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第2章 少年期
7.喧嘩?
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クーレル家一同は、長い一日を終えて自宅に帰ってきた。疲れ切った様子で、ルーベルトは深いため息をつく。
「はぁ、ほんとに表情筋が死にそう……ノエルが足りない……」
そう言ってルーベルトは、ノエルを抱き上げ頬を擦り寄せた。ノエルは微笑みながら、されるがままに抱擁を受け入れた。あまりに長時間抱きしめられ流石に苦しくなってきたので、ノエルは「ぷはっ!」っとルーベルトの腕の中から顔を上げ、その胸をぽかぽかと叩いた。
「ごめんね?ついノエルを抱きしめられたのが嬉しくて。それよりノエルは今日どうだった?楽しめた?」
「もちろん!ケーキもいっぱい食べたし、名前はわからないけど、とても綺麗な声の男の子にも会えたの!」
ルーベルトは微笑みながら軽く頭を撫で、「その男の子って、どんな子?」と問いかけた。
ノエルは目を輝かせながら、興奮気味に話し始めた。
「うん!庭園で四葉のクローバーを見つけたんだけど、その時に会ったの。なんだかちょっと寂しそうな顔をしてたんだよ。僕がクローバーを渡したら、すごく驚いた顔してて、それからちょっとだけ話したんだ。」
ルーベルトは少し考え込み、軽く眉をひそめた。
「ふーん…その子、名前は?」
「うーん、名前は聞けなかったけど、今度会ったら絶対に聞いてみる、それでお友達になるんだ!」
ルーベルトは微笑みながらノエルを見つめ、その後、ゆっくりと口を開いた。
「……そっか。まぁ、次に会う時にちゃんと話せるといいね。」
ノエルが満足げに話す姿を見て、ルーベルトはしばらく考え込んだ後、提案を口にした。
「ねぇ、ノエル。今日は湯浴みの後ゆっくり話さない?後でまた僕の部屋においでよ。」
「うん!僕もいっぱい話したいことがあるから賛成だよ!」
ノエルは元気よく答え、二人はそれぞれ浴場に向かうことにした。
***
湯浴みの後、二人は約束通りルーベルトの部屋に集まり、ホットミルクを口にしながら、2人は今日の出来事について話を続けていた。
「ノエルが今日凄く楽しめたみたいで良かったよ。……それと庭で会ったって言ってた子の事だけど、」
「ん?どーしたの?」
ノエルは両手でマグカップを抱え、こてんと首を傾げ、ルーベルトを見上げる。
「うーん、…パーティーで会った男の子のこと、気になってるんじゃないかなって。」
「うん!あの子のこと凄く気になってる!どんな子なのかな…また今度会う時はお友達になれたらいいな~!」
「そうだね、……ただ、少し気になっただけなんだけれど。つい、心配になって……」
「どういうこと?」
「新しく友達が出来なくても、僕や……ローレンツが居るだろう?もしその子がノエルを傷つけたりしたら僕は……」
ノエルは少し顔をしかめ、手に持っていたホットミルクを机に置いた。
「……どうしてそんなふうに決めつけるの?ルー兄さんはあの子のとこ、何も知らないでしょ。」
「ノエル…?」ルーベルトは驚きながら問いかける。
「もちろん、お父様や兄さん達が僕の事を大切に思ってくれてるの、知ってるよ。でも僕だってお友達が欲しいよ。今日のパーティーでルー兄さんだって沢山のお友達とお話してたでしょ?なんで僕だけダメなの?」
それでも、彼の中には兄たちへの愛情と理解も混ざっている。これまで友達を持つことを制限されていたのも、母であるエルメンガルドの事件が原因だということも、ノエル自身分かっていた。だが、それでも。
「僕だってもうすぐ学園に入る年だよ。ずっと守られるだけじゃ嫌だよ。」
ノエルの表情には、幼さの中に強い意思が宿っていた。
ルーベルトはその言葉に言葉を失った。ノエルが他の誰かと新しい関係を築くことが、どうしても怖かった。エルメンガルドに傷つけられた過去がまた繰り返されるのではないかという恐れ。そしてもう一つ、ノエルが自分や家族以外に心を向けることが、どうしても寂しく思えてしまう自分自身の執着に薄々気づいていた。
「……っごめん、ノエル。そんなつもりじゃなかったんだ。ただ、……ノエルを守りたいだけなんだよ。」
ノエルはルーベルトの瞳を真っ直ぐに見據え、少し冷たく言った。
「…別に、兄さん達に守られる必要ないよ。もう、僕だってあの頃とは違うんだから。」
その言葉に、ルーベルトは胸を突かれたような気持ちになった。これまでノエルと喧嘩をしたことも言い合いになったことなんて一度もなかった。ルーベルトはようやく、自分がノエルの気持ちを無視して、ただ過保護に接してしまっていたことを悟った。
「ノエル…」
「僕に友達が出来ても、何も変わらないよ。僕は、みんなと仲良くしたい、だけだよ…」
ノエルは言いながら、少し涙ぐんでいた。
ルーベルトはその涙を見て、すぐに自分が間違った選択をしてしまったことを痛感した。
「ごめん、ノエル。もっと、君の気持ちを理解すべきだった。」
「うん、でも…少しだけ、考えてみてほしいの。僕だって……」
ノエルの口調はまだ少し怒りを含んでいたが、先ほどより穏やかだった。しばらく黙っていたが、やがてふっと微笑む。
「ごめん。今後はノエルの意思を尊重する。でも、やっぱりノエルのことが大切だから、心配になるんだ。それにもう守らなくても良いなんて寂しいことは言わないで。」
ノエルはしばらく黙っていたが、やがてふっと笑顔を見せた。
「でも、そうだね。もう、心配しないでって言っても、それが兄さん達が僕を大好きだと思ってくれてるからなのは分かってる。……ありがとう。」
泣いたせいか、沢山歩き回ったせいか、少しずつまぶたが重くなってきた。「ふぁ…」っとノエルは小さなあくびをして、うとうととし始める。
ルーベルトはいつもと変わらぬ手つきで、ノエルの髪を優しく撫でた。
「眠い?」
「うん、ちょっとだけ…」
ノエルは目をこすりながらも、安心しきった表情を見せた。
「今日はここで寝ていっていいよ。おやすみ、ノエル。」
「おやすみなさい、ルー兄さん。」
ノエルはそのままルーベルトのベッドに横たわり、額に触れる温もりを感じながら、すぐに眠りに落ちていった。ルーベルトは眠るノエルの穏やかな表情を見つめながら、静かに灯りを落とした。
「はぁ、ほんとに表情筋が死にそう……ノエルが足りない……」
そう言ってルーベルトは、ノエルを抱き上げ頬を擦り寄せた。ノエルは微笑みながら、されるがままに抱擁を受け入れた。あまりに長時間抱きしめられ流石に苦しくなってきたので、ノエルは「ぷはっ!」っとルーベルトの腕の中から顔を上げ、その胸をぽかぽかと叩いた。
「ごめんね?ついノエルを抱きしめられたのが嬉しくて。それよりノエルは今日どうだった?楽しめた?」
「もちろん!ケーキもいっぱい食べたし、名前はわからないけど、とても綺麗な声の男の子にも会えたの!」
ルーベルトは微笑みながら軽く頭を撫で、「その男の子って、どんな子?」と問いかけた。
ノエルは目を輝かせながら、興奮気味に話し始めた。
「うん!庭園で四葉のクローバーを見つけたんだけど、その時に会ったの。なんだかちょっと寂しそうな顔をしてたんだよ。僕がクローバーを渡したら、すごく驚いた顔してて、それからちょっとだけ話したんだ。」
ルーベルトは少し考え込み、軽く眉をひそめた。
「ふーん…その子、名前は?」
「うーん、名前は聞けなかったけど、今度会ったら絶対に聞いてみる、それでお友達になるんだ!」
ルーベルトは微笑みながらノエルを見つめ、その後、ゆっくりと口を開いた。
「……そっか。まぁ、次に会う時にちゃんと話せるといいね。」
ノエルが満足げに話す姿を見て、ルーベルトはしばらく考え込んだ後、提案を口にした。
「ねぇ、ノエル。今日は湯浴みの後ゆっくり話さない?後でまた僕の部屋においでよ。」
「うん!僕もいっぱい話したいことがあるから賛成だよ!」
ノエルは元気よく答え、二人はそれぞれ浴場に向かうことにした。
***
湯浴みの後、二人は約束通りルーベルトの部屋に集まり、ホットミルクを口にしながら、2人は今日の出来事について話を続けていた。
「ノエルが今日凄く楽しめたみたいで良かったよ。……それと庭で会ったって言ってた子の事だけど、」
「ん?どーしたの?」
ノエルは両手でマグカップを抱え、こてんと首を傾げ、ルーベルトを見上げる。
「うーん、…パーティーで会った男の子のこと、気になってるんじゃないかなって。」
「うん!あの子のこと凄く気になってる!どんな子なのかな…また今度会う時はお友達になれたらいいな~!」
「そうだね、……ただ、少し気になっただけなんだけれど。つい、心配になって……」
「どういうこと?」
「新しく友達が出来なくても、僕や……ローレンツが居るだろう?もしその子がノエルを傷つけたりしたら僕は……」
ノエルは少し顔をしかめ、手に持っていたホットミルクを机に置いた。
「……どうしてそんなふうに決めつけるの?ルー兄さんはあの子のとこ、何も知らないでしょ。」
「ノエル…?」ルーベルトは驚きながら問いかける。
「もちろん、お父様や兄さん達が僕の事を大切に思ってくれてるの、知ってるよ。でも僕だってお友達が欲しいよ。今日のパーティーでルー兄さんだって沢山のお友達とお話してたでしょ?なんで僕だけダメなの?」
それでも、彼の中には兄たちへの愛情と理解も混ざっている。これまで友達を持つことを制限されていたのも、母であるエルメンガルドの事件が原因だということも、ノエル自身分かっていた。だが、それでも。
「僕だってもうすぐ学園に入る年だよ。ずっと守られるだけじゃ嫌だよ。」
ノエルの表情には、幼さの中に強い意思が宿っていた。
ルーベルトはその言葉に言葉を失った。ノエルが他の誰かと新しい関係を築くことが、どうしても怖かった。エルメンガルドに傷つけられた過去がまた繰り返されるのではないかという恐れ。そしてもう一つ、ノエルが自分や家族以外に心を向けることが、どうしても寂しく思えてしまう自分自身の執着に薄々気づいていた。
「……っごめん、ノエル。そんなつもりじゃなかったんだ。ただ、……ノエルを守りたいだけなんだよ。」
ノエルはルーベルトの瞳を真っ直ぐに見據え、少し冷たく言った。
「…別に、兄さん達に守られる必要ないよ。もう、僕だってあの頃とは違うんだから。」
その言葉に、ルーベルトは胸を突かれたような気持ちになった。これまでノエルと喧嘩をしたことも言い合いになったことなんて一度もなかった。ルーベルトはようやく、自分がノエルの気持ちを無視して、ただ過保護に接してしまっていたことを悟った。
「ノエル…」
「僕に友達が出来ても、何も変わらないよ。僕は、みんなと仲良くしたい、だけだよ…」
ノエルは言いながら、少し涙ぐんでいた。
ルーベルトはその涙を見て、すぐに自分が間違った選択をしてしまったことを痛感した。
「ごめん、ノエル。もっと、君の気持ちを理解すべきだった。」
「うん、でも…少しだけ、考えてみてほしいの。僕だって……」
ノエルの口調はまだ少し怒りを含んでいたが、先ほどより穏やかだった。しばらく黙っていたが、やがてふっと微笑む。
「ごめん。今後はノエルの意思を尊重する。でも、やっぱりノエルのことが大切だから、心配になるんだ。それにもう守らなくても良いなんて寂しいことは言わないで。」
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