのお弁当も見せてください。伊織さんの気になるなぁ」

伊織さんって、恋人の名前かな。
きっと可愛い人なんだろうな。

「きっと私の好きなアレが入ってますよ」

そう自信満々に開けた砂川さんのお弁当には可愛いオムライスがお弁当の半分を占めていて、残りのスペースには小さなハンバーグやエビフライなんかが入っていて、まるでお子様ランチのような可愛らしいお弁当だった。

「可愛いっ!」

「ありがとうございます」

思わず漏れ出た言葉に砂川さんは満面の笑みで答えてくれる。

「私、卵が好きなんです。だから、お弁当にはよくオムライスを入れてくれるんですよ」

「へぇー、お弁当にオムライスって手がこんでいて愛情感じますね」

「そうですね。じゃあ、いただきましょうか」

こんな和気あいあいと職場で昼食がとれるって……本当、最高だな。

俺は、八尋さんに感謝しながらお弁当に箸を入れた。
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