俺の天使に触れないで  〜隆之と晴の物語〜

波木真帆

文字の大きさ
103 / 138

昼下がりの幸せな時間

しおりを挟む
「ここ広くていいね。ここなら大きなベッドも置けそう」

「そうだな。アルは身体が大きいから大きなベッドじゃないとよく眠れないみたいだし」

晴と理玖がそんな話をしているが、大きなベッドって。
2人とも恋人とは一緒に寝るって完全に刷り込まれているみたいだな。

まぁ、刷り込んだのは俺とアルなんだけど。

晴も理玖も俺たちが初めての恋人だから、俺たちが言ってることが全て正しいと思ってくれてるところがあるんだよな。
お互いにそれで助かってるから、訂正は何もしないけどな。

俺とアルは2人の会話をこっそり聞きながら顔を見合わせて微笑んだ。

理玖は寝室の中を晴と見回っていて、寝室の奥に扉を見つけたようだ。

「あ、ここにも部屋がある。ここはなんだろう?」

「本当だ、なんだろう?」

理玖が緊張した面持ちで扉を開けると、そこには広々としたお風呂があった。

「わぁっ、お風呂だ。すごいな」

「寝室の隣がお風呂だなんて使いやすくていいね」

晴がどういう状況を頭に浮かべながらそんなことを言っているのかわからないが、俺はHの後の色気たっぷりの晴を抱きかかえてバスルームに連れていく姿が思い浮かんでいる。

でも、それはいいな。
やっぱりうちも寝室の隣に風呂を作るか。

身体を綺麗に洗い流しながら風呂場でもう一回っていうのも楽しそうだ。

俺がそんな妄想を繰り広げている間に晴も理玖もアルも風呂場に入って話をしている。
慌てて俺も風呂場に入り話の中に加わることにした。

「あっ、隆之さん。どこにいたの?」

「悪い。寝室をゆっくり見てたんだ」

「そっか。ここの寝室広くて素敵だよね」

「ああ。そうだな」

「だけど、うちの寝室の方が僕は好きだよ」

「そうなのか?」

「だってここには隆之さんがいないもん。ふふっ」

そう言ってふわりとした笑顔を見せる晴を俺は小悪魔だと思った。
だって俺がいないからうちのがいいだなんてそんなこと言われて我慢できるわけないだろう。
思わず抱きしめてキスをしたい衝動に駆られたが、流石にここでしたら怒られるだろうか?

いや、アルと理玖ならいいか。
高木は寝室には入ってきていないし。

一瞬でそう考えた俺は晴を抱きしめ、唇を重ね合わせた。

「んっ……ん」

一瞬驚いたような顔を見せていたが、晴は拒むことなくそのままキスを受け入れてくれていた。
それが嬉しくてつい長く続けてしまったのは許してほしい。

「ん゛っんっ」

咳払いの音に晴がビクッとして唇を離した。
流石に長すぎたか。

アルを見ると苦笑いをしているが、どうやら理玖は見てみないふりをしてくれているようだ。

「そういえば、さっき話してたセールスポイント、リクに話してもいいのかい?」

「あ、ああ。もちろんだよ」

「えっ? なに、セールスポイントって」

理玖は初めて聞く話に目を輝かせていて、そういうところは晴と似ていて可愛らしいなぁと思う。

「ここの蛇口から温泉が出るようになったらしいよ。家でも温泉が楽しめるんだそうだよ」

「ええーっ、ここから温泉が出てくるってこと? すごいじゃん!」

「リクは風呂が好きだからな。ここならゆっくり温泉を楽しめそうだ」

「それにもう一つすごい話があるんだが……」

俺はアルと理玖の話に加わって、さっきはまだ話していなかった特別な話を出してみた。

「実は、まだ内緒の話なんだが来年初めに各階に専用の貸切家族風呂ができる予定になってるんだよ。
自宅で温泉も楽しめるし、家族風呂はまさに温泉気分を味わえるし最高だろ?」

「おおっ、それは本当かい? それは素晴らしいな」

「うん! ここ、すごい気に入っちゃったな、俺」

どうやらアルと理玖がお隣さんになる日は近そうだな。


アルと理玖はひととおり部屋を見て回って、満足そうな表情を浮かべ見学していた部屋を出た。

「ベルガーさま。戸川さま。いかがでございましたか?」

「ああ、部屋の様子はもちろん、設備もいいし、何より景色も素晴らしい。それに騒音も全然気にならないな」

そういえば、アルはマンションに移るにあたって騒音を気にしていたな。
一軒家では騒音の心配がないから確かに一番気にするポイントかもしれない。

しかし、うちのマンションの構造的に隣とは部屋と部屋がくっついていないし、生活空間が全く違うため気になることはない。
上下階についても二重床と二重天井の両方が採用されていて、上下の遮音性に優れているのも売りなのだ。
だから俺自身、隣の騒音はもちろん、上下の騒音も気になったことは一度もない。

愛しい恋人と住むからこそあの時の・・・・声が聞こえるなどということは心配したくないからな。
恋人には何も気にせず楽しんでもらいたいと思うのは俺だけじゃないはずだ。

「リクはどうだい?」

「うん。キッチンも広いし、テラスも良かったよね。寝室には大きなベッドが置けそうだったし、あと、温泉が出るようになるっていうのはポイント高いな。貸切風呂ができるっていうのも魅力的だな。各階専用って言ってたから、できたらみんなで入れるよな」

「ああ、それ楽しそう!!」

理玖と晴はウキウキと楽しそうにしているが、多分アルが許さないだろうな。
もちろん俺もできれば、いや絶対に晴の裸はいくら友達といえどもアルと理玖にも見せたくない。
まぁ百歩譲って水着でも、いやラッシュガードもつけてくれれば考えてもいいが……プールでもないし、そんなのきて風呂に入るの流石に晴と理玖も嫌がりそうだしな……。

理玖が俺たちと一緒に風呂に入ることを想像しているんだろう、アルの表情が少し硬いが、理玖が喜んでいるから大っぴらに反対はしないようだ。
旅行先でも貸切露天風呂問題はあることだし、アルのためにも俺のためにもまぁ、おいおい説得するとするか。

「まぁ今すぐに決めるのは流石に無理だろう。とりあえず一週間は仮押さえで検討できるみたいだから、2人でゆっくり考えるといい。大きな買い物だから、どちらかが妥協したり我慢したりすることがないようにな」

「ああ、ユキ。ありがとう。高木さんも丁寧な説明助かったよ。今日は私たちのために時間をとってくれてありがとう」

「高木さん、ありがとうございました」

アルと理玖が揃って礼を言うと、高木は嬉しそうな表情で

「こちらこそ、素敵なお二人と楽しい時間を過ごすことができまして幸せな時間でございました。もしこちらに住まわれることになりましたら、お二人が心からお寛ぎいただけますよう、私が誠心誠意お手伝いをさせていただきます。その際はどうぞよろしくお願いいたします」

と頭を下げていた。

アルと理玖はもう一度高木に礼を言って、俺たちの部屋に戻った。


部屋に戻ると晴と理玖がコーヒーを入れると言ってキッチンへと向かった。
俺はアルとリビングのソファーに腰掛けながら、隣の部屋の感想を尋ねた。

「さっきは高木も理玖もいたから気に入ったところを話したんだろうが、実際のところどうだったんだ?」

「いや、本当によかったよ。ユキたちの部屋も素敵だが、隣室のレイアウトは私の思い描いていたものにぴったりだったな。日本のマンションであれだけ広いキッチンがあるのは想定していなかったよ」

ああ、確かに。
日本でマンションを選ぶときには間取りや収納、日当たりなどが優先事項として挙げられるだろう。
キッチンはどちらかというと余裕があればという感じだろうか。
それを考えれば、あのキッチンは本当にアルのためにレイアウトされたようなそんな印象だった。

「リクはテラスが気に入っていたから、そこでゆったりと過ごすのも楽しそうだ。それに何より、蛇口から温泉がでるというのは魅力的だな。バスルームを岩風呂や檜風呂に変えて、温泉を楽しむのも良さそうだ」

「それはいいな。それに来年できる貸切家族風呂は各階専用だから、我々しか使わないし安心だろう?」

「ああ。それはいいんだが、リクがハルと入りたいと言いそうなんだよな。それだけが気になるところだな」

「うーん、確かに。もういっそのこと、水着着用をルールにしておくか。上半身はともかく下半身が隠れていればいいんじゃないか?」

「……うーん、そうだな……。不特定多数が見る銭湯とは違うし、それで妥協するか……まぁ、リクとハルなら間違いが起きるなんてことはなさそうだしな」

「ふふっ。それは絶対にないだろう」

「何が絶対にないの??」

「「うわっ」」

突然聞こえた晴の声に俺もアルも驚きの声をあげてしまった。

「ごめん、驚かせちゃった?」

「いや、話に夢中になっていて晴と理玖がきていることに気づかなかっただけだ。こっちこそ、ごめん」

俺は晴の手からコーヒーを受け取り『ありがとう』と伝えると晴はニコリと笑って俺の隣に腰を下ろした。

理玖もまたアルにコーヒーを手渡し、当然のようにアルの隣に嬉しそうに座っていた。

「このコーヒー美味しいな」

「アルのは俺が入れたんだよ」

「そうか、やっぱりな」

二人が仲睦まじくコーヒーを飲んでいる姿にホッとする。
俺もコーヒーを味わって飲むと、晴は

「美味しい?」

と尋ねてきた。

「ああ、やっぱり俺の好みをよくわかってる」

そういうと晴は満足げに笑った。

ああ、昼下がりにアルたちとお互い気を遣わずに恋人とイチャつけるこんな時間ができるなんて、幸せ以外の何ものでもないな。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

処理中です...