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遊園地の最後は…… <side晴>
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<side晴>
『香月。腰が抜けたのか?』
隆之さんに抱きかかえてもらって降りると、理玖が少し笑いながら声をかけてくる。
『うん、だって予想以上だったよ』
『ああ、確かにな。俺も正直言って怖かったよ』
『そう? でも理玖はすごいよ。ちゃんと歩けてるじゃない』
『まぁな』
そんな得意げな理玖がなんだかすごく可愛く見えた。
『リク、次で最後にしようか。そろそろ今日の宿泊先に向かった方がいいだろう』
『うん、そうだね。じゃあ、俺……最後はやっぱりあれに乗りたい!』
そう言って、理玖が指さしたのは大きな観覧車。
やっぱり遊園地の最後といえば、観覧車だよね。
この広いテーマパークを一望できるし、楽しい思い出を目に焼き付けるにはぴったりだ。
『ああ、あそこならハルも休めるだろう。ユキ、行こうか』
オーナーの声に隆之さんが歩き出す。
『あっ、隆之さん。もう下ろしてもらっても大丈夫だよ』
『いいんだ、俺が晴を抱きかかえて歩きたいんだ』
周りの目がちょっと気になるけれど、それ以上に隆之さんの気持ちが嬉しかった。
まぁ、もう会わない人たちばっかりだし気にしなくてもいいか。
理玖も抱き抱えられてる訳じゃないけど、オーナーとぴったり寄り添って歩いてかなり目立ってるのに気にしてないし。
そもそもこの旅行ではそういうのは気にしないって決めたんだしな。
僕は自分にそう言い聞かせて、そのまま隆之さんの腕の中に留まった。
でもいくら隆之さんが鍛えてて力持ちでも、流石にずっと僕を抱っこして歩くのは大丈夫かな? とちょっと心配になったけど、全然余裕な表情でスタスタと歩いていく。
『隆之さん、重くないですか?』
『そんな心配はいらないよ。晴を抱っこして歩くなら、フルマラソンの距離でも余裕だ』
その言葉が全く冗談に思えないくらいの余裕な姿に僕は驚くしかなかった。
観覧車に到着すると、ゴンドラ一つ一つに可愛い動物の絵が描かれている。
この順番で行くと、理玖たちはきつねのゴンドラ。
僕たちはアライグマだ、
ふふっ。可愛い。
『じゃあ、お先に』
そう言ってゴンドラに乗り込んでいく理玖とオーナーを見送って、僕たちは次のゴンドラに乗り込む。
もちろん抱きかかえられたままで。
扉が閉められ、
「行ってらっしゃ~い」
という言葉と共に、ゴンドラはゆっくりと地上から離れていく。
「晴は観覧車に乗ったことがあるのか?」
「ふふっ。久しぶりの日本語ですね。そういえば、観覧車はないかも。でも一度乗って見たいと思ってたんですよね」
「そうなのか。晴の初めてを一緒に大変できて嬉しいよ」
「僕もです。初めてが隆之さんと二人っきりで嬉しいです」
「晴……」
見上げると隆之さんの顔が近づいてくる。
あっ、キスされる。
でも、目の前のゴンドラには理玖たちがいるし、僕たちの次のゴンドラからも見えるかも……。
理玖たちだけならまだしも流石に恥ずかしい。
「隆之さん、見られちゃう……」
「大丈夫だよ、ほら、前を見てごらん」
前には理玖たちのゴンドラが……。
そう思いながら、少し上を見上げると、ゴンドラのガラス? が反射して中身が見えない。
「えっ、これって……」
「ここの観覧車は内側から外の景色は見えるけど、外からは中が見えない作りなんだ」
「外から、中が見えない……」
「そう。だから、晴とキスしてもその可愛い顔を誰にも見られないで済むんだよ」
そう言って、隆之さんは僕の唇にちゅっと重ねた。
隆之さんの柔らかな唇の感触に身体がビクッと震えてしまう。
ああ、僕はずっと隆之さんとキスがしたかったんだ。
そう自覚したら、もう止められなかった。
「隆之さん、もっとキス、したい……っ」
そう告げると、嬉しそうな隆之さんの顔が近づいて、もう一度僕の唇に重なった。
舌を絡め、クチュクチュと甘い唾液を交換し合って、ゆっくりと唇を離すとちょうど僕たちの乗ったゴンドラが一番高い場所に到着したところだった。
「うわぁ、綺麗っ!!」
眼下に広がる美しい景色を目に焼き付けながら、僕たちはもう一度甘いキスをした。
ゴンドラが地上に到着し、また抱きかかえられて外に出る。
「お帰りなさ~い」
と出迎えてくれたスタッフさんに会釈をして降りると、理玖たちが出口で待っていてくれた。
『観覧車、どうだった?』
『すごい景色だったね。ここって、あんなに広いんだってびっくりしちゃったよ』
『今から行くホテルも見えてたな』
『えっ? そうだった? そこまでは見つけられなかったよ』
そういうと、理玖とオーナーは笑って顔を見合わせていた。
『どうしたの?』
『いいや。なんでもない。じゃあ、そろそろ出ようか』
『えっ、うん』
なんだか二人の反応が気になるけど、まぁいいか。
入り口近くのお土産物屋さんで、いくつかのお菓子を選んでいると、可愛いぬいぐるみを見つけた。
ストラップがついた、小さな動物たちのぬいぐるみ。
『見て、理玖! これ、可愛いっ』
『ああ、ほんとだな。高校の時、香月はリュックにつけてただろ? あれはコアラだっけ?』
『ああ、うん。よく覚えてたね。あれはおじいちゃんたちがオーストラリアに旅行行った時のお土産でもらったんだよ。今もあのリュックにぶら下げてるよ』
『せっかくだから旅行の記念に買わないか?』
『ふふっ。いいね。どれにする?』
『これなんてどうだ?』
そう言って理玖が手にしたのは、可愛いアライグマのぬいぐるみ。
確か、僕たちの乗ったゴンドラと同じだ。
『いいね、じゃあ、理玖はこれ』
僕が渡したのはもちろん、きつね。
これ見たらいつだって観覧車に乗った時のこと思い出すから。
『ああ、可愛いな。じゃあ、これにしよう』
理玖は自分たちの乗ったゴンドラと同じだって覚えてるのかわからないけど、僕だけが覚えているのも楽しい。
ふふっ。そういうのもいい思い出だよね。
『香月。腰が抜けたのか?』
隆之さんに抱きかかえてもらって降りると、理玖が少し笑いながら声をかけてくる。
『うん、だって予想以上だったよ』
『ああ、確かにな。俺も正直言って怖かったよ』
『そう? でも理玖はすごいよ。ちゃんと歩けてるじゃない』
『まぁな』
そんな得意げな理玖がなんだかすごく可愛く見えた。
『リク、次で最後にしようか。そろそろ今日の宿泊先に向かった方がいいだろう』
『うん、そうだね。じゃあ、俺……最後はやっぱりあれに乗りたい!』
そう言って、理玖が指さしたのは大きな観覧車。
やっぱり遊園地の最後といえば、観覧車だよね。
この広いテーマパークを一望できるし、楽しい思い出を目に焼き付けるにはぴったりだ。
『ああ、あそこならハルも休めるだろう。ユキ、行こうか』
オーナーの声に隆之さんが歩き出す。
『あっ、隆之さん。もう下ろしてもらっても大丈夫だよ』
『いいんだ、俺が晴を抱きかかえて歩きたいんだ』
周りの目がちょっと気になるけれど、それ以上に隆之さんの気持ちが嬉しかった。
まぁ、もう会わない人たちばっかりだし気にしなくてもいいか。
理玖も抱き抱えられてる訳じゃないけど、オーナーとぴったり寄り添って歩いてかなり目立ってるのに気にしてないし。
そもそもこの旅行ではそういうのは気にしないって決めたんだしな。
僕は自分にそう言い聞かせて、そのまま隆之さんの腕の中に留まった。
でもいくら隆之さんが鍛えてて力持ちでも、流石にずっと僕を抱っこして歩くのは大丈夫かな? とちょっと心配になったけど、全然余裕な表情でスタスタと歩いていく。
『隆之さん、重くないですか?』
『そんな心配はいらないよ。晴を抱っこして歩くなら、フルマラソンの距離でも余裕だ』
その言葉が全く冗談に思えないくらいの余裕な姿に僕は驚くしかなかった。
観覧車に到着すると、ゴンドラ一つ一つに可愛い動物の絵が描かれている。
この順番で行くと、理玖たちはきつねのゴンドラ。
僕たちはアライグマだ、
ふふっ。可愛い。
『じゃあ、お先に』
そう言ってゴンドラに乗り込んでいく理玖とオーナーを見送って、僕たちは次のゴンドラに乗り込む。
もちろん抱きかかえられたままで。
扉が閉められ、
「行ってらっしゃ~い」
という言葉と共に、ゴンドラはゆっくりと地上から離れていく。
「晴は観覧車に乗ったことがあるのか?」
「ふふっ。久しぶりの日本語ですね。そういえば、観覧車はないかも。でも一度乗って見たいと思ってたんですよね」
「そうなのか。晴の初めてを一緒に大変できて嬉しいよ」
「僕もです。初めてが隆之さんと二人っきりで嬉しいです」
「晴……」
見上げると隆之さんの顔が近づいてくる。
あっ、キスされる。
でも、目の前のゴンドラには理玖たちがいるし、僕たちの次のゴンドラからも見えるかも……。
理玖たちだけならまだしも流石に恥ずかしい。
「隆之さん、見られちゃう……」
「大丈夫だよ、ほら、前を見てごらん」
前には理玖たちのゴンドラが……。
そう思いながら、少し上を見上げると、ゴンドラのガラス? が反射して中身が見えない。
「えっ、これって……」
「ここの観覧車は内側から外の景色は見えるけど、外からは中が見えない作りなんだ」
「外から、中が見えない……」
「そう。だから、晴とキスしてもその可愛い顔を誰にも見られないで済むんだよ」
そう言って、隆之さんは僕の唇にちゅっと重ねた。
隆之さんの柔らかな唇の感触に身体がビクッと震えてしまう。
ああ、僕はずっと隆之さんとキスがしたかったんだ。
そう自覚したら、もう止められなかった。
「隆之さん、もっとキス、したい……っ」
そう告げると、嬉しそうな隆之さんの顔が近づいて、もう一度僕の唇に重なった。
舌を絡め、クチュクチュと甘い唾液を交換し合って、ゆっくりと唇を離すとちょうど僕たちの乗ったゴンドラが一番高い場所に到着したところだった。
「うわぁ、綺麗っ!!」
眼下に広がる美しい景色を目に焼き付けながら、僕たちはもう一度甘いキスをした。
ゴンドラが地上に到着し、また抱きかかえられて外に出る。
「お帰りなさ~い」
と出迎えてくれたスタッフさんに会釈をして降りると、理玖たちが出口で待っていてくれた。
『観覧車、どうだった?』
『すごい景色だったね。ここって、あんなに広いんだってびっくりしちゃったよ』
『今から行くホテルも見えてたな』
『えっ? そうだった? そこまでは見つけられなかったよ』
そういうと、理玖とオーナーは笑って顔を見合わせていた。
『どうしたの?』
『いいや。なんでもない。じゃあ、そろそろ出ようか』
『えっ、うん』
なんだか二人の反応が気になるけど、まぁいいか。
入り口近くのお土産物屋さんで、いくつかのお菓子を選んでいると、可愛いぬいぐるみを見つけた。
ストラップがついた、小さな動物たちのぬいぐるみ。
『見て、理玖! これ、可愛いっ』
『ああ、ほんとだな。高校の時、香月はリュックにつけてただろ? あれはコアラだっけ?』
『ああ、うん。よく覚えてたね。あれはおじいちゃんたちがオーストラリアに旅行行った時のお土産でもらったんだよ。今もあのリュックにぶら下げてるよ』
『せっかくだから旅行の記念に買わないか?』
『ふふっ。いいね。どれにする?』
『これなんてどうだ?』
そう言って理玖が手にしたのは、可愛いアライグマのぬいぐるみ。
確か、僕たちの乗ったゴンドラと同じだ。
『いいね、じゃあ、理玖はこれ』
僕が渡したのはもちろん、きつね。
これ見たらいつだって観覧車に乗った時のこと思い出すから。
『ああ、可愛いな。じゃあ、これにしよう』
理玖は自分たちの乗ったゴンドラと同じだって覚えてるのかわからないけど、僕だけが覚えているのも楽しい。
ふふっ。そういうのもいい思い出だよね。
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