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第3章 学園生活 前期

18.ケーキ

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3人が集う車内から慌ただしい声が聞こえてくる。

「ノエル、また買ってやるからな?」

「…………僕気にしてないもん。」

そうは言うものの、頬をぷくぅと膨らませ涙目で訴えかけるその姿は、到底気にしていないとは思えない。

「ごめんねノエル、僕がもう少し早く気づけていれば良かったね。」

そう言ってルーベルトは、椅子の上で膝を抱えているノエルをその形のまま抱き上げた。断固としてその姿勢を崩すまじと、数秒間ぷるぷると耐えたが、さすがに持たなかったようでその体制を崩すと同時にルーベルトの胸へと飛び込んだ。


「…………僕別に泣いたりしてないからね。」

「……………うん、そうだね。じゃあまた今度同じ店に買いに来ようか。」

するとコクリと頷き、再びぐりぐりと自らの頭をルーベルトの腹部へと押し付けた。


「なんで兄さんばっかり……………。」

「長男の特権~。ほんとに可愛い……幾らでもケーキくらい買ってあげるのに絶対ノエルは頼んでこないよね…………。まぁ、そんな控えめな所も可愛いんだけどね。」


ルーベルトはそのまま家に着くまでノエルの頭を優しく撫で続けた。




✿✿✿



「………………ただいまぁ。」

やはりまだ気持ちは沈んだままなようで、その声にいつものような元気は感じられない。

ノエルは沈んだ気持ちのまま自室へと帰って行ってしまった。


「流石にあの落ち込みようは酷いな……。料理長にでも頼んでみるか。」

「それがいいと思うよ……ここはロイに譲るよ。」

そう言うとルーベルトはローレンツの背中をぽんと押すと、その勢いのままローレンツは厨房の方へと足を進めた。


「あ~あ、僕って本当にいい兄さんだな~。」

ルーベルトは、わざとローレンツに聞こえるような大きな声でそう言った。

「うっせぇよ!」

ローレンツからは吐き捨てるような返事が返ってきたようだ。



✿✿✿



コンコンコン。

「ノエル、入るぞー?」

ローレンツが部屋に足を踏み入れるとそこにはノエルの姿は無く、布団に大きな膨らみが1つあった。

そーっとその布団を捲ると、そこには丸く縮こまったノエルがそこに寝ていた。部屋に帰ってから泣き疲れてそのまま眠ったのであろう。

「ケーキは食後にでも出してもらおうかな。」

ローレンツは、ノエルの頭を撫で部屋を去ろうとするとローレンツの腕に何かが絡みついた。振り返ってみると、比較的小さな手が、ローレンツの手首を掴んでいた。

ローレンツはその小さな温もりに笑みを深めながら、暫くはここから動けそうにないな、と確信し、先程持ってきたケーキを頬張るのであった。



その後、目覚めたノエルは食後にケーキをお腹いっぱいに食べたらしい。

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