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折り鶴の秘密
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こちらは『俺の天使に触れないで 隆之と晴の物語』
『第52話折り鶴の持つ意味』のアルと理玖sideのお話です。
そちらと並行で読んでもらえるとよく分かると思います。
未読の方は是非そちらも読んでみてください♫
✳︎ ✳︎ ✳︎
そんな矢先、その日はシュパースでのバイトは休みだったけど、
『今日は予約が少ないから遊びにおいで』
とアルに言われて珍しいなと思いながらシュパースに行った。
奥の個室で1人でジュースを飲みながら、アルが部屋にくるのを待っていると目の前に突然香月が現れた。
香月も俺がいることを知らなかったらしく、2人で驚いてしまった。
さてはアルと早瀬さんが俺たちを驚かそうと仕組んだんだなと思ったけれど、それよりも前に元気な香月に会えたことが嬉しくて涙が出た。
あの時、ぐったりした様子の香月を見ていたから余計に元気な香月をみて嬉しくなったんだ。
気づけば涙を流して抱き合ってしまっていた。
いろいろ積もる話はあったのに、部屋に入ってきたアルに早々に引き離されてしまった。
アルたちが仕組んだくせに抱き合ってるのが気に入らないってなんか解せないな……。
それにしても香月は、高校の頃から綺麗な顔立ちをしていたけど、最近やけに色気を感じる。
きっと早瀬さんと幸せなんだろう。
香月は素直だし可愛いし、俺でも守ってやらなきゃっていう気にさせられる。
俺もアルに対してあれくらい恥ずかしがらずにもっと素直な愛を伝えられたら良いんだろうけどな。
俺がアルを好きすぎて気持ちのままに伝えたら、引かれてしまいそうで少し怖いんだ。
そんなことを考えていると、店でお客様同士のトラブルがあったとかでアルと早瀬さんが仲裁をしに部屋を出て行った。
ひさびさに2人っきりになったこの空間でせっかくの機会だからと俺は香月に相談を持ちかけることにした。
「あの、さ……ちょっと聞きたいんだけど、香月は早瀬さんに何かプレゼントしたことある?」
「プレゼント?」
「再来週、ア……オーナーの誕生日なんだけど、何あげていいか悩んでてさ」
いつも俺のためになんでもしてくれるアルの思いっきり喜ぶ顔がみたいんだ。
でも、俺はただの大学生。
お金はそんなに余裕はないし、アルが欲しいものをあげられるとは思えない。
お金じゃなくてあげられる何かいいアドバイスが欲しくて聞いてみた。
「ふふっ。名前で呼んでいいのに……。そうだなぁ、プレゼントかぁ。うん、悩むよね。オーナーならもうなんでも持ってそうだし……」
「そうなんだよ!! だから困ってて!」
香月は『料理でもてなすのはどう?』と言ってくれた。
アルの好きなものを作る……確かにいいアイディアだ。
でも、俺料理苦手なんだよな……。
一生懸命作ったりそれだけで喜んでくれそうだけど……うーん、どうしよう。
すると、突然香月が
「……そういえば理玖知ってる? オーナーが店に折り鶴飾ってるの」
と、なんの脈絡もない話をし出した。
何か誕生日プレゼントにつながる話なのかと思い、
「ああ、この店の一番良い場所に飾られているアレだろ。アレがどうかしたのか?」
と尋ねると、香月の口から驚きの事実が知らされた。
「前に夜の片付けしてた時にあの鶴に気付いて、オーナーに聞いたことがあったんだ。外国の人で折り鶴を飾るって不思議じゃない? だからさ……『あの折り鶴って何か意味があるんですか?』って聞いたんだよ。そしたら、【初恋なんだよ】って」
「え……っ」
「それ以上は教えてくれなかったんだけど、折り鶴が初恋ってなんだかロマンチックだよね。だから、オーナーは高価な物とかじゃなくても心がこもってたら絶対喜んでくれるはずだよ! 料理作るなら、僕もサポートできるし!
なんでも言って!」
あの折り鶴……俺が前に聞いた時は思い出の鶴だって言ってた。アルと付き合う前だったし、何の気にもとめてなかったけど、思い出って初恋だったの?
初恋……ってアルのだよね……?
じゃああの折り鶴はその子から貰ったもの?
わざわざドイツから持ってきて自分の大切な店に飾るなんてよっぽど好きだったんだな、その子のこと……。
アル……アルの心の中にはその子がまだ残ってる?
俺はアルの一番にはなれないんだろうか……。
もう香月の言葉は何も耳に入って来ず、ずっとあの折り鶴のことばかり考えていた。
それからしばらくしてトラブルが片付いたといってアルと早瀬さんが帰ってきた。
アルがいろいろと話しかけてくれたけれど、俺よりも好きな人がいるんだと思うと言葉を交わすのも辛かった。
今日来なければ良かった……。
香月と早瀬さんが帰っていって、アルは店の片付けと締めを鷹斗さんにお願いしてくると言って俺は1人個室に残っていた。
その間もずっと俺は折り鶴の子のことばかり考えていた。
その子が今目の前に現れたらアルは俺のそばからいなくなってしまうんだろうか……。
そんなのは嫌だ。
部屋で1人泣きじゃくっていると、カチャリと扉が開いてアルが入ってきた。
「リク……どうしたんだ? さっきから様子がおかしかったけれど、こんなに泣いて……」
アルは部屋の鍵を閉めるとすぐに俺に駆け寄りぎゅっと抱きしめて涙を親指で優しく拭ってくれた。
俺はこの温もりを失ってしまうのが怖くてどうして泣いているのか理由を話すことができずにいた。
アルは俺を抱き抱えると部屋を出て裏口から自分の車に乗り込み、
『私の家に連れて行くよ』と言って、俺の返事も聞かずにそのまま連れて行かれた。
家に着いて、いつものソファーに腰を下ろしアルに見つめられたけれど、俺がアルの大切な初恋の子のことを知ってしまったこと、そしてその子に対する俺の中に現れた醜い感情のことを知られたくなくて俺は何も言えなかった。
アルは『はぁーーっ』と大きく溜め息を吐いた。
呆れられてしまったんだ……。
アルにとって俺は初恋の子の身代わりにおいていただけだったのかもしれない。
それなのに、めんどくさい嫉妬でアルを呆れさせてしまった。
俺が我慢していれば、アルの温もりを手放さずに済んだのに!
俺はバカだ!
そう後悔の念が溢れて涙が止まらなくなった。
「リク……どうしたんだ?」
止まりかかっていた涙がまた溢れ出した俺を心配そうに見つめるアルに何も伝えることなどできなかった。
その時、アルのスマホが鳴った。
電話じゃない、メールだ。
「ちょっと、済まない」
そう言ってアルはスマホに目をやると、
『Oh mein Gott!』
と目を見開いて驚いていた。
何があったんだろう……そう思っていると、
突然アルは俺をぎゅっと抱きしめて
「リク、誤解させて悪かった」
と謝罪の言葉を口にした。
「な、なんのこと?」
「ハルから折り鶴の話を聞いたんだろう?」
アルから折り鶴の話が出てきて胸が抉られるような感情が湧き上がってきた。
「ううん、何も聞いてない。俺は何も知らない。アルの初恋なんて俺は何も知らないんだ」
感情の思うままに全てをぶちまけてしまった。
ああ、もうこれで終わりだ……。
この腕の中に居られるのももう最後なんだ。
「ごめん、俺……帰るよ」
そう言って立ち上がろうとしたけれど、アルの腕の力は弱まるどころか強くなる一方でアルから離れることが出来なかった。
「アル……」
「リク、しっかり聞いてくれ! 私の初恋は君なんだ!」
「え……っ??」
どういうこと?
俺が初恋だなんて……そんなことあるわけない。
「だ、だって……あの、折り鶴は……?」
「あれは……【cafe Einhorn 】で君が折った折り鶴に魅せられて、私が必死で折った物なんだよ」
「え……っ? だ、だって……初恋、だって……、えっ? 俺が折った、折り鶴……?」
「そうだ。私があのカフェで見つけた折り鶴は君が折ったものだったんだろう?」
たしかに【cafe Einhorn 】で折り鶴を折ったことがある。
だけど……それがアルの初恋ってどういうこと?
情報が頭の中で渋滞してしまって何から尋ねれば良いのかわからない。
「あの店で君の折った折り鶴に魅せられて必死で折り鶴を練習して、私のもあの店に飾ってもらったんだ。そうしたら、君はそれを『家族みたいだ』って喜んでたって聞いて、その時の感動が忘れられなくてあれから何百回も鶴を折ったよ。シュパースに飾っている鶴は、君のことを思いながら折った世界に一つだけの折り鶴なんだよ」
愛おしそうに僕の指を撫でながら、思い出を語るアルを見て涙が出そうになる。
「……そうだ、あったよ……俺の鶴の隣に一生懸命頑張って折った鶴が……。あれ、アルが折ったものだったんだ……」
「ああ。私の人生であんなに惹かれたものはなかったよ。どうしても一緒に並べて欲しくて頑張ったんだ。意気揚々と持っていったが、リクのと比べるとあまりにもヨレヨレで恥ずかしくなってしまったんだけどね」
その時、ふふっと恥ずかしそうに笑うアルのことを本当に好きだなって思ったんだ。
「アル……ごめん。俺、てっきり初恋の子から貰ったものを大切にしてるんだと思って……」
「いや、リクの気持ちが嬉しいよ」
「えっ? なんで?」
「だって私のことを泣くほど好きだってことだろう? 頑なに理由を言わなかったのも私がリクから離れるかもしれないと思ったんじゃないか?」
アルに本音を指摘されて恥ずかしくて答えられず、俺は小さく頷くのが精一杯だった。
「あれは私が悪いんだ。早くあの話をしようと思いながら、リクと2人になったらつい愛し合いたくなってしまって大事な話を二の次にしてしまっていた……余計な心配させてしまったね」
「ううん。俺が勘違いしたからだ。ごめん」
俺が謝るとアルは
「私にとってリク以外に大切なものなど何もないよ。これからは1人で泣かないで何でも話してくれ」
そう言って抱きしめてくれた。
『第52話折り鶴の持つ意味』のアルと理玖sideのお話です。
そちらと並行で読んでもらえるとよく分かると思います。
未読の方は是非そちらも読んでみてください♫
✳︎ ✳︎ ✳︎
そんな矢先、その日はシュパースでのバイトは休みだったけど、
『今日は予約が少ないから遊びにおいで』
とアルに言われて珍しいなと思いながらシュパースに行った。
奥の個室で1人でジュースを飲みながら、アルが部屋にくるのを待っていると目の前に突然香月が現れた。
香月も俺がいることを知らなかったらしく、2人で驚いてしまった。
さてはアルと早瀬さんが俺たちを驚かそうと仕組んだんだなと思ったけれど、それよりも前に元気な香月に会えたことが嬉しくて涙が出た。
あの時、ぐったりした様子の香月を見ていたから余計に元気な香月をみて嬉しくなったんだ。
気づけば涙を流して抱き合ってしまっていた。
いろいろ積もる話はあったのに、部屋に入ってきたアルに早々に引き離されてしまった。
アルたちが仕組んだくせに抱き合ってるのが気に入らないってなんか解せないな……。
それにしても香月は、高校の頃から綺麗な顔立ちをしていたけど、最近やけに色気を感じる。
きっと早瀬さんと幸せなんだろう。
香月は素直だし可愛いし、俺でも守ってやらなきゃっていう気にさせられる。
俺もアルに対してあれくらい恥ずかしがらずにもっと素直な愛を伝えられたら良いんだろうけどな。
俺がアルを好きすぎて気持ちのままに伝えたら、引かれてしまいそうで少し怖いんだ。
そんなことを考えていると、店でお客様同士のトラブルがあったとかでアルと早瀬さんが仲裁をしに部屋を出て行った。
ひさびさに2人っきりになったこの空間でせっかくの機会だからと俺は香月に相談を持ちかけることにした。
「あの、さ……ちょっと聞きたいんだけど、香月は早瀬さんに何かプレゼントしたことある?」
「プレゼント?」
「再来週、ア……オーナーの誕生日なんだけど、何あげていいか悩んでてさ」
いつも俺のためになんでもしてくれるアルの思いっきり喜ぶ顔がみたいんだ。
でも、俺はただの大学生。
お金はそんなに余裕はないし、アルが欲しいものをあげられるとは思えない。
お金じゃなくてあげられる何かいいアドバイスが欲しくて聞いてみた。
「ふふっ。名前で呼んでいいのに……。そうだなぁ、プレゼントかぁ。うん、悩むよね。オーナーならもうなんでも持ってそうだし……」
「そうなんだよ!! だから困ってて!」
香月は『料理でもてなすのはどう?』と言ってくれた。
アルの好きなものを作る……確かにいいアイディアだ。
でも、俺料理苦手なんだよな……。
一生懸命作ったりそれだけで喜んでくれそうだけど……うーん、どうしよう。
すると、突然香月が
「……そういえば理玖知ってる? オーナーが店に折り鶴飾ってるの」
と、なんの脈絡もない話をし出した。
何か誕生日プレゼントにつながる話なのかと思い、
「ああ、この店の一番良い場所に飾られているアレだろ。アレがどうかしたのか?」
と尋ねると、香月の口から驚きの事実が知らされた。
「前に夜の片付けしてた時にあの鶴に気付いて、オーナーに聞いたことがあったんだ。外国の人で折り鶴を飾るって不思議じゃない? だからさ……『あの折り鶴って何か意味があるんですか?』って聞いたんだよ。そしたら、【初恋なんだよ】って」
「え……っ」
「それ以上は教えてくれなかったんだけど、折り鶴が初恋ってなんだかロマンチックだよね。だから、オーナーは高価な物とかじゃなくても心がこもってたら絶対喜んでくれるはずだよ! 料理作るなら、僕もサポートできるし!
なんでも言って!」
あの折り鶴……俺が前に聞いた時は思い出の鶴だって言ってた。アルと付き合う前だったし、何の気にもとめてなかったけど、思い出って初恋だったの?
初恋……ってアルのだよね……?
じゃああの折り鶴はその子から貰ったもの?
わざわざドイツから持ってきて自分の大切な店に飾るなんてよっぽど好きだったんだな、その子のこと……。
アル……アルの心の中にはその子がまだ残ってる?
俺はアルの一番にはなれないんだろうか……。
もう香月の言葉は何も耳に入って来ず、ずっとあの折り鶴のことばかり考えていた。
それからしばらくしてトラブルが片付いたといってアルと早瀬さんが帰ってきた。
アルがいろいろと話しかけてくれたけれど、俺よりも好きな人がいるんだと思うと言葉を交わすのも辛かった。
今日来なければ良かった……。
香月と早瀬さんが帰っていって、アルは店の片付けと締めを鷹斗さんにお願いしてくると言って俺は1人個室に残っていた。
その間もずっと俺は折り鶴の子のことばかり考えていた。
その子が今目の前に現れたらアルは俺のそばからいなくなってしまうんだろうか……。
そんなのは嫌だ。
部屋で1人泣きじゃくっていると、カチャリと扉が開いてアルが入ってきた。
「リク……どうしたんだ? さっきから様子がおかしかったけれど、こんなに泣いて……」
アルは部屋の鍵を閉めるとすぐに俺に駆け寄りぎゅっと抱きしめて涙を親指で優しく拭ってくれた。
俺はこの温もりを失ってしまうのが怖くてどうして泣いているのか理由を話すことができずにいた。
アルは俺を抱き抱えると部屋を出て裏口から自分の車に乗り込み、
『私の家に連れて行くよ』と言って、俺の返事も聞かずにそのまま連れて行かれた。
家に着いて、いつものソファーに腰を下ろしアルに見つめられたけれど、俺がアルの大切な初恋の子のことを知ってしまったこと、そしてその子に対する俺の中に現れた醜い感情のことを知られたくなくて俺は何も言えなかった。
アルは『はぁーーっ』と大きく溜め息を吐いた。
呆れられてしまったんだ……。
アルにとって俺は初恋の子の身代わりにおいていただけだったのかもしれない。
それなのに、めんどくさい嫉妬でアルを呆れさせてしまった。
俺が我慢していれば、アルの温もりを手放さずに済んだのに!
俺はバカだ!
そう後悔の念が溢れて涙が止まらなくなった。
「リク……どうしたんだ?」
止まりかかっていた涙がまた溢れ出した俺を心配そうに見つめるアルに何も伝えることなどできなかった。
その時、アルのスマホが鳴った。
電話じゃない、メールだ。
「ちょっと、済まない」
そう言ってアルはスマホに目をやると、
『Oh mein Gott!』
と目を見開いて驚いていた。
何があったんだろう……そう思っていると、
突然アルは俺をぎゅっと抱きしめて
「リク、誤解させて悪かった」
と謝罪の言葉を口にした。
「な、なんのこと?」
「ハルから折り鶴の話を聞いたんだろう?」
アルから折り鶴の話が出てきて胸が抉られるような感情が湧き上がってきた。
「ううん、何も聞いてない。俺は何も知らない。アルの初恋なんて俺は何も知らないんだ」
感情の思うままに全てをぶちまけてしまった。
ああ、もうこれで終わりだ……。
この腕の中に居られるのももう最後なんだ。
「ごめん、俺……帰るよ」
そう言って立ち上がろうとしたけれど、アルの腕の力は弱まるどころか強くなる一方でアルから離れることが出来なかった。
「アル……」
「リク、しっかり聞いてくれ! 私の初恋は君なんだ!」
「え……っ??」
どういうこと?
俺が初恋だなんて……そんなことあるわけない。
「だ、だって……あの、折り鶴は……?」
「あれは……【cafe Einhorn 】で君が折った折り鶴に魅せられて、私が必死で折った物なんだよ」
「え……っ? だ、だって……初恋、だって……、えっ? 俺が折った、折り鶴……?」
「そうだ。私があのカフェで見つけた折り鶴は君が折ったものだったんだろう?」
たしかに【cafe Einhorn 】で折り鶴を折ったことがある。
だけど……それがアルの初恋ってどういうこと?
情報が頭の中で渋滞してしまって何から尋ねれば良いのかわからない。
「あの店で君の折った折り鶴に魅せられて必死で折り鶴を練習して、私のもあの店に飾ってもらったんだ。そうしたら、君はそれを『家族みたいだ』って喜んでたって聞いて、その時の感動が忘れられなくてあれから何百回も鶴を折ったよ。シュパースに飾っている鶴は、君のことを思いながら折った世界に一つだけの折り鶴なんだよ」
愛おしそうに僕の指を撫でながら、思い出を語るアルを見て涙が出そうになる。
「……そうだ、あったよ……俺の鶴の隣に一生懸命頑張って折った鶴が……。あれ、アルが折ったものだったんだ……」
「ああ。私の人生であんなに惹かれたものはなかったよ。どうしても一緒に並べて欲しくて頑張ったんだ。意気揚々と持っていったが、リクのと比べるとあまりにもヨレヨレで恥ずかしくなってしまったんだけどね」
その時、ふふっと恥ずかしそうに笑うアルのことを本当に好きだなって思ったんだ。
「アル……ごめん。俺、てっきり初恋の子から貰ったものを大切にしてるんだと思って……」
「いや、リクの気持ちが嬉しいよ」
「えっ? なんで?」
「だって私のことを泣くほど好きだってことだろう? 頑なに理由を言わなかったのも私がリクから離れるかもしれないと思ったんじゃないか?」
アルに本音を指摘されて恥ずかしくて答えられず、俺は小さく頷くのが精一杯だった。
「あれは私が悪いんだ。早くあの話をしようと思いながら、リクと2人になったらつい愛し合いたくなってしまって大事な話を二の次にしてしまっていた……余計な心配させてしまったね」
「ううん。俺が勘違いしたからだ。ごめん」
俺が謝るとアルは
「私にとってリク以外に大切なものなど何もないよ。これからは1人で泣かないで何でも話してくれ」
そう言って抱きしめてくれた。
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