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第1章 幼年期

19.約束

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ノエルはテオと一日中屋敷の中で遊びの限りを尽くした。


図書室へ行き、テオおすすめの絵本を読んでもらった。北の国の勇者一行が魔王を滅ぼし、現在の国に平和をもたらしたという伝説を元に作られた、ずっと昔からある本だ。


ノエルはこの本を読んで、「僕ね、大きくなったらこのゆうしゃしゃんみたいなすごい剣使うんだ!」と、目をきらきらさせて語った。

「いや、ノエルには剣むいてないんじゃ…?」

テオがそう小声でツッコミを入れた。

「僕だって剣ぐらいできるよ!見せてあげる!」

そう言ってノエルは剣を握るようにして手で空を切った。すると、体制を崩してよろけてしまった。


「やっぱりノエルに剣は向いてないよ。」

テオは眉を下げながら笑い、そう言った。

ノエルはそれが不服だったのかほっぺたをぷくりと膨らませた。


「ノエルってやっぱり可愛いよね。なんか、小動物みたいな感じ。」

そう言って、テオはノエルの頭を撫でた。

ノエルは頭を撫でられるのは好きなようで、先程のことは忘れたように、にんまりと笑っている。そんな単純なところもノエルの可愛いらしい所だ。



すると突然、テオが零した。


「……………ノエル、欲しいなぁ。」



「んーる今テオなんて?もっかい!」


「なんでもないよ。そんなことより、次は庭の花壇の方を探検しようか!」

「うん、する!」

そう言ってテオはノエルに手を繋ぎ2人並んで、庭へ向かって歩き出した。






♢♢♢




テオとノエルは、昼食を取った後も色々なことをして遊んだ。

トランプを使ってダウトをした。ノエルは嘘をつくのがめっぽう下手くそで、何度も負けてしまった。
ノエルは負けたのが悔しくて拗ねてしまったが、テオにクッキーで餌付けされたことでらすっかり機嫌は治ってしまっまたようだ。


「ぼくね、クッキー大好き!」

「そうなんだ。それなら幾らでもノエルにあげるよ。ほら、あーんして。」

テオは、自分があげたクッキーをはむはむと一生懸命に頬張るノエルを見て笑みを浮かべていた。


「ふふっ………、ノエルは本当に可愛いなぁ。」


クッキーに一生懸命になっているノエルにはそんな言葉に反応する余地は無い。


ノエルはクッキーを数枚食べ、満足したらしい。


「ふわぁ…………。」

ノエルは、お腹も脹れ、暖かな陽気にあてられ眠くなってしまい、思わずあくびをした。

「ノエル、眠たいの?」

「うん、眠たい……。」

「そうか、じゃあちょっとお昼寝だね。」



ノエル達は遊ぶのを一旦中断し、テオの部屋にてお昼寝をする事になった。



そんな日々が数日間が経過し、今日はもうノエル達が屋敷に帰らなければならない日になってしまった。


「ノエル、僕ノエルと離れたくないよ。」

そう言ってテオはノエルを抱きしめて離さない。

「でもぼく帰らなきゃだから…。」

「じゃあ絶対また会いに来て、いや、僕が会いに行く。絶対にノエルに会いに行く。」


「ほんと?すっごく嬉しい!ぼくもね、またテオとあそびたいよ。」


ノエルはテオがまた会いたいと言った事に心底喜んでいるようで、嬉々とした表情を見せている。、

そしてテオもまた、そのノエルの反応に、喜びに満ちた顔をしている。

「勿論。もう少し大きくなって、絶対にノエルを迎えに行く。」


「迎え?むかえ………うん、むかえ来て!」

ノエルは「迎え」という言葉の意味をよく理解せずに返事をした。


「ノエル、その時がきたらずーっと一緒だから、覚悟しておいてね。」


「ずっと一緒!僕もうれしい!」

ノエルはこの先もずっとテオ遊べることに、歓喜し、きゃっきゃと声をあげている。

「ふふっ………、本当にノエル大好き。どこまでも可愛いね…。」


顔をほころばせ、ノエルの瞳を一心に見つめるのであった。


天使くんはまたも1人の男児を無自覚に魅了してしまったようだ。



♢♢♢


そんなこんなでついに、ノエル達はランドルフ達の元を発つ時間がやって来た。


「じゃあな、兄さんよ~。」

「あぁ、そっちこそ元気でな。」


皆が皆、軽く挨拶を交わすと馬車に乗り込んだ。


「テオばいばーい!」

ノエルはテオの姿が見えなくなるまでぶんぶんと思い切り窓から手を振り続けた。

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