ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

文字の大きさ
213 / 678

楽しいお風呂

しおりを挟む
<side直純>

楽しい食事も終わり、とうとう楽しみにしていたお風呂の時間。
前の家では嫌でたまらなかったお風呂の時間も、今ではすっかり楽しい時間に変わった。
毎日変わる色付きのお湯からはいい香りがしているし、湯船の中では可愛い黄色のアヒルちゃんと身体がほかほかになるまで遊ぶことができる。

本当に楽しい時間だ。

実はこの旅行にもこっそりアヒルちゃんを連れてきている。
あやちゃんにも内緒で持ってきたから怒られるかもしれないけど……。

もし、誰とも一緒に入れなかったらアヒルちゃんと遊ぼうかなって思ってた。

でも昇さんと一緒に入れるのなら、アヒルちゃんはお休みしていてもらおうかな。
着替えをバッグから出しながらどうしようか悩んだけど、夜は休んでてもらうことにした。

着替えを持って脱衣所に行き、洋服を脱ぐ。
僕が脱衣所にいた時に服を着た母さんがいたことはよくあったけれど、一緒に裸になることも一緒に入ることもなかったからなんだか新鮮だ。

昇さんに声をかけると、さっと僕の後ろに回って僕を洗い場に連れて行ってくれる。
きっと僕に一番に洗い場を見せてくれるためだ。昇さんって優しいな。

鏡の前に置かれた小さな椅子に座ると、昇さんが隣に座った。
こういうのが初めてでワクワクしてしまう。

教えてもらったシャンプーを手に取って洗おうとして、あやちゃんから昨日言われたことを思い出した。

――シャンプーをモコモコの泡にして頭につけたらあわあわの羊さんみたいになるんだよ。昔、お父さんと一緒に入った時はいつもそれやって笑ってたんだよ。

あやちゃんが、おじいちゃんとのお風呂の思い出を教えてくれたんだ。

それ聞いて一人でお風呂の鏡に映しても楽しそうと思ったけど、今日なら昇さんが見て笑ってもらえるかも。
そう思うとやらずにはいられなくなって、いっぱいあわあわにして頭につけた。

ちらっと昇さんに目を向けると、目を瞑って頭を洗っているのが見える。
もしかして髪を洗うのが苦手なのかな? 目に水が入るのが怖いとか?
昇さんの可愛い一面を見たような気がして楽しくなる。僕のあわあわの頭見て、怖くなくなったらいいな。

それにしても昇さんの腕……僕の腕とは全然違う気がする。
脇腹も骨が浮き出てる僕とはちがってなんだかかっこいい。
ギュッと抱きしめてもらっている時から、僕の身体とは違うなって思ってたけど、こうやって裸を見るとその違いがよくわかる。

昇さんって、かっこいい……。こんな人が僕の恋人なんだよね? わぁー、なんだかドキドキするな。

かっこいい昇さんを見ながら頭を泡立てていると、想像以上にあわあわになって楽しい。
これなら笑ってもらえるかな。

昇さんの名前を呼ぶと、昇さんがこっちを向いて目を開けた。

「あわあわになっちゃいました!」

楽しくなって欲しくて笑顔で声をかけると、昇さんが大笑いしてくれた。
やった! 大成功だ!

あやちゃんに教えてもらったって話すと、昇さんも

「俺も! 俺も!」

と同じようにあわ泡の頭にしてくれた。ふふっ。昇さんも怖くなくなったかな?
昇さんと一緒に入れてよかった。

「じゃあ、洗い流そうか」

さっとシャワーで自分のモコモコ泡を洗い流した昇さんが、椅子に座る僕の後ろにさっと膝立ちになってシャワーで泡を洗い流してくれる。
髪を乾かしてくれる時もすごく気持ちがいいけど、洗い流してもらうのも気持ちがいい。
そのまま眠ってしまいそうだ。

「さぁ、泡が流れたよ。次は身体洗おうか」

「あの、僕が昇さんの背中を洗ってもいいですか?」

「えっ? ど、どうして?」

「昇さんの身体、かっこいいなって。だから、大きな背中洗ってみたいんですけど……だめ、ですか?」

「くっ――! い、いいよ。直くんに洗ってもらえるなら嬉しいよ。じゃあ、俺も直くんの背中を洗うね」

「わぁー! それ楽しそう!!」

お互いに背中を洗い合うなんて、今までになかったことだ。

僕は早速ボディーソープの泡を手に取って、昇さんの背中につけた。
ビクッと昇さんの身体が震えてびっくりする。

「冷たかったですか?」

「あ、いや。大丈夫」

「よかった。じゃあ続けますね」

両方の手で昇さんの背中を洗うのはなんだかとっても楽しい。

「直くん、どう?」

「はい。すっごく楽しいです。昇さんって、すっごくおっきぃですね」

「――っ!! そ、それって……」

「んっ? だって、こんなに背中おっきぃですよ」

「あ、ああ。そうだね」

僕が背中を洗っている間に、昇さんは他の場所を手際よく洗っているのを背中越しに感じる。
そうか、そうすればいいんだ。じゃあ、僕も昇さんに背中を洗ってもらっている時にそうしよう。

「くっ――!! な、直くん。も、もういいかな。ありがとう、すっごくよかったよ」

いつの間にか脇腹の辺りまで洗っていたら、昇さんに止められた。
楽しかったから洗う時間が終わって寂しいけど、喜んでもらえてよかったな。
しおりを挟む
感想 1,249

あなたにおすすめの小説

拗らせ問題児は癒しの君を独占したい

結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。 一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。 補習課題のペアとして出会った二人。 セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。 身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。 期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。 これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

猫を追いかけて異世界に来たら、拾ってくれたのは優しい貴族様でした

水無瀬 蒼
BL
清石拓也はある日飼い猫の黒猫・ルナを追って古びた神社に紛れ込んだ。 そこで、御神木の根に足をひっかけて転んでしまう。 倒れる瞬間、大きな光に飲み込まれる。 そして目を覚ましたのは、遺跡の中だった。 体調の悪い拓也を助けてくれたのは貴族のレオニス・アーゼンハイツだった。 2026.1.5〜

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

処理中です...