異世界で監禁された僕は助けてくれた公爵さまからこの上ない寵愛を受けています

波木真帆

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生きるか死ぬか

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結局僕はその男に引き摺られるように連れていかれた。
数十分歩いて、ようやく森を出た。

すぐ目の前に今にも朽ち果てそうな洋館がある。
僕の住んでいたアパートとあまり変わらないくらいボロい家。

男はそこに住んでいるらしい。

「この時間はちょうど今、使用人たちも出払っている。お前を家に入れても誰にも気づかれない」

ニヤリと薄みわるい笑みを浮かべて僕を見る。

「お前に出入り口の仕掛けを覚えられたら困るからな」

そう言って、どこからか持ってきたボロ布で僕の目を塞ぐ。男は僕を荷物のように担ぐと家の中に入っていった。手を縛られ目を塞がれ、どこに連れて行かれるかもわからない。

「どこに連れていく気なんだ?」

「静かにしろ! すぐに殺してもいいんだぞ」

その声のトーンが本気だと訴える。
今のままでも生きた心地はしていない。
それが少し長引くだけな気もする。
でも、少しの希望があるのなら今は静かにしておいたほうがいいのだろう。

どこかで逃げ出せるチャンスがあるかもしれない。
僕は声を出さず、何かヒントになるような事が聞けないか耳を澄ませた。

男は何やら階段を下りているようだ。
男が歩くのと同時にコツコツと音が聞こえる。
ひんやりとした空気が肌に触れる。

もしかして、ここは地下室?

パチっと何かスイッチを押す音が聞こえると、ボロ布越しにうっすらと光を感じる。
おそらく電気をつけたんだろう。

「どこだったか? ああ。あった、あった」

男は独り言を言うとガチャガチャと何かを開け始めた。
ギイッと錆びついた音が聞こえる。

これはなんだろう?

「ほら、お前はしばらくここに入っていろ!」

僕は担がれていた男の肩から下ろされて狭い場所に押し込まれる。足を曲げないと入らないその場所にグイグイと押し込まれ苦しくてたまらない。

男は僕の目を塞いでいたボロ布を一気に取り去った。
光で目が眩んでいる間に入り口を閉められ、男は大きな鍵を扉につけた。

ようやく見えるようになった僕の目に飛び込んできたのは、鉄格子越しに見えるニヤケきった男の顔。

僕は慌てて目の前の鉄格子を掴んで動かしたけれど、びくともしない。

「開けろ! 開けてくれ!」

必死に叫ぶけれど、男は僕のその姿すら楽しんでいるみたいだ。

「あんまり騒ぐとすぐに体力を消耗するぞ。少しでも長く生きたけりゃ、静かにしておくんだな。言っとくがその檻は、外にいた獰猛な獣たちを捕獲するためのものだから我々の力では壊せない。自分で壊そうなんて考えないほうがいいぞ。また明日様子を見にくる。私の言うことを素直に聞くようになればそこから出してやる。自分が生き延びるにはどうしたらいいか一晩じっくり考えておくんだな」

そう告げると、男はその場を離れていく。
コツコツと音がして離れていくのを僕は何もいえずに見続けるしかなかった。

そして、パチっと電気のスイッチが押され、僕は地下室の漆黒の闇の中に一人取り残された。

暗い、狭い。動けない。
身体を自由に動かすこともできない小さな檻の中で、時が経つのを待つ。
いったいどうしてこんなことになってしまったのだろう。

そもそもここはどこなんだ?

何か手掛かりを探ろうにもこの漆黒の闇の中では何も探せそうにない。
明日あの男が来ると言っていたけれど、来なかったら……

飲み物も食べ物もなく、餓死するのを待つしかない。

結局死ぬのが少し伸びただけなのか。
あのまま一思いに殺されていたほうが幸せだったのかもしれない。
けれど、このまま死ぬのを待つだけなんて負けた気がする。
僕はこの小さな檻の中で身体を移動させ、鉄格子に近づけた。
腕を縛っていた紐を鉄格子に擦り付けて摩擦で引きちぎった。
手が動かせるだけでも少し自由になった気がした。

檻の中でなんとか服を脱ぎたかったけれど、狭すぎて脱げそうにない。
仕方なくシャツを引っ張って口に咥えた。
吸い付くと、ずぶ濡れになっていたシャツの水分が乾いた口の中に入ってくる。
少しでも飲み水さえあれば、一晩くらいなら生き延びれる。
ポケットに入っていたハンカチを思い出し、それを取り出す。
僕は最後の希望を捨てずにひたすらハンカチを吸い続けた。

その時、家の中で何が起こっていたのかも知らずに……
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