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番外編
頑張らないと!
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「安慶名、何を手伝えばいい?」
袖捲りしながらキッチンで作業中の安慶名に声をかける。
「あれは真壁をこっちに呼び寄せるために言っただけだ。悠真も含めて三人で過ごさせてやりたかっただけだからな」
それならもう少し要さんのそばに居させて欲しかったと恨み節を言いたくなるが、チラリと要さんがいる方に視線を向けると楽しげにおしゃべりしているのが見えて、早々に引き下がって良かったんだと思うことにした。
「ここから作業しながら可愛い子猫たちの様子を眺めるのも悪くないぞ」
周平さんは愛おしそうな目であちらを見つめるが、その視線の先は浅香さんだろうな。
「本当に何も手伝わなくていいのか? せっかくだからなんでも言ってくれ」
「それじゃあ、そこにある材料でドレッシングを作っておいてくれ。好みの分量は真壁に任せるよ。エプロンはそこにあるから」
「了解」
広々としたキッチンは男二人で並んでも圧迫感を感じない。
言われた通り好みの配合をしながら、隣に立つ安慶名の包丁捌きに目を奪われる。
「すごいな、さすがシェフ」
「まあな、一応料理人として仕事をしているからな」
安慶名は料理人と弁護士、成瀬は医師と弁護士のダブルライセンス。氷室は国際弁護士資格持ちの敏腕弁護士。それに、周平さんもセレブ御用達のアパレル会社Clef de Coeurのデザイナー兼社長。
私だけが警察官僚という肩書きしか持っていない。
「冬貴? どうした?」
「あ、いえ。私ももっと頑張らないといけないなと思っていただけです」
人を羨んでも私自身が努力して変わらなければ何も変わらない。
もっと高みを目指して、要さんに恥じない人間にならなければな。
自分に発破をかけるためにもそう答えたのだが、周平さんはじっと私の目を見た。
「冬貴が何を考えているか、だいたい見当はつくが要くんは冬貴だから好きになったんだと思うぞ。たとえ、お前が官僚でなくてもな。なぁ、伊織。お前もそう思うだろう?」
「ええ。そうですね。久代さん、時々こちらに視線を向けているが、真壁にしか向いてないよ。私や周平さんは眼中にもないみたいだ」
「えっ……」
ちらっと要さんに目を向けるとすぐに要さんと目が合う。
そして可愛らしい笑顔を見せてくれる。その笑顔が私にだけに向けられていることに私も気づいた。
「な? 言っただろう?」
どうだと言わんばかりの安慶名の表情が少し鼻につくが、嬉しさのほうが上回っている。
「敬介も悠真くんも、それにこれから来る真琴くんたちも同じだ。だからこうして同じ時を過ごせるんだよ」
周平さんの言葉に納得しかない。
「そうですね。安心しました」
「恋人になりたてはとかく不安になりやすい。私も敬介を手に入れてからも少し不安な時期もあったが、それも時間が解決してくれるものだ」
「真壁は、久代さんが八尋さんを好きだと勘違いしていたから余計に不安になるんだろうが、八尋さんは恋人にメロメロだからそれも気にしないでいいよ。試食会の時も八尋さんのほうが離れるのを渋っていたくらいだったし」
あの八尋さんが、メロメロ……。
実際にその姿を見ているからこそ言える言葉なんだろうが、想像つかないな。
今度会いに行くのが楽しみだな。
こんな話をしながらも、安慶名の手は止まっておらず気づけば料理のほとんどが仕上がっていた。
「あ、ドレッシングできたぞ」
適当に五種類ほどのドレッシングを仕上げたところで、コンシェルジェから連絡がきた。
「誠一たちか。これでようやく揃ったな」
「料理も出来上がったし、いいタイミングだな」
見計らったようなタイミングに驚きつつも、さすが成瀬たちだなと思わずにいられない。
私は急いで出迎えに向かった。
「いらっしゃい」
扉を開けると、正面に真琴くんと翼くんの姿。
そして彼らにピッタリと寄り添うように成瀬と氷室が両サイドを固めていた。
「今日はお招きありがとうございます」
ぺこりと頭を下げる真琴くんと翼くんの可愛さに思わず目を細めると、さっと成瀬が真琴くんを抱き寄せた。
相変わらずの狭量さだな。
「真壁さんの恋人さんに会えるのが楽しみで、真琴くんと二人でワクワクしてましたよ」
「ははっ。ありがとう。さぁ中に入って。要さんも君たちに会えるの楽しみにしていたから」
笑顔で中に誘うと、四人は固まった表情で私を見ていた。
袖捲りしながらキッチンで作業中の安慶名に声をかける。
「あれは真壁をこっちに呼び寄せるために言っただけだ。悠真も含めて三人で過ごさせてやりたかっただけだからな」
それならもう少し要さんのそばに居させて欲しかったと恨み節を言いたくなるが、チラリと要さんがいる方に視線を向けると楽しげにおしゃべりしているのが見えて、早々に引き下がって良かったんだと思うことにした。
「ここから作業しながら可愛い子猫たちの様子を眺めるのも悪くないぞ」
周平さんは愛おしそうな目であちらを見つめるが、その視線の先は浅香さんだろうな。
「本当に何も手伝わなくていいのか? せっかくだからなんでも言ってくれ」
「それじゃあ、そこにある材料でドレッシングを作っておいてくれ。好みの分量は真壁に任せるよ。エプロンはそこにあるから」
「了解」
広々としたキッチンは男二人で並んでも圧迫感を感じない。
言われた通り好みの配合をしながら、隣に立つ安慶名の包丁捌きに目を奪われる。
「すごいな、さすがシェフ」
「まあな、一応料理人として仕事をしているからな」
安慶名は料理人と弁護士、成瀬は医師と弁護士のダブルライセンス。氷室は国際弁護士資格持ちの敏腕弁護士。それに、周平さんもセレブ御用達のアパレル会社Clef de Coeurのデザイナー兼社長。
私だけが警察官僚という肩書きしか持っていない。
「冬貴? どうした?」
「あ、いえ。私ももっと頑張らないといけないなと思っていただけです」
人を羨んでも私自身が努力して変わらなければ何も変わらない。
もっと高みを目指して、要さんに恥じない人間にならなければな。
自分に発破をかけるためにもそう答えたのだが、周平さんはじっと私の目を見た。
「冬貴が何を考えているか、だいたい見当はつくが要くんは冬貴だから好きになったんだと思うぞ。たとえ、お前が官僚でなくてもな。なぁ、伊織。お前もそう思うだろう?」
「ええ。そうですね。久代さん、時々こちらに視線を向けているが、真壁にしか向いてないよ。私や周平さんは眼中にもないみたいだ」
「えっ……」
ちらっと要さんに目を向けるとすぐに要さんと目が合う。
そして可愛らしい笑顔を見せてくれる。その笑顔が私にだけに向けられていることに私も気づいた。
「な? 言っただろう?」
どうだと言わんばかりの安慶名の表情が少し鼻につくが、嬉しさのほうが上回っている。
「敬介も悠真くんも、それにこれから来る真琴くんたちも同じだ。だからこうして同じ時を過ごせるんだよ」
周平さんの言葉に納得しかない。
「そうですね。安心しました」
「恋人になりたてはとかく不安になりやすい。私も敬介を手に入れてからも少し不安な時期もあったが、それも時間が解決してくれるものだ」
「真壁は、久代さんが八尋さんを好きだと勘違いしていたから余計に不安になるんだろうが、八尋さんは恋人にメロメロだからそれも気にしないでいいよ。試食会の時も八尋さんのほうが離れるのを渋っていたくらいだったし」
あの八尋さんが、メロメロ……。
実際にその姿を見ているからこそ言える言葉なんだろうが、想像つかないな。
今度会いに行くのが楽しみだな。
こんな話をしながらも、安慶名の手は止まっておらず気づけば料理のほとんどが仕上がっていた。
「あ、ドレッシングできたぞ」
適当に五種類ほどのドレッシングを仕上げたところで、コンシェルジェから連絡がきた。
「誠一たちか。これでようやく揃ったな」
「料理も出来上がったし、いいタイミングだな」
見計らったようなタイミングに驚きつつも、さすが成瀬たちだなと思わずにいられない。
私は急いで出迎えに向かった。
「いらっしゃい」
扉を開けると、正面に真琴くんと翼くんの姿。
そして彼らにピッタリと寄り添うように成瀬と氷室が両サイドを固めていた。
「今日はお招きありがとうございます」
ぺこりと頭を下げる真琴くんと翼くんの可愛さに思わず目を細めると、さっと成瀬が真琴くんを抱き寄せた。
相変わらずの狭量さだな。
「真壁さんの恋人さんに会えるのが楽しみで、真琴くんと二人でワクワクしてましたよ」
「ははっ。ありがとう。さぁ中に入って。要さんも君たちに会えるの楽しみにしていたから」
笑顔で中に誘うと、四人は固まった表情で私を見ていた。
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