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晴の可愛さに酔う※
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理玖の様子に驚いて晴が声をかけようとするよりも前にアルが
「リク!! これはちがうんだよ! ただの冗談なんだ!!」
と必死な様子で理玖に駆け寄り、逃げようとした理玖の腕を掴み胸に抱き寄せ一生懸命弁解している。
ははーん、なるほど。やっぱりな。そういうことか。
晴は何が起こったのかわからないと言った表情で扉前に佇む二人をただただ眺めている。
アルが理玖の耳元に口を近づけ、何やら言葉をかけると理玖はみるみるうちに真っ赤になって、下に落としたメニューを大慌てで拾い足早に部屋から離れて行った。
アルはそんな理玖を見やると、晴の方を向き直して
「騒がせたね。お詫びになんでもご馳走するから好きなもの食べて行ってくれ。私は失礼するよ。Bis gleich」
早口でそう言うと、理玖のあとを追いかけるかのように足早に去って行った。
「えっと……今の、何だったんでしょう? 理玖はどうしちゃったのかな?」
晴はまだ何も分かっていないようだ。
ここは教えておくべきか?
まあ、隠しておいても理玖のあの様子なら近いうちに晴にもバレるな。
「アルと理玖は俺たちみたいな関係のようだな、晴」
「俺たちみたいな関係って??」
「だから、こういう関係だよ」
隆之は晴に近づき、ちゅっと音を立ててお互いの唇を合わせた。
「ああ……えっ? えーーーーっ!?」
晴は大きな目をさらに見開いて驚きの声をあげた。
「理玖が? オーナーと? えっ? えっ? ほんとですか??」
本当に何にも気付いてなかったんだな。晴らしい。
「あの二人、お似合いだよ。アルも相当溺愛しているようだし」
最初にこの店に来た時から、アルが理玖に見せる顔は晴のそれとは違ったな。
晴がバイトを休むときも理玖が代わりに出てくれるからって嬉しそうに言ってたし。
「そ、そうですね。ビックリしちゃいましたけど、理玖が幸せなら良いです。でも、さっきの大丈夫でしょうか?」
「ああ、あんなの痴話喧嘩みたいなもんだから大丈夫だよ。今頃はもう仲直りしてるんじゃないか」
「ふふっ。オーナーがあんなに慌ててる姿初めて見ました。いつもカッコいいって言われてる理玖もなんだか可愛い感じでしたし」
そう微笑む晴が可愛くて、晴の細い腰に手を回しさっと抱き寄せた。
そして、晴の柔らかな髪にキスをしながら囁く。
「俺には晴が一番可愛いよ」
「んっ……隆之さん、そんなことばっかり言って……恥ずかしいです……」
と、照れながらも隆之から離れようとしない。
こういうところが可愛いんだよな。晴は。
晴の可愛さを堪能してから、ご馳走してくれるというアルの言葉に甘えて食事をいただくことにした。
「晴、何を食べようか? 夜のおすすめは何かある?」
「そうですねー。あっ、隆之さん、せっかくだし今日はビール飲みませんか?」
「おっ、いいな。やっぱりドイツ料理にはビールだよな」
料理は晴に任せておすすめを注文してもらい、飲み物は俺が選んだ。
「晴はいつもどんなお酒飲んでるんだ?」
「僕、ほとんど飲んだことないんですよ。理玖とオーナーから飲むなって……特に外ではダメだって言われてて……だから、ここでたまにオーナーや理玖と一緒にへーフェヴァイツェンをほんの少し飲むくらいですね。他のも飲んでみたい気持ちはあるんですけど……」
晴は酒癖が悪いのか?
いや、もしかしたら弱くてすぐ寝てしまうのかもしれないな。
外で飲むなって言われてるのが少し気になるところだが、まぁ、でも今日は俺が一緒だし大丈夫だろ。
「そうか。じゃあ、今日も晴はヴァイツェンにしとこうな。俺はシュバルツビールにしよう」
メインにはウインナーシュニッツェルを頼み、ビールで乾杯する。
ああ、本当にここの料理は最高だな。
「晴、俺のビール味見してみるか?」
「わぁ、いいんですか? 僕、黒ビール飲むの初めてです」
「黒ビールの中でもこれはスッキリしてるから、初めてでも飲みやすいと思うぞ」
晴にビールの入ったグラスを渡すと、晴は俺の口をつけたビールも気にする様子もなく、嬉しそうにタンブラーグラスに口をつけた。
「んんっ。色合いからすっごく苦いのかなって思ってましたけど、甘味もあってほんと飲みやすいですね! 美味しいです」
おお、意外とイケる口か?
「入社したら、飲みの場も増えるし飲める量を少しずつ増やしていくのもいいかもしれないな」
「そうですね。隆之さん、ビール以外のお酒も教えてくださいね」
モデルの件も決まったし、ストーカーの件もとりあえずは落ち着いたし、気持ちの整理がついたおかげか食事とビールを楽しみながら会話が進んで、晴もなんだかいつもより上機嫌だ。
ふと時計を覗くと、食事を始めてからだいぶ時間が経っていた。
そろそろ帰るかと思ったところで、扉をノックする音が聞こえた。
「はい、どうぞ」
と声をかけると、アルが理玖を連れ立って部屋に入ってきた。
「先程はちょっとからかいがすぎて申し訳なかった。料理とビールは口にあっただろうか?」
「ああ、料理もビールも最高だったよ」
隆之がアルと話していると、突然理玖の声が響いた。
「ああーー! 香月、お前飲み過ぎだぞ! 外で飲むなっていっておいただろ」
その声に反応して晴を見ると、ほんのり頬をピンクに染めた晴が両手で俺のタンブラーグラスを持ち、小さな唇をつけて美味しそうに『んくっ、んくっ』と飲んでいるところだった。
慌てて理玖がタンブラーグラスを晴から取り上げると、途端に晴は大きな目にいっぱい涙を溜めて
「ううーん、りくがぁいじわるするぅー。はるのコップかえしてぇーー」
とちょっと舌足らずな口調で理玖に訴えかける。
その可愛らしさと言ったら、犯罪級だ。
「はぁー。だから、外で飲ますの禁止してたんです。こいつ、ただでさえ可愛すぎて危ないのに酔うと危険度がマシマシになるんで」
たしかに……これは危ない。
入社しても飲みの場には行かさないほうがいいな。
営業の飢えた狼たちの中にこんな可愛い仔羊を放り込むなんて、ご馳走を与えるようにものだからな……。
「晴、飲みすぎると良くないから今日はもう帰るか」
晴に駆け寄り、泣いている晴を宥めると晴は俺の顔を見るなり『ひくっ』と泣き止み、極上の笑みを浮かべた。
「ああー、だれぇ? なんかカッコいいひとがいるぅー」
「忘れたの? 晴の恋人の隆之だよ」
晴にカッコいいと言われたのは嬉しかったが、お酒のせいとは言え可愛い恋人に自分の存在を忘れられたのが少し寂しくなって思い出させようと甘く蕩けるような声で晴の耳元で囁いた。
「んっ……そっかぁ……こいびとぉかぁ……ふふっ……はるのこいびとぉ……ねぇ……だっこしてぇ」
甘えながら、両手を広げて俺に縋りついてくる。
なんだ、この可愛らしい生き物…これは天使か? 可愛すぎだろ。
もう絶対他のやつの前では酒は飲ませない! これは決定事項だ!
「晴……抱っこしてあげるから『たかゆき』って呼んでごらん? ほら」
「んー? たかゆきぃ……ふふっ……だいちゅき」
晴はそう言ったかと思うと、俺の唇にちゅっと晴の小さな唇を合わせた。
「ふふっ……ちゅーしちゃった」
「……!!!」
両手で口を覆い、恥ずかしそうにふわりと微笑む晴が実に妖艶で、俺は唇に残った晴の柔らかな唇の感触を刻み込むかのように右手の人差し指と中指の腹で自分の唇をそっとなぞった。
こんな可愛いキス……反則だろ……。
思いもかけない晴の可愛い攻撃に俺は理性が吹き飛びそうになったが、なんとか押し留めていられたのは、アルと理玖の存在だった。
二人の前で晴を押し倒すわけにはいかない、でも晴は可愛すぎる、そんな隆之の葛藤がありありと感じられたのか、アルがそっと隆之の肩に触れ声をかけた。
「ユキ、タクシーを呼ぼう。車は明日取りに来たらいい」
そういって、俺の返事も聞く前にさっさとタクシーを呼んでくれた。
タクシーが到着したとの連絡を受けた頃には、晴は俺の腕の中でうとうとと眠りの旅に出てしまっていた。
アルにお礼を言い、晴をお姫さま抱っこで抱き上げ、晴の可愛い顔が周りから見えないように自分のジャケットを晴にさっと被せてから、アルが呼んでくれたタクシーに乗り込んだ。
自宅マンション前に着き、すうすうと眠ったままの晴を横抱きにしたままタクシーを降りると、中からコンシェルジュが静かに出てきた。
そして、さっと扉を開けエレベーターへと誘導してくれたコンシェルジュにお礼を言って、部屋へ入った。
寝る準備をしている間に少しの間だけと、晴がすっかり気に入ってくれたリビングのソファーの中央に俺のジャケットを被せたままの晴をそっと寝かせた。
先に自分の部屋に着替えに行こうと晴から離れようとすると、晴が俺のワイシャツの袖をしっかりと握って離そうとしない。
起こしたくはなかったが、どうにも身動きが取れないので俺は晴の耳元でお願いをしてみる。
「晴……眠いだろう。手を離してごらん。ほら」
「ううーん。やぁー。ねないぃ……はる……たかゆきとおふろはいるぅ」
眠そうに目を閉じたままなのに、いやいやと首をふりながらこんなに可愛い駄々をこねる。
こんなお願いされたら聞いてあげたくなるが、相手は酔った状態の可愛い晴。
これは聞くわけにはいかない……よな。
「今日はお風呂はやめておこう。早く着替えて寝ような」
「おふろ……めっ? ううーん……じゃあ……たかゆきとねるぅ」
ふぅ……お風呂諦めてくれたみたいで良かった。
晴の裸をあんな明るいところで見たらヤバいからな、いろいろと……。
「わかった。じゃあ着替えてから一緒に寝ような」
といいつつも、俺のワイシャツの袖を離そうとしないのでそのまま晴を抱き上げ、晴の部屋に向かう。
そして、クローゼットからパジャマを取り出し晴の洋服を脱がせるとやっと手を離したので、その隙にパジャマに着替えさせてやる。
さすがに下着まで変えると俺がいろいろとヤバいからな……明日の朝にでもお風呂に入ってもらって着替えてもらうか……。
下着姿になった晴は適度に筋肉がついていて、ちゃんと男の体なのに、晴の長く細いしなやかな手足や細い腰、インナーシャツの下でポチッと主張している可愛い乳首に興奮がおさまらなかった。
うわっ……腰のライン……エロいな……。
乳首も勃っててヤバい……。
下着姿でも充分ヤバいな、これは……。
ああ、これ一緒に風呂入ってたら、我慢できなかったな……。
でも、晴にとってはもちろん、俺も男とするのは初めてのことだ。
だからこそそういうことはちゃんとお互い意識があるときにやりたいと思うものだし晴の思い出に残るものにしたい。
そう自分に言い聞かせて、今回はなんとか雑念を追い払う。
邪な気持ちをなんとか抑えつつ、晴の着替えを終えた俺は、自室の寝室へと晴を運んだ。
すると、晴は俺の匂いのする寝具に包まれて落ち着いたのか、安心しきったような表情ですやすやと深い眠りへと落ちていった。
「リク!! これはちがうんだよ! ただの冗談なんだ!!」
と必死な様子で理玖に駆け寄り、逃げようとした理玖の腕を掴み胸に抱き寄せ一生懸命弁解している。
ははーん、なるほど。やっぱりな。そういうことか。
晴は何が起こったのかわからないと言った表情で扉前に佇む二人をただただ眺めている。
アルが理玖の耳元に口を近づけ、何やら言葉をかけると理玖はみるみるうちに真っ赤になって、下に落としたメニューを大慌てで拾い足早に部屋から離れて行った。
アルはそんな理玖を見やると、晴の方を向き直して
「騒がせたね。お詫びになんでもご馳走するから好きなもの食べて行ってくれ。私は失礼するよ。Bis gleich」
早口でそう言うと、理玖のあとを追いかけるかのように足早に去って行った。
「えっと……今の、何だったんでしょう? 理玖はどうしちゃったのかな?」
晴はまだ何も分かっていないようだ。
ここは教えておくべきか?
まあ、隠しておいても理玖のあの様子なら近いうちに晴にもバレるな。
「アルと理玖は俺たちみたいな関係のようだな、晴」
「俺たちみたいな関係って??」
「だから、こういう関係だよ」
隆之は晴に近づき、ちゅっと音を立ててお互いの唇を合わせた。
「ああ……えっ? えーーーーっ!?」
晴は大きな目をさらに見開いて驚きの声をあげた。
「理玖が? オーナーと? えっ? えっ? ほんとですか??」
本当に何にも気付いてなかったんだな。晴らしい。
「あの二人、お似合いだよ。アルも相当溺愛しているようだし」
最初にこの店に来た時から、アルが理玖に見せる顔は晴のそれとは違ったな。
晴がバイトを休むときも理玖が代わりに出てくれるからって嬉しそうに言ってたし。
「そ、そうですね。ビックリしちゃいましたけど、理玖が幸せなら良いです。でも、さっきの大丈夫でしょうか?」
「ああ、あんなの痴話喧嘩みたいなもんだから大丈夫だよ。今頃はもう仲直りしてるんじゃないか」
「ふふっ。オーナーがあんなに慌ててる姿初めて見ました。いつもカッコいいって言われてる理玖もなんだか可愛い感じでしたし」
そう微笑む晴が可愛くて、晴の細い腰に手を回しさっと抱き寄せた。
そして、晴の柔らかな髪にキスをしながら囁く。
「俺には晴が一番可愛いよ」
「んっ……隆之さん、そんなことばっかり言って……恥ずかしいです……」
と、照れながらも隆之から離れようとしない。
こういうところが可愛いんだよな。晴は。
晴の可愛さを堪能してから、ご馳走してくれるというアルの言葉に甘えて食事をいただくことにした。
「晴、何を食べようか? 夜のおすすめは何かある?」
「そうですねー。あっ、隆之さん、せっかくだし今日はビール飲みませんか?」
「おっ、いいな。やっぱりドイツ料理にはビールだよな」
料理は晴に任せておすすめを注文してもらい、飲み物は俺が選んだ。
「晴はいつもどんなお酒飲んでるんだ?」
「僕、ほとんど飲んだことないんですよ。理玖とオーナーから飲むなって……特に外ではダメだって言われてて……だから、ここでたまにオーナーや理玖と一緒にへーフェヴァイツェンをほんの少し飲むくらいですね。他のも飲んでみたい気持ちはあるんですけど……」
晴は酒癖が悪いのか?
いや、もしかしたら弱くてすぐ寝てしまうのかもしれないな。
外で飲むなって言われてるのが少し気になるところだが、まぁ、でも今日は俺が一緒だし大丈夫だろ。
「そうか。じゃあ、今日も晴はヴァイツェンにしとこうな。俺はシュバルツビールにしよう」
メインにはウインナーシュニッツェルを頼み、ビールで乾杯する。
ああ、本当にここの料理は最高だな。
「晴、俺のビール味見してみるか?」
「わぁ、いいんですか? 僕、黒ビール飲むの初めてです」
「黒ビールの中でもこれはスッキリしてるから、初めてでも飲みやすいと思うぞ」
晴にビールの入ったグラスを渡すと、晴は俺の口をつけたビールも気にする様子もなく、嬉しそうにタンブラーグラスに口をつけた。
「んんっ。色合いからすっごく苦いのかなって思ってましたけど、甘味もあってほんと飲みやすいですね! 美味しいです」
おお、意外とイケる口か?
「入社したら、飲みの場も増えるし飲める量を少しずつ増やしていくのもいいかもしれないな」
「そうですね。隆之さん、ビール以外のお酒も教えてくださいね」
モデルの件も決まったし、ストーカーの件もとりあえずは落ち着いたし、気持ちの整理がついたおかげか食事とビールを楽しみながら会話が進んで、晴もなんだかいつもより上機嫌だ。
ふと時計を覗くと、食事を始めてからだいぶ時間が経っていた。
そろそろ帰るかと思ったところで、扉をノックする音が聞こえた。
「はい、どうぞ」
と声をかけると、アルが理玖を連れ立って部屋に入ってきた。
「先程はちょっとからかいがすぎて申し訳なかった。料理とビールは口にあっただろうか?」
「ああ、料理もビールも最高だったよ」
隆之がアルと話していると、突然理玖の声が響いた。
「ああーー! 香月、お前飲み過ぎだぞ! 外で飲むなっていっておいただろ」
その声に反応して晴を見ると、ほんのり頬をピンクに染めた晴が両手で俺のタンブラーグラスを持ち、小さな唇をつけて美味しそうに『んくっ、んくっ』と飲んでいるところだった。
慌てて理玖がタンブラーグラスを晴から取り上げると、途端に晴は大きな目にいっぱい涙を溜めて
「ううーん、りくがぁいじわるするぅー。はるのコップかえしてぇーー」
とちょっと舌足らずな口調で理玖に訴えかける。
その可愛らしさと言ったら、犯罪級だ。
「はぁー。だから、外で飲ますの禁止してたんです。こいつ、ただでさえ可愛すぎて危ないのに酔うと危険度がマシマシになるんで」
たしかに……これは危ない。
入社しても飲みの場には行かさないほうがいいな。
営業の飢えた狼たちの中にこんな可愛い仔羊を放り込むなんて、ご馳走を与えるようにものだからな……。
「晴、飲みすぎると良くないから今日はもう帰るか」
晴に駆け寄り、泣いている晴を宥めると晴は俺の顔を見るなり『ひくっ』と泣き止み、極上の笑みを浮かべた。
「ああー、だれぇ? なんかカッコいいひとがいるぅー」
「忘れたの? 晴の恋人の隆之だよ」
晴にカッコいいと言われたのは嬉しかったが、お酒のせいとは言え可愛い恋人に自分の存在を忘れられたのが少し寂しくなって思い出させようと甘く蕩けるような声で晴の耳元で囁いた。
「んっ……そっかぁ……こいびとぉかぁ……ふふっ……はるのこいびとぉ……ねぇ……だっこしてぇ」
甘えながら、両手を広げて俺に縋りついてくる。
なんだ、この可愛らしい生き物…これは天使か? 可愛すぎだろ。
もう絶対他のやつの前では酒は飲ませない! これは決定事項だ!
「晴……抱っこしてあげるから『たかゆき』って呼んでごらん? ほら」
「んー? たかゆきぃ……ふふっ……だいちゅき」
晴はそう言ったかと思うと、俺の唇にちゅっと晴の小さな唇を合わせた。
「ふふっ……ちゅーしちゃった」
「……!!!」
両手で口を覆い、恥ずかしそうにふわりと微笑む晴が実に妖艶で、俺は唇に残った晴の柔らかな唇の感触を刻み込むかのように右手の人差し指と中指の腹で自分の唇をそっとなぞった。
こんな可愛いキス……反則だろ……。
思いもかけない晴の可愛い攻撃に俺は理性が吹き飛びそうになったが、なんとか押し留めていられたのは、アルと理玖の存在だった。
二人の前で晴を押し倒すわけにはいかない、でも晴は可愛すぎる、そんな隆之の葛藤がありありと感じられたのか、アルがそっと隆之の肩に触れ声をかけた。
「ユキ、タクシーを呼ぼう。車は明日取りに来たらいい」
そういって、俺の返事も聞く前にさっさとタクシーを呼んでくれた。
タクシーが到着したとの連絡を受けた頃には、晴は俺の腕の中でうとうとと眠りの旅に出てしまっていた。
アルにお礼を言い、晴をお姫さま抱っこで抱き上げ、晴の可愛い顔が周りから見えないように自分のジャケットを晴にさっと被せてから、アルが呼んでくれたタクシーに乗り込んだ。
自宅マンション前に着き、すうすうと眠ったままの晴を横抱きにしたままタクシーを降りると、中からコンシェルジュが静かに出てきた。
そして、さっと扉を開けエレベーターへと誘導してくれたコンシェルジュにお礼を言って、部屋へ入った。
寝る準備をしている間に少しの間だけと、晴がすっかり気に入ってくれたリビングのソファーの中央に俺のジャケットを被せたままの晴をそっと寝かせた。
先に自分の部屋に着替えに行こうと晴から離れようとすると、晴が俺のワイシャツの袖をしっかりと握って離そうとしない。
起こしたくはなかったが、どうにも身動きが取れないので俺は晴の耳元でお願いをしてみる。
「晴……眠いだろう。手を離してごらん。ほら」
「ううーん。やぁー。ねないぃ……はる……たかゆきとおふろはいるぅ」
眠そうに目を閉じたままなのに、いやいやと首をふりながらこんなに可愛い駄々をこねる。
こんなお願いされたら聞いてあげたくなるが、相手は酔った状態の可愛い晴。
これは聞くわけにはいかない……よな。
「今日はお風呂はやめておこう。早く着替えて寝ような」
「おふろ……めっ? ううーん……じゃあ……たかゆきとねるぅ」
ふぅ……お風呂諦めてくれたみたいで良かった。
晴の裸をあんな明るいところで見たらヤバいからな、いろいろと……。
「わかった。じゃあ着替えてから一緒に寝ような」
といいつつも、俺のワイシャツの袖を離そうとしないのでそのまま晴を抱き上げ、晴の部屋に向かう。
そして、クローゼットからパジャマを取り出し晴の洋服を脱がせるとやっと手を離したので、その隙にパジャマに着替えさせてやる。
さすがに下着まで変えると俺がいろいろとヤバいからな……明日の朝にでもお風呂に入ってもらって着替えてもらうか……。
下着姿になった晴は適度に筋肉がついていて、ちゃんと男の体なのに、晴の長く細いしなやかな手足や細い腰、インナーシャツの下でポチッと主張している可愛い乳首に興奮がおさまらなかった。
うわっ……腰のライン……エロいな……。
乳首も勃っててヤバい……。
下着姿でも充分ヤバいな、これは……。
ああ、これ一緒に風呂入ってたら、我慢できなかったな……。
でも、晴にとってはもちろん、俺も男とするのは初めてのことだ。
だからこそそういうことはちゃんとお互い意識があるときにやりたいと思うものだし晴の思い出に残るものにしたい。
そう自分に言い聞かせて、今回はなんとか雑念を追い払う。
邪な気持ちをなんとか抑えつつ、晴の着替えを終えた俺は、自室の寝室へと晴を運んだ。
すると、晴は俺の匂いのする寝具に包まれて落ち着いたのか、安心しきったような表情ですやすやと深い眠りへと落ちていった。
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