ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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友人からの贈り物

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<side昇>

まさか、直くんがあんなことをしてくれるなんて……。

父さんたちが保安検査場の奥に入っていって、俺たちから姿が見えなくなってなんとなくホッとしていると、手を振り終わったらしい直くんが俺に屈むように言ってきた。

正直何が始まるのかわからなかったけれど、直くんが望むなら俺がそれに従うだけだ。直くんの目の高さに合うくらいに屈んで見せると、さっきまで父さんたちに向けて振っていた直くんの手が俺の頭に触れた。

「えっ……」

驚く俺に、直くんは優しい声で

「大丈夫、寂しくないですよ。僕がついてますから」

と言いながら頭を撫でてくれた。

直くんの実の父親から別れの手紙が来たとき、

――大丈夫だから、俺がついているから。

そう言ったことが甦る。ああ、そうか……。空港についてからの直くんのあの行動は全てそういうことだったんだ。

直くんのように近々会える保証もない別れと、俺の別れでは全然重みが違うけれど両親と離れることについては同じだからな。両親と離れ離れになってしまう俺が寂しいだろうと心配してくれたんだ。優しい直くんの考えることだな。

俺は……自分が思っていた以上に、直くんに愛されているのかもしれない。そう思うと、胸がいっぱいになった。

気を抜けば、涙を流してしまいそうなくらいに嬉しい。けれど、必死にそれを押し留め直くんに笑顔を見せた。

「直くん、ありがとう……直くんがいてくれるから俺は寂しくないよ」

「昇さん、よかった……」

直くんの可愛い笑顔にここが空港であることも忘れて抱きしめてしまいそうになった時、

「直くん、昇。行こうか」

と伯父さんから声がかかった。

「はい。パパ」

直くんは嬉しそうに返事をして、伯父さんについて行こうとするがその前にさっと俺の手を握った。

「昇さん、行きましょう」

「ああ、そうだな」

直くんの優しさにこれで十分だなと満足して、直くんについていった。
直くんの小さな手が俺の気持ちの全てを包んでくれる。本当に、俺は幸せ者だ。


伯父さんたちに案内されるように到着ゲートに着くと、浮き足だった村山がゲートの向こうを覗き込んでいるのが見えた。


「ははっ。相当待ちきれないようだな」

「でもまだカールが出てくるまで十五分はかかりそうだけど……」

「そうなのか? まぁ、いいじゃないか。一緒に待っててやろう」

伯父さんのその表情を見ると、なんとなく村山と同じ経験でもしたことがあるような気がして、思わず笑ってしまった。

そういえば前に、悠真さんが西表から戻ってくる前日に仕事中の伊織さんと会ったことがあったけど、あの時の伊織さんは今の村山と同じで妙に浮き足立っていて、いつものクールな伊織さんとは違う気がした。

好意を寄せる相手と対面するときのドキドキ感というのは、恋人だろうがなんだろうがみんな変わらないのだろうな。俺だってきっと、直くんと離れることになって久しぶりに会えるとなれば到着の数時間前から空港に来そうな気もする。

村山とカールの初対面。しっかりと見届けてやるか。直くんを伯父さんと絢斗さんに任せて、村山に声をかけに行った。

「村山、カールから連絡来たのか?」

「ああ、たった今飛行機が到着して、外に出るのを待っているらしい」

「そうか、じゃあ荷物受け取ったらすぐだな。ああ、でもファーストの客が先だからもう少しかかるか」

「いや、俺がカールの席をファーストにしておいたからすぐに出てくるはずだよ」

「えっ? そうなのか?」

「当たり前だろ。カールを一人でエコノミーなんかに乗せられないだろ。危ない。日本の航空会社のファーストに変更してしっかり頼んでおいたから、ここまで無事に来ているはずだ」

当然とでも言いたげな口ぶりだが、ドイツからファーストクラスだと二百万は余裕でかかりそうな気がする。
村山は高校生ながら株でかなりの収入があると知ってはいたが、カールのためにポンと二百万も出すのか……。すごいな。

まぁ、俺も直くんを一人で行かせるなら……うん、確実に出すな。

その金で直くんの安全が買えるなら安いものだ。そもそも、俺の場合は絶対に一人では行かせないけれど。
もしかしたら、村山はカールがドイツに帰る時は向こうまで送っていきそうな気がする。その時は学校を休んでも大丈夫なようにしておいてやるかな。

「ああ、そうだ。磯山。忘れないうちにこれ送っとくよ」

「なんだ?」

突然村山がスマホを操作したと思ったら、俺のスマホに通知が入った。

「動画?」

気になってすぐに再生すると、

――大丈夫、寂しくないですよ。僕がついてますから

と直くんが俺の頭を撫でているのが出てきた。

「こ、これ……」

「こっそり撮っておいたんだ。よく撮れてるだろ?」

「おお! すごいよ。ありがとう」

まさかあれを自分の目で見られるなんて思ってなかった。思いがけないお宝映像に俺はついつい見入ってしまっていた。
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