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コテージに行こう! <side晴>

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預けていた荷物を取り出し、駐車場に向かう。

『ユキの運転は明日に任せよう。今日はハルとのんびりしてくれ』

『ああ、頼むよ。アル』

助手席には当然のように理玖が座り、僕はエスコートされながら隆之さんと後部座席に座った。

『ねぇ、アル。今日はこのままずっとドイツ語?』

『私はどちらでもいいが、ユキとハルはどうしたい?』

ミラー越しに僕たちに尋ねてくるオーナーに隆之さんがすぐに言葉を返した。

『もう慣れてきたからドイツ語でもいいな。晴のドイツ語を聞くのも楽しいし。晴、いいだろう?』

『はい。僕もドイツ語の隆之さんと話すの楽しいです。理玖も楽しいよね?』

『香月が楽しいのはドイツ語で話す早瀬さんがかっこよくてドキドキするからだろ』

『そう! それ!! なんでわかったの?』

『ははっ。簡単だよ。俺もアルが日本語からドイツ語に切り替わるとドキドキするんだから』

そんな理玖の言葉にオーナーは

『リクはドイツ語で話す私の方が好きなのか? それならずっとドイツ語でも……』

と言葉をかける。

『違うんだよ。なんていうか、説明が難しいんだけど日本語で話しているアルもすごくかっこいいんだけど、ドイツだとまた違うアルに会えたみたいな……香月、わかるか?』

『うん、わかる! オーナーの場合は日本語だと紳士的だけど、ドイツ語だとちょっとワイルドな感じするよね』

『そう! そうなんだよ!』

僕たちの言葉にオーナーはなんとか納得してくれたようで、

『リクが好みだと言ってくれるなら、この旅行中はワイルドな私で行くとしようか』

と笑ってくれた。

そんなこんなでこの旅ではドイツ語でのやりとりが決まったところで、やっぱりさっき気になったことを聞いてみることにした。

『ねぁ、理玖。さっきゴンドラからホテルが見えてたって話してた時、なんで笑ってたの?』

『ああ、あれか。だって、ねぇ。アル』

『ははっ。そうだな』

理玖とオーナーはあの時と同じように二人で顔を見合わせて笑うだけ。

『ねぇ、なんで笑うの?』

意味がわからなくて、隆之さんをみると少し困ったような表情で

『アル、あんまり晴を揶揄うなよ』

と声をかけていた。

『隆之さんはわかったんですか? 理玖たちが笑っている意味が』

『んっ? ああ、まあな』

『えー、じゃあ教えてください!』

僕が隆之さんに詰め寄ると

『ほら、ユキが説明してやらないとハルはわからないままだぞ』

と前からオーナーの笑いを含んだ声が飛んでくる。

『わかったよ』

隆之さんは少し照れた様子で、オーナーに答えると、僕に視線を向けて、

『その、俺たちが外の景色を見えてなかったのは、他のことに夢中だったからだろう?』

と問いかけられる。

『えっ、他のことって……あっ!!!』

『ふふっ。やっとわかったのかよ、香月。あんなにも目立つ大きな建物が目に入らないってことは、目を瞑ってたってことだもんな。ゴンドラの中で外の景色も見ずに目を瞑って何やってたんだろうな』

ニヤニヤと笑みを浮かべながら告げられる理玖の言葉に一気に顔が赤くなる。

そんな僕を隆之さんはギュッと抱きしめながら、前に座る二人に声をかける。

『揶揄うのはそれくらいにしておいてくれ。大体アルと理玖だってキスくらいしたんだろう?』

『ははっ。まぁな。可愛いリクと二人っきりになってキスの一つもしないわけがない』

『もう! アルっ、バラさないでよ!』

『ははっ。ごめん、ごめん』

車の中にオーナーの笑い声が響く。

『えっ、それって理玖たちもキスしてたってこと?』

『ああ、そうだよ。晴は二人に揶揄われただけだ』

僕は抱きしめられていた隆之さんの胸元から顔を上げると、笑顔の隆之さんに迎えられる。

『ごめん、香月。ちょっと揶揄っただけだよ』

という理玖の言葉にホッとして、少し顔の赤みが引いていく気がした。

そんな話をしているうちにあっという間に今日の宿泊先であるコテージのあるホテルに到着した。

敷地内に掲げられている地図を見ると、広大な敷地に大きなコテージが隣との間隔をかなり広くとって作られているのがわかる。
ここにきたら、まずはチェックインをするホテル棟にいくらしい。

指定された駐車場に車を止め、隆之さんとオーナーが車から荷物を下ろすとすぐにスタッフさんが荷物をホテル棟に運んでくれる。
僕たちはそのスタッフさんに先導されながらホテル棟へ入って行った。

「あちらの専用カウンターでご宿泊のお手続きをお願いいたします」

と案内される。
へぇ、個室みたいな場所で手続きするんだ。
気楽でいいな。

『俺とアルで手続きしてくるから晴と理玖はそこに座っているといい』

『うん、ありがとう』

カウンターで説明を受けているらしい隆之さんとオーナーの後ろ姿を見ていると、

『香月、さっきは揶揄って悪かったな』

と理玖から声をかけられた。

『ううん、ちょっと恥ずかしかっただけで全然気にしてないよ。隆之さんとキスしちゃって外の景色あんまり見ていないのは確かだし』

『いや、本当はさ……俺たちもほとんど見えてなかったんだけど、夕日を見ようとしてたまたまこのホテルが目に入ったんだ。香月がホテルを見てないって言ったから、きっと俺たちと同じなんだろうなって笑ってしまっただけだよ』

『ふふっ。そうだったんだ。でも楽しかったよね、あのテーマパーク』

『ああ、すっごく楽しかった。今まで家族とかとしか行ったことなかったから香月たちとカップルで行けて楽しかったよ』

『今度はドイツのにも行こうよ』

『ああ、そうだな。今日の温泉も料理も楽しみだし、楽しいことがいっぱいだな』

『ふふっ。そうだね』

そんな話をしていると、隆之さんたちが手続きを終えてこっちにきてくれた。

『じゃあ、コテージに行こうか』

『うん』

さっきの入口の方に戻るのかと思ったら、このカウンターのある個室の奥から外に出られるらしい。
扉を開けて外に出ると、乗り物が二台置いてある。

『コテージまではこのカートに乗っていくんだよ』

『わぁ、そうなんだ。楽しみ!』

二人乗りのカートに乗り込むとオーナーと理玖が乗り込んだカートに先導されるように動き出す。
広い庭をカートで抜けると、目の前に大きなコテージが現れた。
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