気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた

しののめ

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第2章 少年期

22.誕生日

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ノエルはロイスのそばにぴたりとくっつき、次々と挨拶にやって来る貴族たちと笑顔で言葉を交わす。

「はじめまして、ノエル様。お噂はかねがね……」
「お誕生日おめでとうございます!」

ひっきりなしに挨拶が続く中、ロイスは終始落ち着いた態度で応じ、時折ノエルの肩を優しく叩いて労っていた。

もちろん、中にはノエルと同じくらいの年頃のご令嬢を連れてくる者もいれば、隣に控えているローレンツやルーベルトに媚びを売るためにやって来る者は後を絶たなかった。

ルーベルトは慣れた様子で愛想よく微笑み、ローレンツは一言二言で淡々と応じるのみだが、その眼光の鋭さに気圧される者も少なくなかった。

ノエルは少し疲れた表情を浮かべながらも、何とか笑顔を絶やさないように頑張っていた。

「ノエル、大丈夫か?」

ルーベルトが小声で囁くと、ノエルは頷いた。

「うん、大丈夫だよ。でも、すごく人が多いね。」

「ノエルの事を祝いたくて仕方ないんだよ。」

ルーベルトがそう言うと、ロイスもノエルの肩に手を置いて微笑んだ。

しばらくして挨拶にやって来る人の数も少しずつ減り始め、会場全体の雰囲気が少し緩やかになった。そんな中、ふと、遠くで同年代の令息と談笑していたテオが、こちらに向かって歩いてきた。

「叔父様、ノエルを僕の友達に紹介してもいい?」

ロイスは少し考えた後、ノエルの顔を伺った。

「ノエル、堅苦しい挨拶ばかりで疲れただろう。行ってくるか?」

ノエルは一瞬迷ったが、テオが差し出した手を見て笑顔で頷いた。

「うん、行ってみる!」

ローレンツのほうから鋭い視線を感じたが、テオはまったく気にする様子もなく、ノエルの手を取って歩き出した。

「ねぇ、テオ。誰のところに行くの?」

「まぁ、行ってみればわかるよ。いい奴だから大丈夫。」

テオはそう言うと、窓際のほうへ向かって歩いて行った。そこには数人の若者が集まって談笑していた。

「あれ……?ジークはどこ行った?」

「兄様なら外に気晴らしに……」

そのとき、ノエルの目にひとりの少年が入った。その少年は以前どこかで見たことがある――

「……あっ!」

少年もノエルに気づき、柔らかな笑みを浮かべながら歩み寄ってきた。

「ノエル。やっぱり君だったんだ。」

その声音には落ち着きがあり、大人びた余裕を感じさせる。目を細めて微笑む姿はどこか威厳があり、ただの少年とは思えない空気をまとっていた。

「えっと……ごめんね、名前を聞いてなかった気がするんだけど……。」 

「あぁ、ごめん。自己紹介が遅れたね。僕はウィル。」

ウィルは丁寧に一礼すると、ノエルに向かってもう一度微笑んだ。その仕草はどこか洗練されており、自然な動きのひとつひとつが気品を感じさせる。

「ウィル……!」

ノエルはその名前を口にしてから、ふと彼の手を見た。以前、クローバーの花を渡したあの少年と同じだと気づいたのだ。

「ノエル、あのときはありがとう。君にもらったクローバー、今でも栞にして大事にしてるよ。」

ウィルはそう言って微笑んだ。その表情は以前と同じく純粋で、けれど今の彼には、あのときには感じなかった堂々とした雰囲気があった。

「そっか、喜んでくれてて良かった!……また今度、今度は沢山お話ししようよ!」

ノエルの言葉にウィルは少し驚いたようだったが、すぐに笑みを浮かべて答えた。

「もちろん、お誘いには喜んで乗らせてもらうよ。」

テオが横で腕を組みながら「そろそろ時間だぞ」と急かすように言うと、ウィルは少し名残惜しそうにしていたが、肩をすくめて言った。

「テオが怒りそうだから、これくらいにしておくよ。またそのうち手紙を寄越そう。」

そう言ってウィルはテオの肩に軽く手を置き、耳元で何か囁いた。その際も、彼の動きは一切無駄がなく、自然でありながら洗練されている。

「ねぇ、テオ。今なんて言ってたの?」

「なんでもないよ。さ、そろそろ食事が運ばれてくる頃だし、一度席に戻ろうか。」

「うん、わかった!」

ノエルはテオの手を握り直し、元の席へと戻って行った。会場では使用人たちが料理を運び始めており、空気がさらに華やいでいくのを感じた。
ウィルが去った後も、ノエルの心には彼の笑顔が鮮明に残っていた。
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