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恋人満喫中
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車に乗り込み、理玖のアパートへと向かう。
その道すがら晴にメッセージを送っておいた。
<さっきアルの家をでた。道も空いているからあと5分くらいで到着するよ>
隣ではアルも音声入力で理玖に同じようなメッセージを送っているようだ。
へぇ、アルと理玖はメッセージはドイツ語なのか。
ドイツ人のアルとドイツ語もペラペラな理玖だから当然といえば当然なのだろうが、隣で朝から流暢なドイツ語を聞くのはなかなか楽しいものだな。
旅行前の忙しい時間だろうからと、簡潔なメッセージにしておいたが、すぐに既読がついた。
「アル、まずいぞ。晴と理玖。荷物を持ってもう外で待っているらしい」
「ああ。こっちもそう言ってる。二人で外に出て変な奴らに声でもかけられたら大変だ。ユキ、近道を行くから」
アルはそういうといつの間に調べていたのか、住宅街の細い路地へと入っていった。
アルの大きな車がギリギリ通れるくらいの幅しかないが、危うさを感じることも全くなくスイスイと進んでいき、どこを通ったかわからないうちにあっという間に理玖のアパート近くに到着した。
二人が大きな荷物を抱え、アパートの前で待っているのが見える。
と同時にすぐ近くに二人連れの男がいるのも見えた。
どうやら晴たちに声をかけようとしているようだ。
「アル、急げ。変なのが狙ってる」
俺の声にアルは即座に反応し、すぐに車を晴と理玖の前に停めた。
「リク。おはよう。待たせたか?」
「おはよう、アル。大丈夫だよ」
アルと理玖が甘い朝の挨拶をしている間に俺はさっと助手席から降りて、晴に駆け寄った。
「おはよう、晴。荷物持つよ」
「おはよう、隆之さん。ありがとう」
たった一晩会わなかっただけなのに愛おしさが募る。
晴の持っていた荷物を片手に持ち、もう片方の手で晴を抱き寄せ後部座席に座らせた。
自分も後部座席に乗り込む際に、晴と理玖に声をかけようとしていた奴らに威嚇の視線を向けると、
「ひぃーーっ」
と怯えた様子で逃げ去っていった。
ふぅ。
声をかけられる前で本当によかった。
アルと理玖がイチャイチャな朝の挨拶を終え、ようやく理玖が助手席に乗り込んだ。
「じゃあ、まずは朝食だな。ゆっくりと食べて充電してから旅先に向かおう」
アルは嬉しそうに理玖の手を握りながら、車を走らせた。
そのままあっという間にアルと理玖のおすすめのカフェに到着した。
まだ開店まもない時間だから、人もあまり来ていないらしい。
4人で店に入ると、すぐに奥の広めの席に案内してくれた。
モーニングメニューはクロワッサンサンド、ワッフル、パンケーキから選べるようだ。
「香月、どれにする?」
「うーん、ワッフルかパンケーキか悩むなぁ……」
ふふっ。
こうやって悩んでいる姿も実にかわいい。
「晴、なら二つ取って分けて食べよう」
「えっ? いいの?」
「ああ、もちろんだよ」
「わぁーっ、隆之さん。大好き」
晴が嬉しそうに抱きついてくるのをアルは羨ましそうに見ているのがわかる。
きっと理玖にも抱きついてきて欲しいんだ。
「リク、どれにする?」
「アルの食べたいもの一緒に食べたい」
「リク……」
「いいでしょ?」
「ああ、じゃあクロワッサンサンドとパンケーキを取って分けようか」
「いいね、アルのチョイス大好き!」
嬉しそうにアルを見上げながら、理玖はそっと頬にキスをした。
「リク……」
「ふふっ。朝のキスできなかったから。なんか毎日しているのがないと変な感じするよね」
理玖の言葉にアルは満面の笑みで頬にキスを返していた。
注文して意外と早く料理が運ばれたのは、お客さんが少なかったおかげだろうか。
「わぁーっ、美味しそうっ!」
嬉しそうな声を上げる晴を見て、運んできた店員がポツリと
「この子、めちゃくちゃ可愛いじゃん」
と言ったのを俺は聞き逃さなかった。
椅子に座っている晴の腰を抱き寄せ、俺のそばにピッタリとくっつけて
「さぁ、二人で分け合って食べようか」
と店員に聞こえるように言ってやると、店員は身体をびくりと震わせ
「し、失礼します」
と急いで離れていった。
そこまで震えるほど威圧感を出した覚えはなかったが、まぁいいか。
前を見るとアルがニヤリと笑っていた。
どうやら俺の意図に気づいていたらしい。
だが、きっとアルも同じ状況になれば同じことをしていただろう。
いや、アルのほうがもっとすごいかもしれない。
ドイツ語で二人だけの世界に入って、店員をさっさと退けるかもしれないな。
というか、外で食事をしている間は、四人でドイツ語で会話をするのもいい手かもしれない。
余計な虫たちが寄ってこなくて済む。
後で提案してみようか。
晴はどちらから食べるか悩んでワッフルからにしたようだ。
生クリームとチョコレートソースは自分で好きなようにかけられるらしい。
「隆之さんは甘いのそこまで得意じゃないから、先にこっちをどうぞ」
と粉糖だけがほんの少しかかったワッフルを切り分けて
「あーん」
とフォークを差し出してきた。
この旅では恥ずかしがらずに恋人を満喫してくれると約束してくれたからか、それとも目の前でアルと理玖がお互いに食べさせあっている姿を見ているからか、照れずに差し出してくれるのが嬉しい。
口を開けると、香ばしいワッフルが口に入ってきた。
サクサクっとした食感で中はふんわりとしていて本当に美味しい。
「ああ、これは美味しいな。晴も食べてごらん」
晴は自分が食べるワッフルにチョコレートソースを少し多めにかけるとパクリと口に入れた。
小さな唇の端からチョコレートソースがほんの少し垂れている。
ふふっ。
口が小さいのにワッフルが大き過ぎたんだな。
「隆之さん、これ本当に美味しいですね」
嬉しそうな晴に近づき、唇の端についたチョコを舌でぺろっと拭ってやると、
「――っ!! た、隆之さん……っ!」
照れずに恋人を満喫してくれると言っていた晴も、流石に顔を赤くしていた。
晴は真っ赤な顔で理玖に目を向けたが、目の前にいるアルも理玖もすっかり二人の世界でお互いに唇についたクロワッサンの欠片をキスで取り合ったりしているのを見て、恥ずかしさも半減したようだ。
やはりアルが相手で、しかも海外生活の長い理玖とのカップル。
恋人同士のスキンシップは勝てる気がしない。
意外とこの旅行で晴が理玖とアルに感化されてくれるかもしれないな。
「このチョコソース、甘くて美味しいな。晴の唇についていたから余計甘かったのかもな」
「急に舐められるとびっくりするので、次は一言言ってくださいね」
「ふふっ。わかった。いっぱいつけてくれていいぞ」
俺がニヤリと笑うと、晴は少し拗ねた様子で、
「今度はパンケーキも食べたいです」
と言い出した。
『あ~ん』と開ける晴の小さな口にふわふわのパンケーキをいれてやると、美味しそうにモゴモゴして食べていた。
ふふっ。本当にかわいい。
まるでリスみたいだな。
「僕も隆之さんに食べさせてあげますね。『あ~ん』」
差し出されたパンケーキは少し大きかったが、パクリと食べ尽くした。
「どうですか?」
「ああ、ワッフルのサクサクも美味しかったが、このふわふわもなかなかだな」
「ふふっ。隆之さん。こっち向いてください」
「んっ?」
晴の方を振り返った途端、唇に晴の小さな舌の感触がした。
「生クリーム、付いてましたよ。これ、甘さ控えめで美味しいですね」
ニコッと笑顔をむけて、舌先についた生クリームを見せながら、そんなことを言ってくる。
からかったはずの晴にからかわれるとは……。
旅行はまだ始まってもいないというのに、すでに晴の可愛さにやられ始めてる。
夜までまだまだ長い。
楽しい旅行と我慢は紙一重のようだな。
その道すがら晴にメッセージを送っておいた。
<さっきアルの家をでた。道も空いているからあと5分くらいで到着するよ>
隣ではアルも音声入力で理玖に同じようなメッセージを送っているようだ。
へぇ、アルと理玖はメッセージはドイツ語なのか。
ドイツ人のアルとドイツ語もペラペラな理玖だから当然といえば当然なのだろうが、隣で朝から流暢なドイツ語を聞くのはなかなか楽しいものだな。
旅行前の忙しい時間だろうからと、簡潔なメッセージにしておいたが、すぐに既読がついた。
「アル、まずいぞ。晴と理玖。荷物を持ってもう外で待っているらしい」
「ああ。こっちもそう言ってる。二人で外に出て変な奴らに声でもかけられたら大変だ。ユキ、近道を行くから」
アルはそういうといつの間に調べていたのか、住宅街の細い路地へと入っていった。
アルの大きな車がギリギリ通れるくらいの幅しかないが、危うさを感じることも全くなくスイスイと進んでいき、どこを通ったかわからないうちにあっという間に理玖のアパート近くに到着した。
二人が大きな荷物を抱え、アパートの前で待っているのが見える。
と同時にすぐ近くに二人連れの男がいるのも見えた。
どうやら晴たちに声をかけようとしているようだ。
「アル、急げ。変なのが狙ってる」
俺の声にアルは即座に反応し、すぐに車を晴と理玖の前に停めた。
「リク。おはよう。待たせたか?」
「おはよう、アル。大丈夫だよ」
アルと理玖が甘い朝の挨拶をしている間に俺はさっと助手席から降りて、晴に駆け寄った。
「おはよう、晴。荷物持つよ」
「おはよう、隆之さん。ありがとう」
たった一晩会わなかっただけなのに愛おしさが募る。
晴の持っていた荷物を片手に持ち、もう片方の手で晴を抱き寄せ後部座席に座らせた。
自分も後部座席に乗り込む際に、晴と理玖に声をかけようとしていた奴らに威嚇の視線を向けると、
「ひぃーーっ」
と怯えた様子で逃げ去っていった。
ふぅ。
声をかけられる前で本当によかった。
アルと理玖がイチャイチャな朝の挨拶を終え、ようやく理玖が助手席に乗り込んだ。
「じゃあ、まずは朝食だな。ゆっくりと食べて充電してから旅先に向かおう」
アルは嬉しそうに理玖の手を握りながら、車を走らせた。
そのままあっという間にアルと理玖のおすすめのカフェに到着した。
まだ開店まもない時間だから、人もあまり来ていないらしい。
4人で店に入ると、すぐに奥の広めの席に案内してくれた。
モーニングメニューはクロワッサンサンド、ワッフル、パンケーキから選べるようだ。
「香月、どれにする?」
「うーん、ワッフルかパンケーキか悩むなぁ……」
ふふっ。
こうやって悩んでいる姿も実にかわいい。
「晴、なら二つ取って分けて食べよう」
「えっ? いいの?」
「ああ、もちろんだよ」
「わぁーっ、隆之さん。大好き」
晴が嬉しそうに抱きついてくるのをアルは羨ましそうに見ているのがわかる。
きっと理玖にも抱きついてきて欲しいんだ。
「リク、どれにする?」
「アルの食べたいもの一緒に食べたい」
「リク……」
「いいでしょ?」
「ああ、じゃあクロワッサンサンドとパンケーキを取って分けようか」
「いいね、アルのチョイス大好き!」
嬉しそうにアルを見上げながら、理玖はそっと頬にキスをした。
「リク……」
「ふふっ。朝のキスできなかったから。なんか毎日しているのがないと変な感じするよね」
理玖の言葉にアルは満面の笑みで頬にキスを返していた。
注文して意外と早く料理が運ばれたのは、お客さんが少なかったおかげだろうか。
「わぁーっ、美味しそうっ!」
嬉しそうな声を上げる晴を見て、運んできた店員がポツリと
「この子、めちゃくちゃ可愛いじゃん」
と言ったのを俺は聞き逃さなかった。
椅子に座っている晴の腰を抱き寄せ、俺のそばにピッタリとくっつけて
「さぁ、二人で分け合って食べようか」
と店員に聞こえるように言ってやると、店員は身体をびくりと震わせ
「し、失礼します」
と急いで離れていった。
そこまで震えるほど威圧感を出した覚えはなかったが、まぁいいか。
前を見るとアルがニヤリと笑っていた。
どうやら俺の意図に気づいていたらしい。
だが、きっとアルも同じ状況になれば同じことをしていただろう。
いや、アルのほうがもっとすごいかもしれない。
ドイツ語で二人だけの世界に入って、店員をさっさと退けるかもしれないな。
というか、外で食事をしている間は、四人でドイツ語で会話をするのもいい手かもしれない。
余計な虫たちが寄ってこなくて済む。
後で提案してみようか。
晴はどちらから食べるか悩んでワッフルからにしたようだ。
生クリームとチョコレートソースは自分で好きなようにかけられるらしい。
「隆之さんは甘いのそこまで得意じゃないから、先にこっちをどうぞ」
と粉糖だけがほんの少しかかったワッフルを切り分けて
「あーん」
とフォークを差し出してきた。
この旅では恥ずかしがらずに恋人を満喫してくれると約束してくれたからか、それとも目の前でアルと理玖がお互いに食べさせあっている姿を見ているからか、照れずに差し出してくれるのが嬉しい。
口を開けると、香ばしいワッフルが口に入ってきた。
サクサクっとした食感で中はふんわりとしていて本当に美味しい。
「ああ、これは美味しいな。晴も食べてごらん」
晴は自分が食べるワッフルにチョコレートソースを少し多めにかけるとパクリと口に入れた。
小さな唇の端からチョコレートソースがほんの少し垂れている。
ふふっ。
口が小さいのにワッフルが大き過ぎたんだな。
「隆之さん、これ本当に美味しいですね」
嬉しそうな晴に近づき、唇の端についたチョコを舌でぺろっと拭ってやると、
「――っ!! た、隆之さん……っ!」
照れずに恋人を満喫してくれると言っていた晴も、流石に顔を赤くしていた。
晴は真っ赤な顔で理玖に目を向けたが、目の前にいるアルも理玖もすっかり二人の世界でお互いに唇についたクロワッサンの欠片をキスで取り合ったりしているのを見て、恥ずかしさも半減したようだ。
やはりアルが相手で、しかも海外生活の長い理玖とのカップル。
恋人同士のスキンシップは勝てる気がしない。
意外とこの旅行で晴が理玖とアルに感化されてくれるかもしれないな。
「このチョコソース、甘くて美味しいな。晴の唇についていたから余計甘かったのかもな」
「急に舐められるとびっくりするので、次は一言言ってくださいね」
「ふふっ。わかった。いっぱいつけてくれていいぞ」
俺がニヤリと笑うと、晴は少し拗ねた様子で、
「今度はパンケーキも食べたいです」
と言い出した。
『あ~ん』と開ける晴の小さな口にふわふわのパンケーキをいれてやると、美味しそうにモゴモゴして食べていた。
ふふっ。本当にかわいい。
まるでリスみたいだな。
「僕も隆之さんに食べさせてあげますね。『あ~ん』」
差し出されたパンケーキは少し大きかったが、パクリと食べ尽くした。
「どうですか?」
「ああ、ワッフルのサクサクも美味しかったが、このふわふわもなかなかだな」
「ふふっ。隆之さん。こっち向いてください」
「んっ?」
晴の方を振り返った途端、唇に晴の小さな舌の感触がした。
「生クリーム、付いてましたよ。これ、甘さ控えめで美味しいですね」
ニコッと笑顔をむけて、舌先についた生クリームを見せながら、そんなことを言ってくる。
からかったはずの晴にからかわれるとは……。
旅行はまだ始まってもいないというのに、すでに晴の可愛さにやられ始めてる。
夜までまだまだ長い。
楽しい旅行と我慢は紙一重のようだな。
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