年下イケメンに甘やかされすぎて困ってます

波木真帆

文字の大きさ
29 / 133

悩みもなくなる

しおりを挟む
部長に今、メールしておけば、朝一でみてくれるだろう。
今回の大事なプロジェクトの成功のためには宇佐美くんの力が必要で、先方からの要望だと書いていればきっと宇佐美くんを寄越してくれるはずだ。

そんな期待を胸に、俺は部長へメールを送った。

それからしばらく他の業務をして、定時まであと30分を切ったころ、部長から直接電話がかかってきた。
てっきりメールで返信が来ると思っていたんだが、何か問題でもあったんだろうか。

ーはい。杉山です。

ーああ、杉山くん、そっちはどうだ?

ーはい。こちらの業務は滞りなく進んでいますが、部長がわざわざ電話をくださったのは先ほどのメールの件ですか?

ーああ。そうなんだよ。君からのメールを見て、すぐに宇佐美くんに打診したんだが……。

ー何か、困ったことでも?

ーいや、実は……宇佐美くん、婚約したばかりなんだそうだ。

ーえっ? 婚約、ですか?

確か宇佐美くんは俺より二つ下。
そうか……28ならそんな話が出てもおかしくないな。

ーああ。それで結婚式の準備を進めながら、新居への引っ越しなんかも立て込んでいるそうでね。すぐには即決できないから、とりあえず婚約者に相談してからそっちに行くかを決めたいと言ってるんだ。どうだ? もし、宇佐美くんがいけないようなら、そっちでなんとかできそうか?

ーうーん。こちらとしては先方の意向もありますので、もし宇佐美くんが来られないようなら、あのプロジェクトはかなり難航しそうだということしか今は言えません。

ーそうか……。できるだけ宇佐美くんにそっちに行ってもらえるように、もう一度話をしてみるつもりだが、このご時世、あまり強くも言えないから、そこはわかってくれ。

ーわかりました。もし、よければ私の方からもう一度概要を説明しがてら、宇佐美くんに直接コンタクトをとってもよろしいですか?

ーそうだな。宇佐美くんも仕事の話としてはかなり行きたそうにしていたんだ。婚約者のことだけがネックになっているみたいでな。

ーそうなんですね。わかりました。では宇佐美くんの方には私からも連絡を入れておきます。何かありましたらいつでも連絡ください。

ーああ、わかった。そっちは頼むよ。


部長がこんなにも早く宇佐美くんに話をしてくれたのは、このプロジェクトがどれだけ重要かをわかってくれているということだ。

それにしても婚約か……。
会社にもすでに報告しているということは相手は女性なんだろうな。

なんとなく、宇佐美くんは同類なのかもと思っていたんだけど、どうやら違ったようだ。
だが、婚約したてで今が一番気持ちが昂っている頃だろうし、この話は断られる確率の方が高いかもしれないな。

宇佐美くんが来られないことも考えて、先方を納得させられるだけの材料を用意しておかないといけないな。

とりあえず、最後の足掻きででもいい。
宇佐美くんにプロジェクトの進行状況と先方の意向も全て連絡しておくとしようか。

宇佐美くんにいろんな資料を添付してメールを送ると、もうすでに定時を回っていた。

あっ、透也がもう来ているかも。

慌ててスマホをみて、思わず笑ってしまった。


<お仕事お疲れさまです。ロビーで待っていますから、慌てずに来てくださいね。大智の忠犬ハチ公より愛を込めて>


ふふっ。
まさかこんなメッセージを送ってくるとは。

思わず顔がニヤける。


「支社長。嬉しそうですね。彼女さんから連絡ですか?」

「えっ? なんで?」

「えっ、だって愛が溢れ出てましたよ。いいですねぇ、ラブラブで。じゃあ、私、お先に失礼します」

ニマニマとしながら、立ち去っていく女性社員を見送りながら、俺は自分の顔を鏡で見てみた。

いつもと変わらないように見えるけど……。
もしかしたら、透也のことを思っている時はそんなにだらしない顔をしているんだろうか……。

恥ずかしいな。
透也には気づかれないようにしないと。

俺は必死に顔に力を入れながら、透也の待つロビーに向かった。

セキュリティーゲートを通るとすぐに透也が駆け寄ってくる。

「お疲れさまです」

「待たせて悪かったな」

「いいえ。待ってる間も大智のことを考えてましたから、楽しいですよ」

「――っ、そ、そうか。ならよかった」

必死で顔を整えようとしているのに、思いがけない言葉に思わず表情が崩れそうになる。

「どうかしましたか?」

「えっ? 何が?」

「なんだか、無理しているような気がするんですけど……」

「い、いや。そんなことはないよ! ほら、早く帰ろう」

透也は少し訝しみながらも、一緒に会社を出てキースの車に乗り込んだ。

そういえば、もし宇佐美くんが来てくれることになったら、彼の送迎はどうしようか。
キースに頼むのが一番だけど……まぁ、それなら俺は別の人を頼むか、この距離なら歩いてもいいか。

運動不足気味だし、ちょうどいいかもしれない。

あ、だけど……透也は、どうするかな?

「大智? どうかしました?」

「あ、いや。もし、この送迎がなくなったら透也はどうする? そっちの会社で送迎を頼むか?」

「無くなるんですか?」

「まだ決定ではないんだが、部下の子がしばらくこっちにくることが決まったら、キースの送迎は彼に代わろうかと思ってるんだ。だから、他の送迎を頼むか、この距離なら別に歩いてもいいかと思って……」

「歩く? ダメです! ここはアメリカですよ。絶対にダメです。それなら、俺がその間送迎しますよ。車もあの社宅で貸してもらえますし、ちゃんと申請すれば問題ないです」

「でも、毎日送迎は大変だろう?」

「何言ってるんですか。そんなのご褒美でしかないですよ。もし、その彼がくることが正式に決まったら教えてください。車の使用申請出しておきますから」

あっという間に送迎の件は透也の中で決まってしまったみたいだ。
透也に話すと次々に悩みが解決していく気がするな。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
「普通を探した彼の二年間の物語」 幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?

本気になった幼なじみがメロすぎます!

文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。 俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。 いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。 「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」 その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。 「忘れないでよ、今日のこと」 「唯くんは俺の隣しかだめだから」 「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」 俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。 俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。 「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」 そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……! 【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)

処理中です...