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いい匂いに包まれて
前と同じ肌触りの良い下着を身につけると、一緒に置かれていた着替えに手を伸ばした。
「あれ?」
わざわざ用意してくれたらしい着替えは、俺のサイズにぴったりで上質で軽い着心地の、綺麗な紺色の部屋着だった。
濡れた髪をタオルで拭きながら、脱衣所を出ると美味しそうな匂いが漂ってくる。
昼間にあんなに美味しい鰻を食べたというのに、透也の料理の匂いを嗅ぐだけでお腹が一気に空いてくる。
俺の味覚はすっかり透也の料理に馴染んでしまっているのかもしれない。
「良い匂いだな」
「もうすぐできますよ、って、その着替えよく似合ってます。やっぱりその色にして正解でした。濃いグレーと悩んだんですよねー」
「そうか、ありがとう。すごく着心地いいよ。でも……」
「んっ? どこか気になるところありました?」
「いや、そうじゃなくて……これ、すっごくいいんだけど、俺は前みたいに透也の服の方がよかったなって」
せっかく用意してくれているのに、こんなこと言って申し訳ないけど……。
でも透也の服の方が安眠できそうなんだよな。
「えっ?」
「透也の服からいい匂いするし、なんかずっと包まれてる気がして幸せで――わっ!!」
「もう! わざとですか?」
「えっ? なにが?」
急に抱きしめられて、怒られて、本当に訳がわからない。
「はぁーっ。それって、俺の匂いが好きって言ってるんですよ? 知ってます? 他人の体臭が良い匂いだと感じたらそれは遺伝子レベルでその人を求めている証拠で運命の相手なんですって」
「えっ……遺伝子? 運命の、相手……?」
「そうです。ちなみに俺も、大智の匂いは好きですよ。大智の入った後のお風呂の匂いで余裕でヌケるくらいに」
「ぬけ、って――えっ?? う、うそだろう?」
「本当ですよ。だからいつも大智に先にお風呂に入ってもらうんです」
「――っ!!!」
紳士みたいな笑顔を浮かべながら言ってることがすごい変態チックなんだけど……。
でも、俺の匂いが好きで、しかも、ぬ、ヌケる……なんて……そんなこと言われて、俺も嬉しいって思っちゃってるんだけど……。
もしかしたら、俺も変態……なのかもしれないな。
「ふふっ。本当に大智は可愛いですね」
「可愛い、とか……そんなっ」
「ふふっ。さぁ、来て下さい。髪、乾かしましょう」
抱きしめられていた身体が軽々と抱き上げられ、ソファーに座らされる。
いつの間に用意してあったのか、ドライヤーで俺の髪を手際よく乾かしていく。
自分一人の時は面倒くさくていつも自然乾燥だったのに、透也に乾かされるのは気持ちよくて眠ってしまいそうになる。
ドライヤーってこんなに気持ちいいものだったんだな。
知らなかった。
「乾きましたよ」
カチッとドライヤーが止まって、一瞬本当に寝てしまっていたことに気づいた。
俺の髪が短いから乾くのもあっという間だな。
もっと長かったら、ずっとしてもらえたのに……。
透也に乾かしてもらいたいがために髪を伸ばそうかという考えが頭をよぎる。
バカだな、俺。
今日の夕食はきのことサーモンのホイル焼き。
こんな手の込んだものが作れるのかと思って驚いたけど、透也がいうにはこれはかなり簡単らしい。
「蒸すことで食材からの旨味が出るから、バターと塩、そして出来上がったらだし醤油を回しかけるだけで、美味しくなるんです」
って簡単そうに教えてくれたけど、多分俺にはできないだろうな。
あっという間にホイル焼きや土鍋ご飯を平らげた俺は、今度こそ食事の片付けをしようと声をかけた。
「じゃあ、机の上を拭いててもらっていいですか? あ、あと調味料をあそこの収納ケースに並べてもらえると助かります」
「わかった。任せてくれ!」
そう言ってせっせと机の上を拭き、調味料をケースに持っていった。
調味料の蓋に自作の名前のラベルが貼られていて、それが50音順に並べられているのがわかる。
すごいな。わかりやすいし、使いやすそう。
こんなところでも透也が仕事ができるのがわかる。
調味料の量も半端ないし、本当に料理が好きなんだな。
感心しながら、綺麗に並べ終えた時にはもう全ての食器が食洗機に入れられて片付けが終わってしまっていた。
「もう、終わったのか?」
「はい。大智に手伝ってもらいましたから、あっという間でしたよ」
あまり手伝った感じもないんだけど、そう言ってくれるならいいか。
「さっとお風呂に入ってきますから、テレビでも見て寛いでいて下さい」
そう言われて、さっきの言葉を思い出す。
――大智の匂いは好きですよ。大智の入った後のお風呂の匂いで余裕でヌケるくらいに。
もしかして、本当に今から?
そんなことを考えて思わず顔が赤くなってしまう。
「ふふっ。なにを想像したんですか?」
「えっ? いや……」
「ふふっ。でも今日はしませんよ。大智の話を聞きたいので、急いで出てきます」
そういうと、透也は俺の髪にチュッとキスを落としてバスルームに行った。
そうだ。
俺……透也に全てを打ち明けるんだった。
ああ……ドキドキする。
透也はどう思うだろう。
一気に不安になってきて、その場に立ち尽くしていると
「――ち? 大智、まさかずっとここにいたんですか?」
と透也の声が聞こえた。
「えっ?」
「あれから15分は経ってますよ。もしかして、俺が話のことを口にしたから不安になってたんですか?」
ああ、もう全部お見通しなんだな。
俺が小さく頷くと
「すみません。不安にさせるつもりじゃなかったんですよ」
と言って、俺を優しく抱き上げた。
そのままソファーに腰を下ろすと、
「大智が話したくない事はなにも言わなくていいですよ。俺は大智の言葉だけを信じますから」
と優しい言葉をかけてくれる。
こんなにも真っ直ぐに俺を見てくれるなんて……。
もう不安になるのはやめよう。
透也ならきっと俺の気持ちをわかってくれるはずだ。
「全部……聞いてほしい……」
そう言って俺はゆっくりと口を開いた。
「あれ?」
わざわざ用意してくれたらしい着替えは、俺のサイズにぴったりで上質で軽い着心地の、綺麗な紺色の部屋着だった。
濡れた髪をタオルで拭きながら、脱衣所を出ると美味しそうな匂いが漂ってくる。
昼間にあんなに美味しい鰻を食べたというのに、透也の料理の匂いを嗅ぐだけでお腹が一気に空いてくる。
俺の味覚はすっかり透也の料理に馴染んでしまっているのかもしれない。
「良い匂いだな」
「もうすぐできますよ、って、その着替えよく似合ってます。やっぱりその色にして正解でした。濃いグレーと悩んだんですよねー」
「そうか、ありがとう。すごく着心地いいよ。でも……」
「んっ? どこか気になるところありました?」
「いや、そうじゃなくて……これ、すっごくいいんだけど、俺は前みたいに透也の服の方がよかったなって」
せっかく用意してくれているのに、こんなこと言って申し訳ないけど……。
でも透也の服の方が安眠できそうなんだよな。
「えっ?」
「透也の服からいい匂いするし、なんかずっと包まれてる気がして幸せで――わっ!!」
「もう! わざとですか?」
「えっ? なにが?」
急に抱きしめられて、怒られて、本当に訳がわからない。
「はぁーっ。それって、俺の匂いが好きって言ってるんですよ? 知ってます? 他人の体臭が良い匂いだと感じたらそれは遺伝子レベルでその人を求めている証拠で運命の相手なんですって」
「えっ……遺伝子? 運命の、相手……?」
「そうです。ちなみに俺も、大智の匂いは好きですよ。大智の入った後のお風呂の匂いで余裕でヌケるくらいに」
「ぬけ、って――えっ?? う、うそだろう?」
「本当ですよ。だからいつも大智に先にお風呂に入ってもらうんです」
「――っ!!!」
紳士みたいな笑顔を浮かべながら言ってることがすごい変態チックなんだけど……。
でも、俺の匂いが好きで、しかも、ぬ、ヌケる……なんて……そんなこと言われて、俺も嬉しいって思っちゃってるんだけど……。
もしかしたら、俺も変態……なのかもしれないな。
「ふふっ。本当に大智は可愛いですね」
「可愛い、とか……そんなっ」
「ふふっ。さぁ、来て下さい。髪、乾かしましょう」
抱きしめられていた身体が軽々と抱き上げられ、ソファーに座らされる。
いつの間に用意してあったのか、ドライヤーで俺の髪を手際よく乾かしていく。
自分一人の時は面倒くさくていつも自然乾燥だったのに、透也に乾かされるのは気持ちよくて眠ってしまいそうになる。
ドライヤーってこんなに気持ちいいものだったんだな。
知らなかった。
「乾きましたよ」
カチッとドライヤーが止まって、一瞬本当に寝てしまっていたことに気づいた。
俺の髪が短いから乾くのもあっという間だな。
もっと長かったら、ずっとしてもらえたのに……。
透也に乾かしてもらいたいがために髪を伸ばそうかという考えが頭をよぎる。
バカだな、俺。
今日の夕食はきのことサーモンのホイル焼き。
こんな手の込んだものが作れるのかと思って驚いたけど、透也がいうにはこれはかなり簡単らしい。
「蒸すことで食材からの旨味が出るから、バターと塩、そして出来上がったらだし醤油を回しかけるだけで、美味しくなるんです」
って簡単そうに教えてくれたけど、多分俺にはできないだろうな。
あっという間にホイル焼きや土鍋ご飯を平らげた俺は、今度こそ食事の片付けをしようと声をかけた。
「じゃあ、机の上を拭いててもらっていいですか? あ、あと調味料をあそこの収納ケースに並べてもらえると助かります」
「わかった。任せてくれ!」
そう言ってせっせと机の上を拭き、調味料をケースに持っていった。
調味料の蓋に自作の名前のラベルが貼られていて、それが50音順に並べられているのがわかる。
すごいな。わかりやすいし、使いやすそう。
こんなところでも透也が仕事ができるのがわかる。
調味料の量も半端ないし、本当に料理が好きなんだな。
感心しながら、綺麗に並べ終えた時にはもう全ての食器が食洗機に入れられて片付けが終わってしまっていた。
「もう、終わったのか?」
「はい。大智に手伝ってもらいましたから、あっという間でしたよ」
あまり手伝った感じもないんだけど、そう言ってくれるならいいか。
「さっとお風呂に入ってきますから、テレビでも見て寛いでいて下さい」
そう言われて、さっきの言葉を思い出す。
――大智の匂いは好きですよ。大智の入った後のお風呂の匂いで余裕でヌケるくらいに。
もしかして、本当に今から?
そんなことを考えて思わず顔が赤くなってしまう。
「ふふっ。なにを想像したんですか?」
「えっ? いや……」
「ふふっ。でも今日はしませんよ。大智の話を聞きたいので、急いで出てきます」
そういうと、透也は俺の髪にチュッとキスを落としてバスルームに行った。
そうだ。
俺……透也に全てを打ち明けるんだった。
ああ……ドキドキする。
透也はどう思うだろう。
一気に不安になってきて、その場に立ち尽くしていると
「――ち? 大智、まさかずっとここにいたんですか?」
と透也の声が聞こえた。
「えっ?」
「あれから15分は経ってますよ。もしかして、俺が話のことを口にしたから不安になってたんですか?」
ああ、もう全部お見通しなんだな。
俺が小さく頷くと
「すみません。不安にさせるつもりじゃなかったんですよ」
と言って、俺を優しく抱き上げた。
そのままソファーに腰を下ろすと、
「大智が話したくない事はなにも言わなくていいですよ。俺は大智の言葉だけを信じますから」
と優しい言葉をかけてくれる。
こんなにも真っ直ぐに俺を見てくれるなんて……。
もう不安になるのはやめよう。
透也ならきっと俺の気持ちをわかってくれるはずだ。
「全部……聞いてほしい……」
そう言って俺はゆっくりと口を開いた。
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