文字の大きさ
大
中
小
613 / 817
絢斗が行きたい場所
二人の運命の出会いとも言える話を聞き、ほっとしたところで直くんが目を覚ましたようだ。
直くんに近づいた絢斗が話をすると、もう大丈夫だと話した。
そのスッキリとした表情に安堵する。
『それじゃあそろそろ出ようか』
声をかけ、みんなが部屋を出る前に部屋を出てさっと支払いを済ませておく。
ラシード殿下に気を遣わせるわけにはいかないからな。
『この後はどこに行く?』
ラシード殿下のそんな質問に笑顔で答えたのは絢斗だった。
彼にだけわかるようにカマル語で語りかけると、ラシード殿下はなんとも不思議な表情を浮かべていたが、絢斗のことは信頼しているようだった。
「卓さん、行こう」
私だけはここからどこに行くかは絢斗から聞いて知っている。
目的地はこの店からほど近い場所にあるから、車を移動させることなく歩いて向かうことにした。
「昇。直くんを頼むぞ」
周りをSPがかためてくれているのは気配でわかるが、外を歩けば何が起こるかわからない。
注意をしておくに越したことはにない。
直くんを昇が、保さんをラシード殿下が、そして絢斗を私が守りながらその目的地に向けて歩き始めた。
私と絢斗を先頭に歩いているが、真ん中を歩くラシード殿下から途轍もない威圧を感じる。
日本ではそこまで威圧を放つ必要もないだろうが、おそらくあちらではいつもこうして歩いているのだろう。
保さんはラシード殿下の威圧も感じられないくらいだから、よからぬ考えを持って近づいてくる輩には気がつかなさそうだ。こういうところは直くんとよく似ている。だからこそ、直くんもしっかり守る必要がある。
先ほどの店があった道の一本中に入る数分歩いて出てきた店は、呉服屋。
ここは母や絢斗の母の秋穂さんが行きつけにしていた店だ。
ラシード殿下と保さんと年末に出かけることが決まった時に、何をしようかと考えて絢斗が出したアイディアだった。
それは初詣に着物を着て出かけるということ。
クリスマスに着た着ぐるみパジャマをラシード殿下はたいそう気に入った様子だった。
もちろん自分の姿ではなく、気に入ったのは保さんの可愛い姿。
それを見ていたからこそ、日本でしか体験できないことをして帰って欲しいというのが絢斗の考えだった。
確かにあちらで和服を着られる場所を探すのはほぼ無理に等しい。
せっかく日本に来ているのだから楽しんでもらうのはいいアイディアだ。
それに私も絢斗の和服姿が見たいという気持ちもあった。
なぜならおそらく、いや絶対に絢斗は保さんに女性用の着物を着せるつもりだから。
女性用の和服を着ようと誘って、保さんが恥ずかしがるだろうということを見越して、絢斗も一緒に着るというに違いない。私はそれが楽しみだったから、このアイディアをオッケーしたんだ。
なんせ、征哉くんと一花くんの結婚式の日。
美しい和服を纏った絢斗は女神のように美しかった。
もちろんいつもの自然な絢斗も美しいが、見慣れぬ姿に興奮してしまうのは男の性と言える。
それにあの日はドレス姿だった直くんの可愛い着物姿が見たい。
愛しい伴侶と可愛い息子の着物姿を一度に見られるなんてそれは最高だろう。
昇も絶対に見たいだろうから、反対はしないだろうし。
チラリと昇に視線を向けると、呉服屋の前に立ち止まっただけで絢斗の考えが伝わったようで、私に笑顔を向けた。
『ここだよ。中に入ろう』
絢斗が声をかけている間に、ガラスの引き戸を開けると奥から和服の店主が現れた。
「磯山さま。お待ち申し上げておりました」
前もって連絡をしていたから、絢斗が望む着物はすでに準備されているようだ。
「早速着物を見せていただきたい」
「はい。こちらへどうぞ」
私が店主と会話をしている間に、絢斗がラシード殿下にこの店に来た目的を告げる。
『おお! なんと素晴らしい! タモツ、私のためにぜひ着て見せて欲しい。美しいキモノを纏って一緒にハツモウデとやらに行こう!』
ラシード殿下のあまりの勢いに、保さんは反対もできず真っ赤な顔で頷いていた。
直くんに近づいた絢斗が話をすると、もう大丈夫だと話した。
そのスッキリとした表情に安堵する。
『それじゃあそろそろ出ようか』
声をかけ、みんなが部屋を出る前に部屋を出てさっと支払いを済ませておく。
ラシード殿下に気を遣わせるわけにはいかないからな。
『この後はどこに行く?』
ラシード殿下のそんな質問に笑顔で答えたのは絢斗だった。
彼にだけわかるようにカマル語で語りかけると、ラシード殿下はなんとも不思議な表情を浮かべていたが、絢斗のことは信頼しているようだった。
「卓さん、行こう」
私だけはここからどこに行くかは絢斗から聞いて知っている。
目的地はこの店からほど近い場所にあるから、車を移動させることなく歩いて向かうことにした。
「昇。直くんを頼むぞ」
周りをSPがかためてくれているのは気配でわかるが、外を歩けば何が起こるかわからない。
注意をしておくに越したことはにない。
直くんを昇が、保さんをラシード殿下が、そして絢斗を私が守りながらその目的地に向けて歩き始めた。
私と絢斗を先頭に歩いているが、真ん中を歩くラシード殿下から途轍もない威圧を感じる。
日本ではそこまで威圧を放つ必要もないだろうが、おそらくあちらではいつもこうして歩いているのだろう。
保さんはラシード殿下の威圧も感じられないくらいだから、よからぬ考えを持って近づいてくる輩には気がつかなさそうだ。こういうところは直くんとよく似ている。だからこそ、直くんもしっかり守る必要がある。
先ほどの店があった道の一本中に入る数分歩いて出てきた店は、呉服屋。
ここは母や絢斗の母の秋穂さんが行きつけにしていた店だ。
ラシード殿下と保さんと年末に出かけることが決まった時に、何をしようかと考えて絢斗が出したアイディアだった。
それは初詣に着物を着て出かけるということ。
クリスマスに着た着ぐるみパジャマをラシード殿下はたいそう気に入った様子だった。
もちろん自分の姿ではなく、気に入ったのは保さんの可愛い姿。
それを見ていたからこそ、日本でしか体験できないことをして帰って欲しいというのが絢斗の考えだった。
確かにあちらで和服を着られる場所を探すのはほぼ無理に等しい。
せっかく日本に来ているのだから楽しんでもらうのはいいアイディアだ。
それに私も絢斗の和服姿が見たいという気持ちもあった。
なぜならおそらく、いや絶対に絢斗は保さんに女性用の着物を着せるつもりだから。
女性用の和服を着ようと誘って、保さんが恥ずかしがるだろうということを見越して、絢斗も一緒に着るというに違いない。私はそれが楽しみだったから、このアイディアをオッケーしたんだ。
なんせ、征哉くんと一花くんの結婚式の日。
美しい和服を纏った絢斗は女神のように美しかった。
もちろんいつもの自然な絢斗も美しいが、見慣れぬ姿に興奮してしまうのは男の性と言える。
それにあの日はドレス姿だった直くんの可愛い着物姿が見たい。
愛しい伴侶と可愛い息子の着物姿を一度に見られるなんてそれは最高だろう。
昇も絶対に見たいだろうから、反対はしないだろうし。
チラリと昇に視線を向けると、呉服屋の前に立ち止まっただけで絢斗の考えが伝わったようで、私に笑顔を向けた。
『ここだよ。中に入ろう』
絢斗が声をかけている間に、ガラスの引き戸を開けると奥から和服の店主が現れた。
「磯山さま。お待ち申し上げておりました」
前もって連絡をしていたから、絢斗が望む着物はすでに準備されているようだ。
「早速着物を見せていただきたい」
「はい。こちらへどうぞ」
私が店主と会話をしている間に、絢斗がラシード殿下にこの店に来た目的を告げる。
『おお! なんと素晴らしい! タモツ、私のためにぜひ着て見せて欲しい。美しいキモノを纏って一緒にハツモウデとやらに行こう!』
ラシード殿下のあまりの勢いに、保さんは反対もできず真っ赤な顔で頷いていた。
感想 1,572
あなたにおすすめの小説
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです
珠宮さくら
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。
その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。
それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。
お菓子の妖精に転生した私、氷の大公爵様に拾われて毎日甘やかされています 〜ポケットの中の専属パティシエは、やがて公爵様の婚約者になりました〜
星乃和花元パティシエ見習いの私は、異世界でお菓子の妖精「シュクリ」に転生した。
森で行き倒れかけていたところを拾ってくれたのは、氷の魔人と恐れられる大公爵ノアゼット様。
お礼に作った特製プリンが、彼の偏食と魔力不調を治してしまい、私はそのまま専属パティシエとして大切にされることに。
胸ポケットに入れて持ち歩かれたり、砂糖星を狙われたり、王宮で菓子勝負をしたり、人間の姿に戻ったり。
甘いお菓子が、冷たい公爵様の心を少しずつ溶かしていく。
小さな妖精パティシエと、彼女だけに甘すぎる大公爵様の、癒やし系スイーツラブコメ。
・ー予定:毎日20:20更新(本編28話+番外編3話)ー・
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
恋愛偏差値ゼロの若きエリート財務官、今世の有能さが過ぎて冷徹王太子と天才魔術師に全力で外堀を埋められています
雪平もち前世は三十代、今世は二十代の若きエリート財務官・シリル。
恋愛偏差値ゼロのまま予算だけを愛してきた彼は、その並外れた有能さゆえに、王宮の超大物たちからロックオンされていた!
胃痛と腰痛に耐えながら、無自覚天然な財務官が、二人の凄まじい執着の狭間で右往左往する、異世界王宮溺愛BLコメディ!
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラどうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
ベータだった俺が後天性オメガになったら、幼馴染アルファがもっと過保護になりました
一ノ瀬麻紀ごく普通のベータとして生きてきた村井圭太(むらいけいた)は、ある日突然、希少な「後天性オメガ」に転化してしまう。
不安な日々が始まる……かと思いきや、幼馴染アルファの白河泰雅(しらかわたいが)とはまさかの両思い。早々に『番(つがい)』となり、幸せな日々を送っていた。
「オメガになっても俺は俺」と持ち前のポジティブさで新しい生活に向き合っていく圭太。だが、晴れて番となった泰雅は、今まで以上に過保護になっていく。
どんなトラブルも二人なら大丈夫! ポジティブで男前な元ベータ受けと、過保護で執着強めなスパダリ幼馴染攻め。明るくて幸せいっぱいオメガバース!
初日(6/2)は、7:00に2話、21:00に2話の、計4話更新
月〜木は1日2回 7:00 21:00
金〜日は1日3回 7:00 12:00 21:00
6/19(金)の21:00完結です。
全45話。約11万文字です。
私の大好きなオメガバース。
愛をたくさん詰め込んだので、みなさまにも楽しんでいただけますように🥰