冷たい婚約者が「愛されたい」と言ってから優しい。

狼狼3

文字の大きさ
2 / 8

愛したい僕

しおりを挟む
 
 可愛く、とても美しい婚約者が居る僕は、民衆から見たら羨ましいことだろう。民衆の中では、結婚も出来ずに生涯を終える人も沢山居るという。そんな民衆から見たら、僕は幸せ者だ。だけど、僕は自分のことが幸せなのか疑ってしまっているーー


 婚約者であるグラン・ティアラを思い浮かべる。
 彼は僕のことをベリーと呼んでくれるが、僕は彼女の名前を呼んだ記憶がない。
 ティアラは僕と同じ公爵家の人間で、ティアラはその公爵家の長女。ティアラはルビーのような赤く透き通った瞳をしていて、その瞳は誰をも魅了する輝きがあると思う。そんな宝石のような瞳に、貴族としては珍しい金色のポニーテールは、とても美しく可憐だ。艶があり、光を当てると綺麗にその光を全て跳ね返し輝く肌は、何処か大人らしさと色気を感じさせる。


 そんな彼女は、よく一人で本を読んでいる僕に話を掛けてくれる。
 話し掛けて来たのだから話し返せばいいのに、僕にはそれが出来ない。話掛けてくれた嬉しさで、話す内容が思い浮かばないのだ。本の内容を聞いてきたので本の内容を教えようとしても、恥ずかしさから黙りこんでしまう。まるで聖女のような微笑みを前にすると、あまりの美しさと可愛さに僕は遠慮をしてしまうのだ。

 ーーこんな僕が、こんな素晴らしい彼女に話掛けていいのか?

 こういった感情が浮かんできて、僕は彼女に話し掛けることが出来ない。

 話し掛けるだけなのに、話し掛けれない自分を愚かだと思う。
 物語に出てくる王子様が羨ましい。どうして、物語に出てくる王子様はあんなに女性とのコミュニケーションが上手なのだろうか。僕が王子様だとしたら、物語に出てくる女性に動揺して、ダンスなんか華麗に踊れる自信はない。それなのに、物語に出てくる王子様はそれが当たり前かのように、華麗に女性を魅了するように踊る。……どうして、こうも僕と王子では差があるのだろうか。

 
 そんなことを思いながら、彼女の部屋の前に訪れる。
 ティアラには言ってはいないが、父さんや母さんが寝たときを見計らって、こうしてティアラの部屋の前に訪れることがある。勿論、年頃の女の子の部屋なので、別に入ったり覗いたりはしない。そういう度胸が無いと言ってもいいが、僕は彼女の声を聞きに扉越しに耳を当てる。


 ……何か話すのだろうか。


 何一つ音の響かない部屋に耳を掛けていると、彼女が窓に手を掛ける音が聞こえる。僕とあまり接点のない彼女。どういう内容を話すのだろうかーー


「はぁ……愛されたいなぁ……」

 彼女の悲しそうな、何かを望むような声に耳を疑う。
 ……え?
 ………愛されたい? 

  
 彼女の言葉に、頭が急速に回転をしては故障を起こす。

 誰に……とか。
 誰から……とかじゃない。

 その相手が僕だとしても、僕じゃなかったとしてもーー


 ーー今まで愛してこなかった僕はどうすればいい?
 
 ーー大好きな人を奪われようとしていう僕はどうすればいい?


 その場に居ることが辛くなった僕は、その場から急いで離れた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完)婚約破棄ですか? なぜ関係のない貴女がそれを言うのですか? それからそこの貴方は私の婚約者ではありません。

青空一夏
恋愛
グレイスは大商人リッチモンド家の娘である。アシュリー・バラノ侯爵はグレイスよりずっと年上で熊のように大きな体に顎髭が風格を添える騎士団長様。ベースはこの二人の恋物語です。 アシュリー・バラノ侯爵領は3年前から作物の不作続きで農民はすっかり疲弊していた。領民思いのアシュリー・バラノ侯爵の為にお金を融通したのがグレイスの父親である。ところがお金の返済日にアシュリー・バラノ侯爵は満額返せなかった。そこで娘の好みのタイプを知っていた父親はアシュリー・バラノ侯爵にある提案をするのだった。それはグレイスを妻に迎えることだった。 年上のアシュリー・バラノ侯爵のようなタイプが大好きなグレイスはこの婚約話をとても喜んだ。ところがその三日後のこと、一人の若い女性が怒鳴り込んできたのだ。 「あなたね? 私の愛おしい殿方を横からさらっていったのは・・・・・・婚約破棄です!」 そうしてさらには見知らぬ若者までやって来てグレイスに婚約破棄を告げるのだった。 ざまぁするつもりもないのにざまぁになってしまうコメディー。中世ヨーロッパ風異世界。ゆるふわ設定ご都合主義。途中からざまぁというより更生物語になってしまいました。 異なった登場人物視点から物語が展開していくスタイルです。

【完結】遅いのですなにもかも

砂礫レキ
恋愛
昔森の奥でやさしい魔女は一人の王子さまを助けました。 王子さまは魔女に恋をして自分の城につれかえりました。 数年後、王子さまは隣国のお姫さまを好きになってしまいました。

私は愛する婚約者に嘘をつく

白雲八鈴
恋愛
亜麻色の髪の伯爵令嬢。 公爵子息の婚約者という立場。 これは本当の私を示すものではない。 でも私の心だけは私だけのモノ。 婚約者の彼が好き。これだけは真実。 それは本当? 真実と嘘が入り混じり、嘘が真実に置き換わっていく。 *作者の目は節穴ですので、誤字脱字は存在します。 *不快に思われれば、そのまま閉じることをお勧めします。 *小説家になろうでも投稿しています。

(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。 なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと? 婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。 ※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。 ※ゆるふわ設定のご都合主義です。 ※元サヤはありません。

本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました

音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。 ____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。 だから私は決めている。 この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。 彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。 ……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。

夫に家を追い出された女騎士は、全てを返してもらうために動き出す。

ゆずこしょう
恋愛
女騎士として働いてきて、やっと幼馴染で許嫁のアドルフと結婚する事ができたエルヴィール(18) しかし半年後。魔物が大量発生し、今度はアドルフに徴集命令が下った。 「俺は魔物討伐なんか行けない…お前の方が昔から強いじゃないか。か、かわりにお前が行ってきてくれ!」 頑張って伸ばした髪を短く切られ、荷物を持たされるとそのまま有無を言わさず家から追い出された。 そして…5年の任期を終えて帰ってきたエルヴィールは…。

私の以外の誰かを愛してしまった、って本当ですか?

樋口紗夕
恋愛
「すまない、エリザベス。どうか俺との婚約を解消して欲しい」 エリザベスは婚約者であるギルベルトから別れを切り出された。 他に好きな女ができた、と彼は言う。 でも、それって本当ですか? エリザベス一筋なはずのギルベルトが愛した女性とは、いったい何者なのか?

冷たかった夫が別人のように豹変した

京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。 ざまぁ。ゆるゆる設定

処理中です...