この意思の意味を。

早川 詩乃

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第一章 真宮家 対 天沢家

一話 始まり

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淡く薄いピンク色。
この石を手に取った瞬間訪れた苦しくて切ない気持ち。胸が熱い。鼓動が早くなる。
この気持ちの正体を知りたくて、私は今····

特になんともない日だった。朝、8時、真宮家 次女の真宮 純は目覚めた。
真宮家とは先祖代々、風の魔法を使うことができる一家だ。この華京町かきょうまちと呼ばれる場所で最強と言われている6つの名門家、通称、華京六家かきょうろっかの一つだ。長い年月をかける間にそのように呼ばれるようになった。単純に華京町の6つの名門家だからだろう。
今日は日曜日だから昼ぐらいまで寝てても大丈夫だけど、少し行動している素振りを見せないと、また呆れられてしまう。

重い体を動かし、背伸びをする。夜に雨が降っていたのか、頭が痛い。パジャマを着替え、長ズボンとTシャツ、パーカーをはおる。髪の毛は肩より上のショートなので何もしないでとかすだけ。一階ののリビングへ降りる。階段までの道のりで、兄さんとすれ違った。袴を着て木刀を持っている。朝練が終わった後だろうか。目が合ったが、特に会話をすることなく通り過ぎた。
兄 真宮 つかさは基本無口な人だ。私と同じ黒色の髪に、兄は冷たく先を見据えた様な紺色の瞳をしている。

リビングに行って、眠かったので、ローズティーを入れた。このローズはうちの庭から取ったものだ。私は庭に行った。
うちは長い歴史を持つ道場もあるぐらい和風な家なのだが、何故かうちの庭には薔薇が植えてあるのだ。
広い庭で、薔薇園として入場料をとってもまあまあ稼げそうなぐらい立派な薔薇達が咲き誇っていた。
私はここが好きだった。何故か分からないけどここにいると胸がドキドキするような、嬉しい気持ちになるのだ。
今は6月、薔薇が最も美しい季節だ。
すると、ここで心に何かが引っかかった。
6月···何日だっけ···
そうだ。2日··
昨日は私の誕生日だったんだ··
別に誕生日だから何があるとういわけでもないが。17歳になったのか。
すると後ろから声をかけられた。

「純。こんな所にいたの」

その声の正体は私の姉 真宮 由紀ゆきだ。兄と同じで冷たい紺色の目をしている。髪の毛は肩よりちょっと長いぐらいで、私と同じ黒色の髪の毛をしている
「なんですか。姉さん。」
「昨日、誕生日だったでしょ?純のことだから自分が17歳になったこと知らないんじゃないかと思って」
「知ってますよ。」
さっき思い出したのだか…
「お誕生日おめでとう」
「···ありがとうございます。」
姉さんはどちらかと言うと社交的な方だ。戦いも強くて、司兄さんには劣るものの、魔法も剣道も姉さんが私と同い年だった時も、今の私より2倍は強い気がする。
「ところで兄さん見なかった?」
「司兄さんですか?朝、すれ違いましたよ。2階の廊下で。」
「そうなの。なんか天沢家と対立しているのよ」
「天沢家とですか··。」
少し驚いた。天沢家とは華京六家の一つで主に水の魔法を使う家だ。
確か天沢家はこれもまた華京六家の一つとなる水無家とも対立していたような·····。結構好戦的な家だ。だが、これまで真宮家との対立は無く、お互いに無関心かどうかは分からないが、好きでも嫌いでもない平和的な関係を保てていたはずだ。
「きっかけはなんですか?」
「それが··うちの門下生に桂木っていう子がいたでしょ?」
「はい。確か彼、15歳の時にうちの道場に入ったので、もう今年で3年になるんじゃ···。」
「この子が天沢家のスパイだったの。」
「そうなんですか?」
「うちの門下生になるには試験が必要でしょ?その時に経歴とか血筋とか見たはずだったんだけど···· 」
「まあ、スパイぐらいなら彼だけじゃなく他にも何人かいますよ。だって経歴の詐称なんて簡単じゃないですか。」
「そうね。問題はうちの門下生、と言っても入ったばかりの子が4人行方不明になったでしょ。その犯人だったことなの」
「そうなんですか。その行方不明者達は····」
「殺されてたらしいわ。きっとそうやってうちの門下生を殺して真宮の勢力を弱めていくことが、天沢家の狙いだったんじゃないかしら。」
「天沢家は華京六家の中で1番になることを目指しているのでしょうか。」
「分からないわ。兎に角、うちも黙っているわけにはいかないでしょ。話をしに行ったわけ。」
「どうでした·····?」
姉さんは黙って首を横に振った。
「もしかしたら戦争になるかもしれない。戦う準備をしといて。それを言いたかったの。」
私が行ったところで何かが変わるわけでもないと思うが…
「分かりました。」
「私は兄さんと色々話さないと、またね。」
冷たい瞳だ。姉さんは去っていった。
「戦う準備かぁ····」
私はローズティーを飲み干し、自分の部屋に戻った。私の部屋の勉強机の横には刀が置いてある。風の魔法は中距離戦なので近距離に敵が来た時はこの刀で戦うのだ。袴に着替えた。上が白で下が赤い袴だ。真宮の女性は戦う時、この服で戦う。わざわざ和服を着る必要なんてない気がするのだが伝統だから仕方ない。
修行でもしないとな···。初めの一歩を踏み出した瞬間、足に何かがあたった。ペンだ。拾って机の上に置くと同時に部屋を見渡した。
「きたなっ····」
そう言えば昨日、部屋が汚くて母に呆れられたことを思い出した·····。
「掃除してからにしようかな·····」

特に綺麗好きなわけでもないのだがやり出したらとことんやるタイプだ。本棚に落ちている本を戻せば、元々並べてあった本の並び順が気になってしまう。
そんなかんじで全然掃除が終わることは無く、気がつけば5時になっていた。
ちょうど小物を箱に片付けると同時に元々入っていた小物をいるものと要らないものにも分けていた。
その時だった。純の日々を変える出来事があったのだ。
元々箱の中に入っていた物を取り出した時だった。不思議な物を見つけた。丸くてツルツルしていて、淡く薄いピンク色の7cmぐらいの物体。
「なんだこれ···」
小さく呟いた。
その時、水滴がその物体の上に落ちた。
何故か私は泣いている·····
「なんでだろう··」
よく見てみると石だった。
綺麗·····
何故か胸が熱くなってきた。と同時にある映像がフラッシュバックしてきたのだ。あの庭で·····薔薇が咲き誇っている美しい庭。
「今日、誕生日なんだろ。やるよこれ。」
「ありがとうっ」
蔓延の笑みを浮かべる私。そして男の子。顔は見えない。
胸が苦しい。生まれて初めての気持ちだった。その男の子に会いたい·····
顔が熱くて、鼓動が収まらない····。
この石がそうさせているのだろうか·····
もしかしたらそうなのかも·····
この子に会えって誰かに背中を押されているような·····
兎に角、会いたい·····
私はこの男の子を探して見ようと思った。きっとそうしないとこの気持ち、この感じの、正体は突き止められない気がしたからだ。

ここから私 真宮 純のストーリーが始まる。
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