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番外編
グレイグへの報告
いつも読んでいただきありがとうございます。
短いですが、グレイグとの小話を書きましたので楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
「ヒジリ、無理しないで今日は寝ていたほうがいい」
「んっ、でも……」
「大丈夫、テオのことなら私に任せてくれ」
「ランハート、ありがとう」
「ふふっ。お礼などいらないよ。私たちは夫夫なのだから助け合うのが当然だ」
「うん。ねぇ、ランハート。こっちきて……」
「どうした? 何か欲しいのがあるか?」
ベッドに横たわるヒジリに顔を近づけると、
「ランハート、だいすき……」
という言葉と共に頬にチュッと唇が当てられた。
ああ、ヒジリは幾つになっても可愛らしくて困る。
そのまま愛し合いたい気持ちをグッと抑えて、
「私もヒジリが大好きだよ」
と頬に口づけをして部屋を出た。
すぐにグレイグを呼び、ヒジリが部屋で眠っていることを伝え、出かけている間くれぐれも気にかけていて欲しいと頼むとグレイグは目を丸くして驚いていた。
「旦那さまがおそばについていて差し上げなくてよろしいのですか?」
「私もそうしたいが、今日はテオが騎士団の訓練を見に行くのを楽しみにしていただろう? ヒジリがテオの楽しみを奪いたくないというのでな」
「そういうことでございますか……。本当にヒジリさまはお優しい。お医者さまをお呼びいたしますか?」
「いや、必要なら外出から戻ってきてから呼ぶことにしよう」
医師とはいえ、私のいない寝室でヒジリに触れさせるわけにはいかないからな。
「承知いたしました」
「それから、グレイグ……大事な話がある」
「どうなさったのでございますか?」
「実は……ヒジリに子ができたのだ」
「は……っ? い、いまなんと仰ったのですか? ヒジリさまに、おこ、がどうとか? 私の聞き間違いでございますか?」
「ははっ。驚くのも無理はないな。ヒジリに子ができたのだ。間違いではないぞ。一昨日、ヒジリが神さまにそのように教えていただいたそうだ」
「なんと――っ! まさか、お二人目もお授かりになろうとは!! 私、幸せにございます」
「そうだろう? 私も思いがけないことに驚いたのだよ」
「――っ、ですが、昨夜はヒジリさまとの夜を過ごされたのでは? かなり激しかったように思われますが……」
「ああ、そうなんだ――」
「そうなんだではございません!! 妊娠初期の大事な時期に旦那さまの化け物のような体力でヒジリさまを激しく愛されてお腹の御子に何かあったらどうするつもりなのですか!!」
「――っ!!」
グレイグのあまりの剣幕に、意識を失うまで激しくされたかったとヒジリの方から誘われたなどとは言えるはずもなく、
「申し訳ない。私が悪かった。これからはヒジリの体調に留意するから怒りを鎮めてはくれぬか?」
と誠心誠意頭を下げると、
「これからは十分おきをつけください」
とようやく落ち着いてくれた。
「それで今は、本当にお医者さまはお呼びしなくてもよろしいのですか?」
「ああ、ただ寝不足なだけだから問題ないと言っていた。ただでさえ、身籠ると眠くなるのだそうだ。今はゆっくり寝かせるのが一番の薬だ」
「承知いたしました。このグレイグが責任を持ってヒジリさまの睡眠をお守りいたします!」
俄然張り切ったグレイグにヒジリを任せ、私はその場を離れた。
それにしても喜んでくれるだろうとは思ったが、あれほどまでとはな。
グレイグはまだまだ老いとは無縁だな。
それはそれで嬉しいことであるが……。
久しぶりに真剣にグレイグに叱られたのをなんとなく嬉しく思いながら、テオの部屋に向かった。
* * *
続きも予定していますが、間が空きそうなのでとりあえず完結表記にしています。
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