気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた

しののめ

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第1章 幼年期

5.天使が動き出す

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とたとたとたとたとた。


クーレル侯爵家に小さな可愛い足音が響き渡る。

最近3歳の誕生日を迎えたノエルは、着々と歩きが上達し、今では小さな段差ならば1人でも余裕で越えられる程にまでなった。


ノエルはルーベルトを探して部屋中を歩き回っているようだ。

「るーにぃにどこ…?」

メイド達も日常茶飯事と化しているこの光景を、目を細め暖かな目で見守っている。

どてっ。

あ、ノエルがこけた。

「うっ、うぅ…ぐすっ…る、にーた…ん」

しばらく顔をゆがめ耐えようとしたようだが、耐えきれなかったようで、瞳から涙をぽとぽとと落とし、泣き出してしまった。

先程まで行われていた「かくれんぼ」は即座に中断し、物陰からその姿を見守っていたルーベルトは、光の如くノエルの元へと駆けつけた。

「あぁ…ノエル痛かったね。よし、僕の部屋に行こうか。ノエルの好きなお菓子も用意するよ。」

「…ぅん、……っひく、…いく……」

ルーベルトはノエルを軽々と抱き上げ颯爽と部屋を飛び出した。

ここまでがいつもの流れである。

ノエルが1人でいることを察知すると、ルーベルトかローレンツが飛んで駆けつけてくる。それはものすごいスピードで。そして直ぐにノエルを抱き抱え、どこかへ去っていく。もはやメイドたちもこの尋常じゃない溺愛っぷりに呆れているが、黙ってそんな2人を見送るのであった。


***


ガチャ。

ルーベルトの部屋に着いたが、ノエルはまだルーベルトの胸に顔を埋め、腕の中でぐずっている。

「るーにーに、ノエルね、……いたかったの。だから痛いの痛いのとんでけして?」

はーーー、可愛い……

最近のノエルはすごーく甘えたで控えめに言ってもめちゃめちゃに可愛い。

「そうだね、ノエル。ここまでよく痛いの我慢したね。いたいのーいたいのーとんでけ!」

そしてルーベルトはノエルのほっぺたにちゅっとキスを落とし、ぎゅーーっと抱きしめた。

最近のノエルはキスをするときゃっきゃと喜ぶのだ。それがまたかわいい。天使過ぎる。本当に。

ノエルは機嫌が直ったようで、再度僕に可愛らしく首をこてんと傾けながらお願いをしてきた。

「るーにーに、絵本よんで?」

「あぁ、もちろんだよ。」

と、満面の笑みで答えノエルの最近のお気に入りの本を手に、ノエルを僕の膝の上に座らせた。

すると、ノエルが「ん!ちやうの!」と言い、ジタバタし始めた。

何が違うのか尋ねると、

「あのね、あのね、僕ね、もっかいちゅってして欲しいなって…!ちゅーしてくれないと僕にーにのお膝すわりませーん!」


………んんん?????


「はぁ、本当にノエルは甘えただね……今のはノエルが悪いからね…?」

そう言ってノエルの唇にちゅっとキスを落とした。

やっぱり、きゃっきゃと歓喜の声を上げているノエルは、僕が今どうしようもない理性と全力で戦っていることを知らないのだろう。

そして大人しくなったノエルを改めて膝に座り直させ、絵本を読み始めた。だが、その物語も終盤という所でノエルがうとうと船を漕ぎ始めた。
 
これはもしかして、ノエルに膝枕するチャンス!と思い立ち、僕はすぐさま実行に移すことにした。

「ノエル、ちょっとあっちのソファでお昼寝しようか?」

するとノエルは目を擦りながら、

「うぅ……んそおするの…。にぃに抱っこしてつれれって。」

眠たいせいか、いつも以上に呂律が回っていないようだ。またそれも可愛い。


ノエルを横抱きにしてソファまで行き、そこに腰を下ろすと、ノエルが自ら僕の膝に擦り寄ってきた。

「……マジか。」

このままノエルを腕の中へ閉じ込めて、自分だけが独り占めをしてしまいたいと言う願望と激しく葛藤すること約1時間。
この可愛すぎる生き物を起こさないように、微動だにせず、寝顔を眺め続けた。このまま部屋に鍵をかけて一生閉じ込めようか、なんて本気で考えた。


「……………ノエル、そうだな。」

数十年後にはローレンツに領地のことは任せて、2人で自然豊かな地に移り住み、ひっそりと隠居するのもありなのでは?と、真剣に考え出すルーベルトであった。
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