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是非、理玖に! <side晴>
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「理玖、こっちだよ」
僕の着替えについてきてくれる理玖は初めてのスタジオにかなり興味津々で扉が開いている部屋を眺めては『ほぉーっ』とか『わぁーっ』とか感嘆の声をあげている。
「ふふっ。そんなに楽しい?」
「滅多に来られない場所ってワクワクしちゃうんだよ。で、こっちが香月の部屋?」
「うん。さぁ、どうぞ」
「お邪魔しまーす。……って、香月の部屋には『香月 晴さま』とかって名前を貼ってないんだな」
理玖が扉を見ながら不思議そうに聞いてきた。
「ああ、それね。田村さんが心配してくれて……」
「ああっ、そっか。ごめん……俺、軽率だった」
「ううん、大丈夫だから理玖は気にしないでよ。ねっ」
そういうと、理玖は少しほっとした表情を見せてくれた。
でも、本当に僕はもう大丈夫なんだ。
僕を恨んでいた人たちはもうみんな捕まっているし、それに……隆之さんや理玖、そして今日スタジオに来てくれている人たちみんなが僕のことを心配してくれて……その気持ちだけで僕は大丈夫だって思えるんだ。
「僕、さっと着替えておくから理玖は悪いけど飲み物入れておいてもらっていいかな」
「オッケー。俺も貰っていい?」
「うん。もちろん。僕、烏龍茶にしようかな」
理玖の、わかったという声を背に僕は着替えのためにカーテンの向こうへと入った。
と言っても、仕切りはカーテンだけだから、普通に理玖とは会話しながら着替えられる。
「なぁ、香月。それにしてもほんと撮影早かったな」
「でしょう? 僕も最初の時驚いたんだよ。メイクとか着替えの方が長かったくらいだし、それでちゃんとできてるのかなって心配だったんだけどさ」
「それで、あの出来だろう? やっぱ、すごいんだな。あのカメラマンさんも、早瀬さんも」
うん。確かに。
写真の出来はもちろん大事だけど、早瀬さんの構図があったからあれだけ話題になったんだ。きっと。
「今回のも話題になって売り上げに貢献できたらいいんだけど」
「香月はそればっかり言ってるな」
「だって――っ!」
僕はシャーっとカーテンを開けながら、理玖に声をかけた。
「僕のせいでリュウールさんの化粧品が売れないなんて困るもん。商品はとっても良いのにモデルが悪いから売れなかったなんてこと、今までになかったわけじゃないからね」
「確かに。モデルが商品の売れ行きを左右することもあるだろうけど、永山さんがあんなに自信満々に撮影終わらせたんだから香月も自信持とうぜ」
理玖が頭をぽんぽんと撫でてくれて、ほんの少し気持ちが浮上した気がした。
「うん。ありがとう。理玖」
「さぁ、お茶飲んで一息ついたらみんなのところに戻ろう」
僕たちはお茶と部屋に置いてあったお菓子で休憩しながら、今日の撮影の感想を言い合ってからみんなの元に戻った。
「お待たせしてすみません」
みんなの待つスタジオへと戻ると、さーっと僕たちに誰かが駆け寄ってきた。
「えっ? あ、緒方部長? ど、どうしたんですか?」
「香月くんを待っている間に永山さんが撮った写真を見せてもらっていたんだけど、あまりの出来に驚いたよ!」
話を聞くと、緒方部長は撮影が始まる少し前に会社から緊急の連絡が来たとかでスタジオを出て外で電話をしていたらしい。
話が長引いて慌てて戻ったけれど、すでに撮影は終わっていたようで……。
友利さんや他の人から撮影の時の話を聞いて、どうしても写真が見たくなって永山さんに頼んで見せてもらってその出来に感激していたんだそう。
「これを間近で見られなかったのが本当に残念だよ」
緒方部長の表情は心から悔しがっているように見えたから、僕自身、いつどうやって撮られたのかあんまりわかっていないから、間近で見ていてもわかったかどうかわからないけれど……という言葉は心の中に留めておいた。
「緒方部長がそんなに気に入ってくださった写真が撮れてよかったです。さすが、永山さんですね」
「ああ。永山さんももちろんだけど、今回は香月くんの素敵な素顔を引き出してくれた彼に感謝だな」
と、僕の後ろにいた理玖に向けて視線を注いでいる。
確かに理玖がいたからずっと笑顔でいられた気がする。
現に楽しかったし。
「ええ。そうですね。彼が一緒だとすごく楽しかったです」
そう笑顔で返すと、緒方部長は少し考え込んだ様子を見せたけれど、すぐに笑顔で
「君、戸川くんだったね。是非、次の撮影の時も参加してくれないか?」
と声をかけた。
「えっ?」
理玖は大きな目をさらに丸くしていた。
そりゃあ、急にそんなこと言われたら驚いちゃうよね。うん。僕もそうだと思う。
「頼む。もちろん、アルバイト代は払わせてもらう! 是非、検討してくれないか?」
「えっ、あ、はい」
緒方部長のあまりの勢いに押されて、理玖は顔を縦に大きく振りながら了承してしまっていた。
「よし。じゃあ、後で連絡したいから君の連絡先を聞いてもいいかな?」
「えっ? ど、どうしよう……」
理玖が珍しく焦ってる。
もしかしたら連絡先を交換できないわけでもあるのかな?
そう思っていると、隆之さんが緒方部長に近づいて、耳元で何やら話し出した。
『あ、なるほど』
『そうですね』
『確かにそちらの方がいいかも』
と緒方部長の相槌みたいなものだけは聞こえてきたけれど全然要領を得ない。
何話してるんだろう?
理玖と顔を見合わせて不思議がっていると、隆之さんは
「田村さーん!」
と大声で田村さんをこちらに呼び寄せていた。
隆之さんの大声に
「どうかしましたか」
と田村さんが駆け寄ってきた。
僕と理玖はそっちのけで、今度は田村さんを交えて緒方部長と隆之さんと3人で密談が始まった。
「何話してるんだろうね」
「なんか気になるよな」
理玖と3人の様子を眺めていると、僕たちの視線に気づいたのか隆之さんが
「ごめん、ごめん」
と僕たちのそばに来てくれた。
「なんか嫌な感じなんだけど……」
なんとなく疎外感を感じてしまって、ぷぅと口を膨らませて隆之さんに文句を言うと、隆之さんは焦ったように本当にごめん! と必死に謝ってくれた。
その必死さがなんだか可愛く思えてきて、ふふっと笑いがこぼれてしまった。
「もういいですよ。それで何を話していたか聞いてもいいですか?」
「ああ、理玖も一緒にこっちに来てくれ」
僕は隆之さんに手を引かれながら、もう片方の手で理玖の手を握り、緒方部長と田村さんの元へと向かった。
「田村さん、さっきの話でいいですか?」
「はい。もちろんです。私も彼は気になっていたので」
柔かな笑顔を浮かべ理玖に熱い視線を送っている。
この前、シュパースで会った時から理玖に興味を持っていたみたいだったもんね。
「戸川くん、もし良かったら香月くんと同じリヴィエラ所属ということにしてリュウールさんのバイトを引き受けたらどうかな?」
「えっ? 俺、いや……僕がモデル事務所に所属、ですか? そ、そんな……」
「いや、個人で引き受けるより事務所に所属していた方が連絡なんかもスムーズだし。モデル所属っていうのは、まぁ名義だけみたいなものだよ。ですよね、田村さん?」
「ええ。個人的な連絡先を教えるのもこの時代、気になりますし。戸川くんはどうですか? リュウールさんのお仕事は受ける気はありますか?」
みんなの視線が理玖に集中する。
「えっ、えっ……いや、その……確かに今回の撮影を近くで拝見できてすごく楽しかったんで、もし、参加できるならまた来たいとは思いますけど……僕が来て邪魔にならないですか?」
「いや! 邪魔どころか、ぜひ来てほしいんだよ!!」
急に前に出てきた緒方部長は理玖の手を取って、必死な様子で頼んでいる。
その必死さに理玖はとうとう根負けしてしまったみたいだ。
「あの、じゃ……香月の撮影には参加させてもらうってことで。これだけでも事務所に所属しておいた方がいいんですか?」
「もちろん。所属してたら余計なやりとりは一切なしで、私から戸川くんに直接連絡するから」
と田村さんに言われて理玖はわかりましたと頷いた。
「良かった。戸川くんは明日シュパースに来る?」
「あ、はい。明日はバイトです」
「じゃあ、来れるなら明日30分早くバイトに来てもらって、その時間に上の事務所で所属契約しよっか」
「わかりました」
理玖の了承の言葉に田村さんはご満悦の様子だ。
まぁ、僕は所属して困ったことなんか一度もなかったし、理玖もそっちの方が楽かもね。
「じゃあ、戸川くんの件はそういうことで。いいですね、緒方部長」
「ああ。もちろん!」
和やかな雰囲気のままに、話題は今日の撮影とリュウールの化粧品についての話に変わっていった。
「香月くんは、今日のフェイスパウダーをつけてみてどうだった?」
「正直、僕はお化粧することについて素人で具体的な感想を言うのが難しいのですが、ただ……」
「んっ? 遠慮なく言ってみてくれ!」
緒方部長と友利さん、2人に見つめられて答えに窮してしまったけれど、僕は思った通りのことを言ってみることにした。
「はい。あの、この前のファンデーションだけでも透明感が出るなと思っていたのですが……このフェイスパウダーをつけたらファンデーションをつけているのを忘れてしまうくらい、サラッとしてて驚きました! それに、すごくキラキラした細かい粉が入ってるんですよね? 光の加減で視界の先がキラキラ輝くのがすごく綺麗だなって。
今回お化粧と一緒にネイルもしてもらったんですけど、いつも無表情だった爪が綺麗な色を付けるだけで何度も見たくなるって面白いなって……なんだか自分の爪が好きになりました」
落とすのが勿体無くてまだネイルをつけたままの指を見つめていると、周りがしんとしていることに気づいた。
「あ、あの……?」
僕の呼びかけに友利さんが反応してくれた。
「ああ、ごめん。なんだかすごく可愛くて……」
「えっ?」
ネイルはつけたままだけど、お化粧は落としたんだけどな……と思いながら首を傾げていると、緒方部長が
「ゴホッ、ゴホッ」
と大きな咳払いをして間に割り込んできた。
「いやぁ、香月くんの感想……すごくいいよ!!」
「本当ですか? 良かった……」
「妻が話していたことがあるんだが……女性がお化粧をしたり、それこそネイルをしたりというのは男性の目を意識しているわけじゃないんだ。綺麗なものが近くにあると心がときめいて気持ちが上がるそうだよ」
心がときめく……ああ、そうかもしれない。
「確かにそうかもしれないですね。例えば、この手でパソコンとかキーボードを打つときなんて視界に綺麗な色が入ってくるとウキウキしちゃいそうですよね。このサラッとしたキラキラ輝く肌も、それが見たくて何度も鏡見ちゃったりして……その度に嬉しい気持ちになるんです。これがときめくってことなのかもしれないですね」
「ハハッ。そうだな。そういう感性は大事だぞ、香月くん」
「ふふっ。はい」
「君の感想、参考になったよ。ありがとう!」
にこやかな緒方部長の隣で友利さんも隆之さんもみんな嬉しそうに笑っていた。
「緒方部長、そろそろ我々は社に戻ります。初校ができたらすぐにお持ちいたします。弊社のデザイン部には話をつけておりますので、来週早々にはお持ちできるかと思います」
「ああ、楽しみにしてるよ!! 香月くんもその時は一緒に来てくれるんだろう?」
緒方部長は強い目力で僕を見つめてくる。
その強い視線にたじろぎながらも
「あ、はい。もちろん、一緒にお伺いいたします」
というと、緒方部長は嬉しそうに笑った。
「よし! その時は一緒に昼食を取ろう! 今度は社食ではなく、私の行きつけの店でな」
「わぁー! 楽しみにしてます!」
緒方部長の行きつけのお店なんて! どんなお店かな。ふふっ。楽しみだ。
「あ、戸川くん! 君も一緒に来てくれたら嬉しいよ」
「えっ? 僕も行っていいんですか?」
突然の誘いに理玖はすごくびっくりしてたけど、緒方部長……きっとものすごく理玖のこと気に入ったんだな。
「理玖、アルの家に送るか?」
僕たちはスタジオを出て、小蘭堂へと向かう。
その前に理玖を送る手筈になっていた。
「いえ、今日はアパートに帰るからアパートまでお願いします」
「えっ? いいの?」
てっきりオーナーの家に戻ると思っていたから驚いたけれど、
「アルはもう店に行ってるから、家に行ってもいないからいいんだよ」
と理玖はあっけらかんとしている。
そうか、そういうものなんだな。
僕は隆之さんとお付き合いする前は誰とも恋人関係になったことはなかったし、隆之さんとはお付き合いをするようになったその日からずっと一緒に暮らしているから、別々の部屋に帰るっていう経験がない。
でもよく考えたら、みんながみんな一緒に住んでいるわけじゃないだろうし、別々の部屋に帰るっていうのが普通の感覚なんだろう。
僕はもう隆之さんのマンションに一緒に住むことを決めちゃったし、これから先も別々の家に帰るなんて経験はきっとないんだろうな。
ちょっとやってみたかったななんて思ってしまうのは、ただの僕の好奇心だ。
でも、一度思ったらやりたくなっちゃうのが人間だよね。
あっ、そうだ! いいこと思いついた!
「ねぇ、今度理玖の家に泊まりに行ってもいい?」
「えっ? どうした、急に?」
「えーっ、だめ?」
「いや、俺はいいけど……」
理玖が気にしながら向けた視線の先には、隆之さんの驚いた表情があった。
「晴、何か理由があるのか?」
運転しながら、器用にルームミラーで僕に目線をむけ話しかけてくる。
「なんとなく、隆之さんと別々の家に帰ってみたいなって思って」
「それって……」
「んっ?」
なんだろう? なんだかすごく考え込んでるみたいだ。
僕、何か悪いこと言ったっけ?
「えっとぉ……とりあえず、早瀬さんがOK出したら俺はいつでも大丈夫だから。旅行の話とか事務所の話なんかも聞いてみたいしさ」
「うん。ありがとう!」
あっという間に理玖のアパートに着き、
「香月、今日はありがとうな! 早瀬さんもありがとうございました」
理玖はお辞儀をして足早に部屋へと入っていった。
「晴、助手席においで」
隆之さんの優しい声掛けに僕はすぐに扉を開け、前の席へと移動した。
「じゃあ、会社に向かおうな」
車は勢いよく、大学方面から小蘭堂へと動き始めた。
順調に進み始めて隆之さんがゆっくりと口を開いた。
「晴、さっきの理玖の家に泊まる話だが……」
「うん。行ってもいいかな?」
「どうしてそんなことを思うに至ったのか聞いてもいいか?」
すごく真剣な隆之さんの表情に僕はさっき芽生えた好奇心について、順序立てて話をした。
「――だからね、隆之さんと別々の部屋に帰るっていう体験してみたいなって思ったんだ」
「そうか、だから理玖の家に……」
「うん。そうだよ。行ってもいいかな?」
隆之さんは
「なんだ……そういうことか」
とほっとしたようにため息を吐いた。
「てっきり、私と一緒の部屋に帰りたくなくなったのかと……心配した」
「えっ? そんなこと思うはずないよ! ただ……」
「なんだ?」
「世間一般的な恋人が体験することをやってみたいなって思っちゃったんだ」
そういうと、隆之さんはなぜか顔を真っ赤にして嬉しそうに笑っていた。
僕の着替えについてきてくれる理玖は初めてのスタジオにかなり興味津々で扉が開いている部屋を眺めては『ほぉーっ』とか『わぁーっ』とか感嘆の声をあげている。
「ふふっ。そんなに楽しい?」
「滅多に来られない場所ってワクワクしちゃうんだよ。で、こっちが香月の部屋?」
「うん。さぁ、どうぞ」
「お邪魔しまーす。……って、香月の部屋には『香月 晴さま』とかって名前を貼ってないんだな」
理玖が扉を見ながら不思議そうに聞いてきた。
「ああ、それね。田村さんが心配してくれて……」
「ああっ、そっか。ごめん……俺、軽率だった」
「ううん、大丈夫だから理玖は気にしないでよ。ねっ」
そういうと、理玖は少しほっとした表情を見せてくれた。
でも、本当に僕はもう大丈夫なんだ。
僕を恨んでいた人たちはもうみんな捕まっているし、それに……隆之さんや理玖、そして今日スタジオに来てくれている人たちみんなが僕のことを心配してくれて……その気持ちだけで僕は大丈夫だって思えるんだ。
「僕、さっと着替えておくから理玖は悪いけど飲み物入れておいてもらっていいかな」
「オッケー。俺も貰っていい?」
「うん。もちろん。僕、烏龍茶にしようかな」
理玖の、わかったという声を背に僕は着替えのためにカーテンの向こうへと入った。
と言っても、仕切りはカーテンだけだから、普通に理玖とは会話しながら着替えられる。
「なぁ、香月。それにしてもほんと撮影早かったな」
「でしょう? 僕も最初の時驚いたんだよ。メイクとか着替えの方が長かったくらいだし、それでちゃんとできてるのかなって心配だったんだけどさ」
「それで、あの出来だろう? やっぱ、すごいんだな。あのカメラマンさんも、早瀬さんも」
うん。確かに。
写真の出来はもちろん大事だけど、早瀬さんの構図があったからあれだけ話題になったんだ。きっと。
「今回のも話題になって売り上げに貢献できたらいいんだけど」
「香月はそればっかり言ってるな」
「だって――っ!」
僕はシャーっとカーテンを開けながら、理玖に声をかけた。
「僕のせいでリュウールさんの化粧品が売れないなんて困るもん。商品はとっても良いのにモデルが悪いから売れなかったなんてこと、今までになかったわけじゃないからね」
「確かに。モデルが商品の売れ行きを左右することもあるだろうけど、永山さんがあんなに自信満々に撮影終わらせたんだから香月も自信持とうぜ」
理玖が頭をぽんぽんと撫でてくれて、ほんの少し気持ちが浮上した気がした。
「うん。ありがとう。理玖」
「さぁ、お茶飲んで一息ついたらみんなのところに戻ろう」
僕たちはお茶と部屋に置いてあったお菓子で休憩しながら、今日の撮影の感想を言い合ってからみんなの元に戻った。
「お待たせしてすみません」
みんなの待つスタジオへと戻ると、さーっと僕たちに誰かが駆け寄ってきた。
「えっ? あ、緒方部長? ど、どうしたんですか?」
「香月くんを待っている間に永山さんが撮った写真を見せてもらっていたんだけど、あまりの出来に驚いたよ!」
話を聞くと、緒方部長は撮影が始まる少し前に会社から緊急の連絡が来たとかでスタジオを出て外で電話をしていたらしい。
話が長引いて慌てて戻ったけれど、すでに撮影は終わっていたようで……。
友利さんや他の人から撮影の時の話を聞いて、どうしても写真が見たくなって永山さんに頼んで見せてもらってその出来に感激していたんだそう。
「これを間近で見られなかったのが本当に残念だよ」
緒方部長の表情は心から悔しがっているように見えたから、僕自身、いつどうやって撮られたのかあんまりわかっていないから、間近で見ていてもわかったかどうかわからないけれど……という言葉は心の中に留めておいた。
「緒方部長がそんなに気に入ってくださった写真が撮れてよかったです。さすが、永山さんですね」
「ああ。永山さんももちろんだけど、今回は香月くんの素敵な素顔を引き出してくれた彼に感謝だな」
と、僕の後ろにいた理玖に向けて視線を注いでいる。
確かに理玖がいたからずっと笑顔でいられた気がする。
現に楽しかったし。
「ええ。そうですね。彼が一緒だとすごく楽しかったです」
そう笑顔で返すと、緒方部長は少し考え込んだ様子を見せたけれど、すぐに笑顔で
「君、戸川くんだったね。是非、次の撮影の時も参加してくれないか?」
と声をかけた。
「えっ?」
理玖は大きな目をさらに丸くしていた。
そりゃあ、急にそんなこと言われたら驚いちゃうよね。うん。僕もそうだと思う。
「頼む。もちろん、アルバイト代は払わせてもらう! 是非、検討してくれないか?」
「えっ、あ、はい」
緒方部長のあまりの勢いに押されて、理玖は顔を縦に大きく振りながら了承してしまっていた。
「よし。じゃあ、後で連絡したいから君の連絡先を聞いてもいいかな?」
「えっ? ど、どうしよう……」
理玖が珍しく焦ってる。
もしかしたら連絡先を交換できないわけでもあるのかな?
そう思っていると、隆之さんが緒方部長に近づいて、耳元で何やら話し出した。
『あ、なるほど』
『そうですね』
『確かにそちらの方がいいかも』
と緒方部長の相槌みたいなものだけは聞こえてきたけれど全然要領を得ない。
何話してるんだろう?
理玖と顔を見合わせて不思議がっていると、隆之さんは
「田村さーん!」
と大声で田村さんをこちらに呼び寄せていた。
隆之さんの大声に
「どうかしましたか」
と田村さんが駆け寄ってきた。
僕と理玖はそっちのけで、今度は田村さんを交えて緒方部長と隆之さんと3人で密談が始まった。
「何話してるんだろうね」
「なんか気になるよな」
理玖と3人の様子を眺めていると、僕たちの視線に気づいたのか隆之さんが
「ごめん、ごめん」
と僕たちのそばに来てくれた。
「なんか嫌な感じなんだけど……」
なんとなく疎外感を感じてしまって、ぷぅと口を膨らませて隆之さんに文句を言うと、隆之さんは焦ったように本当にごめん! と必死に謝ってくれた。
その必死さがなんだか可愛く思えてきて、ふふっと笑いがこぼれてしまった。
「もういいですよ。それで何を話していたか聞いてもいいですか?」
「ああ、理玖も一緒にこっちに来てくれ」
僕は隆之さんに手を引かれながら、もう片方の手で理玖の手を握り、緒方部長と田村さんの元へと向かった。
「田村さん、さっきの話でいいですか?」
「はい。もちろんです。私も彼は気になっていたので」
柔かな笑顔を浮かべ理玖に熱い視線を送っている。
この前、シュパースで会った時から理玖に興味を持っていたみたいだったもんね。
「戸川くん、もし良かったら香月くんと同じリヴィエラ所属ということにしてリュウールさんのバイトを引き受けたらどうかな?」
「えっ? 俺、いや……僕がモデル事務所に所属、ですか? そ、そんな……」
「いや、個人で引き受けるより事務所に所属していた方が連絡なんかもスムーズだし。モデル所属っていうのは、まぁ名義だけみたいなものだよ。ですよね、田村さん?」
「ええ。個人的な連絡先を教えるのもこの時代、気になりますし。戸川くんはどうですか? リュウールさんのお仕事は受ける気はありますか?」
みんなの視線が理玖に集中する。
「えっ、えっ……いや、その……確かに今回の撮影を近くで拝見できてすごく楽しかったんで、もし、参加できるならまた来たいとは思いますけど……僕が来て邪魔にならないですか?」
「いや! 邪魔どころか、ぜひ来てほしいんだよ!!」
急に前に出てきた緒方部長は理玖の手を取って、必死な様子で頼んでいる。
その必死さに理玖はとうとう根負けしてしまったみたいだ。
「あの、じゃ……香月の撮影には参加させてもらうってことで。これだけでも事務所に所属しておいた方がいいんですか?」
「もちろん。所属してたら余計なやりとりは一切なしで、私から戸川くんに直接連絡するから」
と田村さんに言われて理玖はわかりましたと頷いた。
「良かった。戸川くんは明日シュパースに来る?」
「あ、はい。明日はバイトです」
「じゃあ、来れるなら明日30分早くバイトに来てもらって、その時間に上の事務所で所属契約しよっか」
「わかりました」
理玖の了承の言葉に田村さんはご満悦の様子だ。
まぁ、僕は所属して困ったことなんか一度もなかったし、理玖もそっちの方が楽かもね。
「じゃあ、戸川くんの件はそういうことで。いいですね、緒方部長」
「ああ。もちろん!」
和やかな雰囲気のままに、話題は今日の撮影とリュウールの化粧品についての話に変わっていった。
「香月くんは、今日のフェイスパウダーをつけてみてどうだった?」
「正直、僕はお化粧することについて素人で具体的な感想を言うのが難しいのですが、ただ……」
「んっ? 遠慮なく言ってみてくれ!」
緒方部長と友利さん、2人に見つめられて答えに窮してしまったけれど、僕は思った通りのことを言ってみることにした。
「はい。あの、この前のファンデーションだけでも透明感が出るなと思っていたのですが……このフェイスパウダーをつけたらファンデーションをつけているのを忘れてしまうくらい、サラッとしてて驚きました! それに、すごくキラキラした細かい粉が入ってるんですよね? 光の加減で視界の先がキラキラ輝くのがすごく綺麗だなって。
今回お化粧と一緒にネイルもしてもらったんですけど、いつも無表情だった爪が綺麗な色を付けるだけで何度も見たくなるって面白いなって……なんだか自分の爪が好きになりました」
落とすのが勿体無くてまだネイルをつけたままの指を見つめていると、周りがしんとしていることに気づいた。
「あ、あの……?」
僕の呼びかけに友利さんが反応してくれた。
「ああ、ごめん。なんだかすごく可愛くて……」
「えっ?」
ネイルはつけたままだけど、お化粧は落としたんだけどな……と思いながら首を傾げていると、緒方部長が
「ゴホッ、ゴホッ」
と大きな咳払いをして間に割り込んできた。
「いやぁ、香月くんの感想……すごくいいよ!!」
「本当ですか? 良かった……」
「妻が話していたことがあるんだが……女性がお化粧をしたり、それこそネイルをしたりというのは男性の目を意識しているわけじゃないんだ。綺麗なものが近くにあると心がときめいて気持ちが上がるそうだよ」
心がときめく……ああ、そうかもしれない。
「確かにそうかもしれないですね。例えば、この手でパソコンとかキーボードを打つときなんて視界に綺麗な色が入ってくるとウキウキしちゃいそうですよね。このサラッとしたキラキラ輝く肌も、それが見たくて何度も鏡見ちゃったりして……その度に嬉しい気持ちになるんです。これがときめくってことなのかもしれないですね」
「ハハッ。そうだな。そういう感性は大事だぞ、香月くん」
「ふふっ。はい」
「君の感想、参考になったよ。ありがとう!」
にこやかな緒方部長の隣で友利さんも隆之さんもみんな嬉しそうに笑っていた。
「緒方部長、そろそろ我々は社に戻ります。初校ができたらすぐにお持ちいたします。弊社のデザイン部には話をつけておりますので、来週早々にはお持ちできるかと思います」
「ああ、楽しみにしてるよ!! 香月くんもその時は一緒に来てくれるんだろう?」
緒方部長は強い目力で僕を見つめてくる。
その強い視線にたじろぎながらも
「あ、はい。もちろん、一緒にお伺いいたします」
というと、緒方部長は嬉しそうに笑った。
「よし! その時は一緒に昼食を取ろう! 今度は社食ではなく、私の行きつけの店でな」
「わぁー! 楽しみにしてます!」
緒方部長の行きつけのお店なんて! どんなお店かな。ふふっ。楽しみだ。
「あ、戸川くん! 君も一緒に来てくれたら嬉しいよ」
「えっ? 僕も行っていいんですか?」
突然の誘いに理玖はすごくびっくりしてたけど、緒方部長……きっとものすごく理玖のこと気に入ったんだな。
「理玖、アルの家に送るか?」
僕たちはスタジオを出て、小蘭堂へと向かう。
その前に理玖を送る手筈になっていた。
「いえ、今日はアパートに帰るからアパートまでお願いします」
「えっ? いいの?」
てっきりオーナーの家に戻ると思っていたから驚いたけれど、
「アルはもう店に行ってるから、家に行ってもいないからいいんだよ」
と理玖はあっけらかんとしている。
そうか、そういうものなんだな。
僕は隆之さんとお付き合いする前は誰とも恋人関係になったことはなかったし、隆之さんとはお付き合いをするようになったその日からずっと一緒に暮らしているから、別々の部屋に帰るっていう経験がない。
でもよく考えたら、みんながみんな一緒に住んでいるわけじゃないだろうし、別々の部屋に帰るっていうのが普通の感覚なんだろう。
僕はもう隆之さんのマンションに一緒に住むことを決めちゃったし、これから先も別々の家に帰るなんて経験はきっとないんだろうな。
ちょっとやってみたかったななんて思ってしまうのは、ただの僕の好奇心だ。
でも、一度思ったらやりたくなっちゃうのが人間だよね。
あっ、そうだ! いいこと思いついた!
「ねぇ、今度理玖の家に泊まりに行ってもいい?」
「えっ? どうした、急に?」
「えーっ、だめ?」
「いや、俺はいいけど……」
理玖が気にしながら向けた視線の先には、隆之さんの驚いた表情があった。
「晴、何か理由があるのか?」
運転しながら、器用にルームミラーで僕に目線をむけ話しかけてくる。
「なんとなく、隆之さんと別々の家に帰ってみたいなって思って」
「それって……」
「んっ?」
なんだろう? なんだかすごく考え込んでるみたいだ。
僕、何か悪いこと言ったっけ?
「えっとぉ……とりあえず、早瀬さんがOK出したら俺はいつでも大丈夫だから。旅行の話とか事務所の話なんかも聞いてみたいしさ」
「うん。ありがとう!」
あっという間に理玖のアパートに着き、
「香月、今日はありがとうな! 早瀬さんもありがとうございました」
理玖はお辞儀をして足早に部屋へと入っていった。
「晴、助手席においで」
隆之さんの優しい声掛けに僕はすぐに扉を開け、前の席へと移動した。
「じゃあ、会社に向かおうな」
車は勢いよく、大学方面から小蘭堂へと動き始めた。
順調に進み始めて隆之さんがゆっくりと口を開いた。
「晴、さっきの理玖の家に泊まる話だが……」
「うん。行ってもいいかな?」
「どうしてそんなことを思うに至ったのか聞いてもいいか?」
すごく真剣な隆之さんの表情に僕はさっき芽生えた好奇心について、順序立てて話をした。
「――だからね、隆之さんと別々の部屋に帰るっていう体験してみたいなって思ったんだ」
「そうか、だから理玖の家に……」
「うん。そうだよ。行ってもいいかな?」
隆之さんは
「なんだ……そういうことか」
とほっとしたようにため息を吐いた。
「てっきり、私と一緒の部屋に帰りたくなくなったのかと……心配した」
「えっ? そんなこと思うはずないよ! ただ……」
「なんだ?」
「世間一般的な恋人が体験することをやってみたいなって思っちゃったんだ」
そういうと、隆之さんはなぜか顔を真っ赤にして嬉しそうに笑っていた。
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来るもの拒まず去る者追わずのスタンスなので経験人数は多いけれど、
タルさんに出会うまで、自分から人を好きになったことも、本気の恋もしたことがない。
そんな要が入社以来、ずっと片思いをしているタルさん。
1年間溜めに溜めた勇気を振り絞って、毎年バレンタインの日にだけアプローチをする。
この5年間、毎年食事に誘ってはみるけれど、シングルファザーのタルさんの第一優先は息子の凛太郎で、
要の誘いには1度も乗ってくれたことがない。
今年もダメもとで誘ってみると、なんと返事はOK。
舞い上がってしまってそれ以来、ポーカーフェイスが保てない。
龍の無垢、狼の執心~跡取り美少年は侠客の愛を知らない〜
中岡 始
BL
「辰巳会の次期跡取りは、俺の息子――辰巳悠真や」
大阪を拠点とする巨大極道組織・辰巳会。その跡取りとして名を告げられたのは、一見するとただの天然ボンボンにしか見えない、超絶美貌の若き御曹司だった。
しかも、現役大学生である。
「え、あの子で大丈夫なんか……?」
幹部たちの不安をよそに、悠真は「ふわふわ天然」な言動を繰り返しながらも、確実に辰巳会を掌握していく。
――誰もが気づかないうちに。
専属護衛として選ばれたのは、寡黙な武闘派No.1・久我陣。
「命に代えても、お守りします」
そう誓った陣だったが、悠真の"ただの跡取り"とは思えない鋭さに次第に気づき始める。
そして辰巳会の跡目争いが激化する中、敵対組織・六波羅会が悠真の命を狙い、抗争の火種が燻り始める――
「僕、舐められるの得意やねん」
敵の思惑をすべて見透かし、逆に追い詰める悠真の冷徹な手腕。
その圧倒的な"跡取り"としての覚醒を、誰よりも近くで見届けた陣は、次第に自分の心が揺れ動くのを感じていた。
それは忠誠か、それとも――
そして、悠真自身もまた「陣の存在が自分にとって何なのか」を考え始める。
「僕、陣さんおらんと困る。それって、好きってことちゃう?」
最強の天然跡取り × 一途な忠誠心を貫く武闘派護衛。
極道の世界で交差する、戦いと策謀、そして"特別"な感情。
これは、跡取りが"覚醒"し、そして"恋を知る"物語。
義兄が溺愛してきます
ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。
その翌日からだ。
義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。
翔は恋に好意を寄せているのだった。
本人はその事を知るよしもない。
その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。
成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。
翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。
すれ違う思いは交わるのか─────。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
フードコートの天使
美浪
BL
西山暁には本気の片思いをして告白をする事も出来ずに音信不通になってしまった相手がいる。
あれから5年。
大手ファストフードチェーン店SSSバーガーに就職した。今は店長でブルーローズショッピングモール店に勤務中。
そんなある日・・・。あの日の君がフードコートに居た。
それは間違いなく俺の大好きで忘れられないジュンだった。
・・・・・・・・・・・・
大濠純、食品会社勤務。
5年前に犯した過ちから自ら疎遠にしてしまった片思いの相手。
ずっと忘れない人。アキラさん。
左遷先はブルーローズショッピングモール。そこに彼は居た。
まだ怒っているかもしれない彼に俺は意を決して挨拶をした・・・。
・・・・・・・・・・・・
両片思いを2人の視点でそれぞれ展開して行こうと思っています。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
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