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愛したい僕
しおりを挟む可愛く、とても美しい婚約者が居る僕は、民衆から見たら羨ましいことだろう。民衆の中では、結婚も出来ずに生涯を終える人も沢山居るという。そんな民衆から見たら、僕は幸せ者だ。だけど、僕は自分のことが幸せなのか疑ってしまっているーー
婚約者であるグラン・ティアラを思い浮かべる。
彼は僕のことをベリーと呼んでくれるが、僕は彼女の名前を呼んだ記憶がない。
ティアラは僕と同じ公爵家の人間で、ティアラはその公爵家の長女。ティアラはルビーのような赤く透き通った瞳をしていて、その瞳は誰をも魅了する輝きがあると思う。そんな宝石のような瞳に、貴族としては珍しい金色のポニーテールは、とても美しく可憐だ。艶があり、光を当てると綺麗にその光を全て跳ね返し輝く肌は、何処か大人らしさと色気を感じさせる。
そんな彼女は、よく一人で本を読んでいる僕に話を掛けてくれる。
話し掛けて来たのだから話し返せばいいのに、僕にはそれが出来ない。話掛けてくれた嬉しさで、話す内容が思い浮かばないのだ。本の内容を聞いてきたので本の内容を教えようとしても、恥ずかしさから黙りこんでしまう。まるで聖女のような微笑みを前にすると、あまりの美しさと可愛さに僕は遠慮をしてしまうのだ。
ーーこんな僕が、こんな素晴らしい彼女に話掛けていいのか?
こういった感情が浮かんできて、僕は彼女に話し掛けることが出来ない。
話し掛けるだけなのに、話し掛けれない自分を愚かだと思う。
物語に出てくる王子様が羨ましい。どうして、物語に出てくる王子様はあんなに女性とのコミュニケーションが上手なのだろうか。僕が王子様だとしたら、物語に出てくる女性に動揺して、ダンスなんか華麗に踊れる自信はない。それなのに、物語に出てくる王子様はそれが当たり前かのように、華麗に女性を魅了するように踊る。……どうして、こうも僕と王子では差があるのだろうか。
そんなことを思いながら、彼女の部屋の前に訪れる。
ティアラには言ってはいないが、父さんや母さんが寝たときを見計らって、こうしてティアラの部屋の前に訪れることがある。勿論、年頃の女の子の部屋なので、別に入ったり覗いたりはしない。そういう度胸が無いと言ってもいいが、僕は彼女の声を聞きに扉越しに耳を当てる。
……何か話すのだろうか。
何一つ音の響かない部屋に耳を掛けていると、彼女が窓に手を掛ける音が聞こえる。僕とあまり接点のない彼女。どういう内容を話すのだろうかーー
「はぁ……愛されたいなぁ……」
彼女の悲しそうな、何かを望むような声に耳を疑う。
……え?
………愛されたい?
彼女の言葉に、頭が急速に回転をしては故障を起こす。
誰に……とか。
誰から……とかじゃない。
その相手が僕だとしても、僕じゃなかったとしてもーー
ーー今まで愛してこなかった僕はどうすればいい?
ーー大好きな人を奪われようとしていう僕はどうすればいい?
その場に居ることが辛くなった僕は、その場から急いで離れた。
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