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第2章 少年期
22.誕生日
しおりを挟むノエルはロイスにぴったりとくっつき、ひっきりなしにやって来る貴族達に挨拶をしまくった。
勿論のこと、ノエルと同い年位のご令嬢を連れて挨拶にやって来る者もいれば、明らかに、隣に居るローレンツやルーベルトに媚びを売ってくる人も多々いる。
しばらくそんなことが続き、そろそろ挨拶にやって来る者の数も減少してきた。
そんな状況を見てそろそろだろうと思い、今まで席にずっと座っていたテオがこちらに向かって歩いてきた。
「伯父様、ノエルをあっちに居る友達に紹介しに行ってもいい?」
そろそろノエル疲弊しているだろうと思い、ロイスは了承の意を示した。
あちらの方からローレンツに睨まれている気がするが、テオは全くもって気にしていない模様だ。
沢山の人に挨拶をして疲れていた為にノエルも勿論、二つ返事で了承した。
テオはノエルの右手を掴み、彼の友達とやらが居る場所に向かい歩き出した。
「ねぇ、テオ。誰のところに行くの……?」
「まぁ、行ってみれば分かるよ。良い奴だから大丈夫。」
そう言ってテオは窓際の方へ向かい歩き出した。
「あれ………、ジークはどこ行った…?」
「あぁ、兄様なら外に気晴らしに……!」
するとそこには、いつの日にか出会った名前を知らない少年の姿があった。
「…………あっ!えっと………、名前…!」
「ノエル………!そう、今日ここにこれば君に会えると思って来たんだ!」
ノエルと会えたことに興奮気味な少年は、ノエルが問いかけた質問に答えることを忘れ、嬉々とした様子で話しかけた。
「あ………、えっと……名前教えて貰ってもいいかな……?」
「あぁ、ごめんね。僕の名前は……そう、ウィルだよ。」
「ねぇ、ウィル。それでいいの?」
「テオは黙ってて。」
そう言ってウィルはテオを黙らせ、ノエルの手を取った。
「ノエル、本当に今日会えてよかった。あの時はありがとう。今でもあのクローバは栞にして大切に保管してるよ。」
そう言ってノエルに微笑みかける彼には、あの日の面影は全くもってと言っていいほどに感じられない。
「そっか、喜んで貰えてよかった!また今度は僕の家で沢山お話しよ!」
「勿論お誘いに乗らせてもらうね………っと、そろそろテオがキレそうだから僕はこの辺でノエルの独り占めはやめるね。詳しい事はまた手紙を寄越すから。」
そう言ってウィルは、テオの肩に手を置き何かしら囁いて去っていった。
「ねぇテオ、今なんて?」
「いや、なんでもないよ。そろそろ食事が運ばれてくる頃合だよ。1度席に戻ろうか?」
「うん、わかった!じゃ席まで一緒に行こ!」
「勿論だよ。」
そう言ってテオは、もう一度ノエルの手を取り元居た方向へと戻って行った。
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